希望と絶望を司る   作:虹好き

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独自設定を追加しました。
分かる人には分かることだと思いますが、この作品はかなりごちゃまぜ感溢れています。
読者の要望などにも答えられる限り答えていく所存です。

では、本編お楽しみください。


独りだったシスター

 イッセーが悪魔に転生して数日、悪魔としての仕事にも段々と慣れてきた。

 

 願いを叶える代償に、それに見合った契約料を払うというもので、イッセー自身、初めはどんな願いを言われるのか少々不安だったが、幸い、イッセーは一部の特殊な性癖を持つ漢女や、漫画についての語り合いなど、軽い契約のものが主で、なんとかこなすことができている。

 

 何度も同じ人ーーーお得意様に呼ばれることもしばしばあり、新人悪魔にしては出来過ぎなぐらいだ。

 

 オカルト研究部の部員には、イッセーの神器である『赤龍帝の籠手』がどこまで使えるか伝えておいた。人間の時は、何かのきっかけで"禁手化"になれるはずだったのだが、悪魔に転生してから、力にリミッターようなものがかかっており、数段階グレードダウンしてしまっているのだ。

 

 実戦で証明するのが1番良いのだが、オカルト研究部もう一つの仕事である、はぐれ悪魔の討伐は、ここ最近ないらしい。というよりも、誰かに先取りされていると言った方が正しい。

 

 犯人は今のところ不明だが、ここ最近、はぐれ神父と言われている者が頻繁に出没しているらしいので、そいつの仕業かもしれないとのことだ。

 

 その説明中、イッセーはどこかに金稼ぎに行った義兄弟を思い出した。置き手紙に書いてあった内容には、はぐれ神父という単語が記されていたことを思い出す。

 

 リアスからは、施設で話している時に夕乃が呟いた"角"についても聞かれたが、崩月流の事情もあり、現段階では我慢してもらった。

 

 また、悪魔の身体というのは人間の時よりも強化されると聞いたが、イッセーの身体が特殊なせいか、眼が良くなる以外は人間の時と変わっていない。

 

 キンジと切彦、夕乃もオカルト研究部での仕事(主にイッセーを見守る)を交代制で行っており、ウェスカーの時のようにイッセーを1人にしないようにしている。

 

 そして、休日。ウェスカーと対峙した時に買っていた物ーーー結局回収できなかったので買い直しに、キンジと2人で町中を歩いていると、教会のシスター、アーシア・アルジェントにを見つけた。

 

 

 〜〜〜

 

 

 アーシア・アルジェントは、フリードに連れられ、町中に出てきていた。

 

 教会でいつも通りお祈りをしていたところ、暇そうに椅子に寝転がっていたフリードが突如跳び起き、

 

「ダメだ!!」

「はぅ!?ど、どうしたんですか?フリードさん」

 

 声に驚いたこともあるが、軽く苛立ったように頭をかくフリードに、アーシアは恐る恐る尋ねる。フリードは思いっきり背筋を伸ばし、

 

「こんな埃クセェ場所にいつまでもいたら健康に悪りぃわぁ!!ってか退屈なんじゃーい!!」

 

 後半が本音だ。傭兵として雇っておいて、肝心の仕事内容は、たまに出るはぐれ悪魔の討伐で、後はアーシアのお守りである。

 

 この前も、バイザーとかいう悪魔を討伐しに行ったが、5秒かからず瞬殺したため、身体が鈍っているような感覚なのだ。

 

「で、ですが、レイナーレ様方は今教会を留守にしていますし……教会からは出るなと」

 

 純粋に、愚直なまでに言われたことを守ろうとするアーシアに、フリードは悪い笑みを浮かべ、

 

「アーシアちゃん?逆に考えるんだ。今、堕天使どもはいない。つまり、監視の目はない。たかが口約束程度、後で頭下げりゃあ許してもらえるさ。ルールは破るためにあるんだZE☆!?」

 

 ブレないフリードに、アーシアは苦笑いしか返すことができない。この男は、己がその監視役ということを全く自覚した上で発言しているようだ。

 

 何かを言おうとしたアーシアの手を取り、少しばかり強引に外へと連れ出し、

 

「ふ、フリードさん!?」

「まぁまぁ、全部俺っちのせいにしていいから、遊びに行こうぜぇ!!」

 

