希望と絶望を司る   作:虹好き

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どうも虹好きです。

冬ですねー……寒いですねー……。

では、本編をどうぞ。


高貴なる不死鳥

 結局、昨夜はほとんど寝かせてもらえず、延々と説教三昧だったイッセー。幾度も飽きずに込み上げる欠伸を嚙み殺し、学園への通学路を歩く。傍らにはアーシアと切彦、その後ろからキンジと夕乃がついている感じだ。

 

 夕乃の機嫌は余り良くないが、昨夜に比べればだいぶ落ち着き、修行の内容をハードにすることで説教を打ち止めしてもらった。イッセー的には死刑宣告を言い渡された気分だが。

 

 ちなみに、アーシア以外の施設のみんなは突然のリアスとグレイフィアの訪問に気づいていたらしい。気づいておきながらイッセーの部屋に来なかった理由は、夕乃が向かったからであり、理不尽な怒りをぶつけられたくなかったからだ。

 

 身体全体から滲み出る疲労。それを見て同情するキンジと切彦。何も分かっていない純粋すぎるアーシア。当然だとばかりにまだ少しスネ気味の夕乃。

 

 どんなに怒ったとしても、いつものように弁当を作ってくれる夕乃に、イッセーは感謝しても仕切れないくらいだが、今その言葉は心の内にしまっておくことに決めた。

 

 玄関にて夕乃と別れ、教室へと向かう。疲労により元気の無いイッセーに、いつものように飛び交う怒号。扉を開くと、イッセーとキンジとよくつるむ仲間の松田と元浜が何故か大粒の涙を流しながら、硬く握った拳をイッセーとキンジに向けていた。

 

「おいイッセー、キンジ!!お前らそんなに毎日見せびらかして飽きないのか!?」

「何故お前たちに美女が集まる!?何故俺たちには女が寄って来ないんだ!?」

「俺からしてみれば、毎朝そうやって元気に涙を流す、お前らが飽きないのかって聞きたい」

「とりあえず、そういうところがクラスの女子の好感度を下げてるんじゃないか?」

 

 松田と元浜による、魂の慟哭を面倒そうに切り捨てるイッセーとキンジ。それを咎める者は、このクラスには存在しない。アーシアは苦笑い、切彦は眠そうにボーッとしているだけ。

 

 朝からドッと疲れたイッセーは溜め息混じりに席に着くのだった。

 

 

 〜〜〜

 

 

 放課後、いつものようにオカルト研究部がある旧校舎に向かう途中、夕乃と結菜に合流したイッセーたち。

 

 しかし、イッセーはあまり行く気にならなかった。見れば、夕乃の機嫌がすこぶる悪くなっているのが分かる。簡単に言えば、オカルト研究部から感じる気配がいつもより一つ多いのと、その気配に心当たりがありすぎるのだ。

 

「どうしたのみんな?」

 

 結菜が足を止めたイッセーたちを不思議そうに見つめる。アーシアも結菜と似たような感じに軽く首を傾げていた。この2人では、この距離感でまだあの存在に気づけないらしい。

 

 しかし、行かないわけにもいかないため、勇気を振り絞ってイッセーは進みだした。

 

 キンジと切彦も、夕乃の顔色を伺いながら旧校舎に向かって歩き出す。夕乃はいつものように微笑みを浮かべているため、結菜とアーシアには分からないが、その奥に相見える激情は、下手に刺激すれば爆発するんじゃないかというほど。

 

 本来なら要らぬ緊張感が3人を包み込んだ。

 

 旧校舎に入り、オカルト研究部の前まで来て、初めて結菜はもう一つの気配に気づいた。

 

「このボクが、ここまで来て漸く気づくなんて……っていうか、みんな分かってたの?」

「あぁ、だいぶ前に」

「えっ!?何にですか!?」

 

 普通に返すイッセーに呆れた表情の結菜。全く気配を読めないアーシアには、扉を開ければ分かると言い、さっさと開けてしまう。

 

