希望と絶望を司る   作:虹好き

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どうも虹好きです。

遅れるはずだったんですけどね……随分とスムーズに進みまして。

タイトル通り戦闘なんですけど、序盤からやたらと飛ばしていきます。

それでは本編お楽しみください。


初陣

 修行は無事に終わり、今日はライザーとのレーティングゲームで、リアスの人生をかけた一世一代の大勝負の日だ。ゲームまでの残り時間は2時間を切り、イッセーは部室に行くための準備をしていた。レーティングゲームは基本的に、その眷属の正装で行われるらしく、リアスには好きな服装で良いと言われたが、イッセーは学園の制服に身を包んだ。

 

「ドライグ、解放された力はどれくらいか分かるか?」

 

 修行の最終日に、イッセーはリアスから施された封印をいくつか解いてもらっていた。全盛期の頃から比べると、まだ足りない感じもするが、ある程度力は戻った気がしている。だが、ドライグからの返答は少しばかり重いものだった。

 

『……正直、まだ『禁手化』は難しいだろうな。それでも、かなりの力は戻っているはずだ。あと一押しというところだが、今回は間に合いそうにない』

「そうか。まぁ、仕方ないかな」

『俺だけならば今の状態でも『禁手化』できるんだがな。いかんせん、他の2つの影響が大きいようだ』

 

 そんな会話の最中、扉をノックする音が部屋に響いた。

 

「イッセーさん。お邪魔してもよろしいですか?」

「アーシア?どうぞ」

 

 扉の先にいたのはシスターの格好をしたアーシアだった。アーシアはこの格好で戦闘に臨むようだ。部屋に招き入れ、2人でベットに腰掛ける。

 

「突然すいません」

「別に大丈夫だよ。怖いんだろ?戦いが」

「はい……」

 

 アーシアの身体が震えていることに気づいていたイッセーは、なるべく優しげに声をかけ、頭を撫でた。いままで戦いとは無縁の生活をしていたアーシアだ。初めての戦いに多大な緊張と不安を抱えている。その不安を少しでも拭えればと、イッセーは少しの間、アーシアの頭を撫で続けた。

 

 夕乃たちも理解しているのだろう。扉の向こうから気配がするが、いつものように入らず、空気を壊さないようにしていた。

 

 数分程度だが、アーシアの震えは止まり、しっかりとした表情でベットから立ち上がる。

 

「ありがとうございました。そろそろですよね?」

「あぁ。行こうか」

 

 笑顔で、されど静かに闘志を燃やしつつアーシアとともに部屋を出ると、キンジと切彦、そして夕乃が待っていた。2名が若干不機嫌そうだが気にしない。

 

 玄関まで行くと、静雄と岡部がおり、ジョーカーはリビングから顔を覗かせていた。

 

「全力でやって来い」

「修行でさらに一皮剥けているようだからな。結果を楽しみにしていよう」

「折角修行したんやし、一泡吹かしてやるんやで」

「頑張ってきます」

 

 3人からの激励。これは負けられないと一層気合を入れる。レーティングゲーム開始まで、残り1時間半を切った。

 

 

 

 オカルト研究部の部室内では、それぞれがそれぞれのやり方でリラックスしていた。結菜と子猫は全力装備で本気の雰囲気を漂わせている。

 

 メンバーだが眷属ではないため、ゲームに不参加のキンジと夕乃と切彦は、グレイフィアから観客席の提供がされ、ゲームを観戦するらしい。

 

(もう1人の『僧侶』はやはり出られないのか)

 

 修行の最終日、イッセーはリアスからもう1人の『僧侶』の存在を聞いていた。この旧校舎に厳重な封印が施されている場所があるのだが、その中にいるらしい。何でも、能力は強力だが制御が不安定のため、能力が暴走するとか。この戦いにも参加できないとなると、イッセー並に危険な存在なのかもしれない。

 

 刻々と時間は過ぎていき、ゲーム開始10分前になった時、部室内の転移陣が光りだし、グレイフィアが現れた。

 

「みなさま、準備はお済みになられましたか?開始10分前です」

 

 全員が立ち上がり、それを確認したグレイフィアは説明を始める。

 

「開始時間になりましたら、みなさまを別の異空間へと転送いたします。戦闘用に作られたフィールドなので、どんなに暴れられても大丈夫です」

 

 その言葉に、少なからず安堵するイッセー。もしこれが街中だったりしたら、イッセーは周囲を考慮し、全力で戦えないからだ。

 

 イッセーが本気を出せば、そこら辺の建物など一瞬で消し飛ばすことが可能だろう。『赤龍帝の籠手』の力があればその範囲はさらに広がるため、イッセーの存在はなかなか危険な立ち位置にいるのだ。

