希望と絶望を司る   作:虹好き

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どうも、虹好きです。
お気に入り登録されてくださった皆様に深い感謝を。

これからもよろしくお願いします。

では、本編どうぞ。


2度目の生は悪魔で

「強く、なりたいか?」

 

 ーー片手で大木を担ぎ、煙草を咥えたバーテン服の男が言った。

 

「こんな悲劇を2度と起こさせないような、運命すら変えられるような、そんな強さが欲しいか?」

 

 ーー紅蓮の翼を背から出している、白衣の男が言った。

 

「君の人生や。どんな結末を迎えるかは君次第やで?君の正しいと思った道に進むのが、1番正しいはずや」

 

 ーー必殺の雷を帯びる、歪な三叉槍を掲げた、ニット帽の男が言った。

 

「正義は常に理解されず、その現実から目を背けることはできん」

 

 ーー幾つもの剣を創造する、赤い外套の男が言った。

 

「それでも強くなりたいなら、この門を叩き、お前の道を示せ」

 

 ーー漆黒の防弾コートを靡かせた、美しい長髪を持つ男が言った。

 

 ーーそして、少年は、己の生き様を決めた。

 

 

 〜〜〜

 

 

 イッセーが目を覚ますと、そこは、自分の部屋のベットの上だった。身体を起こすと、僅かに気怠さが残っており、鈍く響く頭痛に思わず眉を顰める。

 

「やっとお目覚めか兄弟(ブラザー)。新たな生を実感した感想はどうだ?」

 

 横から声をかけられ、そちらを向くと、顰めっ面をしたキンジと心配そうな表情をした夕乃、そして、何故か悪魔であるリアス・グレモリーがいた。

 

 リアスの存在を確認した直後、記憶がフラッシュバックする。すぐに着ているシャツを捲り、腹部を見てみると、ウェスカーに貫かれた場所には、塞がってはいるものの、蜘蛛の巣状の傷痕がクッキリと残っていた。毒性が強く、大幅に傷痕が残ってしまったのだ。

 

「……俺は、死んだんじゃないのか?」

 

 記憶は、ウェスカーに貫かれ、薄れていく視界の中で、最後にリアスが現れたところで終わっている。

 

 何故あそこでいきなりリアスが現れたのか分からないが、その説明をするためにリアスがこの場にいるのだろうとイッセーは判断し、返事を待った。

 

 やがて、リアスは静かに語り出す。

 

「えぇ。あなたは一度死んだわ。それは、今確認した傷を受けたあなたが1番理解しているはずよ。でも、死ぬ間際に、あなたは心の中で私を思い浮かべたのでしょうね。あなたが持っていた転移陣が発動し、私が召喚された」

 

 一息、

 

「召喚されたのは良いけど、あなたは既に息を引き取るところだったの。普通の人間だったら助ける気はなかったけれど、あなたは、いえ、あなたたちは普通じゃない(・・・・・・)。だから、私があなたの命を悪魔に転生させ、2度目の生を与えさせてもらったわ」

 

 夕乃は悲しげに目を瞑り、キンジは表情を変えない。イッセーは、最初のキンジの言葉の意味をここで理解した。リアスの言葉は続く。

 

「実は私も個人的にあなたたちのことは調べさせてもらっていてね、施設の場所は把握していたし、あなたを連れてお邪魔させてもらったってわけ」

 

 多少端折ってはいるのだろうが、ある程度のことは把握した。イッセーはベットの上で姿勢を直し、リアスと真正面から向き合い、

 

「大体のことは分かりました。リアス先輩、この度は命を救っていただき、本当にありがとうございました。この御恩は生涯忘れません」

 

 丁寧に頭を下げた。リアスは少し照れたように笑みを作り、

 

「そんな畏まらないでちょうだい。まだ説明しなきゃいけないこともあるし、あなたも聞きたことが沢山あるでしょう?」

 

 イッセーは頭を上げ、では、と気になる点を聞いていく。

 

「転移陣っていうのは何ですか?俺は持っていた記憶が無いんですが……」

「それはこれよ」

 

 そう言ってリアスが見せてきたのは、あの日にもらった怪しいチラシだった。『あなたの願いを叶えます』というキャッチフレーズが書かれたチラシの中心に、魔法陣が描かれており、それが転移陣とイッセーは納得した。

 

