希望と絶望を司る   作:虹好き

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どうも虹好きです。

そろそろ3巻終わるかなぁってところです。

もうちょっと詰め込みたい感が強いですね。

誤字の修正を行いました。


空に聳える極光の柱

 キンジと切彦は、コカビエルとの戦いが激化していくのを感じた。

 

 主に、キンジのみの力で。

 

 ……切彦、フリードに苛立つのは分かるけど、せめてもう少しこっちに集中してほしいな。

 

 コカビエルは空中から光の槍を投擲し、キンジは躱しながら銃で応戦しているのだが、切彦は躱すのみ。

 

 コカビエルの方すら見ず、結菜たちと戦うフリードに視線を送っていた。

 

 流石のコカビエルも、切彦の戦意が己に向いていないことを理解しており、その怒りでキンジ達に対する攻撃が激化しているのだ。

 

 ……俺たちは飛べないから、コカビエルに直接攻撃する手段が限られている。

 

 リアスたちも追いつき、それぞれコカビエルに攻撃を放ってはいるが、堕天使幹部という肩書きは伊達では無いのか、此方の攻撃は全てコカビエルの光の剣か槍に防がれてしまっていた。

 

「切彦?君ならあいつを引きずり下ろせるだろ?」

「うるせぇ」

 

 酷い。

 

「部長、どうにか出来ませんか?」

 

 メンタルに軽いダメージが入ったキンジは、リアスに助けを求めることにした。

 

 リアスか朱乃ならば、コカビエルをどうにかできるのでは無いかという、勝手な願望で。

 

「流石に、格が違いすぎるわね。イッセーの譲渡にも寄るけれど、それでもコカビエルの一撃と拮抗できるかどうか……」

「よし、兄弟(ブラザー)さっさと譲渡するんだ」

「良いけど、多分部長の言う通りの結果になると思うよ」

 

 冷静に返されてしまった。

 

 だが、イッセーが戦うにしても、先のような無茶は許されない。

 

 今も、朱乃がコカビエルに向かって雷の魔力弾を放っているが、どれもコカビエルの武器で裁かれてしまう。

 

 ……あー、これは面倒だな。

 

 その時、コカビエルが急激に魔力を高めるのを感じた。

 

 手元の光の槍に魔力は集中され、その質量を何倍にも膨れさせていく。

 

 ……煩わしいから纏めて消えろ、みたいな?

 

 コカビエルは大気を震えさせながら、大質量の光の槍を構え、キンジたちに向かって投じた。

 

 

 

 ○

 

 

 

 ……コレはどうだ?

 

 投じた光の軌道を見るコカビエル。

 

 ありったけの魔力を注ぎ込んだ槍は、グレモリー眷属など塵一つ残す事なく消し飛ばすはずだ。

 

 現に、目下のサーゼクスの妹は焦燥に駆られた表情で赤竜帝の小僧に何かを言っている。

 

 だが、もう遅い。

 

 今から魔力を込めたとしても、コカビエルが放った光の槍の質量には届かない。

 

 それに通じる魔力の充填を完了させる前に、光の槍は違いなく目標を穿つからだ。

 

『女王』が必死に雷撃で応戦するが、そんなものはコカビエルの魔力の前では無力同然。

 

 ……こんなものなのか?

 

 コカビエルの目に、少しばかり失望の色が窺えた。

 

 己に匹敵する強敵との戦いだと胸を躍らせたものだが、あれはただのハッタリだったのか、と。

 

 光の槍が着弾するまで、残り30メートルを切った。

 

 そこで、コカビエルは、眼前で起きた出来事に、目を大きく見開いた。

 

 コカビエルの放った大質量の光の槍。

 

 それが、真っ二つに断ち切られたのだ。

 

 

 

 ○

 

 

 

 断たれた光の槍から、鎌鼬の如き剣圧の衝撃波がコカビエルに向かっていく。

 

 それを紙一重で回避したコカビエルの目は、やはり信じられぬ物を見るかのような、驚愕の眼差しのままであった。

 

 それを行った張本人───切彦は、その事実を誇るわけでもなく、淡々と告げた。

 

「こんなモンで終わりかよ?堕天使」

 

 その言葉は、コカビエルの中にあるプライドの一つを盛大に刺激し、理性を暴走させるには十分なものであった。

 

 コカビエルが憤怒の咆哮を行うと同時に、宙に10の光の槍が形成された。

 

 

 

 ○

 