 

 だが、異空間で好きに暴れられるとなると、力の出し惜しみをする必要がない。無論、殺さないよう心掛けるが。

 

「今回の『レーティングゲーム』は両家のみなさまも他の場所から中継でフィールドでの戦闘をご覧になられます」

 

 今回の戦いは非公式の、それも御家同士のいざこざで行われるもののため、これも当たり前だろう。

 

「また、魔王であるサーゼクス・ルシファー様もご覧になられます」

 

 リアスの眉が僅かに動いた。

 

「そう、お兄様も来るのね」

 

 一瞬の沈黙。それは仕方が無い。なんせ、いきなり魔王をお兄様と自分の主が言い始めたのだから。悪魔に転生したばかりのイッセーたちはその事実を知らない、というか知らされていなかった。声に出して驚きこそしなかったが、イッセーたちは時が止まったように動かなくなってしまった。

 

(おいおいおいおい、魔王様ってあれか?簡単に言えば悪魔の長だろ?そんな奴を兄に持った妹の眷属になっちまったのかイッセーは)

(……魔王って強いんですか?)

(リアスさんって実は貴族の中でもかなり上の爵位を持つ御令嬢だったんですね)

(えっと……これは喜べば良いのでしょうか……)

(そりゃあ部長と婚約をしたがる輩が殺到するわけだ)

 

 少しばかり思考が遠くに行きそうになったが、今は目の前の勝負に集中するため、多少無理して思考を変える。

 

「イッセー君たちは知らないよね?部長のお兄さんが魔王様っていうのは」

「まぁ、知らなかったけど、それは後からいくらでも聞けるからいいよ。今は先にするべきことがあるし」

「真面目なイッセー君らしいね」

 

 集中しているため、少々淡白な反応になってしまったかと思ったが、結菜は気にせず微笑んでいた。こういうところが男女問わずに結菜が人気な理由の一つだろう。

 

 軽い雑談を交えているうちに、時間はどんどん過ぎていき開始時間となった。グレイフィアが全員に声をかける。

 

「では、時間となりましたのでみなさまを戦闘フィールドへ案内いたします」

 

 部室内を眩い光が包み込み、イッセーたちは異空間へと転移した。

 

 

 

 眼を開けると、そこには先ほどと何も変わらない部室が広がっており、周囲を見回すとリアスたちも同じく部室にいた。キンジたちの姿はないため、この空間が異空間に創られた戦闘フィールドなのだろう。窓に向かい、外を見てみると、空が白く変色している以外は駒王学園の校内そのものだった。

 

 そこに、校内放送からグレイフィアのアナウンスが響く。

 

『みなさま、この度グレモリー家、フェニックス家による『レーティングゲーム』での審判役を担うこととなりました。グレモリー家の使用人、グレイフィアでございます』

 

 そこからそれぞれの陣営について説明された。リアスは旧校舎のオカルト研究部部室、ライザーは新校舎の生徒会室が本陣であり、『兵士』が『プロモーション』を行う際は相手の本陣の周辺まで赴けとのこと。

 

 一通りの説明が終わった後、リアスから小型通信機を渡され、そのタイミングでゲームスタートの合図であろう学校の鐘が鳴り響いた。

 

『ゲームスタートです。なお、制限時間は人間界の夜明けまでとさせていただきます』

 

 リアスの人生を賭けたレーティングゲームが始まる。

 

 

 

「さて、まずはライザーの『兵士』を撃破しないといけないわね」

「全員に『プロモーション』されると厄介ですしね」

 

 部室のテーブルの上に学園内の地図を広げ、要所に印をつけていくリアス。『レーティングゲーム』はチェス同様長時間をかけて行われることが常だ。短期決戦はほとんどなく、互いに策略を練って兵をぶつけ合う。

 

 ライザー側もそう簡単には動かないだろうと、リアスは少し策に時間をかけ、じっくりと戦略を練っていた。

 

 グループを分け、結菜を森へ、イッセーと子猫を体育館へ、朱乃は上空へと細かく指示を出しながら言い渡していく。リアス自身はアーシアと本陣に残り、徹底防御。この中で一番先頭に出るのはイッセーと子猫となる。

 

 詳しく作戦を説明されたイッセーと子猫は大きく頷き、それを確認したリアスは時間を見てみる。

 

 開始から約15分。ライザー側も動き始めていると考えていいはずだ。

 

 初陣を華々しく飾るため、みんなに喝を入れるように声を張り上げて言う。

 

