あと何話で3巻分(一応)の内容が終わるのか分かりません。
前回、誤字の報告の御協力ありがとうございました。
「おお……!」
10翼の黒翼を一斉に羽ばたき、フリードへと突っ込むコカビエル。
その手には、光を圧縮して造られた光の槍と光の剣を携えていた。
ただの人間がその身に刻めば、瞬く間に輝く熱によってその命を散らす。そんな熱量を秘めた光の刃は、悠々と佇むフリードを貫くために、刃の部分の熱量を底上げしていた。
端から見れば、決着を急いでいるように見えなくもない。
事実、コカビエルの表情は険しく、この一撃に賭けていた。
超加速からの、両刃による斬撃と一突き。
……《衛宮》とこいつは言った。それが本当ならば、フリードが先程の聖剣を創り出したことの説明となる。
何よりも誤算だったのは、
……こいつが
明確な実力が未知数なフリード。
故に、短期決戦を行う理由にしては上出来すぎる。
両の武器を握る力が強くなり、コカビエルはフリードの眼前に、激突したような着地を成功させた。
腰を屈め、重心を低く、フリードとの距離は1メートル程。
……左の槍で貫き、そこから遠心力を用いた回転斬りで殺し切る……!
フリードは、コカビエルの着地に合わせて、右脚を引いた半身の状態だ。
あくまで自然体。確実に、何かの手をうってくる。
ならば、それを超える速度で必殺の一手をうてばいいだけのこと。
───だが、それは叶わなかった。
「ッ……!?」
何故なら、眼前のフリードが、刹那の間に弓に矢を番え、今にもその一矢を放とうとしていたのだから。
しかも、その矢はただの矢ではなく、神性を帯びた、一つの宝具だったのだから。
「躱してみせてくだせぇ、旦那」
コカビエルは、全力で身体を捻った。
○
その矢は、コカビエルの右腕の肘から先を消失させた。勿論、握られていた光の剣も同じ様に。
……やるじゃねーっすか。
コカビエルは痛みを感じる間も無く、躱した事実を確認すると同時に、左の槍でフリードを貫きにかかった。
多少軌道がずれたとはいえ、フリードの首を目掛けて来る光の槍。
回避することは、そう難しい事ではない。だが、フリードは敢えて攻める姿勢で行くことにした。
フリーとなった右の手に一振りの魔剣を投影。それで光の槍の柄を横から凪ぐようにはらう。
高い金属音が響き、槍は、その軌道をフリードの身体から外した。
そこを見計らい、左の弓を消し、新たに先ほどの魔剣よりも少々小ぶりではあるが、同じ類の魔剣を投影し、コカビエルへと斬り込んだ。
その2振りの魔剣は、どちらも至近距離限定ではあるが、一度のみ『約束された勝利の剣』と似たり寄ったりの威力を生み出す。謂わば、対城ではなく、対人のエクスカリバーだ。
真名と共に斬れば、対象を確実に殺しきるであろう一撃へと変わる。
まだ、真名を解放していないとは言え、コカビエルにもこの脅威は十分に伝わっているらしく、バックステップをすることで、紙一重といった具合にこれを躱した。
……だが、逃がさねぇっすよぉ!
フリードは、斬り込みの際に、重心を深くその方向へと倒し、次の踏み込みのための加速へと繋いだ。
両の魔剣を構え、コカビエルの懐に一歩で踏み込む。
コカビエルは、光の槍で追撃を防ごうとするが、槍の弱点は、リーチの効かない懐に入られること。
それを理解したのだろう。
……ま、そうくるでしょーな。
コカビエルは、もう一度後方に大きくバックステップをした。10翼の黒翼を使い、瞬時に距離を稼ぐべく動く。
それと同時に、光の槍をフリードに全力で投擲した。
やはり、堕天使幹部というのは一筋縄では行かないらしい。
フリードは震脚を踏みながら、無理矢理その場に踏み止まり、音速などとうに超え、宇宙速度に匹敵しそうな槍の投擲を、苦もなく一振りの元に弾いた。
それだけでは終わらず、コカビエルから幾つもの魔力弾が放たれる。
一つ一つはそう脅威とはなりえない。
フリードは両の魔剣を巧みに操り、迫る魔力弾の悉くをいなしていく。
その間、コカビエルは右腕の修復に取り掛かりつつ、自分の真上に多大な魔力を圧縮させた、通常の10倍はあるであろう光の槍を造っていた。
……ふむ、そうきちゃいましたか。四肢の修復にかける魔力は相当なモンですしおすし、追撃の方に集中しつつ、片方の真名を解放してあのクソデケェ槍を相殺しやしょーかね。
魔力弾が弾幕に近いレベルとなってきた。
……質より量。時間稼ぎですよねぇ。
なら、付き合う義理はない。
フリードは、弾幕の奥にいるコカビエルに向かって駆けた。
○
……この中を攻めてくるか……!