 そこには、予想通りの人物がいた。

 

 室内にはリアス、朱乃、子猫ーーそしてグレイフィア。リアスはいかにも不機嫌ですという雰囲気を醸し出し、朱乃はいつもの笑みを浮かべながらも、どこか困り顔という感じがしており、子猫は居心地悪そうに部屋の隅で椅子に座っていたのだが、扉からイッセーたちが入ってきたのを機に、勢いよくイッセーの胸に飛び込んできた。それを優しく抱きとめる。

 

 グレイフィアは昨夜と変わらず無表情で佇んでいた。夕乃から溢れるオーラが大きくなるのは、この際無視して、リアスたちに挨拶し、リアスが座るソファの対面のソファに腰をおろす。

 

 キンジはいつものように窓際で腕を組み、なるべく女子に近づかないよう距離をとり、切彦とアーシアはソファに座ったイッセーの左右を陣取り、子猫はイッセーの膝の上をとる。出遅れた夕乃は少し残念そうにイッセーの後ろに立った。結菜は出来上がった光景に苦笑いをしながらキンジの近くの壁に寄りかかる。

 

 当たり前のようにイッセーの周りを囲む少女たち。この空間を支配していたプレッシャーが瞬く間に消え、対面に座るリアスですら軽く毒気を抜かれたように感じる。

 

 首だけを器用に動かし、キンジに助けを求めようとするが……

 

(あいつ……露骨に眼を合わせないようにしてるし……自分の苦手分野に関してはとことん薄情な奴だな)

 

 リアスが部員のメンバー全員を確認し、一瞬抜けた緊張感を取り戻しながら口を開く。

 

「全員揃ったわね。今日は、部活をする前に話があるの」

「お嬢様、私がお話ししましょうか?」

 

 横から声をかけるグレイフィアにいらないとばかりに手を振っていなす。

 

「実はねーー」

 

 そうリアスが口を開いた瞬間、部室の床に描かれた転移陣が光だした。全員の視線が転移陣へと向けられる。リアスの眷属はすでに全員揃っているため、グレイフィアのようなグレモリー眷属からの使いが来るものかとイッセーは思っていたが、転移陣の紋様が、グレモリーから変化し知らぬ形になったのを見て、首を傾げる。

 

「ーーフェニックス」

 

 イッセーの疑問に答えるように結菜から言われたのは、伝説上の生物の名前。イッセーの知るフェニックスは神聖な不死鳥であり、聖なる存在。正反対の悪魔側にもフェニックスが存在するとは初耳だった。

 

 室内に眩い光が溢れ、男性のシルエットが浮かび上がる。それと同時に、激しく炎が転移陣から飛び出し、室内に熱気が充満した。傍迷惑な登場の仕方をする。肌を焦がすような熱気に、ただでさえ疲労で気分が悪いイッセーのテンションはダダ下がり。

 

 それにしても、炎自体はなかなかの威力を持っていた。感じる力の大きさは、リアスに匹敵するかその上を行くーーつまり上級悪魔のそれだ。

 

 炎の中に佇む男性が腕を凪いだ。それだけで炎は消え去り、そこから現れたのは、赤いスーツを不良のように着崩したいかにもやんちゃなホストのような男だった。

 

「ふぅ、人間界は久しぶりだ」

 

 男は部室内を見回し、イッセーを囲む女子たちを見て眼を丸くしたあと、リアスを見つけ、ワイルドな格好とは裏腹に意外と爽やかな挨拶をした。

 

「やぁリアス。会いに来たぜ」

 

 まるで、幼馴染に対する挨拶のような気軽さを兼ねている。昨夜の話から察すると、この男がリアスと家絡みの複雑なことを起こしているようだが。当のリアスはただただ半眼で男を見るだけ。

 

「考えてくれたかい?」

 