「よし、みんな手筈通りにお願いね。さぁ、私たちの力でライザーを消しとばしてあげましょう!!」

「「「「「はい!」」」」」

 

 

 

 キンジたちはグレイフィアに用意された特別なVIP席のモニターからリアスとライザーのゲームの様子を見守っていたが、両陣が動き出したところでキンジはリアスの作戦を軽く考え、感心していた。

 

(あの配置だと、イッセーと子猫が先陣を切り、初手から重戦力を投入したと相手に思わせることができる。だが、多分本命は朱乃先輩だな)

 

 切彦も同じことを考えていたが、同時に、そこまでする必要があるかとも考えていた。

 

 ライザーは『兵士』を3人、『戦車』を1人体育館に設置している。一箇所にそこそこの人数だが、イッセーと子猫の腕なら、ライザーの眷属相手なら複数人相手だろうと倒し切ることが可能だと思ったからだ。

 

(……相手の裏をかく手を考えているんでしょうね)

 

 夕乃は静かにモニターを見据えており、その中で要となるであろう人物の動きを俊敏に追っていた。

 

 ……主に1人を徹底して見ているようにもみえるが。

 

 

 

 イッセーと子猫は体育館の裏口から忍び込むように入っている最中だった。

 

「本当に1人で任せて大丈夫だったのか?」

「……結菜先輩ですか?朱乃先輩が幻術をかけてくれましたし、ライザー側も投入するとすれば『兵士』だけだと思うので、結菜先輩の力なら無傷で倒せます」

「なら安心だ。おっと、分かりやすく侵入したとはいえ、全員に気づかれるなんてな」

 

 体育館内にいるのは4人。意識が全てイッセーと子猫に向いているため、コソコソ隠れずに堂々と出て行く。

 

 そこにいたのは チャイナドレスの女性と小柄な双子、棍を構えた少女だ。チャイナドレスの女性が『戦車』でそれ以外が『兵士』。棍を構えながらイッセーに鋭い視線をぶつける少女はライザーとリアスの会合でイッセーに襲いかかり、まともに相手をされなかったミラという子であった。

 

「……イッセー先輩は『兵士』をお願いします。3対1で少し相手が多いですが……」

「気にしなくて良いよ」

 

 子猫の笑みを返し、それで安心させながら軽く腕を回しながら『兵士』である3人の前に立つ。

 

 子猫にはチャイナドレスの女性が中国拳法らしきもので襲いかかっており、子猫は落ち着いてそれを捌いていた。

 

(あれなら大丈夫だな)

 

 余所見をしながら子猫の様子に安堵しているイッセーに、ミラが怒号をぶつける。

 

「余所見とは余裕の表れですか!?この前のようにはいきません!!」

 

 そう言ってイッセーに突進を仕掛けてくるが、正直すぎる攻撃にイッセーは半身になるだけで躱してしまい、ガラ空きのおでこにデコピンをして隙をつくる。

 

「ふゆっ!?」

 

 変な声を上げながら軽く仰け反るミラの左右から、挟み込むように双子がチェンソーを構えて切り掛かってきた。

 

「1人でダメなら!」

「2人ならどうかしら!」

 

 首と足を狙って真横に綺麗に振られるチェンソー。このゲームは殺し御法度のはずと、今はどうでもいい思考を巡らせながらーー首に迫る刃は拳で、足に迫る刃は足裏でそれぞれ刃の側面を正確に打ち、軌道をズラすついでに双子がバランスを崩した瞬間を狙ってチェンソーを破壊した。

 

 そして、なるべく優しく双子の鳩尾に拳打を加え、すぐには動けない程度のダメージを与える。刹那の攻防に、ミラは今自分が見た現実を否定したくなった。

 

(こんなのに勝てるわけないじゃない!私たちの眷属の中でこの男に勝る実力者はライザー様くらいしかーー)

 

 その思考が最後まで続くことはなかった。イッセーが最低限の動きでミラの懐に踏み込み、蹴りを放ち、ミラは両腕をクロスして防御したからだ。思考する時間すらイッセーは与えない。『神器』すら使わずに、生身の身体で3人を圧倒する。

 

 子猫もチャイナドレスの女性を大きく後方に吹き飛ばしたのを見て、イッセーは素早く体育館の中央口まで走り出した。子猫もそれについていく。端から見ても全力で戦線を離脱しようとしていた。4対2でも十分な戦い振りだったのにもかかわらずだ。

 

 突然の行動に呆気にとられるライザー眷属だが、その理由を察する頃には全てが遅かった。イッセーと子猫が全力で中央口から外へ飛び出したのとほぼ同時に、強大な雷の柱が体育館を跡形もなく破壊したからだ。大きな破砕音が辺りを支配する。

