ゼロの使い魔と伝説の勇者   作:過労死志願

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ロミジュリ?

「いいですか? 静かに……静かにですよ。敵は泥棒。きっと気配を読む能力に長けているはず」

 

「ノリノリだねアンリエッタ」

 

「あんがい昔はお転婆でしたから、姫様」

 

「まぁ、いざとなったらこの変態槍使いもいますし」

 

「変態とは失敬な。僕は常に女性に優しく、真摯であれと姉さまに言われて育てられましたから、常に紳士であることを心がけていますよっ!!」

 

――あぁ、確かに常に紳士だな。その槍を握っていなきゃだけど。と、サイトは若干遠い目をしながら、たまたま通りかかったので、護衛として連れてきたシルの手の中でプルプル震える豚のぬいぐるみを見つめる。

 

「ん? なんだ、貴様。そんなに私を見つめて……はっ!? まさか私の弱点を」

 

「……………………………………………………」

 

 なんか平然としゃべった気がしたが、ここは剣が会話をする世界だ。豚のぬいぐるみが話しても何ら不思議はないだろうと自己完結。

 

 お前みたいな理不尽の塊に弱点なんてあるのかよ? という、本人が聞けば割と喜びそうなツッコミを入れながら、サイトは背中のデルフリンガーの柄を握り、

 

「行きますよ!」

 

「えぇ」

 

「了解だよ」

 

「やってしまいなさい!」

 

「腕が鳴ります!!」

 

「ふん、盗人ごときわが刺突で血祭りにしてくれる」

 

 ルイズの緊張気味の首肯と、

 

 杖を握って臨戦体制に移ったウェールズの返事、

 

 何やらノリノリな姫様の指示と、

 

 やっぱり連れてくるんじゃなかったと後悔した、不穏すぎる変態二人の発言を背中に、

 

 サイトはたどり着いたカトレアの部屋のドアを、勢いよくあけてっ!!

 

「べ、べああああああああああああああ!?」

 

 突然眼前にぬっと顔を出した黒い巨体――クマの顔を見て思わずビビる!!

 

――いや、だって日本人にとって熊って、会った瞬間死を覚悟しなきゃいけない動物だしっ!? と、思わず間抜けな悲鳴を上げた言い訳を、内心でするサイトに背後から罵声が飛ぶ。

 

「バカっ! サイトなに止まってんのっ!!」

 

「サイト君、不意打ちは、敵が状況を整理する前に行わないと、成功率がガクッと下がるんですよっ!!」

 

 突然止まったサイトの背中に花をぶつけて抗議するルイズと、武人として意外とまともなことを言ったシルの叱咤だった。

 

 だが、それよりもサイト驚かせた罵声は、

 

「病人の部屋で何しとるんだ、お前らは」

 

『え?』

 

 ベッドに腰掛け、驚いたように目を見開くカトレアをかばった、バーシェンだった。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

「え、えっと……なんでこんなところに?」

 

「質問をしているのはこちらだが?」

 

 それから数分後。結構無理やり開けてしまったせいで傷んだ扉の修復を、バーシェン監修の元魔法でやったサイトたちは、そのまま部屋の床に正座させられ、無数の動物たちに小突かれながら、冷たい視線でこちらを見下ろしてくるバーシェンの詰問をうけ、がたがた震えていた。

 

「え、えっと……普段なら寝ているチイ姉さまの部屋に明かりがついていたから、泥棒か不法侵入者だと」

 

「この要塞の警備はそんなものを通すほどゆるいのか?」

 

「ゆるくないです……」

 

 正論すぎる言葉をたたきつけられしょげ返るルイズに、サイトは思わず立ち上がる、

 

「る、ルパン三世ならできますよっ!!」

 

「現実の話をしているんだ。漫画の読みすぎだな、サイト。現実を見ろ、夢見がちな少年」

 

 ファンタジーすぎるやつに現実を見ろって言われた……。と、割とショックを受けたサイトが四肢をつき再起不能になる中、いちおう階級として上であるアンリエッタが、ようやく慣れない正座が与える苦痛に耐えながら口を開いた。

 

「で、ではバーシェン卿はどうしてここに?」

 

「領主の娘にあいさつするのに何の問題がある」

 

「いや、こんな時間に女性の部屋に訪れるなんて、明らかに夜這い……」

 

「あぁ、夜這いだが何か?」

 

「ちょ!?」

 

 それはそれで問題があるのではっ!? と驚くアンリエッタだったが、その直後、バーシェンの言葉に苦笑いを浮かべて、楽しげにこちらのやり取りを見つめているカトレアに気付いた。

 