 冷たいリアスの態度にも臆することなく声をかける男性。初見でのイッセーの心境は、どうしてもこの男が悪い奴に見えないだった。

 

「答えは聞かなくてもわかってるでしょう?ライザー」

 

 リアスは若干低くなった声音でそう返す。ライザーと呼ばれた男は、ある程度予想はついていたようで、リアスの返答にもやっぱりかと肩をすくめるばかり。

 

「グレイフィアさん、この方って部長の何なんですか?」

「おや?リアス、話してなかったのか?」

「別に、話すことでもないでしょう」

 

 グレイフィアに対するイッセーの問いに、ライザーは苦笑いを浮かべていた。

 

「これは手厳しいな。だが、初対面の者がいるのに名乗らなかった俺に非がある。遅れてすまないが、俺の名はライザー・フェニックス。純血の上級悪魔であり、古い家柄を持つフェニックス家の三男だ。リアスとは、婚約を交わした身だよ」

「これはご親切にどうも。俺は最近悪魔に転生したばかりの兵藤一誠です。みんなからはイッセーと呼ばれています」

「敬語なんて堅苦しいからいい。そうか、イッセーは最近転生したばかりか。なら、悪魔についての知識が浅くても仕方ないな」

「あぁ、話がわかる奴で助かるよ」

 

 グレイフィアの代わりに、ライザー自身が全てを話してくれた。内容は大体予想通り、しかしそれよりも、イッセーはライザーに対し、評価を改めていた。ライザーは悪い奴ではない。

 

 純血の上級悪魔つまり、悪魔の中での貴族。さらに有名どころのフェニックスときたものだ。家は相当力を持つ家だと分かる。リアスと婚約が出来るということは、グレモリー家と同等ぐらいではないだろうか。なのに、貴族特有の高圧的な態度が一切見られず、下級悪魔であるイッセーにタメ口を許すほどの寛容な心の持ち主。

 

 それでいてさっきの炎の威力の高さ。ライザーはフェニックス家でも生粋の強さを持つと見た。

 

 今ライザーは、朱乃が淹れた紅茶をリアスの隣に座って飲み、褒めすぎなくらい賞賛している。隣に座りながらも、リアスにベタベタ引っ付くわけではなく、適度な距離を保っていた。本当に、見た目に反して紳士である。誰にでも平等に優しさを与えそうな男だ。リアスも困ったように嘆息していた。

 

「さて、リアス。君の反応はハッキリ言って予想済みだ。だけど、悲しいかな。俺も家の看板を背負い、この場にいる。君も同じ立場だから分かるだろう?純血の悪魔の危機を。ま、悪魔に成り立てイッセーのためにも、歴史を踏まえ、少し悪魔について話そう」

「はぁ……そうね。そこの部分は教えてなかったし、良い機会だわ。でもライザー、私の決意は変わらないわよ?」

「あ、やっぱり?まぁ、変わるとは思ってないけどね。ただ、主の事情を知らないというのは、眷属からすればあまり面白いことではないだろう?」

 

 イッセーのみならず、キンジたちもライザーの話に耳を傾ける準備をした。リアスとライザーの複雑な家庭事情に繋がる話を聞かせてくれるのだ。女に囲まれたイッセーに爽やかな表情を崩さず、ライザーは説明を始める。

 

「古来より、悪魔と天使と堕天使は戦争をしてきた。今は集結したが、その時に負った傷は深く、純血悪魔はその戦争でほとんどの命を散らしたんだ。堕天使、神陣営とも拮抗状態。それだけじゃなく、戦争を集結したあとに現れた最凶の存在、"絶対悪"との戦いで、『七十二柱』と称された悪魔も大勢殺されて、今や半数いるかいないか。」

 

 一息、

 

