希望と絶望を司る   作:虹好き

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どうも虹好きです。

試練も無事乗り越えました。

これからも頑張ります。

では、本編をどうぞ。


お互いの意地

 結菜はライザーの『兵士』3人を倒した後、『騎士』の特性を生かしたスピードでイッセーたちとの合流地点であるグランドに着いていた。目の前にはライザーの『騎士』、『僧侶』、『戦車』が1人ずつ配置されており、1人の結菜は戦力的に大きな差が生じている。

 

(それも仕方ないよね。重要ポイントである新校舎への侵入ルートは大きく分けて2つに絞られ、その中の一つ、体育館を破壊されたわけだから、戦力をもう一つのポイントに集中させるのは普通のこと)

 

 相手は三方から結菜を凝視し、臨戦態勢をとっていた。3対1だと圧倒的に不利。本来ならばイッセーと子猫が合流する予定だったのだが、流石は戦場。予想だにしないイレギュラーな事態は多々起こるようだ。

 

 お互いに緊張感が伴った睨み合いが続く。突如として、ライザーの『騎士』が『僧侶』と『戦車』を手で制し、数歩前へと出てきた。創造した魔剣を身構え、いつでも一歩を踏み込めるように準備をする。

 

「私はライザー様に仕える『騎士』のカーラマイン!リアス・グレモリーの『騎士』よ、こそこそと腹探り合いをするのには飽きてきたところだ。いざ尋常に剣を交えようではないか」

 

 結菜は素早く他に視線を送った。『僧侶』も『戦車』も肩を竦めながら嘆息し、『騎士』の一騎討ちを許すかのように後方に下がった。要するに、いつものことなのだろう。

 

(情熱に熱い人なんだね。でも、真っ直ぐな人は嫌いじゃないよ)

 

 甲冑に身を包んだ女性はさながら中世の西洋騎士を彷彿とさせる。構える姿は長年愚直に剣の道を歩み続けた者のそれだ。

 

「ボクはリアス・グレモリー眷属の『騎士』、木場結菜。一騎討ちの申し出、快く受けさせてもらうよ」

「良い闘志だ。お前のような『騎士』がリアス・グレモリー眷属に居て嬉しいぞ。久方ぶりに本気を出せそうだッ!!」

 

 言葉とともに大きく飛び込んでくるカーラマイン。彼女の剣は西洋の大剣。剣圧を受け流すためにカーラマインに合わせて魔剣をあて、ベクトルに乗り、受け流す要領でカーラマインの力を相乗した回転斬りを見舞った。

 

「ッ!」

 

 結菜の狙いを寸前で察したカーラマインは咄嗟に大剣で防御したが、己の力に結菜の全力の力がプラスされた一撃はカーラマインを楽々数十メートル吹き飛ばす。

 

「ハァッ!!」

 

 カーラマインが結菜の一撃で体勢を崩しているのを見逃さず、数十メートルの間合いを数歩で詰め、気合いの籠った一閃を放った。

 

「ッ!この程度でやれると思うなよ!!」

 

 崩した体勢のまま、無理矢理回転し、結菜の一閃に大剣での薙ぎ払いをぶつける。甲高い音と火花が散り、ぶつかり合った衝撃で、互いに後方へと地面を抉りながら下がる。たった二合しか打ち合っていないのに、カーラマインは肩で息をしていた。それだけ結菜との相対は集中力が必要ということ。

 

 再び大剣を構え、間合いを測るカーラマイン。結菜も構えるがーーそこで体育館側から大量の爆発音が聞こえた。イッセーたちが合流に遅れた理由もこれが原因だろう。敵から奇襲をかけられたのだ。

 

(ライザー側の『女王』かな。『爆弾女王』と呼ばれるくらいだから、今の戦力を考えると、戦っているのはイッセー君だ)

 

 奇襲に対応できたのはイッセーの高い危険察知能力故だと考え、カーラマインへの警戒を怠らずに体育館に視線を送る。

 

「頑張ってるんだね、イッセー君」

 

 その直後、駒王学園のレプリカの空中で大きな二つの力がぶつかり合った。

 

 

 

 拮抗したのはほんの一瞬だけだった。4倍されたイッセーの『天龍の咆哮』は、ユーベルーナの『爆破魔導球』を容易く貫き、威力を殺さぬままユーベルーナへと迫る。

 

 己の集大成とも言える最強の魔術を一瞬で突破されたユーベルーナは苦虫を噛み潰したような顔をしながらも、全力で防御障壁を幾重にも張り巡らせた。急激な、それでいて強力な魔術を多々使用したために、脳が焼き切れるような感覚に襲われるが、それだけやってもイッセーの一撃を止められるとは思えないため、身体強化の魔術を使ってその場からの離脱を図る。

 

(やられたわ。でも、私の仕事はまだ終わってないのよ……!)

