オリジナル展開すぎて描写困っちゃいました。
主人公達の出番が相変わらず……。
戦闘だけで何話描いてるんですかねー。
「───私達の弟子になりたい、だと?」
───少年は頷く。力強く、それでいて、覚悟を決めた表情で。
「……やめておきたまえ。こんな人生を歩むくらいならば、もっとマシな、───幸せな人生を探すんだな」
───黄金の鎧と、青い背中は何も言わないが、赤い背中は、少年と同じ目線で優しく言い聞かせる。
───だが、少年が首を縦に振ることはなかった。
「……もう、こんなのはゴメンだ。力が欲しい。悪を穿ち、正義を掲げる力が」
───少年は無意識に、両手を強く握り込んでいた。その顔は悲痛に歪み、だからこそ、少年から薄っすらと滲み出るオーラに、少年自身が気づくことができなかった。
「───貴様、その輝き……まさか、この時代に
───黄金の鎧が独り言を呟き、少年を見る目が変わる。
「フッ、フハハハハハッ!気に入ったぞ童よ!貴様のような器がまだ存在しているとは、いやはや、この世界は随分と
───笑い出した黄金の鎧。よく見れば、青い背中と赤い背中も同じように、少年を、少年の身体から溢れる異質なオーラを見つめていた。
「へぇ……こいつぁ鍛えがいがありそうじゃねぇか。おい坊主、名前はなんていう?」
「……フリード。フリード・セルゼン」
───青い背中は認める。こいつは弟子として鍛える価値があると。
「いいぜ。だが、お前のそれは、自分の獲物を持たねぇと機能しないだろうな。───おいアーチャー、お前が一番にこいつの師を受け持て」
「待て。私の意思は無視かね?ランサー」
「お前にも分かんだろ?こいつは、お前との相性が最も良い」
───赤い背中は渋る。そこへ、少年を擁護するように、黄金の鎧が言葉をつくった。
「貴様の贋作には苛立ちを湧き上がらせたが、この童は本当に化けるぞ?この
───青い背中と黄金の鎧は答えを示した。赤い背中は少年───フリードへと向き直り、緊張感を漂わせる視線で見つめた。
「……君、いや、お前が掲げる想いに到達するには、幾つもの試練を乗り越える必要がある。それでも、私達の手を取るか?」
───差し出された手に、フリードは迷わず掴み返すことで返答する。
「その覚悟、しかと受け取った。ならば、私達がお前の人生の道標となろう。先の2人に言われた通り、君は才能の塊だ。まずはお前自身の武具を創る。私が持ち得る全ての技術を授けよう。───付いて来い」
───少年は頷いた。赤い背中はそれに対して笑みを浮かべ、己の名を名乗った。
「自己紹介が遅れたな。今日から君の師となる───エミヤだ」
○
リアス達は学園の前にいた。朱乃と子猫も合流しており、グレモリー眷属は、1人を除いて全員集まっていた。
シトリー眷属が張っている結界内では、コカビエルのものと思われる、大きな力の奔流が感じられる。
……もうコカビエル自身が動き出しているのかしら?そうだとすると、少し急がなきゃダメね。
結界に集中しているソーナに声をかける。
「ソーナ、中の様子は?」
「相当荒れてるわね。コカビエルが何かを召喚したみたいだけど、すぐにその反応は消えたわ。その代わりに、コカビエルが本気を出した、ここからだとこれくらいしか分からないけれど、貴方の自慢の眷属にその仲間達は奮闘しているととらえてもらっていいわ」
「そこまで分かれば大丈夫よ」
次に、イッセーに声をかける。
「イッセー。貴方の『赤竜帝の籠手』の力を頼りにするわね」
「はい。今のうちから溜めておきます」
援軍はまだ来ない。それまではリアス達の力で堕天使の幹部を抑え込まなくてはいけない。
……倒す気で行くわ。
リアス達は結界内に入っていった。
○
バルパーは、両肩の痛みに悶えながら、フリードの戦いを観戦していたが、フリードの相手をする、リアス・グレモリー眷属の『騎士』を見て、謎の軽い懐かしさを覚えていた。
