希望と絶望を司る   作:虹好き

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どうも虹好きです。

今回からオリジナル要素がどんどん増えていく予定です。

だいぶ原作と時間軸もズレたりします。

それでは本編をお楽しみください。


聖なる剣は日常を切り裂く

 ーー何故自分が生まれてきたのか理解出来なかった。

 

「I am the bone of my sword.」

 

 ーー死を覚悟したあの時、陰陽を示す夫婦剣で絶望を二つに裂いたあの赤い外套を眼にするまでは。

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 

 稀代の元天才神父、フリード・セルゼンは最後の依頼人のもとに来ていた。神聖な雰囲気を持つ神父服を身に纏っているが、フリード自身はなかなかおちゃらけた性格なので、似合う似合わないは兎も角、フリードをよく知る者からすれば違和感の塊のような姿だ。

 

 そんな彼の目の前には、これまた司祭の格好をした多少歳をとった男がおり、剣を中心に魔術陣を組んでいた。その剣はかの有名な聖剣エクスカリバーが分裂した一つらしいが、七つに分裂をとはいえ、限りなく本物に近いモノ(・・・・・・・・・・・)を眼にしたことがあるフリードからすれば、拍子抜けの出来映えである。

 

 そんなフリードの残念そうな視線にも気づかず、熱心に魔術で聖剣の力を引き出そうとしている男ーーバルパー・ガリレイ。その眼は一種の狂信者のような危険な色を宿しているが、依頼金の払いがいいため文句は言わずにフリードは黙っている。

 

 そして、その近くで腕を組み、聖剣を凝視しているもう1人の傭兵。フリードと同じく雇われた身だが、フリードとは別の意味で有名な者だった。白髪を持つ男だがその実、"レッドキャップ"という二つ名を持つ"殺し屋"。噂を聞けば、狙った獲物は二度と動かなくなるまで壊し続けるのがモットー。返り血でその白髪を赤く染めることからその名が出来た。敵としても、味方としても油断できない存在だ。

 

(あー……まぁた面倒な仕事になりそうでございますなぁ)

 

 今回の仕事、雇い主自体はバルパーなのだが、ボスは別。堕天使の幹部である十翼のコカビエルという、イかれた戦争オタクだ。しかしながら実力は三大勢力の戦争で生き残るほどのもので、その力はバカに出来ない質量を誇る。今は顔を出していないが、その内来るはずだ。

 

「よし……これで通常以上に聖なる力の出力を上げられるはずだ」

 

 その時、聖剣に魔術を行使していたバルパーが肩で息をしながら満足気に独り言を呟いた。フリードは聖剣に眼を向ける。確かに魔術を行使する前とは聖なる輝きの質量が段違いに上がっていた。それでも、フリードの心を動かすことはないが。

 

「さて、この剣はお前が使うんだフリード」

 

 バルパーが振り返ってフリードに言う。フリードはダルそうにしながらも大人しく聖剣のもとまで歩いてその柄を握り、少し天に掲げて出来映えを確認してみるが、やはり何も感じることはなかった。

 

「……この程度で聖剣か……」

 

 誰にも聞こえない程小さく漏れた言葉。その言葉は直様空気に溶けたかと思えたが、"レッドキャップ"だけはその言葉を聞き取り、無表情ながら口角を微かに上げていた。

 

「この剣の試し斬りに丁度良い相手が駒王町で我等を嗅ぎ回っている。そいつもエクスカリバーの1本を持っているはずだ。そいつから聖剣を略奪してこいフリード」

「何故俺っちの雇い主は、揃いも揃って人使いが荒いんでございましょーかねぇ」

「グダグダ言わずにサッサと行け。金は弾んでやる」

「どこまでもついて行きやすぜ旦那」

 

 フリードの変わり身の速さは異常なレベルだ。金が絡めば基本的にそちら側についてしまう。それがフリードという男なのだ。聖剣を肩に担ぎ、目的の敵を排除しに向かう。そのフリードの隣から顔を出すのは"レッドキャップ"だ。

 

