もうちょっと祭りやってから、学園襲撃編で、アルビオン戦争に終止符ですかね……。
ながく……なりそうだな。
あ、忘れてた。
更新遅れてすいません(´・ω・`)
シティオブサウスゴータ。アルビオン王国において、貿易の中枢を担うこの大都市は、現在……最近は見られなかった賑やかな空気で満たされていた。
空に打ち上げられ煙を出す炸裂砲。それによって祭りの開催が周りに告げられ、人々の熱気はさらに上がっていく。
レンガ造りの町の道路には、様々な色の屋根で精いっぱい飾り立てた屋台たちが立ち並び、その前では若干痩せているお客様たちが、今か今かといわんばかりに開店時間を待っている。
そして、
「おはよう、サウスゴータ市民と、近隣からやってきたお客様方。本当なら丁寧なあいさつをするべきなのだろうが、今の君たちにはそんな挨拶を待っている余裕もないだろう。というわけで挨拶はこのくらいにして、さっさと始めようではないか……せいぜい掻き込めっ! そして屋台の連中は祈るがいい……己が頭上に、優勝の栄冠が輝くのをっ!! では、《サウスゴータ主催! チキチキ・ライス
『うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』
風属性魔法によって町中に拡散されたサウスゴータを統治する最高議長の言葉に、人々は叫び声をあげながら、料理を並べだす屋台に突撃した。
そんな突撃された屋台の一つに、
「とうとう来たぞ、ライナ、眼鏡、ティファニア……目指すは優勝ただ一つっ!」
「は、はい! 頑張りますっ!」
「あんたいいかげん私の名前をよびなっ!!」
昨夜ライナと共に徹夜で仕込んだ団子を片手に、気炎を上げるフェリスの背後で、状況がよくわかっていないがとにかく頑張ると、かわいらしくおしとやかに拳を上げるティファニアと、半眼に成りながら新しい団子づくりに精を出すロングビル。
そんな彼女たちの後ろで、同じように団子を作っていたライナは、そっとため息をつきながら、
「なんでこうなった……」
と、思わずそうつぶやいてしまうのだった。
…†…†…………†…†…
事の起こりは数日前にフェリスが持ってきた、とある祭りの開催を知らせるポスターだった。
「んぁ? なんだこれ?」
ライナが首をかしげながらそのポスターに書かれている文字を読むと、
「『祭りだ集まれ! サウスゴータ主催! チキチキ・ライスハン大祭!!』……なんだよこれ?」
やっぱり意味が分からなかったのか、同じ疑問を繰り返すライナに、無表情の中に隠したバカにしきった表情を浮かべるという、フェリス特有の高等技能を披露しつつ、フェリスはライナに事の次第を説明する。
「これを読んでまだ分からんとは。貴様それでも団子教の信者か!?」
「いや、違うし」
「うむ。そうだったな。奴隷だったな。つい先日もお前の口座から、我が団子教へのミカジメ料が届いたし」
「ランクダウンしろって言ったわけじゃねぇよっ!? おまけにいつの間にか俺の金が好き勝手に使われてるぅうう!?」
てめぇ、フェリス! いったいいくら使いやがった!! と、血涙を流しながらフェリスに食って掛かるライナを、フェリスは片手で握った剣でいなしながら、事の次第を説明するっ!!