 そのまま町までアーシアの手を引いていった。

 

 

 

 

 そして、フリードは悩んでいた。町中に似合わない神父服の上から腕を組みーーー

 

「アーシアちゃんは何処に行ったのかなぁ?」

 

 アーシアを連れ、町に着いたのはいいのだが、フリードが少し眼を話した隙に、アーシアとはぐれてしまったのだ。眼を話したとはいえ、それはたかが数分。

 

(まぁ、アーシアちゃんの事だし、大方教会関係の物につられたか、老人の介護とかしてそうだが……ま、ボチボチ探しますかー)

 

 フリードはただ単に退屈な教会から抜け出し、外を散歩出来れば良いと考えていた。アーシア自身も、そう遠くえは行っていないだろうと、そこから動き出した。

 

 

 〜〜〜

 

 

 イッセーとキンジがアーシアを見つけた時ーーー彼女はかなり胡散臭い露天商に出会っていた。

 

 アーシアはシスターの格好をしているため、教会関係の物を売られそうになっているのだ。立ち止まるアーシアに、胡散臭い露天商は、怪しい商品の有る事無い事を吹き込んでいく。顔は東洋人のはずなのに、何故か流暢なフランス語を話す露天商。もしかすると、イッセーやキンジよりも上手いかもしれない。

 

 さらに悪いのは、アーシアが純粋すぎて、露天商の話を真面目に聞き、眼を輝かせ始めたことだ。あの眼は、明らかに露天商の言葉を信じている。アーシア自身は、言葉の通じる相手がイッセーたちの他にもいたことが嬉しいというのもあるが。

 

 アーシアのことは、イッセーがウェスカーに殺された件の話をした時に話したため、キンジも把握している。

 

 イッセーはキンジと顔を合わせ、同時に軽く溜め息を吐くと、アーシアに近づいていった。

 

「久しぶりだな、アーシア。

「あ、イッセーさん!お久しぶりです!えっと、隣の方は……」

「初めまして。俺の名は遠山キンジだ。キンジと呼んでくれ。君のことはイッセーから聞いてるから、自己紹介は必要無いぞ、アーシア・アルジェント」

「初めましてキンジさん。私もアーシアと呼んでください!」

「あぁ」

 

 今まで楽しそうに商品の自慢をしていた露天商を無視し、イッセーとキンジはアーシアの手を引いて行く。流暢なフランス語で何かを叫んでいる奴がいるが、イッセーが柔かに笑いかけてやると、顔を青くしながら何も発しなくなった。

 

「それで?アーシアはなんであそこにいたんだ?」

 

 小腹が空いていたこともあり、ファストフード店でハンバーガーを摘みながらイッセーが問う。

 

 アーシアは初めてのハンバーガーに四苦八苦しながら、

 

「ユニークな神父さんに連れてきていただいたんです。……逸れちゃいましたが」

 

 フリードから、他人に名を教えないでほしいと言われていたアーシアは、その約束を律儀に守り、フリードの名を伏せて応える。それでも、2人の頭には1人の人物が思い描かれたが。

 

(ユニークな神父……そんな神父は聞いたことがない。……あいつを除いて)

(ユニーク……はぐれ神父になら心当たりが……)

 

 しかし、まさかフリードが駒王町に戻っているとは夢にも思わず、勘違いだろうとイッセーとキンジは思考を振り払った。アーシアも意図的に名前を伏せているようなので、無理に聞く気もない。

 

 キンジに包装紙を開けてもらい、シスターらしく上品にジャンクフードのハンバーガーにかぶりつくアーシア。途端に瞳を大きく開き、

 

「こんな美味しい食べ物、生まれて初めて食べました!!」

「そりゃあ良かった」

「アーシアは教会からあまり出たことがないんだな」

 

 ここまで純粋な少女なのだ。きっと、小さい頃からシスターとして教会で生きてきたのだろう。

 

「……私の話、聞いてくれますか?」

 

 キンジの一言で雰囲気が一転したアーシアが、突然そんな事を言ってきた。

 

「あぁ、俺も気になっていたところだから丁度いい。ーーー何故、廃墟となった教会に住んでるのかとか、な」

 

 アーシアは弱い笑みを浮かべ、「やっぱりバレてますよね」っと、彼女自身の過去についてゆっくりと話し始めた。

 

