ようやく2巻完結ですかね。
では、本編をお楽しみください。
「今頃イッセー君たちは決着つけてる頃やろか?」
施設のリビングルームにて、酒を手に静雄と岡部に話しかけるジョーカー。普段通りの緊張感が一切無い空間となっている中、岡部は資料に眼を通しながら適当に相槌をする。
「恐らくだが、"角"を解放しているはずだ。なんだかんだと言って、イッセーも男。義理堅い奴でもあるからな、命をかけて正面対決でもやっていそうなものだろう」
「それについては同感や。 そんで、ついでにアーシアちゃんの時と同じよう、ここに連れて帰ってきそうやな」
「お前の中ではイッセーの勝ちは確定なんだな」
静雄も会話に加わり、施設内でのよくある構図が出来上がった。静雄の言葉に大仰に頷くジョーカー。
「やっぱ家族が勝つと信じとるわ。それに、イッセー君の"角"はマジもんの化け物が宿っとるから、下手したら静雄にも届くんとちゃう?」
「"崩月"の血筋じゃない天然。それも正統な血筋を超えた、暴れる鬼神の角だからな。もしもって可能性は確かにある」
「ほう、我等が総大将"平和島"の静雄を超えるか。まぁ、可能性は限り無く低そうだな」
「お前、その"平和島"のってバカにしてんだろ?」
「ま、待て!テーブルは投げる物ではないぞ静雄!」
「自分退散〜」
うるさくなったリビングから酒瓶を手に脱出してきたジョーカーは、自室に向かいながら少し昔のことを思い出していた。
「"結果は誰にも分からない"、やったか?確かに、岡部君の力を越えた未来予知でもできんと確定した未来なんぞ分からんなぁ」
ジョーカーがまだ施設の仲間と出会っておらず、自由気ままな生活をしていた頃に戦った、とある男の言葉。廊下の窓から見える夜空はどこまでも暗く、まるで、これからまだまだイッセーたちに試練が訪れようとしているかのようだった。
半壊した空間から会場に戻ってきたイッセー。気絶したライザーはそのまま医務室送りとなった。イッセーの腕はもとの状態に戻っており、"角"がある肘の傷も既に完治寸前だった。下級悪魔が上級悪魔を圧倒する事態に付いていけない周囲の悪魔たち。そんな空気を物ともせず、イッセーはリアスのもとまで歩いていく。
リアスは舞台の上で膝を着き、涙を流していた。イッセーがライザーとの戦いでリアスに言った言葉が胸に響き、決意を揺らいでしまった。同時に、とても嬉しいとも感じている。ライザーがイッセーを招待したことは予想外だ。それでも、リアスを助けるという一心でここまで来てくれたことが、リアスにとっては堪らなく喜ばしいことだった。
涙の痕を拭うこともせず、イッセーを見上げるリアス。イッセーは頬を指で掻きながら舞台に上がり、リアスの前まで来ると、視線を合わせるために片膝をついた。
「遅くなりましたが迎えにあがりました、リアス・グレモリー様」
その言葉に更に涙を流してしまうリアス。感極まり、何も喋れず俯いて静かに嗚咽を漏らしてる主に安堵し、イッセーは立ち上がってサーゼクスを含むグレモリー家とフェニックス家に身体を向けた。その中でも一番の権力者である魔王ーーサーゼクスに視線を向ける。
「では、約束通り、リアス様は俺が連れて帰ります」
「あぁ。悪魔は強欲だが、それ故約束事には口煩い者が多い。私もその一人だ。君の好きにすると良い」
柔らかな表情で応えるサーゼクス。両家も納得しているようだ。イッセーは一礼し、リアスに手を差し出した。
「さぁ、俺たちの日常に帰りましょう部長」
「……えぇ」
今度こそ涙を拭い、しっかりとイッセーの手をとる。イッセーがエスコートしながら舞台を降り、会場の出口へと向かう中、朱乃たちとキンジと切彦が近づいてきた。みんなの表情は全て笑みで統一されていた。
