ラブライブ!—Story to make together— 作:TokyoのDio
そして、日付が代わり次の日。
俺は走って学校へと向かっていた。何故走っているかと言うと……理由は単純明快。寝坊したから。昨日の夜、自分で言うのもあれだが、俺は珍しく勉強なるものをしていた。 まぁ、自分からやろうと思ったわけじゃないけど。この事を説明するには、まず昨日の事からだな……。
まず、昨日俺は生徒会長に勉強を教えて貰っていた。けど、そのやり方が鬼みたいだったんだ……。
『これくらい普通だと思うけど?』
そう言って渡されたのは山のように積まれた課題の数々。生徒会長曰くこれくらいは普通、らしい。あの生徒会長、狂ってやがる……。俺はあの時そう思った。どう考えてもあの量は人間がこなせる様な量じゃない。
————と、思っていたんだけど……。
「あの人、ビックリするぐらい教え方うまいんだよなぁ……」
昨日、生徒会長から渡された課題を〝超〟嫌々やっていた俺だけど、その課題の中にどぉ〜っしても分からない問題があってその問題を教えてもらったんだけど、その教え方に驚いた。めちゃくちゃ分かりやすいんだ。教え終わった後に「何でそんな簡単な問題が解けないのよ」とか、「日頃から勉強をしていないのがすぐ分かるわ」とか言わなきゃ最高だった。
いや、ご最もなんだけどさ……
「つっても……今日もまたすげぇ量の課題出されんだろうなぁ……」
昨日、帰り際に生徒会長は「明日も生徒会室でやるわよ」と言っていた。また生徒会長と1体1で勉強会、というわけだ。つまりはまたあの馬鹿げた量の課題が出される、と……。
「はぁ……行きたくねぇ……」
そんな事を言いながらも現在進行形で学校へと走っている俺。
「行きたくねぇけど……やらなきゃあいつらの迷惑になるしなぁ…それに留年もかかってやがる……はぁ……もっと勉強しとけばよかった……」
過去の俺に文句を言いながらも俺は音ノ木坂学院の門をくぐった。俺の見える範囲には誰も人がいない。つまりホントに遅刻ギリギリってことだ。やべぇ……早く行かねぇと。
俺は全力で下駄箱まで行き、物凄いスピードでローファーから上履きに履き替えて階段を登る。そのスピードはまさにウサイン・ボルト級だ。……嘘ですゴメンなさい。
「はぁ……やっとついたァ〜」
教室の扉を開けて中に。教室には担任の山ちゃんもいて、ホームルームを始める所だったみたいだ。危ねぇ……ギリギリセーフ。
「お〜柊。ホンットにギリギリだったな?寝坊でもしたのか?」
「当たり。起きて目覚まし見たらぶっ壊れてたんだよ」
「昨日夜遊びでもしてたのかー?」
「違う違うその逆!勉強してて寝るのが遅くなったんだよ!」
「はぁ?お前が?」
目を丸くして驚いている山ちゃん。山ちゃんだけじゃない。教室中の皆が驚いていた。
なんだよ……別にそこまで驚かなくてもいいだろ!俺だって勉強ぐらいするっつーの……
「なんだよお前ら……」
俺は皆が驚いている事に少しだけムッとしながらも自分の席へと向かう。
「おはようせかちゃん!」
「ん……」
朝からうるさい高坂にテキトーな挨拶を返す。それに怒った高坂が「せかちゃん〜!!」とか言ってるけど無視。すると、喚いている高坂を押し退けて園田が俺の事を呼んだ。
「柊君……家で勉強をしたって……本当なのですか?」
「お前まで言うか!はぁ……本当だよ」
「ま、まさか……柊君が勉強する時がくるなんて…………」
サラッととんでもなく失礼な事を言った園田。俺だって勉強する時くらいあるっつーの……。っていうか、俺がこうやって勉強してんのはお前達がラブライブ!に参加できるようにって思っての行動なのによ……。まぁこんな事を言ったら「勉強をするのは当たり前です」とか園田は言うんだろうから黙っておくけどさ……
「う、海未ちゃん……ちょっとそれは失礼なんじゃ……」
若干苦笑い気味の南。やっぱり南さんは分かっていらっしゃる。
「めちゃくちゃ失礼だっつーの!はぁ……えーと……次の授業は、と……」
園田にツッコミを入れながらも次の授業の準備をする。確か次の授業は数学だったっけか。
えぇ、と……数学の教科書は……
そう呟きながら机の中に押し込まれている教科書達を漁っていると南が声をあげた。
「えっ?!」
「ん?どうした南」