「つまりだ、『ダンゴダダーンゴダンゴ祭り』が開催されるということだっ!!」
「いや、一言もそんなこと書いてないじゃないか……」
うぅ。またフェリスに飢え死にさせられそうになる生活が来るのか……俺明日から一体どうすれば。と、どんより落ち込み部屋の隅で膝を抱えるライナや、そんな彼を必死に励まそうとするティファニアをしり目に、唯一まともに活動できるロングビルがフェリスに冷静にツッコミを入れた。
「む。なにをいう。米の祭りが開催されるということは、米の料理がふるまわれるということ。そして団子粉の原材料の筆頭として挙げられるのが、米を粉末状にした団子粉だ!」
「ふむふむ」
「だからこれは団子祭りなのだ!」
「ふむふむ……ん?」
話題が一気に飛んだような……。と、ちょっとついていけないロングビルに、ティファニアに慰められ何とか復活したライナが「団子関連の話で、こいつの戯言は気にしちゃいけない」フォローを入れつつ話をまとめる。
「つまりフェリスはこの祭りで優勝して、団子の存在をアルビオンに知らしめようってわけだな」
「うむ!」
わかっているではないかっ! と、若干嬉しそうにするフェリス。だが、ライナとしてはこの話は少々まずい。
何せライナ達はアルビオンが食用難になってもらわないと困る側なのだ。この食糧難のご時世に、わざわざ食糧系の祭り、それも
それの手伝いをするのは、任務内容と上司の性格上、非常にまずいことに思われた。
だが、
「いいんじゃないかい? 別に」
「え?」
フェリスの援護射撃は意外なところから入った。団子関係のフェリスの言動は真に受けてはいけないと学んだ、ロングビルだ。
「だって、まずいだろ? 何らかの条件で食糧難打破されちゃったら、絶対バーシェンの奴怒り狂うぞ?」
「なにいってんだい。餓死者が出かけている今の状態で、できる手なんてほとんどないよ。あんたもちょっと前に送った報告書で『もうそろそろ救援の手を』っておくったじゃないか。万一食糧難を打破できたとしても、そいつはせいぜい数か月寿命を延ばす程度。だったら、私らの正体がばれた時の保険として、今のうちに町の住人に恩を売っておくのも悪くはないてだ」
「あぁ、なるほど……」
ロングビルの提案に、ライナは納得のうなり声をあげ、
「まぁ、頑張るのはフェリスだし、バーシェンの奴に妙な脅迫状を送る理由を作らないって言うなら……頑張ればいいんじゃないか? 俺は参加しないけど」
予防線を張りつつ後退。絶対にかかわりあいにならないという姿勢を崩さないまま、フェリスから遠ざかっていく。
もとよりライナはめんどくさがり屋。祭り? 何それ美味しいの? を素で行く人間だ。任務外である祭りに関わる理由はどこにもない。というか、任務ですら本来はさぼりたいのに、定期的に送られてくるバーシェンの脅迫状のせいで、真剣に取り組むはめになっているのだ。ぶっちゃけ、関わらなくていいなら余計なことはしたくない。というか、もう今からでも部屋に帰って寝たい。
そうだ、そうしようっ! 俺は今からお昼寝央国へと旅立つんだ!
と、これからは団子関係で忙しくなるフェリスの妨害をうけず、悠々自適に昼寝ライフを満喫できると、取らぬ狸の皮算用にいそしむライナ。当然、本人もわかっている……これがただの現実逃避だということを。
そして、そんなライナに対し、予想通りにフェリスは鞘から剣を引き抜き、逃げようとするライナにフルスイングっ!!
「ぎゃぁあああああああああああああああああああああ!?」
キリモミしながら飛んでいくライナに、またかと言いたげに肩をすくめるロングビルと、最近ではすっかりこの光景に成れてしまったティファニアの苦笑いが、吹っ飛び地面に這いつくばったライナに向けられる。
「何を言っているライナ。売り子と料理人が足りない。お前も手伝え」
「ふ、ふざけんな! 俺には48時間御昼寝するという崇高な昼寝信者としての使命が……」
「ん?」
「なかったようなので、喜んで団子づくりに協力させていただきますっ!!」
首筋に当てられた鋭い剣に、滂沱の涙を流しながら無条件降伏するライナに、フェリスは満足げな笑みを浮かべて(はたから見ればただの無表情だが、ライナには笑っているのがわかった)、
「うむ! 眼鏡にティファニアに、色情狂! このアルビオンで、団子神様の覇を唱えるのだっ!!」
「はいはい」
「あ、あの……私街に出られない気が」
「うぅ……俺の、俺の貴重な昼寝時間が」
そんな仲間たちの頼もしい(?)声援を背中に受けながら、フェリスは意気揚々とサウスゴータに戻り、祭りの参加申請を行うのだった。