 

 

 その近くで、一つの決着がつけられようとしていた。

 

「ふぅむ、これは、なかなか厳しーものがあるっすねぇ。うん、性能の差が決定的すぎるんすわ」

 

 数合打ち合うだけで、刀身の一部が砕け散った聖剣を見てそうボヤくフリード。

 

「いや、誇って良いと思うぞフリード。このデュランダルを前に、数合打ち合って折れていないのは、貴様が相当扱いの上手い証拠だ」

「でも、もう勝負はつくね」

 

 目の前で構えを取る2人に、苦笑いしか湧かない。

 

 正直な感想を言えば、こんな鈍だろうと、ゼノヴィアと結菜ごときに遅れをとるフリードではなかった。

 

「フリード!勝てる見込みはあるのでは無かったのか!?」

 

 そう叫ぶバルパーに目を向け、フリードは思う。

 

 ……タイムリミット、ですなぁ。

 

 金額分の働きは終えただろう。コカビエルは切彦の挑発にまんまとかかり、我を忘れて暴れ、その余波は此方にまで及んでいた。

 

 そして、コカビエルが暴走気味に周囲へと放った光の槍。

 

 ───その1本が、バルパーの腹を背後から貫いた。

 

「───なッ……!?」

 

 光の槍はすぐさま消失し、空いた穴からはとめどなく流血を迸らせる。

 

 だが、その顔は、フリードの持つ聖剣にのみ向けられていた。

 

 一つ、息を吐く。

 

 構えていた聖剣を下ろし、後ろの髪をかいた。

 

 そんなフリードに、バルパーへと意識を向けていた結菜とゼノヴィアは訝しげにしながらも、緊張感を張り巡らせたのが分かる。

 

「バルパーのおっさん、その傷じゃあ助かりやせんぜ?俺っちも旦那も回復術式なんて出来ねぇですし、計画丸潰れじゃないっすか?」

 

 既に、こと切れそうなのだろう。バルパーは、脂汗滴る顔で、荒い呼吸を数度繰り返し、辛うじてフリードに応えた。

 

「……金は、全て持って行けフリード。あの山に残りは残してきた。だが、最後、その聖剣で、お前が戦う姿、それだけを見せてくれ」

 

 もう、その顔は青白く変わりつつあった。この言葉は、バルパー・ガリレイ生涯最後の言葉になる。

 

 ならば、最後に夢くらい見せてやろう。

 

「おっさん、報酬に応じて最後の願い聞き届けますぜ。でも、こんなガラクタじゃ、冥土の土産にもならねぇっしょ?見せてやるよおっさんに。

 ───本物ってヤツを」

 

 バルパーが目を見開くのが分かる。

 

 これは、慈悲でも何でもない。

 

 あくまで、冥土の土産だ。

 

 フリードは、聖剣を投げ捨てた。

 

 雰囲気の変化に、結菜とゼノヴィアが息を飲むのを感じた。

 

 先程とは似て非なるフリードの圧力。

 

 そして、その瞳は、一瞬のみだが、水面を感じさせる静謐を仄かに感じさせる、神聖な輝きを得ていた。

 

 そして、目を閉じる。

 

「結菜ちゃん、喜ぶといいぜ。君のその剣は、聖剣を超えたよ。今後の自慢になるっすよ?でも、もう少しだけ。もう少しだけ俺っちに付き合って欲しいんすわ」

 

 右手を上に掲げた。

 

 神聖なる光の輝きがその右腕に収束され、一つの形を形成していく。

 

 3人の衝撃は、相当なものだ。

 

 黄金の輝きは、フリードを呑み込まんとする勢いで周囲に膨張し、大きく膨れ上がる。

 

 そして、

 

「───同調、開始(トレース・オン)

 

 その言葉をトリガーに、再び収束。フリードの右手に、1本の剣が握り締められていた。

 

「この輝き、おっさんなら知ってるんだろ?冥土の土産に、しっかりと脳裏に焼き付けるといいぜぇ。

【聖剣計画】の最中に起こった不可解な大事件。あの日、あの場所では、通常ではあり得ない高濃度の聖なる輝きの反応が探知された。実験に加担してた科学者は皆殺しにされ、被験者は全員、神隠しでもあったかのように姿を眩ませた。

 ───アレやったの、全部俺っちなんすわ」

 

 これが、報酬に対する対価だ。

 

 最後に希望を見せる?バカじゃねぇの?