「せ、せかくんが……授業の準備をしてる?!」
あのね?南さん……
「それも充分失礼だからなぁぁぁっ?!」
□■□■□■
それから数時間が経って、遂にやってきてしまった2日目の放課後。今日も今日とて俺は生徒会室に呼び出された。部屋に入るなり生徒会長は生徒会の仕事なのか資料の様なものを読んでいる。そして、相も変わらず俺の横には山のように積まれた課題が。
「はぁ……またコイツとの戦いか……」
ため息をつきながらもその禍々しいオーラを放っている課題の山とにらめっこ。目や、そもそも顔なんてあるはずの無い課題なんだが、そんなのと睨み合いをしている俺を生徒会長は奇妙に思ったのか、変人を見るような目で俺の事を見ている。
「課題を睨んでても終わらないわよ……?」
若干引き気味でそう言う生徒会長。
ゔっ……!流石の俺もそこまで嫌なものを見るような目で見られると傷つくぞ……。
「はぁ……あのなぁ?こんだけ量があると心の準備っつうモノが必要なんだよ!」
軽口を叩いておくが、実は内心傷ついてたりする。だって……女の子相手にそんな酷い目でみられたら誰だって傷つくだろ。俺はそれで喜べる特殊なタイプは持っていない。
「そう……なの?」
「……全部嘘です。どうにかしてサボる方法を探してました……」
「なっ……!?ふざけないで!私も暇じゃないのよ!」
「へいへい……」
こりゃ、サボるなんて考え起こさない方がいいな。まぁ俺のためにわざわざ勉強を教えてくれてるのに、その考えを持つ事自体がお門違いもいいところなんだけど。
「希の頼みとはいえ、何でこんなのを引き受けてしまったのかしら……」
「……オイ。全部聴こえてんぞ。人の事をこんなの呼ばわりしやがって」
「失礼にも程があんだろ」と生徒会長をジトっと睨む。生徒会長は自分の独り言が筒抜けだった事に少し驚いた顔をした後、はぁ……とため息をついた。
「別に間違った事は言ってないわ。現にあなたのせいで生徒会の仕事が滞ってしまっているもの」
「ゔっ……」
そうハッキリとと言い切った生徒会長。薄々気づいてはいたけど、こうもはっきりと言われると胸が痛い。と〜っても痛い。
だが、こんな事で折れる俺ではなかった。
この生徒会長、さっきから文句ばっかりだが、その割にはこの俺に勉強を教えてくれている。しかも超分かりやすく、だ。
つまりは—————
「で、でもよ!文句言いながらも何だかんだで教えてくれる辺り、ちょこ〜〜っとは俺の事心配してくれてるんだろ?」
「それはないわ」
「嘘だろ?!まさかの即答大否定!!!」
考える間もなく即答してくる辺り、結構胸がズキズキする。もう折れちゃいそう。
「何故ここで嘘をつく必要があるの……?」
小首をかしげてそう尋ねる生徒会長。この人、まさに堅物。愛嬌もクソもない。ロボットみたいな人だ。
「私がこうやってあなたに勉強を教えてるのは希に頼まれたっていうのと、学院のためよ。あなたのためではないわ。」
キッパリとそう言い切った生徒会長。
はぁ……ホントに分かってねぇなあ……
「そこは『あなたのこと、ちょっとは心配してるのよ』ぐらいの事言えば俺の好感度が上がるってのに」
「……?あなたの好感度をあげて何か都合のいい事があるの?」
「……もう、何も言わねぇよ……あ、涙出てきた……」
辛辣な言葉をぶつけられて思わず泣き出してしまいそうになる俺。素で言っている辺り、本当に俺の事をどうとも思ってないらしい。
もう嫌だ……とメソメソ泣いている俺を見て生徒会長は長いため息を吐いた。
「はぁ……ふざけてないで早く課題に取り掛かりなさい」
「ふざけてる様に見える?!男子高校生が泣いてるんだぞ?!」
ふざけてるわけないだろ。こっちは本気だ。だって、高校2年生の男子生徒がメソメソ泣いてるんだぜ?……あ、言ってて自分が情けなくなってきた。
「ふざけている以外の何ものでもないじゃない。……言い忘れてたけど、私、今日用事があるから早く帰らないといけないの。だからこれ以上時間を長引かせないで」
ピシャリとそう言った生徒会長。用事があるならあるって早く言えばいいってのに。少し悪ふざけし過ぎちまったかな……と柄になく申し訳なくなってくる。っていうか、用事があるならそもそも今日こうやって勉強を教えないで用事を優先すればいいんじゃねぇか……?