「ただでさえ、純血悪魔の数が減っている中、堕天使とのくだらない小競り合いによって、大事な跡取りが殺され、御家断絶したなんて話も少なくない。純血の新生児はとても貴重でね、俺やリアスのように、貴族同士での婚約などは当たり前のように行われている。その中、新鋭悪魔ーーイッセーのように転生した悪魔だが、その悪魔たちが幅をきかせている。でも、純血悪魔を途絶えさせるわけにはいかない。当たり前だけど、純血の新生児は純血悪魔同士でしかつくれないからね。つまり、今回の婚約の話も、一種の悪魔の未来を思ってのことなんだ」

 

 まぁ、俺たちの意思はなく、親同士が勝手に決めたことなんだけど、と付け足すライザー。貴族同士の結婚云々の話はイッセーの考えとほとんど同じだが、他の話は大変タメになった。

 

 リアスも大人しく聞いていたが、やはり、納得はできないのだろう。ライザーが付け足すように言っていたが、親同士が勝手に決めたこと。だからこそライザーも最初から大して色の良い返事を期待していなかった。

 

 そして、それはグレイフィアも予想していたことだ。こうなった時の対処も考えているだろうとライザーはグレイフィアの視線を送る。

 

「はい、こうなることは旦那様も、サーゼクス様も、フェニックス家の方々も重々承知でした。この場が最後の話し合いの場だったのです。ここで決着がつかなかった場合のことをみなさまは考え、最終手段を用意されています」

「最終手段?それは一体なんなの?」

 

 待っていたとばかりに説明を切り出したグレイフィア。その言葉に疑問を抱くリアス。

 

「お嬢様が御自分の信念を貫き通すと仰るのなら、ライザー様との『レーティングゲーム』にて、今回の件に決着をつけていただきます」

「ーーーっ!」

 

 レーティングゲーム。爵位持ちの悪魔同士が行う、眷属を用いたゲームのことだ。そのゲームが出来たからこそ【悪魔の駒】が生まれ、そのおかげで今のイッセーはこの場にいる。

 

 リアスは言葉を失ってしまっていた。それもそのはず、レーティングゲームのことはリアスから聞かされていたが、公式のゲームは成熟した悪魔しか参加できないと聞いている。リアスは成人ではないため、今回のゲームは非公式。ここでこの方法を提示するということは、レーティングゲームはこういう御家同士のいがみ合いなどでよく使用されるのだろう。

 

 しかし、ライザーは成人しているため、公式のレーティングゲームに何度か出ているのではないだろうか。そうなると、リアスは今回の勝負、経験という面でかなり不利となる。

 

 そして、それはリアスも理解しているようで、少なからず身体から殺気を漲らせていた。

 

「つまり、お父さま方は私は拒否したときのことを考えて、最終的にゲームによって婚約を決めるわけね?……どこまで人の人生を弄れば気が済むのかしら……」

 

 ライザーもリアスの様子に同情しているように見えた。今回のゲーム、ライザー側が有利すぎるのだ。ゲーム経験は勿論のこと、もし、ライザーが聖なるフェニックスと同じく不死身だった場合、今のリアスでは勝率が限りなく低くなってしまうからだ。

 

 だが、今この場で深く考える時間をグレイフィアが与えるはずもなく、

 

「ではお嬢様はゲームも拒否すると?」

「いえ、まさか、こんな好機はないわ。ライザー、ゲームで決着をつけましょう」

 

 勝負を承諾してしまった。

 

 ライザーはリアスの言葉に苦笑いをしながら頷く。

 

「まぁ、自然とそうなるよな。だけどなリアス、見ての通り俺は成人した身だ。レーティングゲームも経験し、今のところは勝ち星の方が多い。ハッキリ言って、今回の勝負は俺にかなり優位な局面だが、それでも俺を倒すか?」

「えぇ。やるからには、あなたを消し飛ばしてあげるわ、ライザー」

 

 ライザーは一度眼を瞑り、ポケットに手を突っ込んだ。顔には先ほどの苦笑いはなく、好戦的な、彼本来の表情であるはずの強気な笑みが貼り付けられていた。

 

