長い間をあけてしまい、大変申し訳ございません。
年末と年始はスケジュールが詰み詰みで…本編がどこまで進んだのかすら忘れていました。
ちょっとごちゃごちゃしてるかもしれませんが、本編お楽しみください。
「Steel is my body, and fire is my blood. 」
ーー少年は眼前に広がる剣戟の極地を眼にし、これだと感じた。この力があれば、己の生に何か意味を成せるかもしれないと。今見てる世界が変わって見えるかもしれないと。
「I have created over a thousand blades. 」
ーー赤い背は、そんな少年からの羨望の眼差しを受けながら、迫り来る悪鬼を猛々しく唸る双剣で切り裂いた。
〜〜〜
ここ最近、結菜の表情は憂いを帯びたものばかりであった。来週には球技大会を控え、部活対抗の競技もある。そのため、リアスは闘争心を燃やし、悪魔の時間帯である夜間が訪れるまでの部活は球技大会の練習が主となっていた。【レーティングゲーム】での敗北から、今までより一層勝利への執着心が高まったリアスはオカルト研究部の中で一番やる気を漲らせて練習に励んでいる。
しかし、その中でも結菜は常に何か考え事をしているようで、競技の一つである野球の練習中も1人上の空だった。幸い、オカルト研究部はイッセーたちの入部で人数がそこそこ増えたため、今回の球技大会は結菜が無理をして出る必要は無いと言える。部員たちもそれを理解し、リアスの言う通り、部の一員として練習には参加させているが、強要はせず結菜に考える時間を与えているのだ。
結菜は夜間の活動が終わった後も街中を警邏していた。聖剣を探しているのだろう。フリードと接触したことから、敵の根源はこの駒王町に潜伏していることが分かっていた。結菜がよっぽど危険な状況にならない限り、介入の必要は無いとリアスからの指示を受けているため、みんな心配はしながらもそっと様子を見ているといった状態だ。
今日もこれから球技大会に向けての練習で、イッセーはキンジと旧校舎に向かっていた。掃除のため夕乃と切彦とアーシアには先に行ってもらい、急ぎ足で向かっている。旧校舎が近くなってきた頃、2人して珍しい気配を感じ、旧校舎の部室の方を見た。
「生徒会長?悪魔ということは知ってたけど、やっぱ部長と面識あったんだ」
「最近悪魔になった奴の気配もあるな。また面倒ごとか?」
大事な話だったら困ると軽く走りながら言葉をかわす。部室の扉を開き、中を覗けばソファに礼儀正しく座る生徒会長の支取蒼那、その後ろに佇む新たに書記となった匙元士郎がいた。この学園に在籍悪魔の名前は一部を除いて覚えているイッセーとキンジは、先輩である支取に一礼し、対面のソファに座るリアスの後ろまで行く。
「すいません、少し遅れました」
「理由は聴いてるわ」
「それで、生徒会長と書記が来てますけど、何かありましたか?」
イッセーがリアスに聞くと、支取の後ろに立っていた匙が鼻を鳴らした。
「なんだ、リアス先輩、俺たちのことを兵藤たちに話してなかったんですか?」
「ん?あぁその点については問題無いぞ匙元士郎。最近生徒会長の悪魔になり、書記になったんだろ?この学園の悪魔は殆ど熟知しているからちゃんと名前も覚えてるし、自己紹介も必要はない」
「ま、そういうことで同じ悪魔としてこれからよろしく」
匙に答えたのはキンジ。イッセーからはサラリと挨拶される。悪魔ではない普通の人間であるキンジに正体がバレていたことに眼を丸くするが、既に主である支取から普通ではない人物のことはあらかじめ教えられていたため、「お、おう」と渋々引き下がった。恥ずかしかったのか、顔が若干赤くなっている。
そんな自分の眷属に嘆息し、支取がイッセーとキンジに視線を向けた。
「ある程度は予想されていると思いますが、私はこの駒王学園の生徒会長である支取蒼那もとい、上級悪魔であるシトリー家の後継者のソーナ・シトリーと申します。私の『兵士』がつまらない粗相をしてしまい、申し訳ありません。あなたたち、特に兵藤君に関して詳しく教えていなかったもので」