 

 最後の力を振り絞り、自分の側面に魔術障壁を展開。それを足場に、全力で回避する。『天龍の咆哮』はユーベルーナ自慢の防御障壁を紙切れの如く破砕し、全力で回避を行なったのにも拘らず、ユーベルーナは片足を失った。激痛に眉を顰め、懐から何やら液体の入った瓶を出すと、反撃のため一息に煽った。

 

 イッセーは拳を振り切ったまま空を見上げていた。爆煙が空中を覆い、ユーベルーナの姿は見えない。しかし、直撃はしていないだろう。もし直撃したならば、即座にグレイフィアからの放送が入るはずだからだ。それほどの威力を『天龍の咆哮』は秘めていた。

 

(だが、躱しきれてもいないはず……。体力は大幅に削ったと考えていいな。気配も力の余波に紛れて感じない。あれを喰らったんだ。遠からず戦闘不能になるだろう。とりあえず、合流しに行くか。通信機も壊れちゃったし、とりあえず状況を確認したい)

 

『赤龍帝の籠手』の力も無くなり、多量の魔力を消費したことによる軽い倦怠感を覚えながら、イッセーはグランドへと走ろうとした時、イッセーへと向かってくる複数の気配を感じた。

 

 獣の耳を生やした2人の『兵士』だ。思わず訝しげな表情を見せるイッセー。今頃イッセーに『兵士』を向かわせたところで、時間稼ぎにもならない。他に敵がいないということは結菜たちと交戦中と考えられる。

 

「ねぇねぇそこの『兵士』の人ー」

「なんだ?」

 

 イッセーに声がかかり、敵意が混じった返しをしてしまった。それだけで軽く怯むライザー側の『兵士』の1人。萎縮してしまったため、仕方なくもう1人が話し始めた。

 

「ライザー様がね、あなたたちの『王』と一騎討ちをするんだってー」

 

 その言葉にイッセーは絶句する。『王』同士の戦いならば、リアスの方が圧倒的に不利。勝てる見込みは皆無だ。だが、幸い、イッセーの目の前の『兵士』2人は戦闘力がそれほど高いとは言えない。すぐに倒せば今からでも間に合うだろう。

 

 すぐに決めるため、一歩を踏み込もうとしたその瞬間、空中から強力な魔力を感じ、咄嗟に腕で上半身を覆った。

 

 次の瞬間、圧倒的な破壊力を持つ爆撃がイッセーを含む後方約数メートルを爆破させ、イッセーはその爆風で大きく吹き飛ばされる。

 

 運悪く倍加も効果を切らしていたため、爆破の衝撃を生身で受けたイッセーは、制服のほとんどが爆風で爆ぜ飛び、身体中が煤だらけ。おまけに内臓にまで響いたらしく、その場で吐血をしてしまうほど。

 

(まさか、『天龍の咆哮』を受けてなおこれほどの魔力を扱えるとは…どんな手品を使ったんだ?)

 

 空中で優雅に佇むのはところどころ服が破れボロボロになっているものの、外見は無傷に等しいユーベルーナ。イッセーの一撃で失ったはずの足は何事もなかったかのように揃っていた。その余裕は口元にも現れ、口角を上げ、次の爆撃の準備をしている。

 

「リアス・グレモリー眷属の中で一番脅威となり得るのはあなた。私たちの役目は『王』同士の決着が着くまであなたの足止めをすること。倍加の効果は切れたわよね?悪いけど、休ませる気はないのよ!」

 

 ユーベルーナが爆撃を、その間を『兵士』の2人が掻い潜り、イッセーに拳打を放つ。イッセーは舌打ちをしながら防御に徹するしかない。

 

(……『兵士』2人だけならば倍加しながら凌げるけど、そこに『女王』が加わると話は変わる。いちいちリセットされてちゃいつまでも倍加の力を使えない。かと言って、この3人のコンビネーションもなかなか手強いな。上手く反撃に移れないなんて)

 

 一撃よりも手数で勝負するタイプらしい2人の『兵士』の猛攻を防ぎきり、ここぞとばかりにカウンターを放とうとするが、まるでそれを待っていたかのようにユーベルーナの爆撃がイッセーを襲い、決して軽くはないダメージが蓄積されていた。

 

