希望と絶望を司る   作:虹好き

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どうも、虹好きです。

何か、全員が全員主人公っぽく描写してしまうせいで、なかなか筆が進まない今日ですが、頑張りたいと思います。

本編どうぞ。


怪談

「Have withstood pain to create many weapons. 」

 

 ーー正義の背中は、とても重く、とても哀しく、とても虚しく、とても寂しそうで、とても美しかった。

 

 

 

 ○

 

 

 

「……なぁ、岡部君。静雄君また仕事に行ってしもうたけど、意外とこの町危ない状況やないか?」

 

 施設のリビングルームで椅子の背もたれに寄っ掛かりながら、ジョーカーは向かいの席でドクターペッパーを豪快に煽る岡部に問いかけた。

 

 数度喉を鳴らし、軽く息を吐いた岡部は片眉を上げ、それこそ意外だというように悪戯な笑みを浮かべる。

 

「何だジョーカー。貴様ほどの男が施設の人間を心配するとは……明日の天気は嵐か?」

「そこまで自分変なコト言ったかいな。でも、今回に関しては、あの子達だけじゃ厳しい気がするんやけど?フリード君はフリード君で、今回も敵やろ?それに後2人ついてくるんやで?」

「戦力的には負ける気がしないんだがな」

 

 いやいや、とジョーカーは胸の前で手を振り、言葉をつくる。

 

「確かにイッセー君たちだけなら良かったんや。でも考えみぃ。この町の管轄はグレモリーやで?リアスちゃんも戦いに参加することを考えると、守りながら戦うのはちとキツイと思うんや」

「ならば、イッセー達と接触する前に、あの煩わしい羽虫を消せば良いだろう。あの程度なら1秒かからずに殺せるだろうに」

 

 岡部の言葉に押し黙るジョーカー。訳ありで無闇矢鱈と戦闘出来ないジョーカーとしては、戦えない自分の代わりに岡部か静雄に頼みたかったのだが、先程口にした通り、静雄は仕事で留守にしており、頼みの綱である岡部はこの反応。思わず溜め息が溢れた。

 

「こういう時に、あの『英雄』君達が居てくれると自分的には大いに助かるんやけどなぁ……」

「諦めろ。あいつは兎も角、残り2人は自由奔放すぎる。この世界を堪能しているか、新たに手に入れた身体で更なる高みを目指すかしているのだろう」

「しかし、あれやなぁ。生前、武を極めた者が再び世界に受肉を果たし、その先を目指す。人の身でありながら、自分ら(・・・)と同じ土俵に立つ実力は正直恐れ入ったわ」

 

 ドクターペッパーをもう一口煽り、喉を湿らせる岡部。

 

「最初はあんなにいがみ合っていたのにな。しかし、ここであいつらの話をすると、そろそろあいつの料理が恋しくなってくるところだ」

「せやな。ま、イッセー君達には頑張ってもらうしかないことやし、暇な時間は酒で潰しましょ」

 

 台所から一升瓶を持ち出して来るジョーカー。

 

「貴様も飽きんな」

「そういう岡部君もドクペ何本目や?」

「今日はまだ6本目だ」

「自分と変わらんやないか」

 

 

 

 ○

 

 

 

 切彦は、外から突如として自分達を襲って来た爆炎の塊を、半ばから断ち切ることでイッセー達を守りつつ、素早く周囲を警戒した。

 

 真っ二つにされた爆炎は、ファミレス内を6割程呑み込んで爆風を起こす。

 

 イッセーは小猫と匙を、キンジはゼノヴィアとイリナの壁となるように炎に背を向けていた。

 

 ……"レッドキャップ"とフリードはこんな技を使わねぇ。何処のどいつだ?