 

 裏切り、ダメ、絶対?バカじゃねぇの?

 

 最初から、金でしか通じ合ってねぇ人間を【仲間】と思ってんじゃねぇよカスが。

 

 フリードは、輝く一振りの剣を、バルパーに見せつけるように掲げなおした。

 

「くだらねぇ実験で、人の命を弄んだあんたら(・・・・)に対する冥土の土産は、此奴の真名解放ってことっすわ」

 

 バルパーは、フリードの行動に混乱しつつ、その剣に目を奪われていた。

 

 視界は霞み、もう剣全体の輪郭すら見えていないだろう。

 

 だが、コレならば確実に視界に映り込むはずだ。

 

 フリードは、ありったけの魔力を手の剣に注ぎ込み、我を失っているコカビエルへと向き直った。

 

 ……出力は、大体3割くらいでOK。この街を消し飛ばすのはマズイから、上の旦那目掛けて。

 

 刹那、フリードの剣から極光が生み出され、フリードの身体を包み込んだ。

 

「おっさん、そんでもって、結菜ちゃんにゼノヴィアちゃん。よく見とけ。これが、本物だ」

 

 極光を大上段に構え、フリードはその一撃を解放した。

 

「『約束された(エクス)───勝利の剣(カリバー)』!」

 

 その輝きは、悪しきを滅する聖の極致。例え3割だろうと、周囲をその風圧のみで圧倒する姿は、伝説の聖剣の名に恥じぬものだ。

 

 薙ぎ払うように放たれたそれは、極光の柱となり、コカビエルの左半身を大きく穿ち抜いた。

 

 それだけでは止まらず、学園を覆っていた結界さえも、その極光は容易く穿った。

 

 

 

 ○

 

 

 

 コカビエルは、急激な脱力感に襲われていた。

 

 身体が軽くなったのだ。まるで、左の半身が綺麗に削げ落ちたかのように。

 

 そこで、理性を取り戻す。

 

 激痛は、直後に訪れた。

 

「───……ッ!?」

 

 左半身が、脇腹から肩にかけて抉るように消し飛んでいた。

 

 直撃すれば、己の存在をこの世から永久に消したであろう。

 

 それを放った本人、フリードは、コカビエルに向かっていつもの笑みを向けていた。

 

 

 

 ○

 

 

 

 ソーナは、天高く聳え立つ光の柱に、目を奪われていた。

 

 シトリー眷属が全力で支えていた結界をいとも容易く貫いた一柱の輝き。

 

 紛れもなく伝説級の聖剣の力に他ならない。

 

 ……でも、どうやって?幾ら何でも、不完全な聖剣が出せる威力ではない。明らかに、この街を破壊できる一撃。

 

 一気に不安が押し寄せるが、今は、結界の再構築に力を注がなくてはいけない。

 

 ……無事でいて、リアス……。

 

 

 

 ○

 

 

 

 結菜は、呆然とした表情でフリードを見つめていた。

 

 バルパーは、フリードの放った宝具の輝きを見届けた後、眠るように崩れ落ち、コカビエルは痛みに耐えながらフリードを睨んでいる。

 

 ゼノヴィアは言葉を発することが出来ないようで、それは、リアスたちにも言えることだった。

 

 イッセーたち以外は。

 

「おいフリード!またオレの邪魔したなおい。そろそろぶっ殺すぞコラ」

「いや待って切彦ちゃん!今のは不可抗力っしょ!?キンジ君もイッセー君もそのジト目止めてもらえます!?俺っち一応みんなに加勢した身ですぜ!?」

「いや、今の今までそっち側だった奴に言われたくはないな」

「おおう、痛いとこついてくるねぇキンジくぅん!?」

 

 普段のフリードに戻っていた。

 

 だが、大事なのはそこでは無かった。

 

「ねぇ、フリード」

「ん?どうしましたかな結菜ちゃん?」

「さっきの話、本当?」

 

 大事なのは、さっきフリード自身が話したことだ。

 

 あの内容が本当のことならば、どうしても聞かなければならないことがある。

 

 フリードには、結菜が何を言おうとしているのか分かっているようだった。

 

 そのためか、左の手でストップを掛けながら、結菜に一言言った。

 

「勿論っすよ。俺っちは、自分の成してきた事に嘘は吐かない主義でしてねぇ。でも、それは全てが終わったあと、ゆっくり話ことにしましょーや。ま、そこで見ていてくだせぇ」

