軽い区切りですね。
それでは本編お楽しみください。
イッセーたちが教会の地下から戻ると、そこには瓦礫が錯乱していた。機嫌の悪そうな切彦が大きめの瓦礫に腰掛けており、フリードの姿はどこにも見当たらない。
階段から顔を出したイッセーたちに気付いた切彦は、瓦礫から腰を上げ、
「無事、救えたみたいだな」
「お蔭様で。ところで、あいつは?」
イッセーが聞くと、明らかに機嫌を悪くする切彦。その反応に、イッセーは大体の察しがついた。
「あの野郎……自分の"力"を使わねぇどころか、途中で勝負を捨てて逃げやがった」
「珍しいな、あいつが戦いを捨てるなんて」
キンジも軽く驚いたようだ。さらに、切彦に追跡を許さずに逃亡できるということは、フリードも手を抜いていない証拠でもある。"力"を使っていないとはいえ、本気で動いておきながら勝負を捨てるような男ではないのだ。
切彦は舌打ち混じりにカッターを捨てる。すると、その表情はたちまち眠そうな、覇気の無い表情へと変わり、
「……今日は疲れたです」
言動も、いつもの大人しい彼女になった。
テンションの格差が激しい切彦に、リアスたちオカルト研究部の面々はついて行けず、ただ苦笑いを返すだけだった。
切彦は小猫の方に歩いて行き、両腕抱きつく。オカルト研究部では既に慣れた光景。小猫も慣れたというより、そこまで嫌でもないのか、頰染めてされるがままになっている。
そのままの状態で切彦はアーシアに向き直った。顔を合わせるのは初めてである。しかし、これから施設で共に暮らす仲間。イッセーとキンジが身体を張って助けに来るほどだ。切彦にとっても、大切な存在になるであろうアーシアに、切彦は頭下げる。
「……斬島切彦です。これから、よろしくお願いします。……私も同じ施設なので、家族ですね」
「あ、アーシア・アルジェントです。よろしくお願いします。ところで……切彦"さん"で合ってるんですよね?」
オカルト研究部のメンバーすら触れなかった切彦の名に、純粋なアーシアは疑問を持って聞いた。イッセーとキンジは自然な動きで眼を逸らす。これから起こるであろう現象を視界に入れない為に。
「えっ?えぇっ!?何やってるんですか!?切彦さん!?」
「……あります、小さいけど」
「……切彦先輩……」
「なんてコメントすればいいのかしら?」
「あらあら、大胆な行動ですわね」
「ボクはノーコメントで……」
切彦の行動に対し、それぞれがそれぞれの反応を見せるが、イッセーはことが済むまで眼を逸らし続ける。キンジにいたっては、邪念を払うためか、眼だけではなく、耳まで塞いでいた。
「……良かったら下も」
「も、もう十分分かりましたからッ!!腕を引っ張らないでくださいぃ!!」
聞こえるのはアーシアの悲鳴。無力なイッセーは、その光景を直視することすらできない。
切彦は、家系の事情でそういう名を名乗っているが、やはり、"切彦"という名は男の名だ。そのため、姿は美少女でも、どうしても相手から疑問をぶつけられる。イッセーも最初はそうだった。
イッセーも、アーシアのように声には出さなかったが、思考を読まれたらしく、切彦に腕を掴まれーーーおもむろに胸に引き寄せられたのだ。予想外すぎた行動に、ロクに反応できなかったイッセーは、切彦の、小さいが確かな柔らかさのある胸を触ってしまい、未だにその感触が忘れられなかった。
そして、先ほどのアーシアと全く同じ言葉を言われたのだ。やはり、どこか抜けている少女である。
声が収まったため、視線を戻してみると、小猫に正面から強くホールドされた切彦。顔を真っ赤にしたアーシア。どこか疲れた表情のオカルト研究部のメンバーがいた。
小猫は切彦の動きを止めるためにしているのだろうが、切彦は、小猫が抱きついてきたものだと勘違いしたらしく、幸せそうな表情になっている。
イッセーは現実逃避中のキンジを呼び戻し、リアスに声をかけた。
「部長、そろそろ行きませんか?」
「そうね。戦闘で埃が凄かったし、早く帰りましょうか」
そう言って、グレモリー眷属の転移陣を用意するリアス。やがて、イッセーたちは転移の光に包まれた。
〜〜〜
切彦との戦いに逃げたフリード。次なる依頼人のもとへと向かいながら、フリードは神父服の懐から、ボロボロになった光剣や銀銃の残骸を取り出し、おもむろに一言。
「いやぁ……いくら俺っちでも、切彦ちゃん相手に獲物無しじゃあ勝てるはずないわなー」
銀銃は切彦のカッターで真っ二つに、光剣にいたっては、途中で本気を出さざるを得ない状況まで追い込まれたフリードが全力で振るったら、その剣圧で自壊した。あんなところで"力"を見せるわけにもいかず、切彦の大好きなイッセーの話で狼狽させた直後に、逃亡用の閃光玉で逃げ出したのだ。
(そりゃあ、偽物とはいえ、"宝具"を使いこなすために修練してきた身。しかも、お師匠さんがあんな強力な人なら自然とそれに馴染むような身体つきになるっての。あれ?俺っちって意外にも人間やめてる?)