「君は別の仕事があるんじゃねぇんですかい?勝手に持ち場離れても俺っち知んねーぞ」

「ここいらでコカビエルに刃向かおうとする輩はほぼゼロ、たとえ刃向かったとしてもコカビエルが苦戦しそうな奴なんてそうそういないさ」

「俺っちに付いて来る理由は?」

「聖剣の性能を知りたいだけだ。まぁ、1人より2人の方が早く方がつく」

「そりゃそうだろーが……まぁいいや」

 

 フリードは敢えて言葉を区切り、仕事に集中することにした。すべきことは決まっており、これが最後の仕事なのだから。

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 

 イッセーはここ最近寝不足気味だ。理由はとても簡単、新しい住民がとても行動的で、毎度毎度夜な夜なイッセーのベットに潜り込んでくるためである。それだけならまだマシだが、それに対抗心を燃やした他の施設の女子も真似してイッセーのベットの入ってくるのだ。狭いわ、女性特有の匂いはするわ、毎回夕乃の雷が長引くわでイッセーはここ最近ほとんど寝ていない。

 

 たった今もベットの両脇とイッセーの上を支配している主犯者たちのせいで眠ることが出来なかった。右側にリアス、左側にはアーシア、上では切彦がそれぞれ安らかな寝息を立てている。尚、リアスは全裸で寝ているため、イッセーは首を痛めるほどアーシア側へと視線を移動させていた。アーシアと切彦は可愛い寝間着である。

 

 最初の頃はイッセーの部屋に忍び込んだだけで夕乃にバレ、説教を喰らっていたのだが(何故かイッセーも一緒に)、いつの間にやら夕乃の五感すら捉えることが不可能になるほど気配を隠せるようになっており、今ではこの通りイッセーと何回も寝ている。気配の薄さは驚くもので、イッセーですら偶に見失うのだ。

 

 しかし、一夜明ければ気配など関係無く一発で居場所がバレる。これも毎度のことなのだが。今の膨大な殺気が部屋に接近しているのをイッセーは感じ取り、朝から血を見ることになりそうだと心の中で自分の合掌する。

 

 退かすことは簡単ではあるが、こんな安らかな寝息を立てられては、起こす方が罪悪感を覚えるというものだ。これもイッセーの悩みの一つと言える。

 

 そして、部屋の扉が勢い良く開けられ、その音に眼を覚ます主犯者3人。一斉に視線を向ける先には、額に青筋を浮かべながらいつもと変わらず麗しい笑みをしている夕乃。イッセーは静かに両耳を抑える。次の瞬間、雷の音にも負けない怒号が施設全体を襲った。

 

「毎回毎回いい加減にしてくださいよッ!!せめて服を着なさい服を!!切彦さんも猫みたいに丸くならない!!アーシアさん隠れてもバレてますよ!!」

「私、服を着ると寝れないのよ」

「……あいむすりーぴー」

「え、えと……先越されたくなくて……」

 

 それぞれの言い訳に夕乃は遂に堪忍袋の尾が切れた。イッセーは静かに切彦を上から降ろし、ベットの中から抜け出し、逃げるように部屋から出て行った。夕乃はそんなイッセーすら眼中に映らなくなっているようで、これはまた暫く終わるまいとリビングに逃げていく。今日も今日とて施設の住民はみな元気だ。

 

 イッセーの部屋から聞こえる怒号をBGMに、リビングで一服している静雄。何時ものことと割り切っているため、何も言うことはない。ジョーカーもイッセーの姿を見ると軽く苦笑いを返し、岡部は集中力が削がれるか、資料は放って椅子に凭れ掛かっている。キンジも先に来ており、テーブルの上に突っ伏していた。イッセーを見つけると気怠そうに怒号の根源の苦言を吐く。

 

「朝っぱらから元気すぎだろ。もう少し静かにして欲しいもんだ」

「いや、その、何かゴメン」

 

 イッセー自身がことの発端のため、強く反論できない。寧ろ謝ってしまうほどだ。リアスが来てから、施設は毎日のように賑やかになった。それは喜ばしいことではあるが、イッセーとしてもキンジと同じく、朝はもう少し静かにしてもらいたい。

 

「そういえば、昨日部長が明日の部活を施設でやりたいとか言ってたよな?何でも今日は旧校舎の定期的な大掃除の日だとか。まぁ、使い魔辺りにやらせるんだろうが」

「確かに。静雄さん、ここって使わせてもらえます?」

「施設内、か。俺的にはお前らの部屋とかでやんなら特に言うことはないな。岡部とジョーカーはどうだ?」

「俺の研究所の入らないのならば好きにしていい」

「自分はこれと言って反対することは何もあらへんな」

「分かった。んじゃ、後で部長に伝えとく」

 