 イッセーとキンジは静かに聞き耳をたてる。昼間の騒がしいファストフード店の中、この席だけは空間が切り離されたように静かになり、アーシアの声だけが響いた。

 

 ーーーそれは、奇跡の力を持つ、不幸な少女の物語。

 

 幼い時に、両親に捨てられたアーシアを拾った教会。その時からシスターとして生き始めたアーシアはある時、傷ついた犬を助けたい一心で、己の中に眠る神器、『聖母の微笑』を発現させ、犬の命を救った。

 

 神器の知識がない教会の者達は、アーシアの力を奇跡の力と呼び、"聖女"として崇め立てた。

 

 そこから、毎日のようにアーシアの神器の力を求め、教会には人が殺到した。どんなに疲れても、アーシアは持ち前の優しさで人々を癒し、"聖女"としての名はますます有名になった。

 

 しかし、アーシアは、たった一度の失敗で、全てを失うことになる。

 

 ある日、教会の前に傷だらけの青年が倒れていた。

 

 アーシアは当然のようにその青年の傷を治したのだが、その青年は"悪魔"だった。

 

 聖なる教会にとって、悪魔は対となる存在。簡単に言えば、光と闇。

 

 神器は想いの強さによって、その力は大きく変動する。

 

 アーシアの奇跡の力は、神より愛を与えられし人間のみならず、悪魔すら治してしまったことから、教会の者たちは態度を一変させた。

 

 散々自分たちで"聖女"と持ち上げておきながら、アーシアを"魔女"として教会から追放したのだ。

 

 行くあてを失くしたアーシアは、堕天使レイナーレに保護され、この駒王町にある廃墟と化した教会で、堕天使の加護を受けながら生活している、というところで話は終了した。

 

 話が終わってから、しばらくの間、3人の中で会話は無かった。重苦しい空気が漂う中、その沈黙を打ち破ったのはアーシアだった。

 

「でも、今はレイナーレ様の御蔭で不便のない生活をさせていただいているので、何も心配はいらないですよ!」

 

 話している時は、涙を溜めていたのにも関わらず、話終わった途端、笑顔を作ることができる。イッセーとキンジからすれば、バレバレの演技ではあるが、素直に、強く優しい子だな、と思った。

 

 そして、ただならぬ怒りを感じた。

 

(この子にこんな過去を背負わせた奴らは、許せないな)

 

 突然、キンジがその場で勢い良く立ち上がり、

 

「今日は遊ぼうぜ兄弟(ブラザー)

 

 アーシアはポカンとしている。イッセーはその表情に笑みをつくり、

 

「そうだな。アーシア、今日は疲れるくらい楽しませてやるから覚悟しろ」

 

 そう言って、イッセーも立ち上がる。アーシアは先ほどのようなつくり笑いではなく、満面の笑みで立ち上がった。

 

「はい!」

 

 そこからは、ただただ遊びつくした。

 

 3人で回れる限りの娯楽施設を巡り、クレーンゲームでアーシアが欲しがったラッチュー君を今日の記念として取り、アーシアにプレゼントすると、

 

「ありがとうございます!イッセーさん!キンジさん!」

 

 華のような笑顔を向けてくれた。やはり、彼女にはこの表情がよく似合う。

 

 時刻は既にに夕暮れとなり、公園のベンチで3人仲良く座りながら、キンジがアーシアに聞いた。

 

「今日1日振り返ってみて、どうだった?」

「凄く楽しかったです!生まれて初めての体験が沢山できました!!」

 

 その言葉が聞ければ十分だとばかりに、イッセーに目配せする。それに頷き、

 

「アーシア」

「何ですか?イッセーさん」

「俺たちのところに来ないか?」

「イッセーさんたちの、ところ?」

 

 頷き、施設の話をアーシアにした。実は、アーシアの話を聞いた時に、この町に住んでいる堕天使の話で、気に食わない部分があるのだ。

 

 "魔女"として教会を追放されたアーシア。その身には神器が健在。堕ちた天使は邪な事を根に持つ。それに、最近の堕天使の動きは怪しいらしい。

 

 静雄曰く、裏で何やらコソコソ行動しているらしく、町中で、多数のはぐれ神父が教会に向かっているところを目撃したのだとか。

 