…†…†…………†…†…
そして祭り当日。ライナ達はサウスゴータの一角にできた、とある屋台にいた。ここが彼らの店。彼らの戦場だ。
清算用のカウンターと、カウンターに囲まれて隠された、団子とお茶の制作スペース。その隣には、フェリスがライナを強制労働させ作り上げた、紅い敷物を強いた長椅子がならべられ、その場でお団子を食べられるように配慮されている。
カウンターに隠された生産スペースでは、黄色いエプロンとナフキンを装備したロングビルとライナがお茶と団子を制作しており、カウンターの清算役はフェリス。店で食べる人に団子を渡すウェイターとして、ティファニアがそれぞれの持ち場についていた。
「いや、ティファニアと俺の配置には特に文句はないんだけど、フェリスとマチルダの配置はおかしくねェ?」
あいつに接客できるとは思えないんだけど……。と、もくもくと団子を作りながらそんなことを言うライナをしり目に、ここ数週間みっちりと団子に会う美味しいお茶の入れ方をフェリスに仕込まれたロングビルは、はらはらとした様子で人間と同じ耳をしている――ようにみえる、フェイスチェンジの魔法がかかったイヤリングをはめたティファニアを見ていた。
あのイヤリングは、つい最近フェリスが殲滅したアルビオンの盗賊団が持っていたもので、人相を隠したいときは何かと重宝している逸品だ。
とはいえ、あくまでその効果はティファニアの顔に幻影をかぶせて、耳の形を錯覚させているだけのこと。触られればばれるし、何かの拍子でイヤリングが取れたら、それこそ目も当てられない事態になる。
「そんなことどうでもいいよ! それよりもテファ……本当に大丈夫なんだろうね。あんなかわいい子を接客に置くなんて、何かあったらどうするんだい」
「お前も大概過保護だよな……」
むしろこの店で暴れるような奴は、そいつの方がかわいそうに思えるくらいの制裁を、フェリスにされると思うんだが……。と、ライナが今後起こるかもしれない惨劇に、思わず身を震わせたときだった。
「むっ! きさまはっ!!」
「げっ!?」
聞き覚えのある声が店の前で響き渡り、ライナは恐る恐るといった様子で調理スペースから立ち上がり、顔を出す。
そこにはやっぱりあいつがいた。
つややかな黒い髪に、少し吊り上った気の強そうな瞳。均整のとれた体つきと顔つきは、フェリスと為を張れるほどの美貌を誇っている
自称月影の女神――詐欺師、エステラ・フューレルの姿がそこにはあった!!
「ほほう、貴様もこの祭りに参加し懸賞金を狙っておるのか、三流美人」
「そういうおまえは、相変わらずいかがわしい商品を売りつけているのか、偽女神。今日は食の祭典、貴様のいかがわしい幸運の壺の出る幕はないぞ?」
「お前そんなもん売ってんのかよ……」
いまどき小学生でもひっかかりそうもない胡散臭すぎる商品の名前に、ライナは思わず半眼になる。それでも一定の利益を上げてしまうあたりに、エステラの優秀さと性質の悪さを感じるが。
「ふん、やはりその程度の美貌では、わらわの深謀遠慮も読み切れんようじゃな。貴様に言われずともそのくらいは理解しておるわ。わらわとて参加するに当たりきちんと料理は作ってきた」
そう言ってエステらが目の前の屋台に入る。どうやらあそこがエステらの店の様だった。
祭りの間あいつとずっと向かい合わせで商売するとかなんの悪い冗談だ。と、ライナが考えているうちに、屋台から何やらとってきたエステラは、それを店の前にある竿に掲げる。
そこには、
『幸運のチャーハン』とかかれていて……。
「壺が焼き飯に変わっただけだろうがぁああああああああ!」
「なっ! 焼き飯ではないチャーハンだっ!」
「どっちでもいいよっ!」
渾身のツッコミを入れるライナの隣で、フェリスは分と鼻を鳴らす。程度が知れたなと言いたげな態度だ。だが、そんなフェリスの態度を見ても、エステラの余裕は崩れない。
なぜなら、
「ふん、余裕でいられるのも今の内じゃぞ?」
「なに?」
「今回の祭りの優勝は、米の消費量によって問われる。そしてわらわには、その消費量を上げる秘策がある」
「どうせ、お前のいかがわしい教団の信者に、しこたま食べさせるんだろう?」
「…………………………」
ライナのあてずっぽうな発言に、エステラは思わずといった様子で黙り込んだ。どうやら図星だったらしい。
「くっ、腰ぎんちゃくのくせに生意気なっ!」
「あの、いい加減その呼び方はやめない」
「まったくもってその通りだ。前にも教えただろう? こいつの呼び名は《史上最悪の性犯罪者》《色情狂オブロード》《第六色情魔王》ライナ・リュートだと教えたはずだ」