 結局、夕乃たちがリビングに来たのはそれから30分後だった。

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 

 学園に登校している途中、イッセーたちは横を通る駒王学園の生徒達から注目されっぱなしだった。それもその筈で、学園の三大お姉様の1人であるリアスが持ち味の長髪を切り、今までとは一味違う雰囲気を持った少女に変わっているのだから。イッセーたちと登校しているのも一つの理由かもしれないが、大元の理由はそれである。しかも、登校中は基本的にイッセーの横を陣取り、時には腕を組むなど、イチャイチャなカップルみたいな行為をしているのだ。その時は大抵夕乃がキレる。

 

(俺からは断じてそういう行動をとっていないはずなんだけどな……)

 

『お前は歴代の所有者の中で一番女に好かれているぞ。喜べ、相棒』

 

(何か嬉しくねぇ)

 

 精神世界のドライグと意思疎通を計りながら校門を潜ると、少しばかり元気の無い結菜が歩いているのを見かけた。

 

(いつものあいつらしくないな……何かあったのか?)

 

 イッセーはリアスたちに一言言って結菜に駆け寄る。その背はいつもの活気溢れる少女のものとは全く別の、何やら厄介なものを背負っている重たい背中だった。

 

「おはよう結菜、なんか天気が無いようだけどどうした?」

「あ、イッセー君おはよう。ちょっと考えごとをしていただけだよ」

「考えごと?」

 

 いつも笑顔を絶やさない明るい結菜が表情を暗くするほどのこと。イッセーは軽く考えてみるが、いかんせんイッセーは結菜の出で立ちなどを知っているわけでは無いため、早々に考えるのを諦めて素直に聞く。

 

「うん……朝からこんなこと言うのは申し訳ないんだけど、イッセー君なら頼れるし言っていいかな?」

「悩み事は1人で抱え込むより相談できる人に話した方がいい。俺で良ければ聞くよ」

「ありがとう。えっとね、実は昨日、フリード・セルゼンに会ったんだ」

 

 イッセーは思わず眉を顰めた。少し前にあった堕天使レイナーレとの戦闘の際、レイナーレに雇われていたのがフリードであり、イッセーとキンジの義兄弟なのだが、フリードは基本的に高額の金が手に入る仕事しか受けない。それはつまり、下手すれば命に関わる仕事ということも十分あり得るのだ。

 

(こんな短期間にあのバカは……)

 

 レイナーレの時もこの駒王町。そして今回も結菜が接触したということは、また駒王町が舞台だ。この町は何か特殊な呪いでも掛けられているのだろうか?龍殺しの類ならば全力で逃亡を計りたい。

 

 結菜は言葉を続ける。やけに細かく、そして丁寧に、その口調はまるで体内で暴れる激情を無理矢理抑え込んでいるかのようだった。

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 昨日、結菜は夜道を歩いている時、何やら殺伐とした気配を感じた。見れば、見覚えのある白髪の神父ともう1人の見知らぬ白髪の持ち主が教会の神父と対峙していた。常闇が広がるような夜道であったが、悪魔である結菜には昼間と全く同じに感じる視界で、フリードは神父に襲いかかる。その手に握っていたものは、忘れようにも忘れることのできない最悪の代物。

 

「ーーー何であれが……エクスカリバーがフリードの手に……?」

 

 思わず呆然と呟き、思考が真っ白になってしまった結菜。結菜は神父に対し、並ならぬ憎悪の念を持っている。しかし、聖剣に対しては、その倍以上と言っても過言では無いほどの憎しみが結菜の身体を蝕んでいた。自分でも気付かぬ内に『魔剣創造』を発動しており、右手にしっかりと握る。

 

 フリードは神父に峰打ちをして意識を失くすと、ーー最初から気づいていたのだろう、結菜に視線を向けた。その顔は、見られたくないものを見られたという感じのものだ。その少し後ろで立っている白髪の男ーー"レッドキャップ"は無表情のまま結菜のことを見つめている。

 