 極め付けは、神器を宿すイッセーにまで接触を試みようとしたことだ。不安要素の排除かは不明だが、あの時接してきた天野夕麻は、微かに殺気を放っていたのだから。

 

 しかし、悪魔に転生してから、リアスから教会に近づく事を固く禁じられている。悪魔にとって、教会とは対となる存在であり、相性が最悪なのだ。

 

 だから、最悪、アーシアがこの誘いを断っても、オカルト研究部に内緒で殴り込みに行こうと考えていた。

 

「お誘いは嬉しいのですが……レイナーレ様方はこんな私を保護してくださいましたし」

「いいかアーシア、よく聞いてくれ」

「はい?」

 

 イッセーは先ほど考えていたここ最近の堕天使の不穏な行動などをアーシアに教えた。

 

「そういえば、確かに最近新しい神父さんたちを沢山見ます。みんな目が虚ろなので、怖くて話しかけれないのですが……」

「イッセー、そんだけ神父を集めるとすると、大人数で行う大規模術式の可能性も浮上してくるぞ」

 

 キンジの言葉に、流石のアーシアも不安になってきたのか、

 

「私、術式とかに関してはあまり知識が豊富なワケではないんですけど……教会の地下に大きな円が書かれ、その中心に磔台があったんです」

「「ビンゴかよ」」

 

 思わずハモる。しかし、そうなると、アーシアの命が危険だ。このまま施設に連れて帰り、"万屋"である静雄に頼んだ方が良いかもしれないとイッセーは考えるが……そこで、周囲に人をがいない事に気づいた。

 

「ッ!俺としたことが……話してたぐらいで気づかないなんて」

 

 キンジが苦虫を噛んだような表情をし、上を見上げる。イッセーとアーシアも上を見上げると、

 

「やぁ、何故悪魔と行動しているのかは不明だが、迎えに来たぞアーシア・アルジェント」

 

 紺色のコートを着た堕天使が3人を見下ろしていた。キンジは何時でも愛銃"ベレッタキンジモデル"が抜けるように構え、イッセーはアーシアの前に立って堕天使を睨みつける。

 

「そんな警戒するな。私はただ単に、アーシア・アルジェントが余りにも帰りが遅いため、探しに来ただけにすぎん」

 

 その言葉に、アーシアはイッセーの前に出て、

 

「この方々は、私の"初めて"の友人です。大人しく帰りますから、手荒なことはしないでください」

「アーシア?」

 

 予想外の行動に出たアーシアに、イッセーとキンジは虚を突かれるが、振り返ったアーシアは小さな、イッセーとキンジにしか聞こえない声で、

 

「待ってますから……イッセーさん、キンジさん」

 

 そう言って、華のように笑い、降りてきた堕天使の方に向かって行く。アーシアを連れ、飛び上がった堕天使は、「さらばだ」と言って教会へと飛んで行った。

 

 その瞬間、公園を囲っていた夥しい量の気配が一斉に教会へと消えていくのを感じ、

 

「気付けなかった俺たちの落ち目だけど、助けられちまったな」

「あの数相手にこの武装じゃ無理があったしな」

 

 構えを解いたキンジは教会の方に目線を移し、

 

「御指名が入ったぞ?誘ったのは俺たちだ。勿論、友だちは助けに行くよな兄弟(ブラザー)?」

「あぁ、今日にでも大規模術式を起こされるかもしれないしな。バレないように、奇跡の聖女様を救いに行こうか兄弟(ブラザー)

 

 2人は施設へと急いだ。

 

 

 〜〜〜

 

 

 町中を歩きながら、アーシアを探していたフリードは、全く見つからないシスターに頭を悩ませていた。

 

「一体全体アーシアちゃんはどこに行っちまったんだぁ〜?マジでそろそろ見つけなきゃ暗くなっちまうじゃねぇか。暗い中、か弱いシスター1人なんて俺っち許しませんよ!?」

 

 相変わらずのハイテンションでアーシアを探すがーーー人払いの結界が張られた瞬間、盛大に溜め息をついた。

 

「何かしら今の溜め息。フリード、私はアーシアと教会での待機を命じたはずよ?今日がどれだけ大切な日か、あなたに教えてるはずよね?ねぇ?」

 

 震える声を発しながら舞い降りたのは堕天使レイナーレ。青筋を痙攣させ、いかにも爆発寸前という感じだ。フリードの応えはーーー

 