 しかし、どんな戦略にもいつかは穴があく。一瞬の隙も見せない二段構えも、その動きは俊敏かつ恐るべき集中力が必要となり、呼吸一つが敗北へと直結するのだ。つまり、ほぼ無酸素状態で全力の動きをしていた『兵士』2人は、いくら獣人といえどその体力は無限ではなく、そして魔術師として有能なユーベルーナも、バテて急に動きが鈍った仲間に動きは合わせられない。反面イッセーは、致命的な攻撃にこそ集中するが、3人揃っての猛攻よりも、夕乃1人の方が手こずったため意外と余裕がある。

 

 そして、2人のテンポが一気に崩れたのを見計らい、大きく足払いを放った。

 

「「ッ!?」」

 

 軽い衝撃。しかし、多少の重心移動の乱れでバランスは崩れる。2人して驚愕の表情を浮かべるが、既にイッセーの意識は上空のユーベルーナへと変わっていた。今の状況で爆撃を仕掛けられると、ユーベルーナの攻撃範囲的に、『兵士』2人が巻き込まれて『犠牲』となる。それでも、ユーベルーナは爆撃を放ってきた。予想通りに。範囲はイッセーと『兵士』2人を含み、それに簡単に逃げられないよう、範囲は約10メートルほど膨らみそうな爆撃だ。

 

(ここだ!)

 

『Boost!!』

 

(来い、ドライグ!)

 

『Explosion!!』

 

 イッセーは足払いの姿勢からたった2倍の倍加をして、そのままクラウチングスタートの体勢へと持って行き、全力で範囲外まで走る。2倍の身体能力、それもイッセーならば、たった数歩でその範囲から出ることができ、出たと同時に地面を殴打。粉砕した瓦礫の一つを持ち、ユーベルーナへと投げつける。それと同時に爆撃が地面に衝突し、爆発した。『兵士』の2人はそれに呑み込まれ、悲鳴を上げる暇さえ与えられずに消え、範囲外に出たイッセーにまでその熱風は襲いかかってくる。イッセーの苦し紛れの反撃は、ユーベルーナにあたる直前に爆撃で破壊された。

 

『ライザー・フェニックス様の『兵士』二名、戦闘不能!』

 

 すかさずグレイフィアの放送がかかる。上からイッセーを睨むユーベルーナは肩で息をしており、なんだかんだ余裕ではなさそうだ。

 

「クッ、『犠牲』覚悟ではあったけど、これすら躱されるとあの子達も浮かばれないわ」

「時間が無いんでね。悪いけど、手を抜いていられないんだ」

「フフフ、安心なさい。さほど時間はかからないから。あなたというイレギュラーさえいなければ、リアス・グレモリー眷属全員が寄ってたかったとしてもライザー様には勝てない」

 

 イッセーは眉を顰める。何となく分かったからだ。それだけの力を持つのが不死鳥であり、それだけの信頼を眷属から受けているのがライザーという男。

 

 だからこそ、その言葉に怒りを感じた。確かに力の差は歴然。だが、勝負はどこでどんでん返しがあるか分からない。弱小と呼ばれる者が、強者の喉笛を噛みちぎることさえあるのが戦いというもの。故にリアスは勝負を引き受けた。少しでも勝てる可能性を増やすために、厳しい修行もした。それを、その努力を正面からハッキリ勝てないと断言されるのはイッセーからすれば理不尽そのもの。

 

 右腕を引き、右腕に眠る力を解放しそうになるほど。

 

『やめておけ相棒。師との約束なんだろう?』

 

(……そうだな。あくまでこれはゲーム、殺し合いじゃない)

 

 しかし、ドライグの声に我に返り、"角"ではなく、二天龍の片割れに力を借りる。まだ倍加の力は続いているが、2倍しかしていないため、4倍の時ほど強力な攻撃はできない。

 

(ーーなら、質量じゃなく手数で勝負しようか)

 

 イッセーは周囲に微量の魔力の塊を無数に出現させた。イッセーはもともとの総魔力量が多くないため、数を出すにはそれだけ一つ一つの質量を小さくしなければならず、今のように無数に展開するにはBB弾レベルまで小さくしなければならない。

 

 イッセーの突然の行動にユーベルーナは警戒を強め、爆撃を始める。複数の爆撃を放ちながら、ユーベルーナは大きめの声でイッセーへと問いを投げつけた。

 

「そろそろあなたも限界でしょう?大人しく敗けを認めなさい!」

 

 それに対する返答は、イッセーの周囲から無数に放たれる『天龍の咆哮』。しかし、一つ一つは大して脅威ではなく、ユーベルーナの爆撃と相殺していた。だが、いかんせん数が多すぎる。ユーベルーナが視線を向けると、そこには周囲の魔力の塊を連打で撃ち抜き、無数の『天龍の咆哮』を放つイッセーの姿。

 

 2倍の身体能力で出せる最高速度で魔力の塊を撃ち抜く一撃は、されど散弾の如くユーベルーナを逃すことはない。

 

(こんな使い方もあるの!?本格的に化け物じゃない!?)