……あの顔立ち、何処かで見た覚えがあるはずだ。
その答えは、すぐに記憶から掘り起こされた。
……そういえば、昔行われていた聖剣計画で、奇妙な事件が起こったな。
あれは確か、被験者全てが聖剣に適合できず、処分を言い渡し、現場を離れていた時に起きたものだったな、と考えるバルパー。
その日は、被験者全てを毒ガスで処分する日だった。その前日にバルパーは本部に帰還しており、定期的な近況報告をしていたのだ。
事件は、その時に起きた。
……その場にいた聖剣計画の関係者は、私を除いて皆殺しにされ、被験者達は行方を眩ませた。
その中の1人に、たった今フリードと剣を交える少女と似た者がいたはずだ。
……あの頃はハーメルンの笛吹きだの、神隠しだので事件は迷宮入りしたが、そのお蔭で私の計画の背景を明るみにされ、教会を追放された。
まさか、このような再会をしようとは思わなんだ。
人違いかどうかをもう一度確認してみたが、あの少女は、フリードと戦っているように見えて、その実、聖剣にしか意識を向けていないことが分かる。
……隠そうともしないとは、それほどの憎悪を抱かせたか。
回復の術式を両肩にかけ、修復を完了する。
バルパーの聖剣計画は明るみにされたが、あの事件だけは世間に発表されず、被験者は全員死亡したことになっていた。
あの少女がどう生き残ったかは知らないが、今一度、絶望を教えてやろう。
○
結菜はフリードの持つ聖剣に向け、疾風の一撃を見舞っていた。
浅い踏み込みからの袈裟斬り。狙いは正眼に構えられた聖剣の柄。
フリードの腕から聖剣を手放させるつもりで行った。
対するフリードは口角を上げ、初めて聖剣を両手で持ち、袈裟斬りの軌道線上に聖剣の刃を引いてくる。
甲高い音が響き、互いの腕に僅かな痺れが走った。
「おお……!」
「良いですね良いですなぁ!」
視認することすら難しい高速の剣戟。
途中、結菜の魔剣が砕け散るが、間髪入れずに『魔剣創造』で新たな魔剣を複製し、フリードと打ち合う。
創造する魔剣は頑丈さよりも、軽さと扱いやすさを考慮した魔剣だ。
それを両手に創造し、手数でフリードに挑むが、なんとフリードは、大振りの聖剣でそのスピードに付いてきた。
「くっ……」
「まだまだギアチェンしてきていいですぜ?」
……強い……!
フリードに対し、純粋に思った感想。
全ての攻撃に的確な防御をし、更には隙すら見つけてそこを突く動きは、結菜に焦燥を与えるのに充分なものであった。
戦闘の焦りは、思わぬミスを生み出す。
結菜が、フリードとの間に感じてしまう壁。
それによって生じた、勝ちを急ごうとする動きは、フリードにとって反撃を行うには絶好のチャンスだった。
聖剣を下から斬り上げる。
結菜の魔剣はそれを防いだ瞬間に砕け、焦燥感を高め、創造力に僅かな齟齬を生じさせた。
「あっ……!?」
その場で起こした致命的なミス。
それは、『魔剣創造』の失敗。
フリードは、斬り上げと同時に地を蹴り、空中で両手持ちに変えた聖剣を振り下ろす準備を済ませている。
その聖剣から放たれる輝きに、憎悪の感情が湧き上がるが、───これだけはダメだ。
……どうしても、躱せない。
奥のバルパーが、この私を見て、嗤った気がした。
ゼノヴィアは、結菜を助けようと駆け出してくれている筈だ。しかし、間に合わない。
……突っ込んだのはダメだったなぁ……。
「やっぱ、主役は遅れて登場するものなんですかい?」
フリードが、口元をひくつかせながらそんな事を言った。
その時、この空間を震わせるほどの圧力を結菜は感じた。
萎んだ風船を、瞬時に破裂させたような、急激な膨張。
恐らく、そんな力の底上げをする者は、この街に1人しかいない。
あのフリードが、先ほどまでの余裕の態度を崩し、口元をひくつかせているのだ。
よく見れば、バルパーも目を見開いている。
後方で、急激な魔力の圧縮を感じた。
そして、その声は、確かに結菜に届いてきた。