「これは、私たちグレモリー眷属専用の転移陣なの。私たち悪魔は、これを使い、人間たちの願いを叶え、代わりに契約をもらうという仕事をしているわ。このチラシに向かって私たちの中の1人を思い浮かべると、その悪魔が召喚に応じ、その人の願いに応えるシステムよ」

 

 成る程、とイッセーは納得し、次の質問に移る。

 

「では、俺が死んだ後、悪魔に転生させたと言ってましたが、どう転生させたんですか?」

 

 イッセーの問いに、リアスはチラシをしまい、今度はチェスの駒を取り出しながら、

 

「これは、【悪魔の駒】と呼ばれる悪魔の中で行われる、チェスを模した特殊なゲームで使用する際の自分の下僕を示す駒よ。悪魔の中でも、上級悪魔以上の爵位を得た者達のみが持つことを許されるもので、多種族を悪魔に転生させることができるわ」

 

 一息、

 

「駒にも種類があって、それぞれ転生する際の特典は違うのだけど、転生させる者の強さに応じて、複数駒を使わなきゃいけないがあるのよ。でも、駒の中には突然変異によって、たった一つの駒で強い存在を眷属にできる駒があって、【変異の駒】と呼ばれているわ。何の偶然か、あなたに召喚される直前に変異した駒が一つあってね、幾つ分の価値かは分からないけれど、あなたはその駒一つ分で転生させることができたのよ。少しだけ運命を感じたわ」

 

 微笑みながら話すリアス。"運命"の部分に過剰反応を起こした方が約1名。あえて見ていないことにし、イッセーは今の説明を頭の中で整理する。

 

「……軽く整理すると、俺はその【悪魔の駒】のお陰で生きてはいますが、それは同時に、リアス先輩の下僕の1人となった。つまり、俺はリアス先輩の所有物になったということですよね?」

 

 その言葉にリアスは頷き、

 

「そう、だからあなたには私のためにこれからの人生を捧げてもらうことになった、ということよ」

 

 リアスはそう言って話を終わらせた。成る程、確かに悪魔らしい。しかし、そのお陰でイッセーは生きているのだ。また、家族の顔を見ることが出来たのだ。

 

 夕乃の顔は優れない。イッセーが生きていることに関しては素直に喜ばしいのだが、悪魔になったということに対しての感情の整理が上手くいっていないのだ。

 

 逆に、キンジは酷く落ち着いていた。腕を組み、静かに目を瞑っている。

 

 イッセーは少しの間の後、

 

「説明ありがとうございました。そして、これから1人の下僕として、よろしくお願いしますリアス先輩」

 

 もう一度頭を下げた。

 

 リアスは、どういう反応をするか試すために、あえてああいう言い方をしたのだが、どうやら、予想以上にイッセーという男は頭の回転が早い事を思い知らされ、優しく微笑んだ。

 

「えぇ、これからよろしくね。それから、今日からあなたは私の家族よ。下僕なんて、所詮はゲームでの駒呼び方にすぎないわ。私たちグレモリー家は、眷属を家族同然に愛しているから。兵藤一誠、いえ、イッセーと呼びましょうか。私はあなたを歓迎します」

 

 その言葉に、イッセーは今まで無駄に警戒していた自分を恥ずかしく感じた。何て寛大な心の持ち主なのだろうか、と。今は自分も悪魔になった身だが、悪魔も人と同じなのだということを知った。

 

 そこからは、悪魔として転生した以上、悪魔として生きなければならないので、ひとまず、リアスが部長を務めるオカルト研究部に入部することになった。詳しいことは翌日部室で聞かせてくれるとのこと。

 

「さて、次はイッセー、あなたの番よ。何があったか教えてちょうだい」

「分かりました」

 

 そこから、イッセーはウェスカーとの戦闘のことを細かく説明した。話している最中、誰も口を挟まなかったが、キンジが"ウェスカー"と"邪龍サマエル"の単語に反応しているところをイッセーは見逃さなかった。

 

「邪龍サマエル……そんな大物が……」

「ウェスカーは、地球上どこにいたとしても、ドラゴンの存在を感知できると言っていたので、俺が生きていることも既に知られているでしょうね……」

 

 イッセーの言葉に、夕乃は、

 

「でも、イッセーさんの腕を遥かに上回るとは……しかも"角"を使っていないとはいえ、"崩月"流で鍛えた身体をいとも簡単に突き破る攻撃力、もし次襲われれば、もう後がありません」

 

