サブタイトルってなんやねん。
某正義の味方をチート化しすぎたかもしれません。
フリードは、光銃の銃弾が、別の銃弾に弾かれたことを悟った。
視界の端に意識を置くと、愛しの家族の姿がある。
……ま、『
勝ち誇り、ついでにカッコつけて1発だけで済まさなければ良かった、と今更ながらに後悔するフリード。
今からトリガーを引いても遅いだろう。
そもそも、フリードの動きはキンジにバレていたのだ。
……『ヒステリアモード』になってるっぽいじゃねーの。
この銃技は、通常のキンジでは出来ない。というか、超人でなければ不可能だ。
結菜は、フリードの右腕目掛けて、魔剣を振ろうとしている。
予想外の妨害が連続しすぎてしまったために、フリードは、一旦離脱を試みることにした。
態勢を立て直す必要がある。
キンジの近くを見れば、切彦の姿も確認できた。
……切彦ちゃんは、この前勝負捨てて逃げたせいで激おこだった気がするでやんすよ……。
俺、今日死ぬんじゃね?割と本気で。本気と書いてガチで。
だが、死ぬ気など毛頭無い。
魔剣と己の間に、光銃を添えるように手放し、全力で後ろに飛び退いた。
先程同様、ぶつかり合った直後の硬直を狙った行動。
光銃は見るも無惨な状態になってしまったが、フリードには傷一つない。
結菜はその結果に顔を顰めるが、深追いすることはなく、ゼノヴィアのところまで下がっていった。
……危ねぇ危ねぇ。マジ空気読めよ
キンジに非難の目を向けるが、肩を竦めるのみで、まともな反応を返さない。
冷や汗が止まらなかったフリードは、とりあえず危機を脱したこともあり、一息ついて集中し直そうとした刹那、
「さっさと死にやがれカスが」
罵倒と共に一瞬で眼前に現れた切彦によって、強制的の休み時間を潰された。
武器が出刃包丁というだけで恐怖感が違う。
振りかぶられる包丁を、聖剣で防御しようとして───止めた。
「いやいやいや、切彦ちゅわん!?ガチで
「敵を殺すのは当たり前だろうがよ」
全身のバネを使って真横に跳ぶことで何とか回避したフリード。
たった今、己のいた場所に目を向ければ、ただの出刃包丁では絶対に出せない威力の亀裂がグランドに入っていた。
こんな一撃を、こんな聖剣で防御すれば、聖剣ごと真っ二つである。
「今から謝って許してもらえる可能性は?」
「ゼロだ」
取り付く島も無いとはまさにこのことだ。
───その時、その場の誰もが肥大する敵意に気付いた。
その発生源はフリードの背後に控える堕天使幹部、コカビエル。
獰猛な笑みを浮かべた彼は、戦意を隠すことなく、切彦達を睥睨していた。
○
「───仕留めた、と確信したんだがな。まさか、
「これは擬似的な神降しの模倣にすぎんさ。しっかりとした手順を踏まえれば、本当の意味で、あなたと打ち合える力を降ろせるんだが」
「それは出来ない相談だ。私は、この街を好いているのでね。そんな力と真正面から衝突すれば、この街、もしくは、日本という一つの国の終焉を飾ることになるだろう」
「違いない」
赤い外套の視線の先には、レッドキャップが無傷で立っている。
一瞬の隙を狙った、勝利を確信させる必殺の一矢は、しかしながらレッドキャップによって防がれた。
その手には、先ほどまでは存在しなかった三叉槍が握られている。
赤い外套が矢を放った直後、その槍を顕現させ、一振りのもとにいなしたのだ。
……あの三叉槍……まさか、かの有名な、それでいて破壊を司る神のものに酷似している。
もし、赤い外套の推測が正しければ、レッドキャップが本気で神降ろしを行った場合、世界を揺るがす大戦を覚悟する必要があった。
それだけの力を持つ神。それも、悪神に位置する最悪のものだ。
……下手すれば、ジョーカーと並ぶ実力か。
今顕現しているのは三叉槍のみ。
これ以上面倒事を増やされる前に、芽は摘んでおくべきだ、と赤い外套は思う。
ならば、やるべきことは一つだ。
両手に対を成す双剣を投影し───その片方を真上に向かって投擲した。
「どうやら、天秤は俺の方に傾き始めたようだな、正義の味方様?」
その意味を瞬時に察したのであろうレッドキャップは、三叉槍を背後に構え、縮地を超えた超加速を以って、赤い外套に接近した。
「やれやれ、まだ君たちは私を見くびっているようだな」
その接近に、動揺すら見せず、むしろ、余裕さえ感じさせる様子で、空いた手で新たな投影を開始する赤の外套。
上では、火球と双剣の片割れがぶつかり合い、その陰からエンダーマンが姿を現していた。
「
エンダーマンが次の一手を放つ前に、赤い外套は一振りの太刀を投影した。
刹那、レッドキャップは赤い外套の心臓部を狙い、三叉槍での一突きを放った。
○
……冗談じゃないぞこれは……!