「『
破壊を産む龍の咆哮が、フリードを呑み込んだ。
○
イッセーは、自身の一撃が、フリードを確かに穿ったことを確信した。
……手応えはバッチリ。
無茶するな?大丈夫、こんなの無茶の内に入らないから。
リアス達が引いてる?そんなわけない。
ただ、5倍で『天竜の咆哮』をぶっ放しただけだ。
こうしなければ、結菜が死んでいたのだから、致し方無い。
『天竜の咆哮』をまともに喰らったフリードは、バルパーの真横にまで吹き飛ばされ、その身体を軽く痙攣させているが、死んではいないので良しとする。
「……イッセー?夕乃に無茶はダメって言われなかったかしら?あなたは援護担当よね?一応」
「これっきりにするので大丈夫です」
「……でも、フリードが……」
「ああ、あいつなら、ほら、もう立ち上がってるし問題無いよ」
子猫がフリードへと顔を向ける。
イッセーの言う通り、神父服がボロボロになっていることを除けば、無傷同然に立ち上がっていた。
「彼、5倍のイッセー君の一撃を受けたはずですわよね?」
朱乃はフリードの驚異的な回復速度に驚愕していた。
……それもそうか。
イッセーは頭を揺さぶりながら聖剣を構え直しているフリードを見つめて思う。
イッセー達施設の人間は知っているため、当たり前に感じてしまうが、全快の状態では無いと言っても、5倍にしたイッセーの力を直に喰らってピンピンしているのだ。
4倍でかのライザーの『女王』である、ユーベルーナの切り札を圧倒したイッセーの、その上をいく5倍の『天竜の咆哮』。
それは、睨み合いを続けていたコカビエルの目を見開かせる程度には強力なものらしい。
そして、コカビエルさえもフリードが死んだと勘違いしていたのか、無傷のフリードに言葉を失っていた。
……まあ、フリードに埋め込まれている聖遺物は、エミヤさんが免許皆伝の証にと受け継がせた【神造兵器】だし、これくらい当然なんだよな。
説明しようにも、まことに信じられない事柄であるため、唸るイッセー。
「部長、長くなるので今度纏めて説明するってことでこの場は勘弁してもらえませんか?」
イッセーの妥協点に、リアスもこうなるだろうと予想はしていたらしく、頷きながら返事をした。
「ええ。今は、コカビエルに集中しましょう」
戦場に意識を戻す。
その時、バルパーが吼えた。
○
「フリード!何故全力で戦わないのだ!」
バルパーの苛立ちを交えた声に、結菜は視線をそちらに向けた。
バルパーの言わんとしていることは分かる。
フリードは、今まで一度もエクスカリバーの能力を一つも使わず、剣のみの戦いを行っていた。
……本当なら、私なんて瞬殺出来るはずなのに、何で……。
魔剣を創造し、フリードの答えを待つ。
正直、真剣勝負に手加減などされていたら、結菜はフリードを許さないだろう。どんな戦いであれ、命をかけてここに立っている結菜を侮辱する行為と変わらないからだ。
フリードはバルパーに顔だけを向け、面倒そうに声を出す。
「いやいや、バルパーのおっさん。相手が本気を出してないのに、こっちが本気を出す必要ってあるん?」
その言葉に、結菜は疑問を感じた。
何を言っているんだこいつは、と。
しかし、同時に思い至るものがあり、ゼノヴィアに顔を向ける。
「……気づいていたのか」
「そりゃあ、ねぇ?俺っちってそういうとこ鋭いですしおすし?」
おちゃらけた雰囲気だが、フリードはゼノヴィアの奥の手を知っていたようだ。
そして、フリードはもう一つ、と声を上げた。
「バルパーのおっさん」
「なんだ?」
「結菜ちゃんもおっさんに用あるみたいだし、おっさんもあんじゃね?って俺っち思うわけでさぁ。さっきからそれが気になって本気もクソも出せなかったってのはダメですかね?」
その言葉に、結菜は心臓を鷲掴みされたような感覚を得た。
○
バルパーはフリードに怪訝そうな眼差しを送っていた。
……こいつ……気づいていたのか?