 

「オイオイオイ!?何だ今の!?つか何で急に人がいなくなったんだよ!?」

「どうせ結界でも張ったんだろ。お前は男なんだから自分の身は自分で守れよ」

「こんな時でもお前は辛辣なのな!」

 

 匙の叫びを適当に流すキンジを横目に、切彦は外に踊り出る。余りにも突然の出来事で相手も分からないこの状況、囮は必要だろうという判断からだ。

 

 ……目立った気配は一切ねぇ。

 

 爆炎の余波によって破壊、または融解された通路以外、特に変わった箇所は一切ない。

 

「今のは一体何だったんだ?」

「こんな広範囲に渡る結界なんて聞いたことないわ」

「……イッセー先輩、襲撃者は分かりますか?」

 

 小猫たちを守るような間合いで倍加を始めたイッセーに問う小猫。それにイッセーが応えるより早く、声を上げるものがいた。

 

「みんな大丈夫!?」

「……結菜先輩?」

「おお、お前もいたのか!」

 

 慌てた様子の結菜が魔剣を携えながら走り寄る。小猫と匙が反応することで、無事を確認したのか、ゼノヴィアとイリナの、正確にはエクスカリバーをひと睨みしてから安堵の息を吐いた。

 

 ……結菜もいるってことは、何らかの神器や能力を持つ者を強引にこの空間に引きずり込んだってところか。

 

 手元にあるバターナイフで何処まで応戦できるか不明だが、幸運なことに武器になりそうな物はそこら辺にいくらでも転がっている。

 

「ったく、面倒クセェがsearch&deathだぜ」

 

 

 

 ○

 

 

 

「あの炎が来る直前、異様な人間?を見たんだ」

「おいおい兄弟(ブラザー)、何でクエスチョンマークつけんだよ?確かに、こんなこと出来る奴がいるなら、気配で感知できるだろうが、生憎、何も感じなかったぞ?」

「それについては私も同意しよう」

「ボクも分からなかったな」

 

 キンジ達の意見に、イッセーも同意した。

 

「それについてなんだけど、俺も気配は全く分からなかった。でも、確実に言えることは、俺たちを襲ってきたのはそいつ以外に考えられないってことかな」

「どんな奴だったんだよ?」

 

 今度は匙が聞く。

 

「身長は凄く大きかった。多分、2メートルは越えてる。そして、人にしては長すぎる腕を持ってた」

「……2メートルの身長に長すぎる腕、それって……」

 

 小猫の反応に、みんなの視線が集中する。

 

「何か知ってるのか?」

「……えぇと、確信を持って言えるかと言われると微妙なんですけど、イッセー先輩が見たその人?は異様に全身が黒く、瞳は赤くありませんでしたか?」

「うんそうだった。そして、顔を見た瞬間、消えた(・・・)んだ」

「……やっぱり」

 

 合点がいったように頷く。それはゼノヴィアとイリナも同じようで、顔色を少々歪めていた。

 

「マズイことになったな。まさか、ここで"怪談"に遭遇することになるとは」

 

 ゼノヴィアの含んだような物言いに対し、疑問を浮かべるキンジ。

 

「"怪談"、だと?」

「そう、私達は昔、実在する怪談話を聞かされたことがあるの。話の締めに、"もし、奴に出会ってしまった場合、即座に逃げよ。背をむけ、振り返るな。絶対に、顔だけは見るな、殺されるぞ"ってね」

 

 イリナの言葉に、イッセーとキンジ、そして匙が目を見張った。

 

 小猫は2人の話に相槌を打ちつつ、

 

「……恐らく、教会でお二人は聞かされたものだと思いますが、これは、悪魔側でも言い伝えられる怪談なんです。曰く、それに気配は無い。曰く、それに心は無い。曰く、その顔を見てはならない。……古くから伝えられてきた、その怪談の名はーーー【エンダーマン】と言われてます」

 

 小猫の呟きとほぼ同時、イッセーはファミレスの外にいる切彦に目を向けた。

 

 切彦の真正面に、黒の存在がいた。

 

 

 

 ○

 

 

 

 まるで、いきなりその場に現れたような黒い存在を目の当たりにし、切彦は自然とバターナイフを握る手に、力が籠るのを感じた。

 

 ……何も感じなかった。こいつ……!

 

 バターナイフで逆袈裟斬りにしようと、黒い"顔"に目を向け、赤く染まる瞳を見た刹那、対象が消えた(・・・)

 

「……!?」

 

 次に感じたのは真横より迫り来る熱の塊。

 

 先程切彦達を襲った爆炎だ。

 

 その向こう側。そこに、今しがた切彦の目の前にいた筈の黒の存在がいた。

 

 ……どうなってやがる?