「余計な装飾おおすぎねぇ!?」
相変わらずないことないこと吹きこみやがって……。そりゃおぼえられねぇよ!! と、思わず納得するライナに、エステラも一つ頷き、
「まったくじゃ。愚民の名前など覚える価値もない。わらわに覚えられるのはせいぜい《史上最悪の性犯罪者》《色情狂オブロード》《第六色情魔王》ぐらいじゃ」
「何でそこだけ覚えるんだよっ!? 名前だけ憶えろっ……ゲホゲホっ」
突っ込みすぎでむせるライナに、なにやら愉悦を覚えるような笑みを浮かべるフェリスとエステラ。もしかして俺遊ばれている? と、いまさらながら気付いたライナの肩に、諦めなと言いたげに首を振ったロングビルの手が置かれた。
そんな彼女の思いやり溢れた最後通告に、ライナが思わずうなだれた瞬間だった。
「あら、ライナさんじゃないですかっ! あなたもこの祭りに参加されるのっ!」
「っ!?」
エステラと同じくらい会いたくなかった人物の声に、ライナは油の切れたブリキ人形のように、声の聞こえた方へと振り返る。
そこには、優雅に日傘をさしてこちらに向かって歩いてくる、桃色のフリフリ服を着た、どこからどう見ても可愛い女の子にしか見えない――
「お久しぶりですわ、ライナお姉様! こんなところで会うなんて奇遇ですねッ!」
「うわぁ……お前までくるのかよ」
その人物の名前は、エリーナ・イェーガー・ド・コーンウォール――正式名称、エレン・イェーガー・ド・コーンウォール。どこからどう見ても可憐な少女である
ちょっと前にとある事件に巻き込まれたライナ達が懲らしめた人物で、現在はとある村の村長としてノンビリとした生活を送っているはずなのだが……。
「なんできてんの?」
「
「今すごいこと言わなかったかこいつっ!?」
道理でやけに健康体に見えるわけだよっ!? と、ライナは本気で戦慄する。
あの敷設型魔法陣が100もあれば、今のアルビオンの食糧難はあっさり解決しかねない。だが、
「ご安心をライナお姉さま。わたくし、ライナお姉さまと敵対するつもりはありませんの……いろんな意味で」
「その、いろんなという言葉に含まれている事情を事細かにききたい気分だけど、ショックうけそうだからいいや……」
「その方がよろしいかと。なにより私一応旧アルビオン王家側でしたから。反乱鎮圧よりも重要なことがあったため、反乱その他もろもろはいろいろ流しましたが、先代国王やウェールズ様にはいろいろとお世話になりました。なので、積極的にレコンキスタのためになるようなことはしたくないんですのよ」
「いやもう、反乱鎮圧に出なかった時点で、あんまり信用できねぇよ」
そう言った外の事情にかかわりあいに成りたくないならわかるけど……。と、長年男を女にするために心血を注いでいた、変態
少し前までは、店全体を隠すように黒い覆いをかぶせていたその屋台が、突如としてその屋台の覆いをとりさり、店の全容をあらわにしたのだ。
《気まぐれ女の子(仮)のパエリア!!》そんな料理名が書かれているその屋台では、ほんの少し前にであった、女――に見える男たちが集っていて、
「エリーナ様っ! おまちしていました~」
「ライナお姉さまもお久しぶり~!」
「きゃ~、ライナお姉さまぁ~!!」
「………………………………」
次々と歓声を上げながら、こちらに手を振ってくる男の娘たちに、ライナは思わず顔を引きつらせる。
その後ろでは「お姉さま?」と不思議そうに首を傾げるティファニアに「しっ、深くは聴いてやるな!」とロングビルが諭しているが、そんな事実は、認識した瞬間ライナの精神が限界を迎えそうなので、シャットアウトしておく。
そうこうしているうちに、なにやらド派手な破棄を纏っている連中が、ライナ達の屋台の前を通り過ぎ、
「むっ! おまえたちは」
「ふ、やはりあんたもきたか……団子狂いのお嬢ちゃん」
「だがしかし、この戦いは俺たちが頂く」
「サウスゴータで覇権を握っているのは、我等《サウスゴータ食料品店連合》だ! 外様の連中に好き勝手させr……」
何やらフェリスと熱い視線を交わすこいつらからも、隠しきれない変態の匂いが漂ってきて……。
「もうやだ、こんな祭り……」
いますぐウェストウッドの森に帰りたい。と、頭を抱えるライナだったが、時は無情にも過ぎ去っていき、
『では、《サウスゴータ主催! チキチキ・ライス
『おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』
元気のいい最高議長の呼び声と共に、地獄の釜の蓋が今開いた。