 

『ライザー・フェニックス様の『兵士』3名、『戦車』1名戦闘不能!』

 

 グレイフィアの放送がフィールド中に響き、それを聞いた朱乃が一言。

 

「撃破」

 

 かなりの大技なのだろう。肩で息をしている様子から、連発はできない。この破壊規模だと魔力の残量的に撃てて後1、2回というところか。以前結菜から聞いた、"雷の巫女"という二つ名は伊達じゃない。

 

『みんな聞こえる?朱乃が派手なのを決めてくれたわ。でも、魔力の消耗が激しいから連発は不可能よ。朱乃の魔力が回復ししだい、私たちも出るからそれまで各自でお願いね』

 

 通信機からリアスの声が聞こえ、子猫と一緒に頷く。初撃で4人を撃破したのは大きいが、相変わらず人数負けしているため油断大敵だ。

 

 そのままいざ子猫と次のポイントまで行こうとした時、イッセーは悪寒を感じ、急いで子猫を抱き締めその場に屈んだ。

 

「……先輩!?ーーっ!」

 

 いきなりの行為に驚いた子猫だが、直後襲い掛かる爆撃に思わず舌打ちをしそうになった。子猫には一切攻撃が通っていない。イッセーがその背で全て受け止めているからだ。

 

 連続で聞こえる爆発音。

 

「くっ……」

 

 いくら崩月で鍛えているとはいえ、こうも強力な攻撃を連発されればイッセーでも体力は勢いよく減ってしまう。顔を顰め、苦悶の声を上げるが、それでも子猫だけには攻撃が届かないように自分の身体で最後まで防ぎきった。

 

 砂埃が舞い散り、攻撃が止んだのを確認してからゆっくりと子猫を離すイッセー。イッセーの制服は背中の部分がほぼ消え、傷だらけとなっていた。

 

「……イッセー先輩」

「俺は大丈夫だ。どこか怪我は?」

「……先輩のお蔭でどこも。でも、先輩が……」

 

 自分のせいで傷ついたイッセーに泣きそうな表情をする子猫。あの爆撃は一つ一つが確実にこちらに大ダメージを与える威力であり、倍加も使わずに生身で受け続けたイッセーは、今こうして無事なだけでも奇跡に近いのだ。かく言うイッセーも、気丈に微笑んではいるが、大幅に体力を削られたことに変わりはなかった。

 

「そんな表情しないでくれ子猫ちゃん。まだ俺は戦闘不能じゃないだろ?」

「……はい」

 

 優しく子猫の頭を撫でながらそう言うと、子猫もまだ涙目だが頷いてくれた。

 

 イッセーは上空からの気配に警戒しながら立ち上がる。少しフラつくが、まだ倒れるほどではない。相手は砂埃が収まるのを待っているのか、魔力を溜めたまま動かない。

 

『ライザー・フェニックス様の『兵士』3名戦闘不能!』

 

 そこに響くグレイフィアの放送。どうやら、結菜が倒したらしい。それを聞きながら、イッセーは自分の行動を考えた。

 

(さっきの威力から考えると、相手の『女王』が攻めてきたってところか……序盤から戦場を荒らしてくれる。できれば後半まで温存しておきたかったけど、やるぞドライグ)

 

『Boost!!』

 

『赤龍帝の籠手』を出現させ、倍加を始める。子猫もイッセーの隣で上空にいる相手を睨んでいた。

 

 砂埃が消え、上空で佇んでいたのはフードを被り、魔導師の格好をした女性。ライザーの『女王』だった。その瞳は面白そうな物を見つめるもので、不敵に笑いながらイッセーと子猫に声をかける。

 

「2人とも撃破する気で放ったつもりだったのだけど、あなたなかなかやるわね『兵士』の坊や」

「あんたの爆発もかなり効いたよライザーの『女王』」

 

 イッセーは首を鳴らしながら応え、こちらに向かってきている朱乃を見つけると子猫に声をかけた。

 

「子猫ちゃん、あいつは俺が止めるから朱乃さんと次のポイントに行ってくれ。あの人もまだ魔力が回復しきっていないから時間を稼ぐよ」

「……先輩は、大丈夫ですよね?」

「あぁ、ちゃんと後から追いつくよ」

 

 その言葉に子猫は強く頷き、朱乃の方へと走り去る。ライザーの『女王』はそれをただ見送るのみ。攻撃をしようにも、その瞬間にイッセーから瀕死の一撃を与えられそうで、そちらを警戒したからだ。それほどのプレッシャーをイッセーは全身から放っている。それにーー

 

『Boost!!』

 

 ーー今ので3度目の倍加。自慢の爆撃を生身で受け切った存在をこれ以上強化させるなと、ライザーの『女王』の第六感が全力で頭の中に危険信号を流しているからでもあった。

 

(やはり、この坊やが一番の強敵ね。ライザー様のためにも、ここで散ってもらうわ!!)