 

 結菜は、全身の力が抜けるのを感じた。それは、安心からか。はたまた、緊張感が切れたからかは不明だ。

 

 膝から崩れるように倒れそうになった結菜を、我を取り戻したゼノヴィアが支える。

 

「───っと、大丈夫か?」

「……うん、ありがと」

 

 

 

 ○

 

 

 

「部長?朱乃さん?子猫ちゃん?そろそろ戻ってきましょう?」

 

 イッセーは、未だに呆然としていた3人に声をかけた。

 

 それも仕方ないことだと言えるが。

 

『約束された勝利の剣』。この世界にも存在する伝説の聖剣だが、その形は全くと言っていいほど異なっていた。そして、その威力もだ。フリードの内包する魔力で本気を出せば、この世界の一部を壊滅させたであろう神造兵器の一つ。

 

 ……今回の威力は3割ってところか?

 

『そうだな。コカビエルが原型を留めているのが何よりの証拠と言えよう』

 

 その聖剣は、真名を解放したと同時に、光となって消えた。

 

 リアスたちからすれば、驚天動地といったところだろう。

 

 ……明らかに異質だもんな。

 

 リアスたちは我に返っていたようだが、イッセーの方に向き直りながら口をパクパクさせている。

 

 もう分かりましたって。

 

『ヒステリアモード』のキンジはそんなフリードに微笑み、切彦は興が冷めたのか、コカビエルに背を向けている。

 

 コカビエルの敵意は、フリードにのみ向けられていた。

 

 ……先に、レイナーレとの約束、果たしにいこうか。

 

 倍加は7倍分まで溜まっている。これだけあれば満足の行く結果となるはずだ。

 

 

 

 ○

 

 

 

 フリードは、近くに歩いてくるイッセーに、無邪気な笑顔を向けていた。

 

「いやぁ、久しぶり振りですなぁイッセー君」

「まぁ、この前会ったけどな」

「まぁまぁ。でも、これが終われば、俺っちもやっと帰りますよっと。金はそこそこ集めれたし」

「じゃあさっさと終わらせてくれよ?今力を譲渡するから」

 

 そう言ってイッセーは、フリードの肩に触れる。

 

『Transfer!!』

 

 刹那、フリードは軽く目を見開いた。

 

「8倍ですかい?そんなにいりますぅ?」

「こんだけ溜まっちゃったのさ。好きに使え」

「んじゃま、ありがたく使わせてもらいましょーか」

 

 そう言って、フリードはコカビエルに目を向けた。

 

 消しとばした左半身に擬似的な再生を行っていたようだ。腕までは再生出来ていないが、肩までは光で輪郭を作れている。

 

 力が8倍と恐ろしいまでに底上げされたフリードを上から睥睨していた。

 

「貴様らは、一体何者なのだ?」

「そんなことより、一つ聞きたいことがある」

 

 容赦ないイッセーの切り返し。流石のコカビエルも青筋を立てているが、爆発させないように抑えつけていた。

 

「何だ?赤竜帝」

「あんた、堕天使レイナーレのこと覚えてるか?」

「あの木っ端堕天使か。弱いくせによく吠えたものだ。そいつがどうした?」

「そのレイナーレから、あんたをブッ飛ばすよう頼まれていてさ。その役をフリードに任せることにする」

 

 ……いやそれ聞いてないんですけどぉ!?

 

「ほう?貴様らがあいつと知り合いだったことは意外だが、何故堕天使なんぞに肩入れする?」

「ただの気紛れだよ」

 

 マズイ。俺っち置いて話が進んでる。

 

 フリードは口を挟もうとするが、そのタイミングでイッセーに肩を叩かれた。

 

「安心しろよ。どうせ、あんたはここで死ぬんだ」

 

 その言葉で、再びコカビエルが憤怒したのが分かった。

 

「んじゃ、後は頼むぞ」

「あ、マジ?」

「マジマジ大マジ。頑張れよ」

 

 そう言いながらリアスたちの方へと歩いていくイッセー。

 

 取り残された身のフリードは、とりあえず上を見た。

 

「この俺をここまでコケにするか」

「え〜。責任転嫁っすよ旦那」

「黙れ。そろそろ正体を明かしてはどうなんだフリード」

 

 奴さんはやる気満々。コロコロフィーバータイムだ。

 

「んじゃ、最後に俺っちからも一つ質問させてくだせぇ旦那。何、そんなに時間は取らせませんよ。その間に身体の再生まで完了させてくださいや。こっちも時間制なんでね」

 