「良かったですわね。まさか会場に乗り込むとは思いませんでした」
「本当に驚いたよ。でも、そのお蔭で部長が帰って来たから、イッセー君たちには感謝してる」
「……かっこよかったです」
「あんな強力なモンだとは思わなかったぞ
「本当の殺し合いとか以外では使えないとはいえ、ありゃあ素直に強いと思ったぜ」
後半の2人はイッセーの"角"が見れて大層ご満悦のようだ。切彦は未だにバターナイフを手放しておらず、もしこの場で2人きりだったら襲いかかってきても可笑しくないくらいに殺気が溢れていた。そのせいで周りのメンバーも少し冷や汗をかいている。
会場の雰囲気はもはやパーティーなんてものではないが、後始末などイッセーは考えていないので、堂々と会場の外へ出た。そこで見た惨状にイッセーは暫し思考が停止する。リアスやオカルト研究部のメンバーも固まり、キンジと切彦は分かりやすく視線を明後日の方向に向けた。
「部長、これを何も知らない一般の悪魔が見たら、明らかテロと勘違いされると思うんですが……」
「た、多分お兄様が何とかしてくれるわ。多分……」
会場から一歩出た先の光景はまさに阿鼻叫喚。辛うじで命のみを繋がれた悪魔の警備員たちがそこには居た。ほぼ全員が悶えるように痙攣し、五体満足の者は誰一人としていない。イッセーは犯人である2人にジト目を向けると、2人揃ってお互いを指差し、
「「こいつがやった」」
互いを売り出した。同時に自分が売られたことに苛立ち、口喧嘩が勃発する。
「おいおい待て切彦。この腕が片方綺麗に切断されてる奴はお前の仕業だろう。俺はこんなのできねぇぞ」
「それを言うならならあそこに風穴空けて転がってる奴はお前だろうが。オレは刃物しか使わねぇよ」
「明らかお前の方が数多いぞ。お前の斬撃の痕は分かりやすいからな」
「確かに切り裂いたがよ、それでもまだ動くからってオーバキルの鉛玉をプレゼントしたお前が言えることじゃないだろ」
内容が内容なだけにイッセーは軽く頭痛を覚え、それを察した子猫がイッセーに背中から抱きつく形で軽く甘えてきた。今のイッセーにはそれだけが癒しである。リアス達は1秒でも早くこの場から離れようと転移陣を構成していた。そろそろ転移の準備ができる頃合いを見計らい、イッセーは2人に声をかける。
「まぁどっちもどっちでいいだろ。誰も死んでないんだし、部長の言う通り魔王様に何とかしてもらおう」
「む、そうだな。最終的にはあっちから攻撃してきたと言えば正当防衛として見てくれるんじゃないか?」
「ヤられたからヤり返した、か。それでいいんじゃない?そうやって句切らなきゃいつまでも終わる気がしない」
切彦はそう言ってバターナイフを放り投げた。同時に彼女の雰囲気が一転。眠そうな大人しく少女に早変わりした。
「3人とも準備できたよ」
結菜に呼ばれ、イッセーたちは馴染みのオカルト研究部に転移した。
〜〜〜
ライザーは見慣れぬ天井を見上げていた。真っ白なベット。レーティングゲームなどで戦闘不能になった者が運ばれる場所ーー医務室だ。フェニックスの特性である不死の身体のお蔭で目立った外傷を負ったことがないライザーにとって、人生で初の医務室送り。格好はボロボロとなった婚約披露宴の正装姿のため、運び込まれてから時間は余り経っていないとみえる。
(俺は、負けたんだったな。言葉は悪いが、リアスを賭けたイッセーとの戦いで)
完敗したはずなのに、不思議と悔しいという感情は湧かなかった。それどころか、清々しいとさえ感じさせる。そこへ、入り口から慌しい足音が多数聞こえたかと思えば、ライザーの眷属全員が血相を抱えて扉から流れ込んできた。全員が同じく泣きそうな表情をしており、それを見たライザーは思わず微笑んでしまう。