一突きを入れる直前、目の前の"元"英雄が投影した太刀の正体を瞬時に把握したレッドキャップは、軽い焦燥を覚えながら攻めに力を注いでいた。
上空からエンダーマンも援護に加わろうとしている。
心臓を狙った突きは、双剣の片割れに横向きに弾かれた。
……守りに入れば殺られる───ッ!
あの太刀の真名を開放させてはいけない。
弾かれた際の衝撃を、遠心力の加速に変換し、鋭い左の回し蹴りを放つ。
それを後方に一歩下がるだけで回避し、右に太刀、左に双剣の片割れを構える赤い外套。
エンダーマンは、次の火球がまだ準備できていない。
レッドキャップは勝負所を把握した。
擬似的な神降ろしは、その武具の能力を数ランクダウンさせてしまうデメリットがある。
しかし、それでも一端の『神器』に匹敵、または、凌駕する力が宿っていることに変わりは無い。
故に、レッドキャップは、己が構える三叉槍にありったけの力を注ぎ込んだ。
三叉槍に輝きが灯る。
「ほう、やる気かね?」
「死ぬ気は無いんでな。精々、足掻かせてもらう」
赤の外套が持つ太刀も、レッドキャップの三叉槍に呼応するかのように、刀身から稲妻を生み出し始めた。
「行くぞ、【正義の味方】。これが俺の到達した一つの答えだ」
「そのようだな」
両者は至近距離で、その力をぶつけた。
「『
「『
夜の街中で、黄金と紅蓮が立ち上がった。
○
エンダーマンは、戦いの決着を見た。
雷と炎の宝具のぶつかり合いは、雷に軍配が上がった。
慣れや、出力の違いもあったことだろうが、赤い外套は、その一刀で、煌々と輝く炎ごとレッドキャップを斬り裂いたのだ。
予め、負けることを考えていたのであろうレッドキャップは、致命傷にならない箇所に刃を通し、吹き飛ばされたようだが、もはや戦闘続行は不可能。
素直に隙を見て撤退するはずだ。
だが、己にそんなことは関係無い。
上空から、赤の外套を見つめる。
此方に見向きもしないが、警戒は怠っていないようだ。
解放し終えた太刀は砂のように霧散し、手には双剣の片割れのみ。
……コロ、ス……。
『移り変わる視界』を連続で使用できれば、エンダーマンは、自身に勝算があることを確信していた。
ただ、それが出来ない状況である。
ならばどうするか。
決まっている、奥の手を使えばいい。
奴は、奴だけは確実に殺す。
だから、エンダーマンはその力を解放した。
己を偽り、己を操る。
───『マリオネットの心』
○
赤い外套は、上にいるエンダーマンの雰囲気が変化したことに気づいていた。
先ほどの一撃で、レッドキャップには戦闘不能の傷を与え、相当遠くまで吹き飛ばしている。
2対1の対立は崩され、サシの戦い。
先の戦いでの経験から、エンダーマンは、赤の外套にその能力を見切られている。
それでも戦いから手を引かないとなると、赤の外套に対して勝算を感じている奥の手があるか、はたまた、無謀な突撃か。
……奥の手、だな。
その理由は、雰囲気の変化にあった。
エンダーマンは、極度に存在感が薄い。
それは能力故か、そういう類の逸話が力の一端を担っているかは不明だが、少なくとも、正面からの衝突よりも、暗殺系の戦いがお似合いな能力だ。
しかし、今のエンダーマンからは、圧倒的な存在感を感じた。
……まるで、大きな魔力の岩石のような、圧倒的な存在感。
赤の外套は思った。
また、仕事が増えた、と。
そして、何かに合わせるように、重心を下に下げた。
直後、上から黒の奇襲が来た。
○
レッドキャップは、悲鳴を上げる身体に喝を入れながら、赤い外套とエンダーマンの衝突を見ていた。
赤の外套が持つ双剣の片割れを恐れもせず、真上から一回転で加速力を加えた踵落としをぶち込みに行くエンダーマン。
以前の彼の戦いとは打って変わった近接戦闘に、レッドキャップは訝しげな視線を送っていた。
戦いの邪魔をしないために、エンダーマンの瞳を見ないようにしながら戦闘を見守る。
案の定、エンダーマンの踵落としは重心を下げ、衝撃に備えた赤い外套の剣に防がれたが、それでも、その一撃は大地を陥没させ、静かな地響きを伝えていた。
それよりもレッドキャップが気になったことは、刀身の部分で防がれたのにも関わらず、エンダーマンの脚に傷一つ付いていないことだった。
……どうなっている?雰囲気の変化のみでここまで変わることなど、本来あり得ないことだ。