聖剣計画のことを。まさか。
「そんな顔しなさんなって。ちょっと考えりゃあ分かることでしょーよ。ま、今はちとその話で場を盛り上げて欲しいってなわけでして」
どこまで知っているかは分からないが、全てが終わった後、キツく釘を刺す必要がありそうだ。
そのことを頭の隅に置きつつ、バルパーはグレモリー眷属の『騎士』───結菜に視線を向けた。
憎悪を混ぜた視線で睨み返してくる結菜。
……やはり、そうか。
自然と笑みが溢れた。
「貴様、【聖剣計画】の生き残りだな?」
「いいや、一度死んだよ。悪魔として転生することで命を繋いだ、あなたに復讐するために」
即答だった。ますます笑みが深まる。
「全く、数奇なものだ。こんな極東で出会うことになるとは」
「教会の非道な実験で命を落とした同志達の無念、ここで晴らさせてもらう」
バルパーは笑った。どうも、この小娘は知らないらしい。
高らかに笑いあげ、その顔を憤怒に変える。
「無念?無念だと?生き残りがいると聞いて希望を得たというのに、貴様すら知らないというのか」
バルパーの変化に、結菜は軽い戸惑いを隠せていない。
「【聖剣計画】は貴様の代で鎮座したよ。大々的にはな」
「何だって?」
「そもそも、何故聖剣を扱うことに適性があるか知っているのかね?」
結菜は押し黙る。
「聖剣を扱うには、因子が必要なのだ。その因子が適性に位置する数値に至っていなければ、上位の聖剣を扱うことはできない。この研究結果は、貴様らのおかげで出たと言っても過言では無い。
───だがな、教会の力を借り、大々的に研究出来たのも貴様らの代までだ。何故だと思う?」
結菜の額から、一筋の汗が流れた。
バルパーは、容赦無くその一言を放つ。怒りを露わにしながら。
「これは、教会の中で最重要機密事項とされ、公にすることを許されなかった大事件だ。
───皆殺しにされたのだよ。現場を離れていた私以外の【聖剣計画】の研究員達が。そして、貴様の同志とやらは、全て、謎の失踪を遂げた」
○
結菜は混乱していた。仇を討つために今まで生きてきた。
だが、バルパーさえも知りえない大事件によって、仲間達は行方を眩ませたと聞けば、今までの自分の人生全てを否定されたかのような衝撃を受ける。
近くまで来ていたリアス達もその話を聞き、バルパーを見つめていた。
「私は、行ってきた実験の全てを洗いざらい報告され、教会を追放された。しかし、協力者を募り、細々と研究を続けていた。貴様らの時に、被験者のほぼ全員に因子があることは分かっていた。ただ、適正となる数値に至っていなかっただけなのだからな。その研究は長い月日を経て功を成し、因子の結晶を精製することに成功した。被験者の身体から、因子のみを抜き取り、合成するという形でな」
結菜の隣にまで歩いてきたゼノヴィアが、その言葉に反応した。
「まさか、聖剣使いが祝福を受ける時、身体に入れられる結晶は───」
「その通り。私が創り出したものだ。教会にも腹黒い人間は数多くてな。私に協力的な人間に困ることは無かった。その報酬に、私は因子の結晶という『奇跡』を与えていたのさ」
「ミカエル様を欺いた、と?」
「ああ。聖剣使い自体が少ないだろう?多く造れば、ミカエルにバレる可能性が高まる。だが、少人数ならば、天然物として特別扱いされることだろうな」
「因子を抜いた、被験者はどうしたの?」
結菜の搾り出したような声。バルパーは結菜に無表情の顔を作った。
「微量でも因子が詰まっているということは、その身体の一部分を因子が担っていることになる。つまり、それを抜き取った身体は治療不可能の障害を得るのと同じ。───だから、殺したよ。貴様たちだけだ。私の実験で死ぬことのなかった者など。
いや、貴様だけかもしれんな。今日まで行方不明の仲間なぞ、生きているはずがなかろう」
その言葉は結菜の理性を壊すには十分過ぎる刃であった。
止めどなく涙が溢れる。
……ずっと、思っていた。ボクだけが生きていいのかって。
思い浮かぶ仲間の顔。
最後の最後まで、自分を逃がすために全力を費やしてくれたみんな。
……もう、良いかな?