 

 必死に防ぐが、ユーベルーナの魔術発動速度を遥かに上回り、その上数も無数、イッセーが魔力の塊を撃ち尽くした時、ユーベルーナの姿は満身創痍もいいところだった。

 

 宙に浮くことすら難しいらしく、ゆっくりと降下してくる。イッセーの倍加も時間を切り、元の状態に戻った。

 

 その直後、結菜たちがいる方向から特大の雷の柱が立ち、数瞬遅れてグレイフィアの放送がかかった。

 

『ライザー・フェニックス様の『僧侶』2名、『戦車』1名、『騎士』2名、戦闘不能!』

 

 ライザーはリアスとの一騎討ちのために、自分の戦力の全てを足止めに使ったようだ。しかし、これで残るライザーの駒は『女王』のユーベルーナただ1人。そしてそのユーベルーナも、あと一撃で戦闘不能となるだろう。

 

 イッセーは確実に倒しきるため、ユーベルーナに近づきながら一つの疑問を聞いた。

 

「さっき、4倍の俺の一撃を喰らっていながら、傷らしい傷が無かったのは魔術の一種か?」

「……"フェニックスの涙"よ。これは一度の『レーティングゲーム』で2回まで使用可能で、その場で傷を全快出来る特殊なもの。フェニックス家で高価で取引されるものよ」

「なるほど、納得した。それで、まだ続けるか?」

 

 イッセーの言葉に、ユーベルーナは立ち上がることで返答した。先ほどの応えからすれば、今回はユーベルーナと結菜側の誰かが所持していたのだろう。

 

 見るからに満身創痍のユーベルーナは、されど一切衰えない闘志をイッセーに向けていた。何がここまで彼女を動かすのか、イッセーは一瞬考えたが、戦闘時での無駄な思考は切り捨て、静かに構える。

 

「これが最後、行くわよ」

「あぁ、お前の最強の一撃で来いよ」

「言われなくても」

 

 その言葉を最後に、2人は同時に動き出した。イッセーは思いっきり前へ。ユーベルーナは前方に魔力障壁を展開し、それを蹴って後方へ。なけなしの魔力を全て次の一撃にそそぎ込み、せめて相打ちをとイッセーが躱せない距離を図る。

 

 対するイッセーは魔力障壁を横切る際に、再びドライグを使った。

 

(ドライグ!)

 

『Boost!!』

 

(来い!)

 

『Explosion!!』

 

 2倍となり、急激に動きが俊敏になる。ユーベルーナが次の一撃にかけていることを見抜くと、勝負を仕掛けるため、魔力の塊を一つだけ腕から放出して真正面から突っ込んだ。

 

 互いの距離が5メートルを切った瞬間、同じタイミングで一撃を放つ。

 

「『爆破魔導球(ディオス・ジャッジメント)』!!」

「『神速の天龍(ドラゴンブースト)』!」

 

 しかし、互いの攻撃がぶつかり合うことはなかった。イッセーに真っ直ぐ最大攻撃を放ったユーベルーナに対し、イッセーは斜め後ろに魔力の塊を宿した手の平を向け、2倍の力で放射し、強引な超高速移動をしたからだ。ユーベルーナは、視界から一瞬でイッセーが消え、自分の最大魔術がまたも外れたことに焦燥を浮かべる。

 

 その真横から出てきたイッセーは、魔力を使い切ったユーベルーナの正面に入り直し、少し強めにデコピンした。

 

「うっ!?」

 

 2倍の衝撃が脳味噌を揺らし、ユーベルーナは眼を回して倒れ、光に包まれる。

 

『ライザー・フェニックス様の『女王』1名、戦闘不能!』

 

 グレイフィアの放送が流れ、これでライザーの眷属は、『王』であるライザーただ1人となった。対するこちらの眷属は、疲弊こそしながらも全員が残っている。相手が幾らフェニックスだろうと、この差を覆すことは容易ではないはずだ。

 

 しかし、イッセーは疲弊しすぎた。身体の気怠さが増しており、傷の方もなかなか酷い。

 

(少し休みたいけど、あれを見てるとな)

 

 イッセーが見つめる先は新校舎の屋上。フェニックスの象徴たる炎と朱乃の雷、そしてリアスの滅びの魔力がぶつかり合っている。リアスは総力戦を仕掛けているのだ。残っているのはイッセーのみ。