エンダーマンは、赤の外套が微動だにしないことを知ると、なんと、刀身に足首を食い込ませ、まだ地面に付いていない身体を横向きに変えた。
そのまま刀身を沿うように脚を滑らせ、赤い外套の手首を刈り取る勢いで足刀を放ったのだ。
赤の外套は双剣から手を放し、その場から後退することで、これを回避する。
その際に、レッドキャップは、手放された双剣の片割れが瞬間的に膨張し、溜め込まれた魔力が暴走を起こすところを見た。
結果、その双剣の片割れは、エンダーマンを丸々吞み込む形で爆発を起こし、その余波はレッドキャップのところにまで及んだ。
右腕で頭部を庇い、視線は爆発の中に置く。
赤の外套は、エンダーマンが無事だと気づいているのだろう。
瞬時に同じ陰陽の双剣を投影した。
そこを見計らったように、某世界的有名な歌手が行う、両脚を軸とした回転で爆発の余波を吹き飛ばしたエンダーマンが不規則な態勢からの特攻を試みた。
操り人形のような軌道を描くエンダーマンに対し、赤の外套は左斜め下から掬い上げるように双剣で回転斬りを見舞う。
それはエンダーマンの左脚の足刀とぶつかり合い、微かな火花を散らせ、赤の外套は振り上げた双剣を頭上で交差し、下に叩きつけるように振り下ろす。
それは、エンダーマンが左足刀の勢いを生かした、右での後ろ回し蹴りと衝突した。
脚を使っていることもあり、エンダーマンに分があるかと思われたそれは、予想を覆し、エンダーマンが推され、態勢を崩す形をつくった。
そこを狙い、双剣を構え、大きく一歩踏み込む赤の外套。
エンダーマンが、不可解な角度から手刀と貫手を繰り出すが、全て双剣で払われ、その身に双剣が突き立てられた。
……これ程とはな……。
レッドキャップが感心しながら見ている中、吹き飛ばされたエンダーマンに向かって双剣を投擲する赤の外套。
エンダーマンも負けじと両の手から極小の火球を出現させ、赤の外套へと放った。
二箇所で爆発が起きた。
○
赤の外套は、接近する2つの火球に、7枚の花弁のような盾を投影することで防御を成功させていた。
ぶつかる寸前で、赤の外套の3倍近くまで膨張した火球だが、この盾の前では無力だったようだ。
赤の外套はエンダーマンに目を向ける。
煙に包まれてはいるが、赤の外套にとって、煙などは障害物にならないにも等しい。
……無傷では無いが、まだ戦えるな。
弓を投影し、トドメを刺すための矢を番え───近づくレッドキャップに嘆息する。
「撤退かね?」
「そんなところだ。エンダーマンはまだ戦えるだろうが、俺は限界でね。降参だ」
両手を上げ、降参のポーズをとりながら不敵に笑うレッドキャップ。
身体が悲鳴を上げる程度には痛めつけた筈だが、なかなかどうして、元でもあの流派の人間は、痛みに強い。
「【レッドキャップ】なんて大層なニックネームだが、馬鹿弟子と同じ雇い主のもとで活動しているらしいな」
「それが殺し屋だからな。金が出るならどんな仕事でも引き受けるさ。今回の仕事はこれで終わるだがね」
「報酬分の仕事はした、と?」
「そういうことだ」
赤の外套は、動かずにいるエンダーマンに目を向け、
「こっちはまだやる気のようだが?」
「なに、ムキになっているだけさ。本当は分かっているはずだ。今の実力じゃ、あなたには勝てないと」
「……はぁ、まぁ、昔のよしみだ。今回だけは見逃してやろう。次は無いと思えよ?───赤馬隻」
「もちろん。次こそは、本当の力を開放してあなたに挑むさ───エミヤさん」
○
去って行くエミヤの後ろ姿を見送りつつ、レッドキャップ───赤馬隻はエンダーマンに声をかけた。
「今回は抑えておけ。俺が止めなければ、お前は本当に殺されるところだったぞ」
「……」
エンダーマンは、スイッチが切れたかのように雰囲気が変わり、存在感も極端に薄くなった。
そのまま、音も無くその場を去る。
思い入れは一つもないが、一応は同じ主を持った仲間だった。
次は敵でも、今だけは命を預かってやることにする。
だが、もう直ぐ今夜の戦いも終わることだろう。
「次はどんな形で出会うかな。早く再会したいよユウちゃん。そして、弟分」
赤馬の独り言は、駒王学園のグランドに向かって紡がれた。
○
バルパーは、コカビエルの戦意に半ば呑まれかけていた。
……これが、堕天使幹部の覇気か……!