「はぁ。俺も最近悪魔になったばかりなので匙とは何ら変わりないかと思いますが」
礼儀正しい支取もといソーナに、イッセーはそう返してしまうが、そこでまたもや匙が割り込んできた。
「変わりない?おいおい、一緒は勘弁してくれよ兵藤。俺は『兵士』の駒を4個も消費したんだぜ?」
「へぇ、それはすごいな」
自慢気に語る匙。ソーナは再び重い溜息を零すが、イッセーは特に何も感じなかったようで、適当に返事をしてしまう。正直、だからなんだという感じだ。匙はイッセーの淡白な反応に苛立ったようだが、何かを言う前にソーナに止められた。
「匙、私に恥をかかせるのはやめてください。兵藤君は通常の駒8個全てを注ぎ込んでも転生させることができず、『変異の駒』転生した特別な悪魔。何個分の潜在能力かは定かではありませんし、あのライザー・フェニックス相手に"神器"を使わず勝利したのですよ」
ソーナの言葉にイッセーと匙を除く部室内全ての者たちが頷いた。一斉に同じタイミング。これは真実としか言いようがない。
匙の顔から余裕が一切消える。それもそのはずで、ライザーはリアスと肩を並べる上級悪魔の1人で、更に成人もしており実力的にはリアスをも超える強さを持つのだ。その上不死身である。そのライザーが悪魔に転生して日が浅く、しかも人間が人外と対等に戦えるための武器である"神器"を使われずに敗北したときた。本来ならば鼻で笑って軽く一蹴する言葉だが、まさか自分が最も心酔しているソーナの口から聞いてしまったのでは簡単に聞き流せない。
「それって、マジで言ってんすか?俺はてっきり朱乃先輩かリアス先輩が倒したものだと……」
「婚約披露宴で部長を助けに行ったのに、その部長がライザーと戦ってたら色々可笑しいだろ。俺らの殴り込みの意味考えろっての」
話の内容を忘れるくらいにはショックを受けてしまったらしい匙に、キンジが嘆息混じりにツッコミをいれる。そういえば、と今度はキンジたちの方を凝視する匙。
「何で悪魔じゃない夕乃先輩や切彦、キンジがいるんだ?」
「聞いてきてないんですか?」
「そんくらい把握してこいよ……」
「……同じたいみんぐで入部したんです」
匙の残り少ないライフを繋いだのは大人しい切彦だった。いつも通り棒読みの英語だが、ちゃんと聞き取ることができた。匙は唯一まともな返しをしてくれた切彦に感激したのか、軽く涙を流している。
「……今この場で俺に味方してくれるのは君だけだ」
「……ふぁいと」
問いの尽くが容赦の無い切返しにされた匙だが、結局聞きたいことが聞けず、頭の中はこんがらがったまま。その様子を苦笑いしながら見ていたイッセーは、自分たちのことを説明することにした。
「ーーま、こんなところかな」
イッセーが大体のことを説明し終わると、匙は漸く納得がいったという感じの表情で頷き、同時に少々悲痛な表情をしていた。イッセーが話した内容の中に、イッセーが悪魔に転生した時のことも一緒に話したのだ。ウェスカーについて何か知らないか聞いてみたが、悪魔の間では余り知られていないらしい。逆に、"邪龍サマエル"に関しては、これ以上にないほど匙とソーナが反応した。それだけ有名な龍のようだ。いい意味ではないが。
ライザーとの戦いに関しても、施設のことを混じえ、キンジたちのことと一緒に"角"の話までし、その力でライザーを倒したと語った。その説明中、匙の中でこいつだけは絶対怒らせないと固く決意をしたりするが、それは本人以外誰も知らない。
「悪いな兵藤、俺は少しお前を誤解していたみたいだ」
「あえてその誤解がどういう誤解かは聞かないでおく。ーーそろそろ話を戻した方がいいんじゃないですか?俺たちのせいで脱線したみたいですが」
「えぇ、そうですね」
イッセーたちが来た途端、話が大いに脱線することとなったが、そもそも何のことについて話しているのかイッセーとキンジは分からない。