そう疑問に思った俺はチラッと生徒会長の方を見る。俺の視線に気づいた生徒会長は相変わらず冷たい目つきで俺の方を見た。
「……なにかしら?」
「え?あぁ、いや、用事があるならそっちを優先すればいいんじゃねぇの?って……」
「ダメよ。希と約束した事だもの。それに、まだ用事までの時間はあるわ」
り、律儀だっ……!!!
用事があるってのに「約束したから」こっちを優先するってのかよ……
「そ、そうか……悪ぃ……」
流石にこれ以上無駄話をするのも良くないと思った俺は嫌々ながらも山積みの課題へと手を伸ばした。
この生徒会長、律儀なのはいいけどそのうち損しそうだな……
「ま、そんな事はいいとして……とっとと取り掛かりますか」
□■□■□■
シャーペンを握り始めて早くも2時間ぐらいが経ったころ。あれだけあった山積みの課題も残るところあと1枚となっていた。俺もやればできるんだなぁ……と自分を評価しながらもペンを走らせる速度は落とさない。2時間近くもシャーペンを握っていたのもあって、手のひらが痺れているのがわかる。おまけに手の側面は書いた文字に擦れて真っ黒だ。
だが、そんな不快感も課題が終わりへと近づくにつれてどうでもよくなっていき———————
「お、終わったぁぁ……」
机にシャーペンと消しゴムを投げ捨てて椅子の背もたれに体を投げ出す。気が抜けたのかさっきまでどうでもよくなっていた不快感、もとい疲れがドッと押し寄せてきた。
まぁ無理もない。今回の課題の量は前回と同じ量だったのにそれを前回の半分以下の時間で終わらせることができたんだから。
「疲れた……よく頑張ったな、俺……」
傍から見れば自分で自分を褒め称える痛いヤツだけど、こうでもしないと誰も褒めてくれないんだから仕方がない。頑張ったんだからそれなりの対価ってのが欲しいもんだけど……ま、それを生徒会長に求めるのも無理な話ってもんか……てか、それはそれでキモチワルイ……
とまぁ、そんな事は置いておいて。きっと会長は早く終わったことに少しくらいはビックリしてるはずだ。あのカチコチ頭の会長が驚いている顔が見れる時が……!
そんな事を思いながら俺は生徒会長の方へと顔を向ける。
そこには、アクアブルーの瞳を見開いて驚いている生徒会長、
ではなく
淡々と資料のようなものにハンコを押している生徒会長がいた。
「もはや気づいてすらいない?!」
ホワイトボードの前に座っている生徒会長は俺の課題が終わっている事に驚く事は愚か、終わっている事に気づいてすらいなかった。
「あ、あの……課題、終わりました……」
「あら、終わったの」
「そして軽い反応……!」
はぁ……と呟く俺を見て不思議な顔をしながら、生徒会長は俺の所まで来て解き終えた課題達を1枚1枚手に取る。そして、また1枚、また1枚と繰り返し…………
最後の1枚を見終わった後、
「特に間違えは無かったわ」
「え、何をしてんのかと思ったら答え合わせしてたのかよ?!早過ぎんだろ……」
「……?そうかしら」
「自覚無し、か……」
どうやらこの生徒会長にとってはあのスピードで答え合わせをするのが普通らしい。2時間近くかけて問題を解いたってのにものの数分で答え合わせを終わらせやがった。そりゃ俺が課題をあの時間で終わらせても驚かないわけだ。
「でも、意外ね。もっと時間がかかるかと思ってたわ」
「えっ……!」
生徒会長から思いがけない一言。俺は生徒会長が思っていたよりもいい成果が出せたらしい。
「少なくともあと3時間はかかると思ってたわ」
「あんた俺を下に見すぎじゃねぇか?!初回でもそんなにかからなかったぞ!?」
しかも少なくともって……こいつ、俺の事を何だと思ってるんだよ……。まぁ、俺のイメージ悪いのは知ってるけどさ。
今思い返してみると生徒会長の出会いは最悪だったな……
『ふざけんな』
俺が発したその一言が生徒会長とのファーストコンタクトだった。今思うと理由があったにしても失礼極まりない。一生嫌われてもおかしくないレベル。
「なのに、こうやって勉強を教えてくれてるんだもんな……」
俺の答え合わせを終えてまた生徒会の仕事に手をつけている生徒会長を眺める。すると、生徒会長は俺の目線に気づいたのか、俺の方を見た。そんな生徒会長に一言。