コカビエルは魔力弾を控え、向かって来るフリードへと特大の光の槍を投擲した。
その質量は、この街を軽々破壊するもの。
コカビエルが両腕を使い、全力で降り下ろさなければ投げることもできない質量だ。
天から地へ。街ごと殺す気で光の槍は投擲された。
「街ごと呑まれろ、フリード……!」
○
リアスは、内心ハラハラしながら戦いの行方を観ていた。
イッセーは「大丈夫です」の一点張りだが、あの光の槍の質量は、正直ヤバい。
フリードはそれに向かって大地を蹴り、一直線に向かって行く。
……あれに対抗出来るのは、さっきの宝具だけのような気がするけれど。
激突の瞬間、コカビエルの顔がこれ以上無いというほど歪んだ。
○
……この程度で呑まれろはないっすわ旦那ぁ。
片方の魔剣に魔力を込めながらグランドの土を蹴り、向かい来る槍へと前進していく。
大気の水蒸気が蒸発しているのか、光の槍からは白い煙が湯気のように流れ出ていた。
成る程、この質量ならば街を完全に吞み込む大災害を産むだろう。
だが、そんな厄災の産ぶ声など聞きたくはない。
……真正面からブチ抜いてやるっすよ。
魔剣使いの結菜の顔が、驚愕の表情になっているのが分かる。
フリードの魔力を吸った魔剣の力に魅了されたのかは不明だが、少なくとも、その感情は羨望に近いものだった。
「ったく、こんだけギャラリー多いと俺っちも滾っちまうねぇオイ!」
テンション上がってきた。
ノリノリの気分で真名を解放する。
「『
暴走したかのように、フリードの魔剣から漏れる魔力が膨れ上がり、相手を殺しきる為の魔剣の本当の姿を顕現させた。
その力を、正面からブチ込む。
2つの力が衝突し、星を揺るがす一撃へと変わったそれは、新たに張られた結界にヒビを与えるものとなった。
しかし、それも数秒と続かず、2色の輝きは、1色に染められることになる。
フリードの魔剣『
だが、両者にリアクションの時間は与えられない。
「おお……!」
「ハッ……!」
コカビエルとフリードは、空中で鍔迫り合いとなっていたからだ。
歯噛みするコカビエルに、好戦的な笑みのフリード。
しかし、空中での攻勢は、上空から落下の衝撃を乗せたコカビエルに軍配が上がった。
フリードは残った魔剣を両手で握り、コカビエルの膂力に負けぬよう踏ん張っていたが、流石に地べたに脚が着かねば、踏み止まれる一撃にも負ける。
フリードは、空中からグランドに勢い良く身体を押し飛ばされた。
その時、フリードの持つ魔剣の刀身が砕け、柄のみの姿となる。
「こいつも遠慮無く貰っていけ……!」
コカビエルは油断なく、押し切ったことを少しもプラスに考えずに、自身の全力を惜しげもなく発揮した。
その手に握られているのは光の槍に変わりはない。
だが、その色は黄金ではなく青白さを強調していた。
コカビエルの周囲の空間が歪むほどの魔力を圧縮し、槍の形状を成すプラズマへと変換する。
「死ね」
グランドに衝撃を殺すように着地したフリードは、新たな武器を投影せず、砕けた魔剣の柄を握りしめている。
これほどのチャンスは、もう巡ってこないはずだ。
……これで───終わらせる。
「───『
コカビエルは、自身最大の切り札をフリードへとブチ込んだ。
○
「待ってたっすわ、本気の一撃」
未だ、着地の衝撃から抜け出せないフリードは、その輝きを見つめつつ、冷静に呟いた。
そして、砕けた魔剣の柄を両手で握り、滑らせるように右脚を引く。
姿勢は低く、魔剣も右側に構えた。
リアスたちの焦った声が聞こえる。
当たり前だ。どう見ても、フリードが敗北する局面にしか見えないのだから。
コカビエルから感じる戦意に衰えは無い。
フリードの行動の感じるものがあるのだろう。
……何のために刀身を砕いたか、教えやんよ。
迫る脅威に、フリードはこれ以上無いほど冷静に、手の魔剣に魔力を込めた。
何故、フリードが新たな宝具を投影しないのか。
その理由は単純で、する必要がないからだ。
宝具にも、その真なる力の解放に条件があるものがある。
その一つが、フリードの握る魔剣───『
先ほど放った『
本来であれば、その真名が解放できるのは一度切りである。
だが、宝具を
一度のみの究極の斬撃を、何度も使用することが可能となっているのだ。
勿論、そのためには、必要最低限の条件をクリアしなければならないが、今、手元にある魔剣は、その条件をクリアし、今にもその真価を発揮する準備が出来ている。
だから、フリードは、コカビエルの奥の手に対し、なんの恐れも抱くことなく、その魔剣による究極の斬撃を放った。
「唸れ───『
脈打つように砕けた刀身が、フリードの呼び声に呼応する。
柄から産まれた一刀の斬撃は、見事にコカビエルの奥の手を相殺した。
○
……こんな……ことが、あり得るのか?