適当なことを考えながら、その残骸を捨て、携帯を取り出して次の依頼人に電話をかける。やがて、3コールほどででた相手に、親しそうな様子で会話をするフリード。
「よぉ、バルパーのおっさん。今からそっちに向かうから"コカビエル"の旦那によろしく言っといてちょ!!」
電話から呆れたような声が響くが、無視して電話を切る。電話を神父服のポケットの中にしまい、代わりに、青く輝く結晶を取り出した。
「次の仕事で最後だ。"あいつら"の為に、クソみてぇなあの面ブッ飛ばしに行ってやっかぁ!!お師匠さんから受け継いだ《正義の味方》として、いっちょ成敗してやるZE☆!!金稼ぎも忘れずにな!!……だから、もう少しだけ待っててくれ
フリードは、教会で顔を合わせたイッセーの所属しているオカルト研究部の中で、『魔剣創造』を使う木場結菜のことを気にかけていた。神父服を着たフリードを視界に入れた瞬間、ほんの一瞬だったが物凄い憎悪を感じた。
フリードは、何度か師に連れられ、《正義の味方》としての戦場を見たことがあり、戦ったことがある。
その戦場は、全てが凄惨なまでに残酷で、悲嘆なまでに"死"を直視させられた。初めてその光景を見た時は、フリードともあろう者が、自然と恐怖に支配されたほど。理不尽な暴力の嵐の中、勇敢に《正義》としての在り方を、身体を張って師から教えられた。今でも覚えている師の言葉。
『誰かに理解されようとするな。戦場では、どんな《正義》も、等しく多くの命を散らす。私の掲げる《正義》が悪だと罵る者も多い。私の真似をしろとは言わない。お前は、お前だけの《正義》を胸に、これからを生きて行け』
そに言葉を胸に、フリードなりの《正義》の在り方のキッカケを見つけたのは、教会関係のとある事件が関係している。
そこは、戦場ではなく、しかしながら、フリードがはぐれ神父となる原因をつくった場所でもあった。フリードが、唯一本気で怒りを覚えた事件であった。
何故かは分からないが、木場結菜の瞳を見た時に、フリードはこの事件のことを思い出しており、無性に胸がざわつくのだ。
結晶を大事にしまい、闇の中を走る。その背中は、孤高の戦士を想像させた。
〜〜〜
アーシアを連れ、施設の玄関まで来たイッセーたち。オカルト研究部のメンバーは、各々の家に解散し、ここに居るのはイッセー、キンジ、切彦、アーシアだけだ。
アーシアは、これから家となる施設を見て感嘆の声をあげていた。大体、初見の人はアーシアと似た反応をする。それもそのはずで、施設は岡部と静雄とジョーカー、フリードの師にキンジの師の5人がそれぞれ資金を出し合って建てたらしいが、その大きさは、一種の大豪邸を思わす大きさなのだ。
外見はフリードの師とキンジの師と静雄、さらにジョーカーが好む古い屋敷風。そのため、ヤクザや暴力団の住処に間違えられることもしばしば。全体的に頑丈に造られすぎており、警備などはいないのに、岡部が趣味で造りだした兵器が倉庫に溢れかえるほど置かれているため、半ば要塞化している。