 結菜はもう一度だけフリードの手の中にあるものを確認した。距離は多少空いているというのに、しっかりと肌で感じる聖なる力。まごうごとなき聖剣である。それを見届けた結菜は、その場から一気にフリードへと駆けた。同一人物からはとても考えられない鬼気迫る表情だ。

 

「ん?あれ?もしかして俺っち何か粗相でも働きましたかねぇ!?」

 

 フリードからすれば、軽く挨拶でもしようかと言う感じだったのだが、結菜からの視線が、教会で向けられたあの視線と同じだったため、少し出方を窺ってみたのだが、ーーまさかあんなに本気で殺りに来るとは夢にも思わなかった。

 

「ハァッ!」

「っとぉ!オイオイオイ!?結菜ちゃんってこんなにお熱いタイプのキャラだったっけ!?俺っちだいぶ心臓バクバクいってんだけど!?」

 

 結菜が渾身の力を込めた全力の一閃を何とか防ぎ、抗議にもなっていない叫びを口にするフリード。"レッドキャップ"はその様子を興味有り気に見ている。決して手出しをする気はない。

 

 フリードの言葉に耳を貸さず、『騎士』の特性を活かした切り込みを行う結菜。フリードは口調はふざけながらも、怒りと憎悪に身を任せている結菜の斬撃を精確に弾き、大きく踏み込んで聖剣を大振りの一太刀を魔剣目掛けて振り抜く。流石は分裂はしても名目上有名な聖剣。結菜が想像した魔剣を見事に真っ二つに割った。そこからの追撃は行わず、フリードはバックステップで距離をとる。

 

「……やっぱこの程度ですかい」

 

 手元の聖剣を見ながらつまらなそうに呟くフリード。結菜はフリードが本気じゃないことに対して怒りを露わにしたが、ーーそこに肉を千切り、砕く音が響いた。

 

「……ありゃ?"レッドキャップ"君、その名の通りになっているでございますけどもしかして殺っちゃった?」

「それ以外に何がある?」

 

 フリードですら半ば呆然と"レッドキャップ"の姿を視界に収め、結菜はその足下の残骸に眉を顰めた。フリードが気絶させた神父が四肢をもがれ、血塗れで倒れ伏している。その返り血の影響だろう、"レッドキャップ"の髪は鮮血で染められ、その名の通りの姿となっていた。フリードは聖剣の柄で頭をかき、軽く嘆息すると懐から閃光玉を出す。結菜は気付くのに一歩遅く、既に腕を振り上げ、閃光玉を地面に投げつけるモーションにはいっていた。

 

「興が削がれちまったから今日の所は帰りましょ。こいつも聖剣を持ってなかったし。んじゃ、ちゃらば!」

 

 眩い閃光が辺りを包み込み、結菜はその光から逃れるため眼を硬く閉じる。光が止んだ時にはフリード達の姿は消え、惨殺された神父の遺体のみが残されていた。

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 

「と、いうわけなんだ。朝からこんな話、本当にゴメンね?」

 

 申し訳なさそうに眉を下げる結菜。イッセーとしても正直、リアスの件が終了してからこんな短期間で更なる事件が起こるとは微塵も思っていなかった。

 

「結菜は個人的に神父を嫌ってるんだったな。そして、聖剣のことも嫌ってる。その類のことに関して俺は余り知識を持たないから詳しいことは分からないけど、お前をここまで思い詰めさせるんだ。色々あったんだろ?力は幾らでも貸すから、部長たちにも相談したらどうだ?聖剣のこととかも詳しく知りたいしな」

「……迷惑にならないかな?」

「大丈夫だよ。俺たちを信じろ。それに、フリードが関わってるなら俺たちにも無関係なことじゃないしな」

 

 ここで立ち話するような内容ではないというのと、HRまでに終わるような内容ではないと判断したイッセーはそう提案するが、結菜の顔は浮かない。瞳の奥底には暗い闇が広がるようで、結菜の周りの空気は張り詰めていた。

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 

 放課後、部室にて結菜は改めて昨日の話をリアスたちに話した。聖剣の単語に著しく反応したのはリアスと意外なことに切彦だった。

 

「……それって、"あの計画"に使われてた……」

 