「どうしたお前たち。俺は死んでないぞ」
ライザーのことを大層心配していたのだろう。ライザーの言葉というより、声を聞いた何人かの眷属は涙を溢れさせ、そのままライザーへとダイブしてきた。ライザーは何とか受け止める。他の眷属達もライザーのベットを囲んできた。
「運ばれた時、ライザー様の容態はそれは酷いものだったのですよ。フェニックスの象徴たる不死の力が働かず、傷が全く塞がらなかったのですから」
みんなを代表してユーベルーナが言う。ライザーは気絶していたため記憶には無いが、医務室送りにされた理由には薄々気づいていたため、焦ったような様子はない。
「もしかして、今完治しているのはフェニックスの涙を使ったから?」
「はい。不死身のフェニックスが傷を負い、消滅に向かっていたのです。判断までは時間がかからず、すぐに使用許可は下りましたので」
「そうか。感謝するよ」
抱きついている仲間の頭を撫でながら、もう片方の腕を回す。身体機能の異常は無い。報告を終えたユーベルーナに礼を言い、ライザーはベットから降りた。眷属は腕に抱いたまま。腕から降ろし、眷属に背を向けたまま、ライザーは静かに話だす。
「負けてしまったよ。今回の件で、俺の評価は地の底まで落ちたと思う。俺の下から去りたい者は、妹ーーーレイヴェルのように、母に頼んでトレードしてもらうことも可能だよ。知っているとは思うけど、悪魔の社会は人間界よりも競争本能が激しい。ここから這い上がるにはそこそこの時間が必要となる。後でもいい、俺から去りたい者は言ってくれ」
「いませんわ」
即答したのはレイヴェルだった。ライザーの頼みで母とのトレードを了承した彼女だが、そうでもされなければ彼女とてライザーの眷属を辞めるつもりはなかった。レイヴェルとしては、自分が付き添いたいと思う相手を見つけろとライザーから言われたが、ライザーこそが自分の『王』に相応しいとすら感じていた。
「ここにいる者達はみな、それぞれの想いを胸に兄様の眷属となったのです。私ですら、兄様直々の言葉でなければ辞める気はありませんでしたし。それに、兄様ならすぐにでも名を上げることができますわ」
「レイヴェル……みんなも同じ気持ちなのか?」
振り返りながら聞くライザー。その問いに対する答えは、力強い頷きだった。自然と笑みになってしまう。
(あぁ……本当に、俺なんかには勿体無いくらいに出来た眷属たちだよ)
そして、いつまでも弱々しい姿を見せられないと表情を引き締めながら眷属たちに言った。
「これからも宜しく頼むよ、俺の眷属たち」
眷属全員が笑顔で返事をする。医務室に似合わない、元気な声が響き渡った。
〜〜〜
すっかり馴染み深くなったオカルト研究部の部室も、何故か今はとても懐かしく感じられた。ところどころに張り巡らされた黒魔術のような陣の数々、高校生の部室としては多少思考がズレていると言えるが、悪魔にとっては普通の部屋。
イッセーはリアスの近くに寄る。他のメンバーは邪魔せぬよう部室の端まで移動し、しかし聞き耳だけはしっかりと立てていた。それに気づきながらもイッセーはリアスの横に立って喋り出す。
「結構、やりすぎたとは思っているんです。部長は上級悪魔、そのパーティーを丸々ぶち壊したんですから。どんな罰でも受けます」
「……罰なんてないわ。あなたは私を救ってくれたんだもの」
でも、とリアスは言葉を続け、
「覚悟もしていたのよ?一応ね。だけど、漸く自分の気持ちに素直になれる気がするわ。さっきまでのリアス・グレモリーは死に、新たなリアス・グレモリーとして生まれ変わった気分よ」