ちなみに、キンジの愛銃、ベレッタM92Fを改造し、"キンジモデル"へと仕立てあげたのは岡部であり、これまた趣味で強力な特殊弾などを製造している。
そんな岡部のお蔭で、日本では自衛隊と並ぶか、その次程度には武器の貯蔵されているため、この施設の敷地内は、表と裏の世界から不戦条約というもの結ばれ、世界一安全な場所となっているのだ。
それに加え、施設の責任者は、裏世界でトップクラスの腕を持つ"万屋"の平和島静雄、厨二病をこじらせながらも、凄腕の研究者の岡部倫太郎、《正義の味方》として世界を駆け回るフリードの師、代々世界に蔓延る悪を成敗してきたキンジの師がいるのだ。……ジョーカーも責任者の1人だが、酒と女と戦いをこよなく愛する変人のため、イマイチ迫力にかける。
しかし、見た感じがヤクザの屋敷。しかも、岡部たちが許可した人間しか施設に保護されず、施設の大きさに対し、住人が大していないこともあり、裏世界からは有名な不戦条約地帯でも、表の世界からはお化け屋敷扱いをうけていたりと、微妙な印象をつけさせる施設である。
そんなトンデモ施設に感動しているアーシアを手招きで呼び、玄関の扉を開けると、岡部がドクターペッパーを手にイッセーたちを迎え入れてくれた。
「そろそろ帰って来る頃だと、俺の『リーディングシュタイナー』が反応してな。ふむ、そこの金髪シスターが例の少女、か。歓迎しよう。ようこそ我が施設へッ!俺がこの施設の責任者の1人、"鳳凰院凶真"だッ!!」
「アーシア、本名は岡部倫太郎だから、岡部さんって呼ぶんだぞ」
「分かりました!私はアーシア・アルジェントと申します。これからよろしくお願いします!岡部さん!」
岡部の歓迎の言葉兼偽自己紹介をバッサリと切り落とすイッセー。アーシアもイッセーを信じているため、岡部さんとして認識されるようになった。間違っていないため、イッセーにはなんの非も無いのだが。
しかし、目の前の厨二病は、一度や二度、三度や四度程度では全くめげない男。そのまま厨二トークを続けようとする。
「フフフ……ピュアーシアよ、岡部倫太郎は仮の名。我が本名は鳳凰院凶m「お、帰ってきたのか。夕乃が飯を用意してくれてるから早く来いよ」……」
「分かりました静雄さん。さ、行こうか」
「はい!」
「今日は凄い腹減ってるから、さっさと食おうぜ」
「……岡部さんも行きましょう?」
「シャイ子、俺の味方はお前だけだ」
切彦以外の3人にスルーされ、崩れ落ちる岡部。切彦は、「……シャイ子じゃないです」と言いながらイッセーたちの後を追う。初対面のアーシアに、もうアダ名をつけているあたり、岡部らしい。誰も反応しなかったが。
(静雄め……絶妙なタイミングで会話を被せるとは……狙ったのか?)