「なら、君が勝てば好きにしていい。御家に関係なく、ね。だが、俺はフェニックス家のため、俺が勝ったら結婚してもらう。これでいいか?」

「えぇ」

 

 こうして、グレイフィアが審判を務めることになり、リアスの結婚がかかったレーティングゲームが行われることになった。

 

 そこまで話が進み、ライザーはオカルト研究部のメンバーを1人ずつ見回す。リアスの眷属を確認しているのだろう。全員を見終わると、少し難しい顔をしたライザー。

 

「最初から気になってはいたが、君たちは悪魔じゃなく人間だろう?なんでリアスは正体を隠さず接しているんだ?ここにいる以上、ただならぬ関係と見て話を進めてしまったけど」

「その通りです。私の名は崩月夕乃、この子は斬島切彦、あそこにいるのは遠山キンジで、みんなイッセーさんの家族ですよ。詳しいことは詮索しないで頂けると嬉しいのですが」

 

 その問いに答えたのは夕乃。隠すことでも無いため、堂々とライザーに人間であることをバラす。ライザーがどの程度気配に気付けるかは不明だが、気付けているならば、夕乃たちが只者ではない存在として少しばかり警戒するはずだ。

 

 しかし、ライザーは警戒することなく、夕乃の言葉を間に受けた。

 

「そうか、すまない。家族だったとは意外だが、気を悪くしないでほしい」

「あぁ、大丈夫だ。あんたは知らなかったことを疑問に思い、聞いただけだろ?」

「……のーぷろぶれむ」

 

 ライザーの謝罪に、キンジと切彦も気にしていないことを伝え、ライザーは改めてリアスの眷属を数え始める。

 

「リアス、君の眷属はこれで全部かい?」

「えぇ、何か問題でも?」

「いや……問題は無いんだが……一応、俺の眷属を紹介しよう」

 

 そう言いながら指を鳴らすライザー。転移陣が発動し、そこから何人もの人影が現れた。全員女子で、キンジが激しくむせていたが、その人数にリアスは目を剥く。

 

【悪魔の駒】は、魔王から16個配布され、その一つは【王】つまりは自分のものとなる。つまり、実質15個なわけだが……ライザーの眷属は15人全員が揃っていた。

 

【悪魔の駒】は、イッセーのように【変異の駒】を使わない限り、転生させる者の潜在能力の高さで使用量が変わる。眷属が15人揃わない上級悪魔もいるらしいが、ライザーは全員に一つずつーーーレーティングゲームでの最大人数を眷属にしているのだ。

 

 単純な戦力では、15対6と、こちらの圧倒的不利。キンジたちはリアスの眷属じゃないためゲームに出れず、観戦のみとなる。

 

 イッセーは少し難しい顔でライザーの眷属を見回した。個々の戦力では、イッセーたちが勝っている。しかし、総力戦となると、ライザーの方が断然有利だ。

 

(ゲームだもんな……でも、部長の運命をかけているってところはゲームじゃない。ゲームなんかで片付けちゃいけないことなんだろうけど……)

 

 思わず子猫を抱く手が少し強くなってしまう。子猫はそんなイッセーを腕の中から見上げ、何を思ったのか、甘えるようにイッセーの胸に頭を擦り付けてきた。

 

 慌てて力を抜くが、子猫は半身になり、逆にイッセーに抱きついたため、さっきよりも間近に子猫の髪の香りが舞い上がる。動こうにも、甘えている子猫に悪いと思い、その場から動けなくなるイッセー。両端のアーシアは頬を膨らませているが、切彦は子猫を見て和んでいた。むしろ、抱きつきたそうにも見える。

 

 夕乃もその様子を羨ましそうに見るが、名残惜しそうにイッセーの頭を撫でるだけ。そのせいでますます動けなくなるイッセー。

 