 冷静にウェスカーのことを分析する。キンジは難しい顔をし、

 

「クソッ……俺が近くにいりゃあもう少しマシな結果になったかもしれないのに……一度でも死なせちまうなんて……」

 

 イッセーの事を、まるで自分の事のように悔やんでいた。リアスはその様子を見て微笑み、

 

「良い家族を持ってるのね、イッセーは」

「はい、最高の家族です」

 

 イッセーは心から心配してくれる大切な家族に、自然と笑みを浮かべ、

 

「ウジウジ悩んでも仕方無いですよね。これからは1日1日大切に生きるようにします」

 

 そう言いながらキンジの肩を叩いた。折角もう一度チャンスをもらったんだからと。キンジもイッセーの顔を見てから、

 

「……そうだな。例え悪魔になろうと、俺たちの絆は無くならないよな兄弟(ブラザー)

「あぁ」

 

 綺麗に事が終わると思いきや、そこにラスボスが舞い降りた。

 

「では、イッセーさん?……さっきの死に際に思い浮かべた人がリアスさんだった件についてですが」

 

 室温が一気にマイナスまで下がった。キンジは瞬時に扉まで移動し、親指を立てて出て行く。

 

(おい!?絆は!?)

 

 リアスも夕乃の豹変ぶりに顔を青くし、「じ、じゃあ話も終わったし、失礼するわね」と退出。味方は誰一人としていなくなり、光の消えた瞳でゆっくりと近づいてくる夕乃を止める存在は、いない。

 

 その日、施設全体にイッセーの悲鳴が鳴り響いた。

 

 

 〜〜〜

 

 

 翌日の放課後。朝、リアスから使いを出す言われているイッセーは机の上でダラけながら使いの悪魔を待っていた。同情の視線を送るキンジに、イッセーと同じように疲れた様子の切彦も一緒にいる。

 

 切彦は、昨日イッセーが運ばれた時に、刃物を持って物凄い勢いで施設から出て行ったらしい。夜が明けるまで犯人を探していたらしいが、そもそもイッセーを殺した犯人の姿や名前を知らない為、実質ただ町を駆け回っていただけ。どこか抜けている。

 

 キンジはあれから少しリアスと話をして、リアスが駒王町を統治するグレモリー家の責任者など、色々な情報を得ていた。

 

(簡単に言えば、この町はリアス先輩の家の物なんだよな。どんな金持ちだよ)

 

 そんな事を考えていると、入り口から1人の生徒が入ってきた。イッセーは立ち上がり、キンジと切彦を連れてその生徒に近づく。無論、悪魔だからだ。

 

「すいません、イッセー君ってーーーもう分かってたか、リアス部長から聞いてると思うけど、ボクに付いてきてね」

 

 使いとして来たのは、駒王学園が誇る美少女の1人、そして、悪魔の1人でもある木場結菜だった。

 

 廊下には夕乃さんもおり、結菜に案内され旧校舎のオカルト研究部に向かっていく。

 

 その途中、変態コンビが血の涙を流していたり、女子生徒たちがイッセーたちを見て何か騒いでいたがーーー全て無視した。

 

「ここだよ」

 

 案内された扉の上にはオカルト研究部と書いてあるプレートがついてある。

 

「部長、来ていただきましたよ」

 

 その扉を開き、結菜を先頭にしてイッセーたちも部室の中に入っていくと、

 

「凄いな……」

「黒魔術の儀式場じゃねぇか」

「ちょっと、怖い……です」

「雰囲気出てますね」

 

 それぞれがそれぞれの感想を述べた。中はまさにオカルト専門といった、暗い雰囲気を醸し出す空間だった。それでも、なかなか設備が整っているようで、奥の方にはシャワー室があり、リアスはそこでシャワーを浴びているいうだった。

 

(あ、ほとんど女子しかいない。キンジは大丈夫か?)