 

 頬に一筋の汗を垂らしながら、爆撃の準備をするライザーの『女王』。朱乃は助けに入ろうとしたが、イッセーの雰囲気を感じ、子猫とともに次のポイントまで行った。

 

「さて、やる前に名乗ろうかしら」

「名乗る程度の実力はあると認められたってことで喜ぶべき?」

「そうね。私の名はライザー・フェニックス眷属の『女王』ユーベルーナ」

「リアス・グレモリー眷属の『兵士』兵藤一誠」

 

『Boost!!』

 

 ーー4度目の倍加。イッセーは眼を瞑り、軽く息を吐く。

 

(行くぞ、ドライグ)

 

『Explosion!!』

 

 イッセーに呼応するように輝く籠手の宝玉。音声とともに全身に流れる4度分の倍加の力。力の上がりようを目の前で見たユーベルーナは自分の腕が震えていることに気づいた。

 

(これは、恐怖?まさか、ここまでとはね)

 

 紅いオーラが身体から溢れるイッセー。上空のユーベルーナを真っ直ぐに見据え、地面を踏み締める。

 

「行くぞ」

 

 刹那、イッセーの姿が消え、地面に小さなクレーターを作りながら一直線にユーベルーナへと突っ込んだ。速さに驚きこそしたが、それでも流石はライザーの『女王』。油断せずにイッセーへと質量を調節した大きめの爆撃を放った。

 

 空中にてぶつかる拳と爆発の嵐。その余波は駒王学園のレプリカのみならず、異空間全体まで及び、運動場でライザーの『騎士』と戦闘していた結菜、そこに向かっている最中の子猫と朱乃、本部で動き出そうとしていたリアスとアーシアのところにも強めの風圧が来た。

 

「イッセー君、頑張ってるんだね」

 

「……朱乃先輩、急ぎましょう」

「えぇ、そうですわね」

 

「部長さん、これは……」

「多分、イッセーでしょうね。……無理はしないでほしいわ」

 

 その後も連続で爆発音が鳴り響いていた。イッセーは地上でユーベルーナの爆撃をひたすら躱し続けていた。隙を見つけては飛び込んで攻撃しようとするが、ユーベルーナは上空から防御を重点的に固め、イッセーを最大まで警戒したヒットアンドアウェイな戦法を使っていた。

 

 イッセーが地上にいる時は弾幕を張り、飛び込んできたなら巨大な爆撃で地上に戻す。『禁手化』しなければ空を飛べないイッセーにとって、上空から攻撃してくるユーベルーナの戦法は苦手な分類の一つだ。ユーベルーナは持久戦を狙っているのだろう。リアスの眷属で一番の火力を持つイッセーを釘付けにし、その間に他の眷属を倒すつもりなのかもしれない。

 

 何より、このままでは倍加の効果が切れてしまう。

 

(あれをやるか)

 

 爆撃の弾幕を躱しながら、イッセーは右腕に魔力の塊を作り出す。このままではジリ貧。確実な隙を狙って強力な一撃を放つのだ。その隙を作るために一番簡単な近道は、身体を囮に使うこと。イッセーはその場で立ち止まった。

 

 弾幕を躱していたイッセーがいきなり立ち止まったのを見て、ユーベルーナは嫌な予感とこの好機を逃さないという二つの考えが現れ、玉砕覚悟で極大の魔力を溜める。

 

 魔力の塊を出現させた右腕を弓のように引き、左腕は標準を合わせるように真っ直ぐとユーベルーナへと伸ばす。右足を軸に、大地を砕く勢いで左足を大きく踏み込み、力を溜めに溜めた右腕で魔力の塊を撃ち抜いた。

 

「『天龍の咆哮(ドラゴン・ショット)』」

「『爆破魔導球(ディオス・ジャッジメント)』!!」

 

 一直線に空を翔ける4倍されたイッセーの魔力圧縮砲。対するユーベルーナは、彼女が使える中で最強の魔術。二つの膨大な力の奔流がぶつかり合い、異空間の空を2つに割った。




ご感想や誤字脱字等のご指摘、お待ちしております。

次こそ遅れるかもしれません。……勉強しなくては。

それでは、また次回をお楽しみに。
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