 

 身体を大きく回転させ、本来なら黒の存在を斬るはずだった逆袈裟斬りで爆炎を断つ。

 

 断った隙間から黒の顔が目に映りーーーまたしても消えた(・・・)

 

 代わりに聞こえるのは、風を凪ぐ音。

 

「……!」

 

 その音は、正確に切彦の首を刈る軌道を描き、吸い込まれるように行った。

 

 

 

 ○

 

 

 

 イッセーは切彦のもとへ行こうと、ファミレスの床を蹴り、窓から飛び出そうとしていた。

 

 目の前には、切彦の敗北が映し出されようとしている。

 

 切彦の"死"という敗北が。

 

「……動けよ……!」

 

 既に3回分の倍加を身体にかけており、切彦の場所までなら一歩半程で辿り着くことができるだろう。

 

 だが、

 

 ……それじゃ遅い。

 

 今の切彦の状態は、チェスで例えるなら、【チェックメイト】を宣言された状態だ。

 

 つまり、確定した敗北。覆すことの出来ない未来。

 

 右手に魔力の塊を宿し、切彦の顔に傷が付かないようの狙いを定める。

 

 黒の手刀は切彦の首から約30センチ程の距離まで縮められており、イッセーは地面を蹴ってファミレスの外に身を投げた状態だ。右手は引いてあり、『天龍の咆哮』の準備は完了している。

 

 目標は切彦と黒の存在の距離を遠ざけること。故に、貫通力は必要無い。魔力は圧縮せず、狭い範囲の衝撃波をイメージする。

 

 顔は見ない。小猫とゼノヴィアの話を聞く限り、そして、先程、切彦との攻防で見せた連続する瞬間移動の鍵の可能性があるからだ。

 

 的が大きいことから、胴体を狙う。

 

【チェックメイト】まで残り20センチを切った。

 

「『天龍の咆哮』」

 

 光が疾駆し、黒の存在を襲った。

 

 

 

 ○

 

 

 

「ナイスだぜ、お兄さん!」

 

 黒の存在はイッセーの『天龍の咆哮』によって向かいの建物に吹き飛ばされた。

 

 切彦はそう言いながらバターナイフを持つ右手を振り上げ、超アンダースローで黒の存在へと追撃を放つ。

 

 空気を味方につけ、無数の鎌鼬を生み出しつつ進むナイフは、真下の道路を割断しながら黒の存在へとぶち込まれた。

 

 建物に無数の亀裂が走り、結界内の建物が音を立てて崩れ落ちた。

 

 

 

 ○

 

 

 

 フリードは近くのビルの屋上から戦いの様子を見ていた。

 

「うっわ、相変わらず容赦ねぇなぁ"ギロチン"ちゃん」

「それはそうだろう。むしろ、奴相手に手を抜くことなどできん」

 

 崩れ落ちる建物の中、フリードは見ていた。黒の存在ーーー"エンダーマン"が消える(・・・)のを。

 

 ……これ俺っち達の出番無くね?

 

 

 

 ○

 

 

 

 イリナは突然眼前が黒に染まり、驚きのせいで身体を硬直させていた。

 

 その一瞬の隙によって、右手の装飾品に変えていた聖剣ーー『擬態の聖剣』が盗られるまで。

 

 ……な……!?

 

 思わず、痩身の身体を見上げてしまう。

 

 赤い瞳と目が合った。

 

 再び、黒の存在は消えた(・・・)

 

 

 

 ○

 

 

 

 ……やられた!