「俺の主はあなただけです。あなたの願いを叶えるために出来ることがあるなら幾らでも言ってください」
イッセーの言葉に、リアスはまるで年相応の少女のような、柔らかな笑みを浮かべ、そっとイッセーの唇にキスをした。流れるような動きだったため、イッセーは一瞬何が起きたか分からず、何度か瞬きをする。そんなイッセーに、イタズラが成功した子供のような表情でリアスは言い放った。
「私のファーストキスよ。あなたにあげるわ。これからも宜しくね、イッセー」
「えっと……はい」
その様子を見ていたギャラリーは、話し声が丸聞こえかつ、リアスの見せつけるような大胆な行動に赤面している者も居れば、口角を分かりやすく上げ、ニヤニヤ顔を作っている者もいた。
これから散々からかわれたりするのだろう。しかし、イッセーは柔らかな笑みのリアスを見ると、不思議と仕方ないという気持ちになるのだった。
〜〜〜
翌日、イッセーはいつもより早い時間に目覚めた。それだけならば大した問題にはならない。誰にでもそういうことはあるだろう。しかし、今日は何かが違った。寝惚け眼で天井を見つめるが、完全な覚醒をしているわけでもないのにイッセーは只ならぬ違和感を感じていた。というか、1人用のベットがやたらと狭く感じる。そして、ここ最近嗅ぎ慣れた女性特有の甘い香りがイッセーの鼻腔を刺激しているのだ。
『相棒、逃げずに現実を受け容れろ。隣に眼を向ければ全てが解決する』
(やっぱそうだよなぁ……)
現実逃避をやめ、恐る恐る隣で眠っているであろう女性に眼を向ける。そこにはーーーリアスに良く似た女性がいた。リアスのように美しい紅髪に女性らしい肉付きをしているが、その女性はショートボブヘアーーー簡単に言えばリアスよりも髪が短いのだ。リアスは腰まで伸びる長髪の持ち主。リアスの親族の誰かであろうか。何故か全裸でイッセーの横を陣取り、安らかな寝息をたてている。
(とりあえず、これは朝から刺激が強すぎる。何とかしなきゃ、夕乃さんに殺されるぞ)
イッセーはその女性に布団をかけ、勤めて平常心を保つよう意識を集中させた。ツッコミどころの多いこの状況、もしツッコんでしまえば施設内のアーシア以外にバレることになる。
しかし、イッセーはその時忘れてしまっていた。この施設の人間は気配に敏感であることを。ベットで寝ている女性の気配が明らか悪魔のそれだということを。
突如扉の向こうから感じる、溢れるような殺気。寝惚けていたからか、それとも今までその殺気を抑えていたのかは分からないが、イッセーは瞬時に悟る。
(あ、コレ死んだわ)
『相棒!?諦めるのは早過ぎるぞ!?いくらあいつでも話ぐらいは……』
ドライグの言葉を最後まで聞くことはなかった。無論、扉が開き、そこから怒気と殺気を孕んだ微笑みを浮かべる夕乃がいたからだ。微笑んではいる。しかし、その足取りは幽鬼のように覚束ないもので、イッセーは言われなくても自分から正座をした。
「おはようございます、イッセーさん」
全く口元が動いていない。どこから声を発しているのかが分からない。それでも微笑んでいるのが更に怖い。
「お、おはようございます夕乃さん」
平常心とは一体何だったのか。イッセーは恐怖のあまり声が上ずっていることを自覚しながら引き攣った笑みを浮かべる。額からは滝のような汗。全身は小刻みに震え、イッセーの人間としての本能が死を直感していた。表情を変えずに夕乃はゆっくりと首を傾げる。……綺麗に直角90度、もうホラーだ。