ソーナの話が再開されたが、話の内容はイッセーたちルーキーの悪魔たちに対しての紹介が目的で、イッセーが説明していた時点でその話は終わっていたようだ。イッセーたちが来る前までは、リアスが髪を切った理由などを聞いていたらしい。簡単に言えば、部室でガールズトークを開いていたのである。それまで匙は蚊帳の外だったようだ。
「さて、私は生徒会の仕事がありますので、これで失礼させてもらいます。リアス、球技大会が楽しみね」
「えぇ、本当に」
互いに闘志を燃やし、好戦的な笑みを浮かべながら別れるリアスとソーナ。基本的に大変仲が良いようだ。
〜〜〜
人気の一切無い廃屋。辺りには嵐でもきたかのようにガラクタや生物であったであろう残骸が存外に散りばめられ、壁には赤というよりはドス黒いといった方がしっくりくる液体が雑に広がっていた。暗さ故にその不気味さを数倍以上にしていた。ここにはもともとはぐれ悪魔が己の住処としていた隠れ家なのだが、そのはぐれ悪魔であった者は、原型を留めないほどミンチにされ、廃屋の壁に叩きつけられていた。臓物もひたすら抉りだされ、部屋の中に乱雑な状態で捨てられている。
異臭が激しい廃屋の中、その惨状に背を向け、窓からの外を眺めるフリード。その手には彼が駄剣と称した聖剣エクスカリバーが握られている。その背後では、はぐれ悪魔をここまで残酷に壊した張本人である"レッドキャップ"が半壊したテーブルに腰掛け、首を鳴らしていた。
「ここ数日、この町の神父っつぅ神父に奇襲をかけております俺っちたちですが〜、未だに駄剣二号に巡り会えていない事実。どうしろってんじゃい」
「仕方ないさ。当たりが来るまでの辛抱だ」
「ここ最近神父がこんなに出没してる理由分かるっしょ?教会からの派遣よ?じゃあその1人を吊るし上げて聖剣持ってる奴の特徴でも聞き出せば良いと思った訳ですよ。なぁのぉにぃ〜、な・ん・で聞く前に毎度毎度ぶっ殺しちゃうん!?」
頭を抱えながら身体を大きく背後に逸らすフリード。ここまでこの破天荒な男を狂わせるとは、なかなか腐っている性格の持ち主の"レッドキャップ"。荒ぶるフリードに、肩を竦めながら応えた。
「仕方ないさ、獲物は動かなくなるまで徹底的に壊すのが俺の主義でね。そこに手加減などあるわけがない」
遠回しでもなく、ど直球で反省無しの言葉がフリードに突き刺さった。さも当然というように語る"レッドキャップ"。普段は破天荒なフリードも、払われた分の仕事は律儀にキッチリとこなす性格なため、彼の行動はただの足手まといに他ならない。実力は確かなのだが、敵と判断した相手を見境無く殺してしまえば仕事にならないのだ。
「そろそろ教会側も俺っちたちに警戒してくる頃だろうしなぁ。そうなると意図的に俺っちたちの縄張りを遠ざけて行きそうだわ〜」
「突入させた神父たちの悉くが消息不明だからな、そう考えるのが利口だ。しかし、そうなると仕事が進まんな」
「お・ま・え・のせいだかんな!?こんな早々に目立ったらボスさんに何言われるか分かんねぇしバルパーのおっさんに急かされるし神父たちには避けられるし負の連鎖がエンドレスしそうじゃあ!!」
いつもと立場が逆になっても口調まではあまり変わらないフリード。頭を抱えながらもその様子はどこか余裕を漂わせているようにも見える。それすらも察していたのか、一頻り叫び終わったフリードに"レッドキャップ"は含みのある声音で聞いた。
「なら、そろそろお遊びは終わりにして本格的に動くか?こうなった時の術は持っているんだろう?」
どこまでこの男に情報を握られているのか、フリードは喚き散らしていた雰囲気とは一変、真面目な顔をつくる。はぐれとはいえフリードは元神父、しかも最年少の天才児と呼ばれた実力者だ。それほどにもなれば自然とフリードを味方につけようと情報提供などをしてくる輩などがいるわけで、その際に聞いた新しい聖剣の適性者を探せばいいだけ。
(あれ、最初っからそうした方が効率良くね?)