 

 ゼノヴィアは反応出来なかった自分を恥じた。

 

 誰も今の出来事に反応出来た者はいない。イッセーと似た雰囲気を持つ遠山キンジでも、ただただ唖然とするばかりであった。

 

 気配が全く無い未知の相手。一心不乱に視線を巡らせるが、何処から襲ってくるか分からない以上、迂闊に聖剣を振り回すこともできない。

 

「どこにいった!?」

「……イッセー先輩!?」

 

 小猫の悲鳴。ゼノヴィアは急いで外にいるイッセーに目を向ける。

 

 イッセーは『擬態の聖剣』に腹部を貫かれていた。

 

 

 

 ○

 

 

 

 イッセーは、己の腹に植え付けれた聖剣を一瞥し、直後、全身が焼けるような痛みに襲われた。

 

「……っ!」

 

 声を上げられない程の激痛。腹を喰い千切らんばかりに熱を発する聖剣は、一撃でイッセーを戦闘不能直前まで貶めた。

 

 身体に力を入れようとしても、激痛がそれを阻み、力を入れられない。

 

 五指を何とか動かし、聖剣を抜こうとしたが、逆に、イッセーは黒の存在に胸を蹴られ、強引に聖剣から離された。

 

 傷口からは止めどなく流血し、何かが勢いよく喉に込み上げてきた。止まらず口内まで上がりきり、口から滝のように滴り落ちるのは、イッセーの血液。

 

 視界が点滅し、地面に勢い良く膝を着いてしまう。

 

 黒の存在は、それを最後に、イッセーの視界から消え、切彦の絶叫が聞こえた。

 

 

 

 ○

 

 

 

 小猫は、今までにないくらい真剣な表情でイッセーに駆け寄った。悪魔の弱点である聖剣、その一刺しをまともに受けたのだ。

 

 傷口と口からは、未だ止まることを知らない血が流れている。匙とキンジも駆け寄り、止血を施していく。

 

 切彦は、周囲の建物を全て倒壊させ、黒の存在を探すが、何処にも見当たらない。

 

 ゼノヴィアと結菜も周囲の警戒に全神経を集中させていた。

 

 キンジと匙は険しい表情のまま、止血を行っている。

 

 ……この程度で死にませんよね?イッセー先輩。

 

 

 

 ○

 

 

 

「おいフリード、"エンダーマン"は何処に消えた?」

「俺っちが知るはずないっしょ。でも、聖剣を確保した以上、バルパーのおっさんのところにでも戻ってんじゃないですかねぇ」

「そうか」

「ここに居ると俺っち達にも被害が出るかもしれないから、俺っち的にそそくさとお暇したい気分でござんす」

「ふむ、それもそうだな。あの"ギロチン"と戦えないのが残念だ」

 

 

 

 ○

 

 

 

「止血は完了したぞ、兄弟(ブラザー)

「……ああ、迷惑をかけた」

 

 キンジはイッセーの応急手当てを終わらせていた。イッセーも喋れる程度には回復している。

 

 しかし、聖剣で貫かれた腹部は赤黒く焼き爛れ、暫く思い切った戦闘はさせられない。

 

 ……"エンダーマン"って言ったよな。あの瞬間移動、厄介すぎる。

 

 どんな速さで動けても、瞬間移動には劣る。瞬間移動が出来るだけで、こちらの勝率は皆無だ。速度を武器使う相手とは、それだけ難関な敵なのだ。

 

「……先輩、本当に大丈夫ですか?」

「大丈夫だよ。みんなのお蔭で大事には至らなかったからね」

 

 涙目でイッセーに抱きついて離れない小猫。その頭を撫でながらイッセーは弱々しいが、しっかりとした笑みをつくる。

 

 ……さて、問題は……。

 

 キンジはゼノヴィアに宥められているイリナに目を向ける。

 

 幼馴染であったイッセーが、己の聖剣で貫かれたという事実に、深くショックを受けているようだ。

 

「そして、切彦か」

 

 キンジ達を囲む建物は、全て瓦礫と化していた。その瓦礫の中、割れた硝子の破片を手に持ち佇む切彦。

 

 イッセーが無事と分かったのだろう。今は、その凶刃を振るおうとはしない。

 

「なぁ、あんな奴が今、この町にうじゃうじゃといるってのか?」

「……そうなる、な。それだけ敵も本気ってことだろ」

「でもイッセー君が……」

 

 匙と結菜は、戦力になれなかったことを悔いているようだった。

 

 正直、先の戦闘では、キンジ自身も足手纏いとなっていた。戦闘時間はほんの数分。その数分で、イッセーは致命傷になり得る傷を受けた。

 

 ……情けねぇな。

 

 "エンダーマン"が張った結界が、その効力を失い始め、結界が消えた箇所から本物の世界が現れ始めた。

 