 あの顔は、何か楽しいことを隠している顔だ。と、幼いころの付き合いからなんとなく察したアンリエッタは、バーシェンの夜這い発言が、その裏にある真実を隠すためのブラフであると察知。ほんの少しだけ真面目な空気を漂わせながら、バーシェンに命令する。

 

「バーシェン卿。本当のことを言いなさい。トリステイン王国女王としての命令です」

 

「職権乱用だな。拒否権があると思うが?」

 

「仮にも国の命運を左右する大貴族との娘との関係を、王が知らないままでいていい道理がないでしょう? そして、あなたにはそれくらいの重大な行為をしているという、自覚があるはずです」

 

「む……。いうようになったな」

 

「そうなるように、あなたに教育されましたから」

 

 熾烈な視線のぶつかり合いで、空中で火花が飛ぶ。

 

 そんな二人のやり取りを見て、くすくす笑っていたカトレアもようやく口を開き、

 

「もういいじゃないですか、バーシェンさん。悪いことしているわけではないですし」

 

「いいや悪いな。助けないといった女に手を伸ばすなど、完全なただの偽善だ。俺的には無知な人間の善意くらいにたちが悪い悪徳でだな」

 

「あなたはいつも極端すぎますよ。バーシェンさんは、よく私の病気に効くかもしれない、各地の霊薬を手土産に持ってきてくれるんですよ」

 

『え!?』

 

 意外なカトレアの告白に、ルイズたちは思わず信じられないと言いたげな視線を向け、バーシェンは普段揺らがせない鉄面皮にほんのわずかな不機嫌そうな色を乗せ、

 

「なんだ? 言いたいことがあるなら、体で聞いてやるが」

 

「いや、それ俺たち焼き殺される……」

 

 とりあえず明らかに機嫌が悪そうなバーシェンの相手はサイトに任せることにして、ルイズたちは話の通じるカトレアに、さらに事情を詳しく聞いていった。

 

 カトレア曰く、なんでも彼女の治療を断った後、さすがの鉄面皮バーシェンも、戦友の涙ながらの懇願を無碍にしたのが、いろいろ気が咎めてしまったのか、よく両親には内緒で、この城を訪れ、カトレアに霊薬を届けてくれていたらしい。

 

 もとより、カトレアとしても治ればいいな。と思っていた程度のことだったので、バーシェンに治療を断られても何ら恨みは抱いておらず、むしろ自分のために薬を持ってきてくれたバーシェンに感謝していた。

 

 そういうこともあってか、二人の関係は意外と良好に進んでいき、そのうちだんだん雑談を交わすようになっていった。

 

そんなこんなで、こうして定期的に薬を届けてくれるバーシェンを少しだけ部屋にとどまってもらい、病のせいであまり外に出られないカトレアはバーシェンから、トリステインや、外国の様子などをきいて、夜の退屈を紛らわせていたらしい。

 

「だから、今夜のことは誰にも言わないでね? お父様とお母様にばれたら、きっとまたバーシェンさんと喧嘩になっちゃうから」

 

 霊薬をよこすくらいだったら力を使えって。と、苦笑しながら唇の人差し指を当て、沈黙を願うカトレアに、ルイズたちは何も言えなかった。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 それからしばらくして、これ以上邪魔をしては悪いということでカトレアの部屋を出て行ったルイズたちは、自分たちの寝室に変えるために城の廊下を歩きながら、いまだに明かりがつき、ほんのわずかに聞こえてくるカトレアの笑い声を耳にしながら、複雑な顔をしていた。

 

「チイ姉さま、楽しそうだったわね」

 

「あれは恋をする乙女の目でしたね。間違いなく」

 

「いや、さすがにそれは決めつけすぎじゃ……。それに、万が一恋愛だとしても、今のラ・ヴァリエール家とバーシェンさんじゃ無理があるでしょう」

 

 目をキラキラ輝かせ、新たなラブロマンスに思いをはせるアンリエッタに苦笑しながら、ウェールズは現実的な意見を告げる。

 

 そんな三者三様の反応に、ずっと黙っていたサイトは、

 

「なんとかして、あの二人が堂々と会えるようにしたいな。確かに、ルイズのご両親が起こる理由はバーシェンさんが全面的に悪いんだけど、カトレアさんのあんな顔を見ると」

 

 再び三人の間に落ちる沈黙。

 

 彼らの脳裏では、今回の一件を踏まえた、この問題にかかわる損得勘定のそろばんがはじかれている。

 

 そして、

 

「仕方ないわね。私たちの精神の安全のためにも、チィ姉さまの楽しい生活のためにも、ちょっと頑張ってみますかっ!!」

 

 ルイズたちは、怒り狂う悪鬼羅刹となった両親と、戦うことを決意した

 

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