「なぁ、やっぱりちょっとは俺の事、心配して———」
「ないわ。」
「ですよねぇ…………」
何回目かのこのやり取り。辛辣な言葉にももう慣れてきた。いや、慣れちゃいけないような気もするけど。
「はぁ……キリもいいし、今日はこの辺で終わりにしましょう」
悪ふざけが過ぎたのか、生徒会長は少し怒ったようにも、呆れたようにも取れる表情をしてそう言った。時計を見ると昨日よりも終わる時間が断然早い。あれ?と思ったがそう言えば用事があるとか言ってたなと思い出す。ちょうど今日は観たいテレビがあったからナイスタイミングだ。
「あ、っていうか時間大丈夫なのか?答え合わせまで付き合わせちまったけど……」
「はぁ……私は先輩って事を分かっているのかしら……時間は大丈夫よ。さっき言ったでしょう?思ったよりも早く終わったって」
最初の方は(わざと)聴き取れなかったが、どうやら時間は大丈夫らしい。
ならよかった。と俺は自分の帰る支度を始める。う〜ん今日は家でゆっくりとできそうだ。そんな事を思っていた時。俺の後ろ、生徒会室の出入口の前で声がした。
「じゃあ、私は帰るわ。悪いけれど戸締りをお願いするわね。あと、鍵は職員室の先生方に渡してちょうだい」
ばたん。
え?早くね?
と俺が言い出す前に生徒会長は室内から出ていく。
いや、時間は大丈夫なんじゃないのかよ。メッチャ急いでんじゃないですか……。
「はぁ……なんなんだよ……」
勉強の事もそうだし、今のもそうだ。よく分からん。
時間に余裕があるって言っておきながら本当はギリギリなのに俺に勉強を教えてくれてたのか……?
でも、なんでそんなことをする必要がある……?
俺のために?
———いや、それはないな。あそこまで頑なにそう言ってたんだから。
気まぐれ?
———それも違うな。あんな堅物の生徒会長が気まぐれで何かするなんて事はないだろ。
じゃあ、やっぱり……東條先輩の約束と、学校のためか?だとしたら……
「馬鹿みたいに律儀じゃねぇか……」
約束をしたから。そして、廃校の危機にさらされている学校を救う可能性を1%でも上げるため。そのために自分の不利益になってでも俺に勉強を教えてくれていたらしい。
しかも、別に俺の事を何とも思っていないとか言ってた癖に、俺が2時間程度で山積みの問題達を解けるくらいにまで分かりやすく勉強を教えてくれた。
「何か、やっぱり損してるな……あの人」
これだけの事をしてくれたのに、あの会長は何一つ得してない。むしろ損ばっかりしている。なんだかなぁ……。
はぁ……と長いため息をついた時。あるものが目に入った。
「あれは……?」
生徒会長がさっきまでいた机の上に置かれた青いペンケース。確かあれは生徒会長の持ち物だったはずだ。
「忘れ物するぐらい急いでたのかよ……!」
急いで窓から顔を覗かせ校門の方を見ると、ちょうど走って行ってしまった生徒会長の後ろ姿が見えた。
おっちょこちょいかよ!と思う反面、悪い事したなと心の中で詫びる。こうまでしてくれていることに全然気がつくことが出来なかった。
『えりちは武器用事だから』
あの時の東條先輩の言葉の意味が、少しだけ分かったような気がする。
「ったく……めんどくせぇけど、届けてやるか!」
俺は自分の荷物と生徒会長のペンケースを持って生徒会室を飛び出した。
少しくらい、お返ししてやらないとな。
「あ、やべ、戸締まり忘れてた!」
カッコよく飛び出したのに結局は締まらない俺なのであった。
おはこんばんにちは!どうもでぃおです。
物語がなかなか進まなくて申し訳ございません……!!ただこの回はどうしても書きたかったので、どうかお許しを。
さて、生徒会長こと絢瀬絵里がどんな女の子なのか少しずつ掴みつつある世界君。東條先輩の言葉が「少しだけ」分かった気がした彼ですが、本当にその言葉を理解する時はくるのでしょうか。
次回にご期待ください!
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更新情報から下らないツイートまで……色々な事を呟いています。よければ是非!
それではまた次回!ありがとうございました!
PS.絵里に辛辣な言葉をぶつけられたい人生でした まる