 

 

 ○

 

 

 

 イリナは、地面に膝を着き、虚空を眺めていた。

 

 幼馴染の身体は、己の持つ聖剣にて貫かれた。悪魔の身であったため、その効果は通常の倍以上の物となり、イッセーは意識はあるものの、完璧に回復させることは出来ていない。

 

 原典(オリジナル)程の威力は無くとも、伝説に名を馳せた聖剣の名は伊達じゃないのだ。

 

 並の下級悪魔ならば、触れただけで灰に帰す力を持っている。更に最悪なのは、光が弱点の悪魔は、高位の聖剣の傷を負った場合、確率で後遺症を患うことがあった。

 

 ……この場合、私の所為でイッセー君は負うはずのない傷を負ったことになるのよね。

 

 教会で祝福を受け、聖剣の担い手に選ばれたイリナだが、現実は余りにも残酷なもので、聖なる希望の光は、イリナに真逆の結果を与えてしまった。

 

「……ごめんなさい」

 

 ふと、口に出た言葉。掠れたような声。

 

 恐らく、近くにいるゼノヴィアにすら聞こえなかったであろうその声。

 

 しかし、

 

「うん、許す」

「……え?」

 

 声の発生源。そこには、刺された箇所を抑えながら立ち上がっているイッセーがいた。

 

 額にはまだ痛みが引かないのか、大粒の汗を幾つもくっつけ、しかしながら、その顔には笑みが浮かんでいる。

 

 そこでイリナは、みんなから注目されていることに気が付いた。

 

 切彦は破壊を止め、キンジはイッセーを支えられるように近くに立ちながら、結菜は顔を悲痛に歪めながら、匙は居心地悪そうに、小猫はイッセーにしがみ付きながら、ゼノヴィアは心配そうな表情で、イリナを見ていた。

 

 イッセーは、小猫を離し、しっかりとした足取りでイリナに向かって歩いてくる。

 

「さっきまで笑顔で飯食ってた奴の顔つきじゃないな」

「それはそうでしょ。だって、私のせいでイッセー君は怪我したんだよ?」

 

 そう、私が油断したから、

 

「聖剣を奪われなければ、イッセー君は怪我しなかったんだよ?全部、私が悪いでしょう?」

「それは、まぁ、確かに」

 

 なら、

 

「なら、全部私がーー「でもさ、俺は生きてるよ?」ーーッ」

 

 イッセーの言葉に、開けた口を噤んでしまう。

 

 いつかの、まだイリナとイッセーが仲良く遊べていた頃と同じ笑顔で言われた言葉。

 

 ……その顔にその言葉は卑怯だよ、イッセー君。

 

 

 

 ○

 

 

 

「済まない。君の家族の手傷を負わせてしまったのは、此方の不手際が原因だ」

「そんな気にしなくていいぞ。アレは"エンダーマン"が強かっただけだ」

「だが、イリナは納得しないだろうさ。ああ見えて、精神面は強くなくてね。信仰心だけで言えば、私の数倍は熱心に祈っているよ」

「素晴らしいクリスチャンだな」

 

 ああ、

 

「だから、出来る限りの協力をさせてくれないか?」

「さっきと立場が逆になってるぞ?」

 

 仕方がないだろう、ここで強気で行ける奴などいるはずが無い。

 

「まぁ、願ったり叶ったりだ。丁度、俺たちにも明確な戦う意味が出てきたしな。ーーーコカビエルだったな?確実にブッ潰す」

 

 キンジの身体から、薄く緋いオーラが滲み出した。

 

 ゼノヴィアは雰囲気が一変したことに息を呑む。

 

「ま、そう考えると良かったんじゃねぇか?死ななきゃどうとでもなんだしよ」

 

 言葉使いすらも変わったキンジ。その表情は、戦を嬉々として楽しむ獰猛な獅子のようで、ゼノヴィアは頬に一筋の汗を流した。

 

「取り敢えず此処から出ようぜ、結界がもう消える」

 

 これから始まる、

 

「俺たちの反撃の為にも、な」




御感想及び、誤字脱字等の御指摘、どうぞお待ちしております。

では、また次回お会いしましょう。
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