散々この機を待った。
「結菜?大丈夫か?」
隣でゼノヴィアが声をかけてくるが、顔も向けずに無視した。
だって、そんなことできる状況じゃ無いから。
……ボクよりも、夢を持った子がいた。ボクよりも生きたがっていた子がいた。ボクよりも平和を望んでいた子がいた。
その全てを、目の前の男は奪い去っていた。
結菜の仲間だけじゃなく、その後も、何度も、何度も。
「結菜……」
部長の声がした。向ける顔が無い。こんな顔を向けたく無い。
嗚咽は無いのに、涙は止まらずに頬を延々と流れ続けていた。
今、あの悪を断ち切る力があれば、どんなに良いことだろう。
あの邪悪を斬り裂ける剣があれば、どれだけ良いことだろう。
ふと、無意識に、口が動いた。
「───」
実験の最中、唯一の希望としてみんなで歌った聖歌だった。
あの地獄の中で、唯一夢を保たせ、生きる糧となってくれたもの。
ああ、あの巨悪を討てるにならば、
結菜の身体が眩く輝き、学園全体を覆った。
○
『相棒、あいつ、至ったな』
……ああ。
イッセーは倍加を行いながら、結菜の姿を見ていた。
眩い輝きは神々しいの一言に尽きる。
……所有者の想いを糧に変化と進化をしながら強くなる【神器】の別の領域、それは、所有者の想いが、願いが、この世界に漂う「流れ」に逆らうほどの劇的な転じ方をしたときに起こる。
『そう、
……嬉しそうだな、ドライグ。
『そうか?いや、そうなのかもしれんな。さて、あちらは任せて、こちらに集中するとするか』
……ああ。
○
光が収縮していく。
……ボクは、剣となる。
フリードは、相変わらずの笑みを浮かべていた。
だが、そんなことはもうどうでもいい。
自分の中で、魔と聖の力が融合しているのを感じる。
これは、昇華だ。
その力を操り、言葉を紡ぐ。
「『
2つの力が急激に手元で一つに収束し、一本の剣の形をとりはじめた。
不思議と、創造の過程はスムーズに行われた。
手元に現れた剣を握りしめ、バルパーを睥睨する。
「───
バルパーの目が大きく見開かれた。
○
ゼノヴィアは、禁手に至った結菜の剣を見つめ、小さく笑った。
……これは、私も本気を出さねばならないらしい。
フリードに顔を向ける。
あちらもこちらを見ていた。
良いだろう、見せてやる。
左に聖剣を持ち変え、空いた右手を上に掲げた。
「ペトロ、バシレイオス、ディオニュシウス、そして聖母マリアよ。我が声に耳を傾けてくれ」
詠唱を唱え、空間に歪みを発生させる。
その中心に手を突っ込み、無造作に探った。
そして、目当ての柄を掴むと、勢いよく引き抜いた。
「この刃に宿りしセイントの御名において、我は解放する。───デュランダル!」
その手には、光り輝く大剣が握られていた。
フリードは口角をあげ、三日月のような笑みを作っている。
その顔に、笑みを浮かべ、結菜の隣に立った。
「御一緒させてもらっても構わないかな?」
「うん、背中は任せる」
聖魔剣にエクスカリバーに並ぶと云われる聖剣デュランダル。
「───お膳立てには十分だろう?」
○
「バカな……聖と魔の融合体だと!?相反する2つが組み合わさることなど、普通はありえない!」
フリードは、バルパーの嘆きに近い叫びを聞きながら、聖剣を強く握りしめた。
「バルパーのおっさん、どんなもんでも、バランスってのは大切なものですぜ?均衡するバランスが、何処かで崩れたとすれば、こんくらいのイレギュラーは日常茶飯事っしょ?」
「そうか!先の大戦で、先代の魔王は死んだ!それと同時に───」
「はいはい、奴さんの戦意を削ぐよーなことしないでねー。折角盛り上がってんのに、おっさんの一言で盛り下げたら全てがクルクルパーになっちゃいますですよー?」
バルパーが気づいた真実を口にさせるわけにはいかない。
……ただでさえ紙メンタルなんだからもー。
しかし、と。
フリードは結菜とゼノヴィアの持つ剣を眺め、自身の手元の聖剣と見比べる。
……こんな駄剣で勝てる気しないんですけど。
「フリード、勝てるのか?」
「任せてちょーだいっすよ」
ゆっくりと前に進みながら答える。
コカビエルの方の戦いも激化し始めていた。
愛する家族達が堕天使の幹部と戦っている。
……そろそろ、頃合いだよなぁ。
正直、時間もあまり無い。
起爆の術式が起動する前にカタをつけよう。
誤字脱字等のご指摘、どうぞよろしくお願いいたします。
感想もお待ちしてます。
設定が厳しくなってきた今日この頃。
また、次回でお会いしましょう。