 話が終わった直後に切彦の口から溢れるように呟かれた言葉。イッセーとキンジ、夕乃は首を傾げたが、リアスと特に結菜は眼つきを鋭く、今にも射殺さんばかりに切彦に迫って肩を掴む。

 

「何で君がそれを知っているんだい?」

 

 トーンの低い結菜の声。見れば、身体を小刻みに震わせている。刃物を持たない切彦は物静かな少女のため、結菜の変わりように軽く恐怖したのか、両眼に涙を溜めていた。

 

「……む、昔フリードが師匠さんと一緒にやった仕事を教えてもらったんです。その時に出てきた聖剣の名前が同じだったので」

「それってまさか、"聖剣計画"とかって名前じゃない?」

「……そうです」

 

 結菜の握る力が強くなり、切彦はイッセーに視線で助けを求める。結菜の劇的な変化。イッセーは結菜の片手を軽く叩き、切彦を自身の胸に抱き寄せた。結菜も無意識からなのか、自分の両手を凝視している。切彦の頭を撫でるイッセーの代わりに、キンジが結菜に質問した。

 

「俺たちも初耳だ。あいつ自身、切彦にしか伝えてないんだろ。俺たちは互いに互いをあまり知らないから、その"聖剣計画"とやらを含め、結菜が何故そこまで神父や聖剣を嫌うのか教えてもらえないか?」

「……」

 

 しかし、結菜は何も答えない。普段からは想像もつかない憤怒表情のまま微動だにしない。そんな結菜を庇うように、リアスがキンジの問いに答えた。

 

「"聖剣計画"とは、聖剣エクスカリバーを人工的に扱えるようにする実験よーーー結菜はその計画の生き残りなの」

「それだけを聞くと穏やかな内容ではありませんね」

 

 夕乃の言葉にリアスは頷き、言葉を続ける。

 

「そもそも、聖剣は悪魔にとって最悪の相性を持つものでね、強力なものは私たちが触れるだけでたちまち身を焦がしてしまうほどのものよ。また、エクスカリバーのように有名かつ強力な聖剣というものは聖剣自身が持ち主を選ぶらしいの。その被験者として結菜を含む何人もの教会の子供達が実験された。でもね、結菜を含む全ての子供が適応することができなかったの。教会の人間はそんな子供達を不良品と見定め、『処分』したのよ」

 

 最後の処分のところで、結菜の身体が大きく震えた。トラウマなのだろう。処分とはつまり、殺したということ。だから結菜は生き残り。

 

「『処分』の方法は毒ガス、子供達はなんとか結菜だけを外逃すことに成功し、それでも結菜の身体には吸ってしまった毒がまわってしまっていた。瀕死の状態で倒れている中、当時たまたま留学してその場に居合わせた私が眷属として悪魔に転生させたということよ」

 

 この説明で一番のショックを受けてたのはアーシアだった。元教会の修道女であるアーシア、教会が裏でこんな悪逆非道なことを行っていたなど早々には信じられないだろう。オカルト研究部のメンバーも知らなかったらしく、みんなが言葉を失っていた。そこで、結菜の視線が切彦に向けられる。

 

「フリードが仕事で"聖剣計画"に関わっていたらしいけど、それはどういう風に関わっていたの?切彦ちゃん」

 

 その言葉は、遠回しな殺害予告だった。フリードは師匠とよく世界を周り、《正義》の味方として活動していたことはイッセーも知っている。だから決して悪にはつかないと信じたいが、もし万が一があった場合、結菜は次にフリードと出会った時に刺し違えても殺しに行く気だ。どのように切彦が話を聞いているか分からないが、イッセーは腕の中で縮こまる切彦に心配そうな視線を向ける。

 

「……すみません。詳しくは何も言っていないんです」

「……そう、分かったよ」

 

 イッセーの心配を他所に、困ったように答える切彦。そこで漸くイッセーは思い出す。フリードは仕事などに関してはなかなか口が硬いことを。

 

 結菜も深く追求はせず、しかし、早足で部室から出て行ってしまう。それを止めるべきかとイッセーは逡巡するが、リアスが首を横に振ったのを見てやめた。1人で考えるということも必要だろう。

 

 イッセーたちの日常は、ここに来てまた崩れ始めていた。




ご感想、誤字脱字等のご指摘よろしくお願いいたします。

それではまた次回でお会いしましょう。
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