 

 そう考えながらキンジの方を見るイッセー。案の定、大丈夫ではなかった。

 

「……何でこんなに女子の香りが充満してんだよ」

 

 物凄い顔を顰めている。体質のせいで、女子が苦手なキンジにとって、ここは一種の戦場なのだ。イッセーからは、耐えろとしか言えない。

 

 そこで、夕乃と似た雰囲気、大和撫子を想像させる女性が近づいてきた。

 

「あらあら、初めましてイッセーさんにキンジさんに切彦さん。私は姫島朱乃と申します。以後、お見知りおきを。それと、先ほど振りですわね、夕乃さん」

「また会いましたね、朱乃さん」

 

 朱乃は夕乃と親しい関係のようだ。夕乃、リアス、朱乃という、駒王学園3大お姉さまがまさかのオカルト研究部にて集結である。確かに、お姉さまオーラを纏っている感じがする。

 

 次に自己紹介してきたのは、使いであった木場結菜だ。

 

「さっき使いとして案内したけど、ボクの名前は木場結菜です。クラスは違うけど、イッセー君たちと同じ2年生だよ」

 

 柔かな笑顔が特徴の少女で、誰にでも同じように接し、人によって態度を変えず、身体を動かすことが好きなボーイッシュ系女子。持ち前の明るさで、男子女子両方から人気を誇っている。

 

 そして最後、というか、イッセーと切彦にとって、1番気になっていた白い髪を持った少女。実は、イッセーや切彦は廊下でよく出会う。

 

 イッセーたちが部室に入った時からずっとそわそわ落ち着いていない少女で、何故か、とても懐かしい感じがするのだ。

 

「……搭乗、小猫です。よろしくお願いします」

 

 頬を若干染めて挨拶する小猫に、切彦は何を思ったのかゆっくり近づいていく。近づくたびに頰の赤みが増す小猫。手に持っていた羊羹をテーブルに起き、ジリジリソファの端に後ずさっていく。

 

(名前の通り、猫みたいだな小猫ちゃん)

 

 切彦はゆっくりと両手を広げ、そのまま一気に小猫へと覆い被さった。

 

「えい♪」

「……にゃあ!?」

 

 切彦の両腕でガッチリとホールドされた小猫は、本物の猫のような悲鳴を上げ、そのまま切彦に頬擦りなどをされている。嫌がっているように見えて、満更でもなさそうな小猫。

 

(良いなぁ……ハッ!?俺があんなことしたら警察沙汰だ!!)

 

 イッセーは邪念を振り払うように両頬を叩く。キンジは未だに1人でブツブツ呟いており、夕乃は朱乃と仲良く世間話。切彦は小猫に抱きついて愛でまくっている。

 

 そこで、シャワーの音が止みーーー突然隣でキンジが自分の事を殴り飛ばした。

 

「キンジ!?どうした!?」

 

 余りの出来事に、イッセーは驚きを隠せない。キンジは眼を硬く瞑り、イッセーに鋭い一喝を放った。

 

「イッセー!!シャワー室を見るな!!殺されるぞ!!」

 

 言いたいことは瞬時に理解できた。要するに、リアスが丸裸でシャワー室から出て来たのだろう。

 

「了解!!」

 

 イッセーも素早く反転。背後から、殺意の篭った夕乃と平然としたリアスの会話が聞こえるが、とにかく平常心を保つ為にも、イッセーとキンジは心を無にする。

 

「あなたたち、もう着替えたから起きなさい」

 

 リアスの声で意識を取り戻したイッセーとキンジ。恐る恐るリアスの方を見るとーーーしっかり制服を着たリアスが椅子に座っていた。

 

 とりあえず、最悪の状況は免れた為、胸を撫で下ろすが、夕乃の額にはまだ青筋がある。

 

 リアスは咳払いを一つして、オカルト研究部に関する説明を始めた。ある程度は昨日の説明通りで、今日からでも仕事は始めるとのこと。

 

 入部の話の時に、キンジたちも全員入部することになった。それと、部としてのケジメをつけるため、リアスのことは部長と呼ぶ事になった。

 

 それから、レーティングゲームに関する話を聞いている最中に、昨日聞き忘れた、肝心のイッセーに使った駒のことを思い出したため、聞いてみると、

 

「《兵士》よ」

 

 一番前線で戦う駒らしい。しかし、イッセーは特に落ち込む事無く、

 

「なら、1人の兵士として、部長を守らないといけませんね」

 

 と、むしろやる気になった。流石に予想外だったのか、

 

「もっと落ち込むと思ったのだけど……案外平気そうね?」

「はい。《兵士》でも《王》は討ちとれますから。それにチェスが基盤なら、それに準ずるルールとして、《プロモーション》とかあるんじゃないですか?」

 

 リアスは確信する。やはり、イッセーの頭の回転は速い。そう、チェスと同じように、レーティングゲームでの《兵士》は、敵陣地に辿り着く事で、好きな駒に《プロモーション》することが出来る。また、《キャスリング》も可能だ。