完璧過ぎるほど、綺麗に相殺しあった二つの力。
コカビエルには分かる。
……フリードは、手を抜いていた。
そう。己の最強の技を前に、周囲への被害を考え、力を相殺させることで、街を軽々破壊し尽くすであろうコカビエルの一撃による衝撃を消したのだ。
少しでも込める力を間違えれば、その衝撃は街中にまで流れ込み、全てを焦土と化していただろう。
……こいつ、俺の力量を遥かに上回っている、だと!?
信じられない。
たかが、10年と少ししか生きていない餓鬼に、かの大戦すらも経験した歴代の猛者であるコカビエルが弄ばれたという事実。
それを、コカビエルは認めることが出来なかった。
内から込み上げる怒りは、自身のプライドをこれでもかというほど貶されたことから、全身を痙攣させるように震えることでその大きさを表している。
眼下では、先の二振りの魔剣を投影し直したフリードが、余裕の表情で立っていた。
街が破壊されるまで、あと5分を切っている。
このままではジリ貧。ならば、殺されないよう時間を稼ぎ、術式で街と共に瓦礫の底に眠らせてもいい。
コカビエルは、怒り狂う感情を、残り少ない理性で抑え込み、勝率の高い手段で行こうとした。
「だぁんなぁ。まさか、今の切り札真っ向から破られて焦ってます?その鳥頭に詰まっている知識なんて使い物になりやせんぜ?三下が幾ら捻ったところで、一流には勝てないんすわ」
その言葉に、コカビエルの動きが止まる。
それは、コカビエルにとって、この上無い侮辱だったからだ。
……この男、今、俺のことを三下に鳥頭と言ったか?
脳内で繰り返しリピートされるフリードの罵倒。
時間にしてみれば5秒とない沈黙の中、怒りに震えていた身体がその動きを止めた。
刹那、コカビエルの中の感情が、爆発した。
「貴様ァァァァァァアアアアアアッ!!」
コカビエルは最後の理性を捨て、フリードへと突っ込んだ。
○
フリードは、両の手の魔剣を構えつつ、迫り来る理性の欠片も失くしてしまった堕天使の動きを見ていた。
暴走による影響か、10翼の黒翼がそのリーチを自在に変化させてフリードを狙っている。恐らく切り札が効かなかった時のために残した、時間稼ぎのための戦術だったようだが、理性を失くしたコカビエルには、ただフリードを殺すためにその10翼を操っているためか、その標的はフリード1人を対象としていた。
「ハッ……所詮は鳥頭じゃねぇですか」
その罵倒に反応するようにコカビエルが吼えた。
「アアアァァァァaaaaaaaaッ!」
その咆哮すら獣のそれに近しくなりながら、10翼の黒翼でフリードを全方位から囲む。
重い質量で無理に刺突を繰り出してきた。
例えるなら、鉄骨を用いた高速の石突き。貫通と殴打の2種類で、フリードを殺しにかかってきていた。
だから、フリードは正面から防がず、一翼一翼の側面を魔剣で叩き、或いは翼に沿って魔剣を滑らせるように動かすことで、全方位からの暴力をいなした。
舞を踊るように捌き続けるフリード。そこで、翼の軌道に微妙なズレが生じていることに気づいた。
暴走気味のコカビエルが、光の剣で白兵戦を仕掛けて来たのである。
合計11の武器に、時折コカビエルから放たれる魔力弾。
神父服を靡かせながら、コカビエルの攻撃に対応するフリードは思った。
……この鳥頭、暴走した方が強いじゃねぇかよ。
少し挑発しすぎたか、と反省しつつ、コカビエルの暴力を後退しながら防いでいく。
両サイドから襲い来る翼に、両手の魔剣で斬撃を浴びせて軌道をズラし、間髪入れずに身体を反時計周りに回転させた。
正面から一点を定めて刺突しにきた4翼に、回転の力を加えた両の魔剣を叩きつけることで左に逸らす。
その際に、回転仕切るのではなく、左脚に力を込めて震脚を踏み、コカビエルが左から放った袈裟斬りを右の魔剣で弾いた。
多少力を込め、少しでもコカビエルの重心を逸らす。