 

(ドライグ、頼む)

 

『Boost!!』

 

 倍加が始まり、新校舎に向かって走り出す。その時、一際大きな炎の塊が屋上全体を炎上させ、空中の細かい破片などが引火したのか、粉塵爆発の如き爆発が起こった。

 

『リアス・グレモリー様の『女王』1名、『戦車』1名、『僧侶』1名、『騎士』1名、戦闘不能!』

 

 その放送に絶句した。リアスとイッセーを除く、全ての眷属が今の一撃で戦闘不能となったのだ。これが『王』の一撃。ライザーは確かな実力者だ。

 

『Boost!!』

 

 2度目の倍加。イッセーは苦虫を噛み潰したかのような表情をし、ライザーとリアスが戦っているであろう屋上を目指して全力で走り出した。

 

 

 

 リアスは肩で息をしながら目の前で炎の翼を出し、こちらを睨むライザーと対峙していた。

 

 結菜たちはライザー側の重戦力に苦戦しながらも、朱乃が回復するまで時間を稼ぎ、朱乃の一撃でこれを打倒した。その前からアーシアと共にライザーと対峙していたリアスは、これを喜んだが、その時からライザーの雰囲気は変わり、先ほどイッセーがユーベルーナを倒した瞬間、ライザーは激変した。

 

 新校舎の屋上全てを吞み込む大火球。リアスを護るために援護に来た結菜と子猫が身体を張り、朱乃とアーシアが防御魔術を使用し、リアス自身も防御のための滅びの魔力を放ったが、その悉くを破壊され、リアスとここにはいないイッセーを残して他の眷属は全てやられた。

 

 ライザーは普段の雰囲気とは真逆の、冷静かつ冷徹な表情でリアスに止めの一撃を放とうと右腕を前へ突き出す。その腕から膨大な魔力を纏う炎が生み出され、先ほどと同じ火球の形を形成した。

 

 それを見てもリアスは躱そうとせず、その顔は焦燥に駆られている。自慢の眷属が一撃で負けたのだ。ボロボロで露出が激しくなった制服を隠そうともせず、ただ呆然とリアスは棒立ちしている。

 

「……最後のチャンスだリアス。『投了』してくれないか?どうやら俺自身、少しばかり冷静じゃないみたいだ。手加減できそうにない」

「……」

「……残念だよリアス。これで、終わりだ」

 

 ライザーの手元から放たれる火球。それに秘められた恐るべき破壊力を理解しながら、されど動くことができないリアス。防御も張らず、自然体のまま、不死鳥の炎が自らを呑み込むのを静かに待っていた。視界すら閉じてしまっているため、いつ自身が燃えるかも分からない。

 

 無慈悲な火球は勢いを衰えさせず、リアスの間近まで迫った。視界を閉じても感じる恐ろしい熱。

 

(ーー眷属を傷つけたのは私の責任。私だけ傷が無いのはプライドが許さない。これで、いいのよ)

 

 刹那、屋上に火柱が立った。

 

 しかし、リアスは意識が残っていた。それどころか、炎に呑み込まれてすらいない。熱風は感じるが、まるで自分の眼の前に誰かが障害物のように割り込んだかのようだ。

 

「このタイミングで来るなんて、君はなかなかのラッキーマンだな」

 

 苦笑混じりのライザーの声。リアスは閉じていた視界をゆっくりと開けていく。そこには、己の背を盾にし、リアスを守るイッセーの姿があった。上半身はさっきの火球で全て消え、鍛え上げられた逞しい身体がこれまでにないほど頼もしかった。

 

「部長、あなたの『兵士』、兵藤一誠只今参上いたしました」

「……イッセー」

「まだ負けてないですよ。俺が来たんですから。まだ、あなたの眷属はここにいます」

「……ありがとう」

 

 リアスは近づき、イッセーを優しく抱きしめる。ゆっくりと力が抜けていくイッセー。その様子をライザーは静かに静観していた。リアスは朱乃たち以上にボロボロとなったイッセーの身体に涙を流し、自分の考えの間違えに気づく。

 

(こんなボロボロになってまで、こんな私を『王』として扱ってくれるのね。間違っていたわ。本当にありがとうイッセー)

 

 立ったまま気絶したイッセーをもう一度優しく抱きしめ、見えないように口付けをした後、リアスはライザーに向きなおった。

 

「『投了』します」

「……あぁ」

 

 リアスの人生を賭けた、最初で最後の大勝負は、見事に完敗だった。




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原作楽しい。
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