くだらないことに思考を巡らせながら、岡部もリビングルームへと足を運んだ。
リビングルームでも、アーシアは珍しそうに視線を動かしていた。外見は屋敷のくせして、リビングルームとこれまた謎に洋風を加えた空間。居間もあるが、そこではあまり食事をしない。特に理由はなく、単純に、食事を運ぶのが面倒くさいだけである。
先に来ていた静雄にジョーカー、料理を運んでいる夕乃がおり、無類の女好きのジョーカーは、アーシアが入った瞬間、一番最初に反応した。
「おお!これまた可愛ええ子連れてきたなイッセー君!全く、羨ましい限りや」
「ひぅっ!?」
ニット帽の胡散臭いジョーカーは、いつものようにハイテンションでアーシアに近寄る。目元が見えないに加え、イッセーを軽く超える身長のため、見る人によっては危険な場面のようにも見え、ジョーカー自身は意識してなくとも、その巨躯から滲み出る圧はアーシアを軽く萎縮させてしまった。
そんなことはつゆ知らず、初対面でアーシアに怖がられたジョーカーはその場で時が止まったように凍りつき、
「あー、アーシア。この人はジョーカーさんっていうんだ。こんななりだけど、悪い人じゃないから怖がる必要はないぞ」
「あ、すいません。ビックリしてしまっただけです。私はアーシア・アルジェントといいます。これからよろしくお願いします!」
イッセーのフォロー、そこからのアーシアの対応の速さに、身体に纏わりつく氷を一瞬で吹き飛ばしたように身軽な動きでニット帽を抑える。
「ええ子や……自分は今イッセー君に紹介された通り、ジョーカー言います。まぁお兄さん程度に考えてくれればええよ、アーシアちゃん。よろしゅうな」
本当の妹のように、アーシアの頭を軽く撫でるジョーカー。ジョーカーもアーシアと同じ金髪のため、余計に違和感が無い。その後ろから、バーテン服に煙草を咥えた静雄が顔を出し、アーシアの横に並んだ。
「俺は平和島静雄。後で部屋に案内してやるからな」
軽く挨拶を済ませ、イッセーの方に顔を向ける。ライターで煙草に火をつけ、一度紫煙を吐いてから、
「さっきグレモリーの奴から連絡が入ってな。アーシアの編入が決まり、明日から駒王学園に通うことが決まったらしい。」
「分かりました」
イッセーは頷き、静雄はもう一度アーシアの方を向く。
「それと、夕乃がアーシアの生活用品等をネットで注文してくれてたから、明日には届くだろ。明日着る制服、今日の寝間着は夕乃が貸してくれるようだから、今日はそれで過ごせ」
「分かりました。何から何までありがとうございます!」
「気にすんな。お前はもう、俺たちの家族なんだからな」
そう言って、自分の席に戻る静雄。やはり優しい人だ、とイッセーは静雄に感謝した。キンジと切彦はもう自分の席に座り、岡部もリビングルームに来ていた。夕乃が料理を運び終え、イッセーたちもついた。
いつものように、夕乃は最後に席に座る。施設の母親兼姉のような存在の夕乃は食事を始める前に、
「アーシアさん、私が崩月夕乃です。年は私の方が上なので、これからは姉のように何でも頼ってくださいね」
「はい!沢山のご迷惑をおかけするかとは思いますが、よろしくお願いします!」
「そんなにかしこまらなくてもいいですよ。ですが……」
そこで、何故か夕乃の雰囲気が変わり、イッセーとキンジは首を傾げる。岡部とジョーカーはニヤニヤと笑い、静雄は明後日の方向を見つめていた。ここでこの雰囲気の意味に気付いていないのは2人だけのようだ。
「切彦さんを含め、1人の女としては負けるつもりはありません。そこは理解できてますね?」
「えぇと……」
訂正、言われた本人も理解していないらしい。切彦は夕乃の言葉に相槌を返しているが。
鈍感すぎる2人は、女には女の事情があるのだろうと無理矢理決めつけ、思考をやめる。
その後の食事はだいぶスムーズに進み、アーシアもしっかり施設の家族として馴染めていた。夕乃がデザートを取りに行った時に、ふと、イッセーはキンジに声をかける。
「そういえばキンジ、お前、よく女の堕天使と戦えたな。しかも、
そう、教会で堕天使ドーナシーク、堕天使ミッテルト、堕天使カラワーナの3人を相手にしたキンジなのだが、その中の2人は女性。キンジの『ヒステリアモード』とは、通称『HSS』と呼ばれ、簡単に説明すると、キンジが大量のβエンドルフィンを抽出、例えるなら、異性に対して性的興奮を覚えることで発症し、身体を大幅に強化する『遠山』の血筋の者しか使えない特殊な力のことだ。