今の今まで忘れていたなど決してない。ないったらない。顔だけはシリアス、内面は言わずとも分かるであろう状態のフリードは大仰に頷きつつ適性者の情報を思い出す。
「確か……最後に聞いた1番新しいのはどっちも女だったような……」
「今まで殺した奴の中に女性はいない。これからは女性を中心に殺せば良いということか」
「いやいや良くない良くない」
サラッと殺害予告をする"レッドキャップ"に頭を抑え、エクスカリバーを肩に担ぎ直す。殺害する気はないが、黙っていたとしても何も始まらない。行動を起こすことに意味があるのだ。
「とりあえず、俺っちの記憶力を信じてそれっぽい女を探しますかねぇ」
「出会い際のボディタッチは即セクハラとして警察にぶち込んでやろう」
「やらねぇよ!!」
〜〜〜
球技大会当日、大会は大盛況だった。全ての種目が白熱する中、一際人気を見せたのがリアスとソーナのテニス対決。お互いこの学園を代表する美少女であるが故に、コートは応援する生徒で囲まれて公式戦決勝のような雰囲気を醸し出していた。リアス、ソーナ共に上級悪魔であり運動神経が抜群なため、プロ顔負けの試合展開に場は更なる盛り上がりを見せる。両者のラケットが壊れ、引き分けで決着は着かなかったが、観客たちは満足した表情をしていた。
部活対抗戦の種目はドッチボール。正直、どの種目に出たとしても圧倒的な身体スペック上圧勝という形で終わりそうなのだが、意外なことに、イッセーは戦いにおいて尋常ならざる身体能力を持っておきながらスポーツに関しては大した運動能力を発揮できないため、頭を唸らせていた。唯一の弱点かもしれない。
その横では同じく切彦が頭を唸らせていた。刃物を持たない時の切彦は運動神経がイッセーよりも低くなり、アーシアより少しマシ程度まで下がってしまうのだ。そのため、ドッチボールのように激しく動いたり反射神経が必要となる運動は苦手だったりする。
「足を引っ張らない程度に頑張るか……」
「……はい」
その様子を和やかに見ていた夕乃は運動神経抜群の万能なお姉様。イッセーとは大違いだ。
「私も全力でカバーしますから楽しんでくださいね?」
「はい」
「……はい」
そして迎えたドッチボール。それはそれは一方的な蹂躙劇(主に夕乃と朱乃とリアスと子猫による)となった。相手が投げたボールを夕乃が全て余さずキャッチし、上記の3人にパス。そこから投げられる悪魔の剛速球に耐えられる生徒はこの学園にはごく僅かしかいないだろう。
ただ突っ立っているだけで終わってしまったイッセーは、何やら他部活に対しての罪悪感に苛まれたが、これも一つの勝負、勝負はいつも残酷と割り切って考えることを放棄した。
〜〜〜
キンジは動く度に揺れる凶器から必死に視線を逃していた結果、イッセーと同じく何もすることなく試合を乗り切った。ゴッソリと削られた精神を回復させるため、自販機で買った缶コーヒーを飲む。
(あぁ……これだから体育系の大会は苦手だ。一々ヒスってたらいつ警察に出頭することになるか分からねぇ)
コーヒーを飲みきり、イッセーたちに合流しに行こうとしたところで、飲み物を買いに来たらしい結菜と出くわした。結菜もイッセー同様立っていただけで試合を終えた。今日も浮かない顔をし、ずっと何かを考えているようだ。キンジと眼があっても、すぐに逸らしてしまう。キンジは軽く嘆息した。
「ここ最近お前が笑顔を見せないモンだからみんな心配してるぞ。考え事は纏まらないのか?」
「……うん。心配をかけてるのは分かってるんだけど、どうしても頭に思うのはあの聖剣のことだけ。頭から離れないんだ。ゴメンね」
すっかりと慣れてしまった結菜の浮かない顔。どれだけ溜め込んでいるものを吐き出そうが、過去を変えることはできない。瞳の中には衰えを一切見せない深い深い憎悪が見てとれた。
ここでその場を知らないキンジが何かを言うのは結菜の怒りを買う恐れがある。
(何も言わないでおくか、だが、このままだとこいつが壊れちまそうだし、どうしたもんか)
腕を組み、少しの間思考に浸る。仲間がピンチとあれば、キンジは必ず手を差し出す男だ。自分の手が届く範囲の人々を守る力、それがキンジの願った力であり、そのためにこの身体を修行で苛め抜いた。『ヒステリアモード』も、そのためならば全力で使う。
「血眼になって復讐するのを俺は止めない。だがな、お前がもし道を踏み外そうになったり、命の危機に瀕した時は否が応でも助けに入るからな」
その力を使う時まで、助けを求める声が聞こえるまで、キンジは静観を決めることにした。様々な感情で生きている人間たちがいるが、その中でキンジは冷酷な感情を持っていると思われてしまうかもしれない。止められるかもしれない仲間の正しいとは言えない行動を見逃す。親しい者からすれば、許された行動とはとても言えないかもしれない。
「うん、やっぱりイッセー君とキンジ君は優しいね」
「そういう環境で育ったからな。先に行ってるぞ」
「うん」
キンジは他人にはよっぽどのことが無い限り不干渉を決め込んでいる。単純に人見知りなところや体質的なものもあるのだが、キンジは無意識に壁を作ってしまっているのだ。しかし、先ほど結菜に対しては嘘偽りない言葉を送った。キンジの本心である。
結菜の横を通り、みんなの元へと向かう足取りはいつも通りのものだが、その表情はどこか決意に満ちたものであった。
急ぎで多少短めです。
いつも読んでくださる皆様に感謝を。
ご感想、誤字脱字等のご指摘お待ちしております。
それではまた次回でお会いしましょう。