流石、かの大戦を生き残った古強者である。
バルパーは、コカビエルが戦意を向けている相手───たった今、フリードに全力の回避を行わせた少女を見た。
確かに、その実力は人間の中では相当上位に位置することだろう。
だが、それも人間の中での話。
堕天使や悪魔は、それ単体で人間を超越し得る存在だ。
人間が悪魔や堕天使に立ち向かうためには、『神器』を身に宿していなければほぼ戦闘にすらならず、その形すら残さぬ灰となろう。
……哀れな奴だ。ただの人間にしてはこの戦場に来るだけの実力を持っている。だが、コカビエルに目をつけられてしまえば、生きては帰れん。
そこでふと、何故、コカビエルはこんなにも、あの少女に戦意を向けているのかに思考を向けた。
バルパーは戦士ではない。
それ故に、誰がどれほどの強さを有しているかを、ザックリとした感じでしか感じ取ることができない。
だから、コカビエルがここまで獰猛に笑い、戦意を剥き出しにしている理由が分からなかった。
戦場から意識を逸らし、その理由を探ろうとしていたバルパーは、ここでの己の失態を悔いることになる。
思考を逸らさず、戦場での相手の出方を集中して伺っていれば、たった今、両肩を9mmの弾丸で撃ち抜かれることなどなかった筈だからだ。
○
……戦場が、動いたな。
ゼノヴィアは、フリードによって弾かれた聖剣を拾い、戦場の動きを確認していた。
今、キンジによって、バルパーがその両肩を撃ち抜かれ、両腕の制御が効かなくなっている。
フリードは、戦意が剥き出しになったコカビエルを見て、彼の隣まで退がっていた。
切彦はそれをただ見送るだけで、敵意をぶつけるコカビエルを睨み返している。
隣の結菜は呼吸を整え、新たな魔剣を創造していた。
……もう直ぐ、リアス・グレモリーとその眷属が到着する頃か。思ったよりも早く、コカビエルの奴が動き出してしまったな。
不思議と、焦燥はなかった。
肩を抑えようにも、どちらも撃ち抜かれているために、両腕をぶら下げた状態で膝を着くバルパー。
怨嗟のような慟哭が響き渡り、痛みに悶えている。
そして、13箇所の転移陣がグランド内を埋め尽くした。
コカビエルが、動き出したのだ。
○
……随分と数が多いな。
キンジは、転移陣の数を数え、緋色のバタフライナイフを取り出した。
もとより、イッセーを傷つけたことから、コカビエル達に関しては、確実にブチ殺すと決めているため、手を抜く気はゼロである。
やがて、転移陣から、巨大な三ツ首の巨大な魔物が姿を現した。
その正体にはすぐさま気づいたキンジであったが、思わず、腕を組んで唸ってしまう程度には面倒な相手であった。
……まさか、地獄の番犬ケルベロスを召喚するとは思わなかったな。
地獄の番犬ケルベロス。
死神ハーデスの従順なペットとして知られる魔物で、テュポーンなど、凶悪な神話の魔物達と兄弟分である厄介な魔物だ。
しかし、キンジの懸念しているところはそこではない。
……ケルベロスに、ベレッタの弾は効くんだろうか。
まさにそこである。
一応、主な武器は銃のキンジ。
そのメインウェポンが効かないとなると、残りの武器はバタフライナイフのみ。
……ナイフだけでどうやってあの犬っころを倒せと───、
目の前で、一頭のケルベロスが、切彦によって真っ二つに両断されていた。
……ええー……マジかよ。
まぁ、まずは銃から試してみよう。
○
コカビエルは高揚した気分でケルベロスを呼び出していた。
近くで断末魔を上げるバルパーが気にならない程度には気分がいい。
地獄の番犬を相手に、どれだけの戦いが出来るのかを見てみれば、フリードを退けたあの少女が、早速一頭を両断していた。
……一撃ときたか。人間の皮を被った化物のようだな。
もう1人の男の方を見る。
ケルベロスを相手に、人間の兵器の一つである銃を用いて、的確にケルベロスの目を潰した後、緋く輝くナイフで三ツ首の頸動脈を掻き切っていた。