強力な力なのだが、その力を解放する鍵の一つが性的興奮、つまり、キンジが女性を苦手とする理由は、無闇矢鱈にこのモードにならない為でもある。ジョーカーのような女好きにはうってつけの力なのだが、もとから女性に一歩引いて接するキンジからすれば、厄介極まりない力なのだ。
さらに、この力を使っている間、キンジは切彦のように雰囲気が一変する。やたらと、女性が好むキザなセリフを吐いたり、過剰なまでに女性に優しくしたりと、まさにプレイボーイのような感じになってしまうのだ。本人は無意識にやってしまうらしく、力を解除した時は、必ず盛大な後悔と羞恥心で悶絶するほど。
しかし、教会でキンジは『ヒステリアモード』になるトリガーを引いていない。そのため、気になって声をかけたのだ。キンジはあぁ、と説明を始める。
「
イッセーはあの時のアーシアの状態を思い出す。
「そのモードのトリガーは、女を他の男に奪われた時。公園で堕天使ドーナシークにアーシアを奪われた時から軽くこのモードになっててな。あの教会でのアーシアの状態を確認した時に、一気に発症した。と言っても、相手は奪った対象じゃなければならない。だからこそ、"俺"からすれば、奪ったも同然の堕天使ドーナシークを相手にしたわけだ」
「なるほど、"奪う"から通常の『ノルマーレ』と真逆の攻撃的なキンジになったと」
「あぁ。その時は敵が女だろうと容赦がなくなるし、『ヒステリア・ノルマーレ』よりも強力な状態になる」
キンジの話を聞き、納得したイッセー。しかも、話を聞く限りだと、『ヒステリア・ベルセ』を超えるモードもありそうである。『ヒステリア・ベルセ』はあくまでも、『ヒステリアモード』の派生型の一つでしかないのだから。
アーシアもキンジの話を聞いていたが、話の途中に出てきた"奪う"という単語に、顔を赤面させていた。本人の目の前で堂々とそういう単語を言えるのは、天性の鈍感さ故である。
夕乃が持って来たデザートも完食し、自室のベットに仰向けに寝転がり、堕天使レイナーレの最後の言葉に出てきた"コカビエル"について考えるイッセー。
中級にまで這い上がったレイナーレを奴隷扱いできるほどの権力者となると、自然と堕天使の中で上級の存在と思考は判断する。そのレベルの敵の強さがどのようなものかイッセーはまだ知らない。
そうでなくても、イッセーはウェスカーに一度殺されている身。あの時のような不覚をとらないために、今一度覚悟を改める必要があった。
(そろそろ、鍛えた身体のみの戦いは限界を迎えそうだな。これからの戦いは、
己の右腕を真上に掲げ、軽く握りしめる。"護る"ために身につけた力、仲間のために振るわずして、何が護るための強さか。
イッセーが腕をグーパーして調子を確かめていると、左腕のドライグから声がかけられた。
『ついに、使う気か?"角"を』
「使うべき時が来るならば、俺は、胸を張ってこの"角"を解放するよ。最近、【大切】が増えたからね」
『……相棒、二天龍の片割れである俺が言うのもなんだが、その力、相当危険な代物だぞ』
そんなことは百も承知している。同じく"角"を宿す夕乃からも厳重に封をかけられ、解き放つ際には、死んでも相手の喉笛を掻き切る位の覚悟がなければならない。
「安心しろ、ドライグ。俺自身も、使わないことを願ってはいるさ。お前っていう心強い相棒がいるんだしな」
『そうか……』
それっきり黙り込むドライグ。こう見えて、実はなかなか相棒想いのいい奴なのだ。
もう寝ようと、眼を瞑ろうとするイッセーの顔に、見覚えのある影がかかった。窓に眼を向けると、そこには何も居らず、月明かりが優しく部屋の中を照らすのみ。しかし、イッセーは先ほどの影に、懐かしさを感じた。
(クロ……)
突然この施設を去った家族。それを思い出させるシルエットだった。やはり、寂しさは残っていたようだ。
何やら胸騒ぎがする。まるで、これから先、さらなる困難が襲いかかってくるように。
そして、その予感が当たることを、イッセーはまだ知らない。
誤字脱字のご指摘、どうぞよろしくお願いします。
感想もお待ちしています。
ストックが切れました…