「ずっと気になっていたんですよねぇ……昨晩いきなり施設内の気配が増えたと思いきや、場所はイッセーさんの部屋。心配で心配で眠れませんでしたよ」
何と、つまり夕乃は昨晩から一睡もせずイッセーの部屋の前で張り付いていたとでもいうのか。いつ殺されるか分からない緊迫の嵐の最中、この場をつくった元凶が眼を覚ました。
「ん……?あらイッセーに夕乃、おはよう」
「あら、おはようございますリアスさん。色々と問いただしたいことはありますが、とりあえず一つだけ……何故ここにいるんです?」
夕乃の矛先がリアスらしい女性へ向き、修羅場が発生した。イッセーは眼を丸くしながら変わったリアスを見つめる。
「え?部長なんですか?」
「あら、気づかなかった?昨日言ったでしょ?これまでの私は死んで、これからは新しい私として生きるって。分かりやすく髪を切ってみたんだけど……どうかしら?」
「凄く似合っています、はい」
どこか恥ずかしそうに髪を弄り、上目遣い気味にイッセーに言うリアス。全身を布団で隠しているため、正直全裸よりも恥じらいがある分妖艶に感じてしまい、頬を赤く染めて即答してしまうイッセー。夕乃の殺気が2倍になった気がする。
「イッセーさんは黙りなさい、というかここから出なさい。リアスさんはその後に着替えてもらいます」
「えっと夕乃さん?部屋は壊さないでいただけると「早く出なさい」ーーはい」
極力視界を狭めて部屋から逃げるように出るイッセー。幸い、大事な家具等は少ない。イッセーは全壊しないことだけを願い、リビングへと歩いて行く。早い時間のため、リビングには静雄と岡部しか居らず、イッセーの疲れた表情を見てある程度のことは察したのか、静雄がコーヒーを淹れてくれた。
「朝から大変だなイッセー」
「ありがとうございます。何で部長がいるんですかね」
コーヒーを受け取り、一口飲んでから席に着く。熱い液体がその温度を全身に伝え、幾分か脳が働くようになった。
「岡部が『運命探知』でまた一部屋空けていたかと思えば、まさか"あいつ"の妹が来るなんてな。つか岡部、お前俺に教えておきながらイッセーたちには教えてなかったのか。夕乃はやたら殺気立ってるし、この施設消えるんじゃないか?」
「その方が面白そうだったのでな。後悔も反省もしている」
「何楽観的に破滅的な思想を話しあってんですか……ところで静雄さん、"あいつ"って誰ですか?部長が妹となると、1人しか思い浮かばないんですが」
同じく席に着いて煙草に火を着ける静雄と、朝からドクターペッパーを煽っている岡部。静雄が何気無く言った一言にイッセーは反応した。静雄は聞き返されると思っていなかったようで、軽く間を置いて紫煙を吐く。
「あー……まぁ、別に隠すことでもないしいいか。俺たちな、現魔王のサーゼクス・ルシファーと知り合いなんだよ。結構前からな。岡部の『運命探知』で知ってから久しぶりに連絡を入れてみたら妹がこの施設に住みたいらしいってんで、許可したら髪を切ったリアスが転移してきたってわけだ」
「……なんかもう、朝から疲れました。納得はしましたけど。それなら、部長の部屋はもうあって荷物も引越し済みなんですか?」
「そっちは多分そろそろ終わると思うんだが……」
そこでタイミングを図ったかのようにジョーカーがリビングに入ってきた。イッセーと似たように疲れた雰囲気を醸し出している。この男にしては珍しことだ。
「おー、イッセー君やん。漸く引っ越しの荷物を運び終わったで。何で女の子ってあんなに荷物多いんかな」
「悪いな、少し待ってろ。今コーヒーを淹れてくる」