こちらも人間ではない動きだ。
ケルベロスの攻撃を、全て紙一重で避けきり、されど、放つ攻撃は全て的確にケルベロスを穿つ。
無駄の無い、洗練された達人の動きだった。
聖剣使いと魔剣使いもそれぞれの武器を使い、ケルベロスを倒している。
やはり、聖剣は相性が良いのだろう。ケルベロスをほぼ両断する勢いで斬り裂き、一撃で倒していった。
魔剣使いは多少苦戦しているようだが、地面から針地獄のように魔剣を生やし、ケルベロスを腹部から串刺しにする。
戦い方は様々だが、隣のフリードが口笛を吹いて賞賛を送っており、戦いのプロですら納得のいく効率の良さでケルベロスを打倒していった。
「時間稼ぎにもならんな」
「そりゃそうですよ旦那。あの2人が別格すぎっからねぇ。命がいくつあっても足りないくらい、何度チビっても足りないくらい強いんですぜ?」
「認めてやる。あれは、俺が本気を出すのに相応しい相手だ」
「ちょっとはこっちを心配してもいいんじゃないか!?負傷してるんだぞ!?」
「わーぁお。どっかで犬みてぇにキャンキャン鳴いてるような声が聞こえまっせ旦那?」
「それだけ喋る元気があるなら大丈夫だ」
「なんだこれは。一種のいじめかね!?いい歳して私はいじめに合っているのか!?」
バルパーが五月蝿いが、今は無視だ。
そうこうしている間に、ケルベロスは全て倒されてしまっていた。
……地獄の番犬がなんの戦力にもならないか。
面白い。本当に面白い。
「フリード」
「へいへい、なんですかい旦那」
「お前は聖剣使いと魔剣使いをお願い出来るか?」
フリードは意外そうな顔をして、
「本気っすか?わざわざあの2人を?こう言っちゃなんですが、危険っすよ?どれくらい危険かってーと、俺っちが裸足で逃げ出すくらい危険っすよ?」
「それほどでなくては困るんだ」
このコカビエルを満足させるには、それほどの強者でなければいけない。
フリードはその意を汲んだのか、一つ頷くと、大振りの聖剣を肩に担いだ。
「まぁ、もしかしたら、1人は俺っち狙ってくるかもしれねぇですが、とりま、旦那の要望通りで行きやしょうか」
「早々に負けるなよ」
「あの2人には負けないっすなー」
フリードは軽口を叩きながら、再び聖剣使いと魔剣使いの方へと歩いて行く。
……ようやく、開幕だ。
手に光の槍を顕現させ、茶髪の少女と銃使いの男の方へと歩みを進める。
その顔は、歓喜に彩られていた。
○
……さぁて、イッセー君はまだですかねぇ。
フリードは、欠伸を噛み殺しながら結菜とゼノヴィアの前に立った。
2人は油断せずに構えているが、フリードは一切構えない。
聖剣を肩に乗せたまま、もう片方の手は神父服のポケットの中。
ぬくぬくやで。
集中など皆無だ。
フリード自身、コカビエルの実力を詳しくは知らないが、人間を辞めている2人に対し、単身で突っ込むなど無謀の極みである。
止めはした。だが、コカビエルは止まらなかった。
ならば、あとの責任は全てコカビエル自身のものとなる。
……報酬分の働きまではもうちょっとってところですからねぃ。ま、もう暫くは遊ばしてもらいましょーじゃあーりませんか。
聖剣を地面に刺し、大きく伸びをする。
その動作だけでゼノヴィアと結菜には緊張が走るのだが、知ったことでは無い。
身体を伸ばし終え、首を鳴らす。準備体操終了だ。
「───ッシャァ!やりますかお二人さーん」
速攻で、結菜が突っ込んで来た。
おかしい……主人公が全然出番無しとは……。
誤字脱字等の御指摘、どうぞよろしくお願いいたします。
感想ドシドシお待ちしてます。
というか、励みになるので書いてくれると嬉しいです。
次回でようやく主人公たち到着ですかね……。
ケルベロスとかもういないし。
あれ?主人公居なくても勝てるじゃね、コレ。
また、次回でお会いしましょう。