 突如として起こった桃色空間に、ライザーは眼を丸め、苦笑。リアスもまた気を抜かれつつあった。キンジのみが、頑なに窓の外へと視線を飛ばして現実逃避をしていたが、その空間は長くは続かなかった。

 

「……上級悪魔たるライザー様の前で、そんな軽々しい行動を起こすなぁ!!」

 

 怒号と共にイッセーに向かって飛び込むライザーの眷属の1人。手には獲物であろう棍が持たれ、一直線にイッセーへと放った。突進にも似た一撃。

 

「おい、ミラッ!!」

 

 ライザーが止めようと声をかけるがもう遅い。攻撃モーションに入ってしまっている。

 

 結菜が慌てて動きのとれないイッセーを守ろうとしたが、夕乃が止め、ミラと呼ばれた少女の攻撃はイッセーの頭部に吸い込まれていく。しかし、イッセーは慌てることなく、子猫を優しく抱きしめ、無茶な姿勢から鋭い蹴りを放った。

 

 狙う場所は棍の先端部分。ミラはもう攻撃を放ち、そのモーションの途中のため、動きをキャンセルすることができない。つまり、弱い一撃でも向かってくる攻撃の向きさえ変えられれば、相手は自然と重心移動が上手くいかず、バランスを崩す。

 

 そしてイッセーの思惑通り、真っ直ぐに突かれた棍の下から斜め45度程度の角度を狙っての鋭い蹴り。

 

「あっ……!?」

 

 案の定、棍はあらぬ方向に軌道をずらされ、勢いを殺しきれないミラはバランスを崩してしまう。そのままイッセーに覆いかぶさろうとしたとき、子猫がミラの鳩尾を的確に撃ち抜いた。

 

 容赦のない打撃はミラの内部まで衝撃を走らせ、ライザーのもとへ吹っ飛んでいく。

 

「おっと、俺の眷属はすまない。ミラは俺の眷属の中で1番最後に眷属となった身でね、経験も浅いんだが、何よりも喧嘩っ早いんだ」

 

 なるべく衝撃を殺すようにミラを抱きとめたライザー。ミラはその腕の中で悔しそうにイッセーと子猫を睨むミラ。イッセーは苦笑、子猫はミラのことなど眼中にないように、イッセーに抱きついていた。

 

「悪い、ミラって子の言う通り、俺の方もこんな感じだから、その子が怒る理由も分かるよ」

「……君もなかなか大変みたいだな、イッセー」

「お互い様さ」

 

 何故か、ライザーとは仲良くなれる気がするイッセー。ライザーも眷属に手を焼いているようだ。ミラにはアーシアが駆け寄り、『聖母の微笑』で傷を癒していた。

 

「少々脱線したが……リアス、これが俺の眷属たちだ。15人全員が揃っている。プライドを傷つけるかもしれないが、君は初心者であり、ゲームの経験が一切無い。だから、ゲームの開始は10日後にしないか?お互い、準備は必要だろう?」

 

 言外に込められた言葉の意味をリアスは理解し、微かに眉を顰めたが、ライザーのハンデは正直ありがたい。

 

(この10日間で、少しでも実力を上げてこいってわけね……)

 

 リアスの人生がかかった大勝負、負けるわけにはいかないため、リアスはライザーの言葉に頷いた。

 

「そうね」

「よし、なら10日後、ゲームで会おう。長い間邪魔したな」

 

 そう言って転移陣を発動し、眷属と共に光の中に消えるライザー。消える寸前に、ライザーはイッセーたちにこう言い残した。

 

「君たちの一撃が、リアスの一撃となる。良い勝負をしよう」

 

 その言葉への返答は、ゲームで返せとでも言うように、ライザーも光の中に消えた。




ご感想、誤字脱字等のご指摘、よろしくお願いします。
もし、出して欲しいキャラ等がございましたら検討しますので、案を出していただけると嬉しいです。

では、また次回をお楽しみに。
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