そして、真上からフリードを串刺しにしようと高速で迫る4翼をバックステップで回避した。
「AAAAAAAaaaaaaa!!」
決定打を与えれないことに苛立ったコカビエルは、距離の空いたフリードに黒翼を伸ばす。
それに対し、フリードは両の魔剣を投擲した。
ナイフを投げるように一直線に投げられた魔剣は、先陣を切った2翼に衝突した瞬間、意図的に魔力を暴走させたかのように大きな爆発を産み、2翼を破壊した。
「AAAAAAAAaaaaaa!?」
激痛に叫びながらも、残りの8翼をフリードへと走らせる。
それに対し、フリードが次に投影したのは弓だ。
瞬時に翼の軌道線上に8本の矢を放ち、先ほど同様の魔力の暴走による爆発を起こす。
「AAAAAAAAAaaaaaaa!」
ついに、全ての翼を傷つけられたコカビエルは、光の剣を携えてフリードへと駆ける。
理性を失くしたコカビエルの動きは、それでも俊速と言えるほどの加速を生み、フリードの目の前で剣を振りかぶった。
ならば、と。フリードは弓を消し、大小2振りの魔剣を投影し、左の小魔剣を逆手持ちにし、今度は時計回りに高速回転を行う。
コカビエルが振り下ろした光の剣に逆手の魔剣を当てて、真上へと弾いた。
……終わりだぜ、旦那。
その回転力を殺さず、コカビエルの左側に大きく踏み出す。
右の魔剣が、コカビエルの右脇腹から左肩にかけての逆袈裟斬りを放った。
○
「カッ……!?」
コカビエルの身体は繋がっているが、一目で致命傷と分かる深さの傷からドス黒い血が流れ落ちており、手練れの回復術式でなければ、あと数分の灯火となっている。
崩れるように膝を落とし、グランドに向かって喀血すらしていた。
その様子から、フリードは己の完全勝利を確信する。
「頭は冷えやしたか、旦那?───俺っちの勝ちっすよ」
「……ああ、俺の、負けのようだ」
掠れた声で、絞り出すように吐き出されたコカビエルの言葉は、それでも、背を向けているフリードの耳にこれ以上無いほど鮮明に聞き取ることができた。
「随分と潔い宣言じゃねぇですかい旦那。もっと駄々こねると思ってたんだけどなぁ?」
「ハッ……バカを言え。俺とて最古参のプライドがある。誰の目から見ても、貴様の圧勝だろう」
満足とでも言いたげなコカビエルの言葉。顔は見ていないが、その表情も同じように安らかであるように感じる。
……ったく、こんなの俺っちの役目じゃねぇっての。
思わず溜め息を吐きたくなる。
そこへ、コカビエルから声がかかった。
「街を破壊する術式は解除された。全く、計画をここまで急いてまで火種を作ろうとしたんだがな、いつも最期は呆気ない結果で終わる」
「同情はしねぇよ?数ある傭兵の中から俺っちを選んだのはあんたらなんすから。それに、戦争起こすまでもないっしょ?」
「……そうだな。全力を出して負けるなど、何時ぶりか……」
リアスたちが何やら喚いているのが聞こえる。
そろそろ、終わらせよう。
コカビエルも同じことを考えていたらしく、苦しそうに、グランドに血の海を広げながらゆっくりと立ち上がった。
「永年、渇きに渇ききった旦那も、流石に潤ったんじゃないっすかね?」
その言葉に、クツクツと肩を震わせて笑いを嚙み殺すコカビエル。
「慣れないことはよせ、フリード。下手な同情など、何の糧にもならん。だが、そうだな、
───もう、十分に現世を楽しんだ。次は、煉獄の中にでもこの身を投じるとするか」
その言葉が、戦いの決着を決める、最後の合図となった。
○
一瞬だった。
両者が背を向けた状態から、反時計回りに回転。
向き合った両者は、手の中の獲物にて、相手の命を断つべく一直線に距離を詰める。
光の剣と2振りの魔剣が交差し、刹那の殺し合いの敗者の首がグランドの宙を舞い、頭部を失った断面部から、噴水のような血を噴出させた。
力無く倒れる首無しの死体。