「たかが口約束で俺が縛れるとでも!?」

 

 物凄くバカにしたような態度で、謎の決めポーズとともにそう言い放った。怒りが一周回って冷静になってしまったレイナーレは、

 

「はぁ……まぁ、アーシアの回収はドーナシークに任せたしーーーあなたにも最後の仕事があるのだから行くわよ」

 

 その言葉に、フリードは一瞬だけ真顔になった。次の瞬間にはいつものふざけた表情を浮かべていたため、レイナーレが見ることはなかったが。

 

「了解了解ーっと。んじゃあ、行きますかねぇ」

 

 そう言って、フリードはレイナーレの後を追いながら教会へと向かった。

 

 

 〜〜〜

 

 

 イッセーとキンジは施設に戻っていた。

 

 しかし、玄関に立っていたのは……鬼のような笑顔を浮かべた夕乃とリアス。

 

 予想外すぎる展開について行けず、その場でフリーズするイッセーとキンジ。

 

 最初に語り出したのは、夕乃だった。

 

「おかえりなさい、イッセーさんにキンジさん」

「た、ただいま夕乃さん」

「た、ただいま。何でそんなに怒っているのか聞いても?」

 

 キンジの問いに、夕乃は眼光を鋭くし、

 

「イッセーさん……キンジさんと買い物をしに行ったんですよね?」

「は、はい……」

 

 冷や汗は止まらないイッセー。夕乃眼光は鋭さを増していき、

 

「では、何で女子が一緒だったのですか?」

「……何処でその情報を?」

「"偶然"イッセーさんたちを見かけた小猫さんに聞きました」

 

 成る程、なら、リアスが施設にいて、怒っている理由も検討がつく。大方、小猫につけられ、堕天使に遭遇したところを見られ、先回りしてリアスに連絡し、それを聞いたリアスが飛んできたのだろう。もともと言うつもりであったので、イッセーは正直に話すことにした。

 

「えぇとですね、恐らく部長は知っていると思うのですが……」

 

 説明し終わると、さっきとは打って変わってアーシアを憐れむ夕乃と、腕を組み、何かを考えているリアス。その様子は、迷っているようだった。

 

 少しの間考え、リアスは腕を解き、観念したように、

 

「あなたたちの事だから、イッセーを止めれたとしても、悪魔ではないキンジはどんなに私たちが止めても行くでしょう?」

「当たり前です。奴らの行おうとしていることは悪だ。それを裁かないのは俺の掲げる"正義"に反するので」

 

 即答するキンジ。リアスはその言葉に笑みをつくり、

 

「私たちも行くわ。私の眷属は誰一人欠けさせない。そこであなたの力を見せてちょうだいイッセー」

「はい!」

 

 その様子を見つめる夕乃は、1度眼を瞑り、

 

「イッセーさん、キンジさん。必ずその子を連れて帰って来てくださいね。晩御飯の準備はしておきますので」

 

 優しい表情でそう言った。イッセーとキンジは笑みをつくり、

 

「任せてください」

「必ず」

 

 口々にそう返した。その時、研究所へと続く廊下から岡部が現れ、

 

「イッセー、キンジ。俺の崇高なる『リーディングシュタイナー』の導きにより、一部屋空けておいたぞ。この"運命"は絶対だ。それとキンジ、お前の武装だ、受け取れ」

 

 突然の言葉とともに投げ渡される武装に驚いたが、キンジはしっかりと受け取った。岡部がわざわざ『運命探知』を使ってまで未来を見てくれたのだ。岡部には、結末が見えているのだろう。2人は無言で頷き、玄関の扉を開けると、

 

「あらあら、もう準備はよろしいんですの?」

「こっちはいつでも行けるよ!」

「……行きましょう」

 

 朱乃、結菜、小猫が既に待っていた。さらに、

 

「遅いぜ?お兄さん。助けんだろ?」

 

 リビングから、"カッター"を手に持った切彦が出てきた。いつもと全く違う雰囲気の切彦に、リアスたちオカルト研究部のメンバーを瞬きを何回もする。

 

「行こうぜ兄弟(ブラザー)。"初めて"の友人として、アーシアを助けに」

「そうだな、あいつはもう、独りじゃないよ」

 

 アーシアの待つ教会に向け、イッセーたちは動き出した。




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