 

「やっぱり、あなたを眷属にして正解だったわイッセー」

「褒めすぎですよ」

 

 笑顔で言うリアス。その横では、夕乃が笑みの中に暗い何かを宿し始めているので、割と死の危険を感じているイッセー。

 

 話がひと段落つき、朱乃が淹れてくれた紅茶で喉を潤していると、

 

「……イッセー先輩、羊羹食べますか?」

「良いのかい?」

「……はい」

「じゃあ、ありがたくいただくよ」

 

 小猫がお菓子を分けてくれた。その光景を見たイッセーたちを除く他の部員達が、顔を驚愕に染め、

 

「小猫がお菓子を分けた……?」

「あらあら、珍しいこともあるんですわね」

「こんなこと初めてだよ」

 

 口々に驚きの言葉を発する。イッセーたちにはよく分からない事だが、小猫のことをよく知っているリアスたちからすれば、相当なことのようだ。

 

 話が続く中、キンジは朱乃の事がやけに気になっていた。

 

(あの時助けた子に似てるんだよな……まぁ、単なる人違いかもしれんが)

 

 それは、朱乃にも言えることで、

 

(キンジさん……あの時助けてくれた方に似てますけど……気のせいでしょうか?)

 

 予想通り、キンジは一度、朱乃の事を助けたことがあるのだが、まだそのことには気づかない2人であった。

 

 

 〜〜〜

 

 

 廃墟となった教会にて、フリードは、堕天使レイナーレの傘下に入ったばかりのアーシアの監視役を命じられていた。

 

 アーシアの迎えを命令されていたのにも関わらず、堂々と寝坊し、自力で教会付近まで来たアーシアを連れ帰った時に、レイナーレから大目玉を喰らい、その罰のようなものだ。

 

 しかし、そんなフリーダムなフリードも、アーシアの話を聞いた時は驚いた。

 

 なんでも、フリードの義兄弟である、イッセーと接触したらしく、教会の近くまで送ってもらったらしいのだ。

 

 懐かしい義兄弟を思い浮かべ、アーシアにそのことを話すと、アーシアは大層喜んだ。

 

「フリードさん!」

「なんだい、アーシアちゃん?」

「イッセーさんにまた会えますか?」

 

 傭兵として雇われているフリードは、レイナーレの計画を把握している。そのため、アーシアの今後も知っていた。ロクな結果を迎えない。

 

(こんな良い子なのに……可哀想に)

 

 しかし、フリードとしても、仕事な以上、私情を挟むことは出来ない。契約分(・・・)の働きはするつもりだ。

 

「フリードさん?」

 

 いつまで経っても反応しないフリードに、アーシアは不安そうに名を呼ぶ。我に帰ったフリードは、すぐに笑顔を浮かべ、

 

「安心しな、信じれば、必ず会えるさ。このフリード神父が保証しちゃう!!」

 

 無理矢理テンションを上げて反応した。アーシアも満面の笑顏で、

 

「はい!!」

 

 そこからも、フリードがバカみたいなテンションで騒ぎ、アーシアを沢山笑わせた。

 

「うるッさいわねぇ!!静かにできないの!?」

 

 と、怒鳴り込んでくる堕天使がいたが、敢えて無視した。

 

「って無視するなぁー!!本当にあんたは雇われてるって自覚あんの!?」

「失礼な!!俺っちは何時でも本気だZE☆!?金に関することにはな!!」

 

 指で金マークを作り、ドヤ顔をキメながら小煩い堕天使たちに言い放つ。

 

「金は1番万能なんだよどさんピンがぁ!!世の中所詮は金で回ってんだよ!!金が最強!!金がジャスティス!!金をバカにする奴ァ俺が直々にブチ殺してやらぁ!!ヒャッハァァァァァァァァァッ!!!!!!」

 

(ダメだこいつ……早くなんとかしないと……)

 

 堕天使でも制御できない自由の象徴、フリード・セルゼン。今日も軽快に暴走中。純粋すぎるアーシアは、フリードのテンションに頑張ってついて行こうとするが、流石に無理だった。

 

 レイナーレたちも、フリードがはぐれ神父ということは知っているが、教会を追放された理由が分かったような気がした。この外道神父を置いておきたい教会など存在しないだろう、と。

 

 ……計画の時間は、刻々と近付いている。




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