その直ぐそばに、敗者───堕天使コカビエルの頭部が落ちてくる。
血に濡れたその顔はしかし、酷く満足げな表情であった。
○
リアスは、その確かな決着を、一切視線を逸らさずに見送った。
堕天使の幹部を圧倒した実力者であるフリードは、両手の魔剣を霧散させて此方へと歩いてくる。
終わったのだ。
……私、今回何もしてないじゃない……。
美味しいところを全部フリードに持って行かれた気がする。
分かっているのだ。此方はフリードに助けられた身。本当は感謝しなければならないということに。
……むぅ……でも、何かしらね、この不完全燃焼感というか、何というか言葉にしにくいものは。
その時、切彦が笑顔で歩いてくるフリードに向かって、死角をついた全力のシャイニングウィザードをフリードの側頭部に極めた。
「kiss my ass!」
「グハァッ!?」
思わずガッツポーズを決めてしまったリアス。すぐに止めたが、誰にも見られていないことを願う。
……でもあれ、死んだんじゃないかしら?
○
「ねぇ、アルビオン」
『どうした?』
「もしかしなくても私、出遅れちゃった?」
『そうだな』
「どうしよう……アザゼル怒っちゃう」
『まぁ、寝坊して遅刻したとあれば流石にな』
「お尻叩かれちゃうの……?」
『涙目になるな相棒。あと、アザゼルがそんな奇行に走ったことはないだろう?』
「でも、コカビエル死んじゃってるよ?」
『まぁ、彼奴が破れる強さを持った神父には驚かされたな』
「じゃあ、私いる必要ないよね?アザゼル怒るかもしれないけど、回収予定のコカビエルは死んじゃったってことで報告するしかないし」
『まぁ待て。ちと懐かしい顔がいてな。少しだけ顔を出させてくれ』
「えー」
『怒りを鎮めるよう、私からアザゼルに打診してやるから』
「行こう。すぐに行こう」
○
コカビエルという脅威が無くなったことから、結界が解除された直後、ドライグがイッセーに声をかけた。
『ふむ、相棒。懐かしい顔がいる』
……懐かしい顔?
怪訝そうな表情で辺りを見回すが、ドライグにとって懐かしい顔で頭に思い浮かぶのは、
……例の『白いの』?
『その通りだ。気配を消そうと、対なる俺たちは互いを引き寄せあっているようなもの。俺たちは自分の存在を教え合っているのと同じなのさ』
……自分の意志とは裏腹に?
『ああ。まぁ、上を見ていろ。現れるぞ』
イッセーは星の輝く夜空を見上げた。そこで、頼りなさそうな飛行をする白い少女が見えた。
どうも、自信の無さそうな印象を受ける雰囲気だが、彼女は、真っ直ぐにイッセーを見ている。
倒れているフリード以外、全員が彼女に目を向けていた。
特別警戒はしていないが、切彦だけが、軽く出刃包丁を握っているのが見える。
彼女から感じる気配で、イッセーはようやく合点がいった。
……確かに、龍の気配がする。
彼女から───正確には彼女の中に存在する龍から声をかけられた。
『久し振りだな、赤いの』
誤字脱字等の御報告、または御感想お待ちしています。
ちなみに、フリードの使う宝具に関しては、なるべくエミヤ師匠と違う宝具を使わせたいと考えています。
話で出てきた『大なる激情』と『小なる激情』は、ディルムッド君が所持している魔剣であり、構造は作者の想像で描写しています。凄いざっくりですが、とりあえず、大なるは大きく、小なるは小さく、モンハンに登場するオーダーレイピア的な双剣で良いんじゃないかなみたいな感じです。
まぁ、フリードが最も得意とする武器が剣と決まった訳ではありませんから、とりあえずはこんな設定でいきたいと考えています。
何かリクエストがありましたら、この無知な作者にお教え頂けると幸いです。
しかし、コカビエルを殺すことになってしまった……。
白龍皇の登場が……。
ですが、何とかします。ええ、してみせますとも。
また、次回でお会いしましょう。