 その言葉に、コカビエルは眉を顰めたが、余力を残して倒せる相手とも思っていないのか、再生に集中力を回し始めた。

 

 それを見計らい、フリードは言った。

 

「旦那、あんたは先の大戦での悲劇を知っているはずだ。それなのに、何故もう一度戦争を引き起こそうとするので?あの悲劇が繰り返される可能性も捨てきれないんですぜ?悪意ってのは何時でも蔓延るもんですからねぇ」

 

 その問いに、コカビエルの目の色が変わった。少なくとも、フリードはそう感じた。

 

「……そんなことを知ってどうする?」

「単純な好奇心ですわ。旦那が好戦的ってのは知っていましたが、それだけで戦争を起こしたがる理由になるのかどうかを知りたいと捉えてもらって結構っす」

「フリード。先の大戦、途中からの【絶対悪】の乱入によって、三大勢力の重鎮たちの多くが命を落としたのは知っているな?」

「勿論ですぜ」

 

 コカビエルは静かに言葉を紡ぐ。再生は、肘まで完了していた。

 

「お前も言った通り、俺は戦いが好きだ。だが、それだけで戦争を起こそうとはしないというのも的を得ている。察しの良い貴様なら気づいているはずだ。先の大戦で失ったものは確かに大きい。堕天使は多くの同志を、悪魔は四大魔王を、───天使は、()を失った」

 

 その言葉は、イッセーたちを除いた者たち全員に衝撃を与えた。特に、アーシアとゼノヴィアの衝撃は凄まじく、アーシアは崩れ落ちたところをキンジに支えられている。

 

 ゼノヴィアも、その表情を大きく崩していた。

 

「そんな……主は、主は、いらっしゃらないのですか?」

「ならば、今まで私たちが受けていた愛は……」

 

 その2人を見て、コカビエルは言った。

 

「そういえば、貴様らには伝えられていないのだったな。当たり前か、神が不在などどうして言える?その存在がなければ、貴様らなどは心に拠り所のない不完全な存在にすぎん。それ故に、この情報を知っているのは三大勢力の中でもトップに位置する者たちのみだ」

 

 一息、

 

「だが、ミカエルの奴はよくやっている。貴様らの言う、主からの愛というやつは、神が残した『システム』だ。それがあれば、ある程度の加護は機能する。だが、神が居なくなってから与えられる加護にも限りが生じてきてな。そこの小娘、貴様が本来交わる事のない聖と魔の剣を創り出せたのも、このバランスが大いに崩れているのが原因だ」

 

 コカビエルは腕をまで完全に再生させた。

 

「旦那旦那、それと、旦那が戦争の火種を作るってのにはどんな関係があるので?」

「そんなのは簡単だフリード。あの大戦をきっかけに、どの勢力の奴も腑抜けになってしまった。次なる脅威に備え、力を合わせることが必要とほざく奴まで現れる始末。俺はな、他の勢力を許せないんだよ。あのまま【絶対悪】の介入無く戦争が続けば、勝っていたのは俺たち堕天使だ」

「なるほど。つまり、旦那的には、今一度本当の頂点ってヤツを決めてぇわけですか」

「ざっくりと言えばな」

 

 フリードは腕を組み、コカビエルの言葉を吟味しつつそう返した。

 

 コカビエルは再生した 腕の調子を確かめつつ、フリードを睥睨している。

 

 そんなコカビエルに、フリードは言った。

 

「くだらねぇ」

 

 大声で言ったわけではない。しかし、その言葉は、不思議と全員の耳に届いていた。

 

「……貴様のように、そう切り捨てた奴もいたな。全て、力で教えてやったが」

「そっすか。なら、俺っちを殺せるんですよねぇ?」

「無論だ。あの油断はもう無いと思え」

 

 それだけで良かった。

 

「《衛宮》三代目純正魔術師フリード・セルゼン」

「堕天使幹部が一人、コカビエル」

 

 様々な感情が入り混じる視線の中、その名乗りの元、決戦の火蓋は切って落とされた。




誤字脱字等のご指摘、お待ちしています。

感想もお待ちしています。

この世界観のコカビエルってどんくらいの強さなんでしょうね?

白竜皇の出番が……。

ま、まぁ、何とかなるでしょう。いえ、何とかします。してみせます。

では、また次回お会いしましょう。
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