静雄が立ち上がり、席に着いたジョーカーの前に淹れたてのコーヒーを置く。相変わらず室内でもニット帽を被っており表情が伺えないが、大抵雰囲気で喜怒哀楽を表しているため、この施設内で一番分かりやすい人物だ。今も椅子にだらしなく凭れ掛かり、ダルいオーラを溢れさせている。イッセーは苦笑いしかできない。
「ジョーカーさんも起きてた……というより寝てない感じですか?」
「ま、そういう感じやね。でも急にあの嬢ちゃんが住む言われたときは驚いたわ。また家族が増えて賑やかになるって感じ?」
「今頃イッセーの部屋で夕乃に説明しているのではないか?ピュアーシアも馴染みの仲間が増えれば過ごしやすくなるだろう。金銭面も特に困ってはいない。危険が伴ってもここなら守り通せる。何も問題はないだろうな」
岡部もリアスが住むことに関して賛成のようだ。こうなればイッセーからは何も言うことができない。イッセーの部屋からは夕乃の怒号が絶えずに響き渡っており、自然とリビングに人が集まってきた。
「朝から元気だな、夕乃さん」
「……殺気がダダ漏れで怖いです」
「い、イッセーさんの部屋の壁がヒビ割れてましたよ?」
キンジと切彦とアーシア。アーシアの一言でイッセーは遠い目となってしまった。主に自分の部屋が儚く消えることを素直に受け止めたらこうなった。
それから10分後、夕乃は額に青筋を浮かべ、リアスはいつもの凛とした部長顔でリビングに入ってきた。
「これから施設で共に生活することとなったリアス・グレモリーです。よろしくね」
みんなの前で改めて挨拶するリアス。何も知らなかったキンジ達は少しの間惚けていたが、大体の事情を理解すると普通に歓迎していた。夕乃もなんだかんだ反対する気はないらしく、施設のルール(というか主に不純異性交遊を極限まで禁止するだけ)を口すっぱく言っているが、恐らく何の意味も成さないだろう。そこに爆弾を投下するのはジョーカー。
「年頃なんやし、そういうイベント一つあってもええんやないか夕乃ちゃん?君らぐらいの時はあれやろ?思春期なんやし、そんな制限する事ないと思うんやけど」
イッセーたちはジョーカーの発言に一瞬死を覚悟した。夕乃はその辺に大層厳しいため、何気ない言葉が怒りのスイッチとなることも可能性的には十分あり得るのだ。しかし、当の夕乃の反応は意外すぎるもので、暫く間を空けたかと思えば、多少難しい顔をしながらも了承したのだ。
「そうですね。ジョーカーさんの言い分も一理あります。もう高校生ですしね……ある程度の節度を持ってならば許すことにします。ただし、行き過ぎた場合は……私からキツいお仕置きです」
それでもやはり夕乃は夕乃。お仕置きのところで静雄たち責任者以外の施設の全員が身震いをした。
「じゃあ、これからは一緒に寝ましょうかイッセー」
そこに再び投下される核爆弾。ジョーカーなどは「羨ましいくらいにお熱いんやね〜」などとニヤけながら言っている。イッセーは夕乃の顔色を伺うが、案の定その顔は修羅が宿っていた。血の気が引くイッセー。
「あれだけ言ったのに本当に反省がない人ですね!やっぱりダメです!不純異性交遊は認めません!」
その怒鳴りに一瞬だが落ち込んだのが数人、明らか喜んだのが1人。イッセーはまた一つ賑やかになった施設で困ったように笑みを溢す。それは、自然かつ純粋な喜楽の笑みであった。
ご感想または誤字脱字等のご指摘、お待ちしております。
リアスの髪型はToloveるダークネスのモモ辺り、というかモモが紅髪になったと想像してくださるといいかと。
やっぱ正規ヒロインなので、オリジナリティ溢れながらもそこは原作通り行きます。
次回は3巻、そろそろ施設の家族を揃えてあげたいですね。
リクエスト等もお待ちしております。
それではまた次回でお会いしましょう。