渚カヲル、現代へ   作:く~が

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パソコン整理中に見つけたので加筆投稿してみました(^_^;)


渚カヲル、現代へ

「ありがとう…君に会えて嬉しかったよ」

 

その言葉から数秒…いや、数分経っただろうか?

迷う初号機の手のひらがゆっくり閉じられていき。

 

ボクの望み通り、シンジ君に殺された。

 

 

 

 

使徒としてのボクには全く後悔など無かったけど、『人間』として赤子状態だったボクには、生への渇望が渦巻いていた。

 

 

シンジ君…ボクの代わりに、どうか…リリンを頼むよ。

それが、ボクの…『人間』としての最初で最後のお願いだ。

 

そして願わくば、シンジ君に大いなる幸運が訪れますように…

 

 

その願いを最後に、ボクの、『この世界』での思考はここで途絶えた。

 

 

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

 

 

「ここは…」

 

 

意識が浮上する。視界に映ってるのは真っ青な空。

建物に遮られているけど、間違いなく…え?

 

ゆっくりと身を起こす。

どうやら、ボクはどこかの路地裏にいるみたいだ。

 

 

あり得ない…ボクは確かに死んだはず。

あり得ない…セカンドインパクトで日本は人口の半分以上を亡くしているはず。でもこの人々の気配は…?

あり得ない…ボクの…使徒としての本能。『アダムに還りたい』という願望が無くなっているよ。

ボクはどうしてしまったのだろうか?

ボクは使徒?それとも…人間として…

 

 

「?!」

 

 

周りの時が止まった…何者かがボクに干渉しようとしているね。

…敵か?

 

『違うわ』

 

「っ!その声は…リリスかい?」

 

『そうよ。いくら自由を司る貴方でも、この状況にはついていけていないはずよ。だから私も残留思念として憑いてきたの』

 

 

まさかの展開だよ。聞きたいことがあるから助かった。

 

 

「君については理解したよ。それで、この『日本』は…どこなんだい?」

 

『流石ね、薄々とは感じているのでしょうけど、ここは日本国にある東京という都市よ。ちなみに、第三新東京市という都市は存在しないわ』

 

「ふむ…ということは…ボクは並行世界に来てしまったというわけかい?」

 

『そうよ、理解が早いわね。貴方は最後に、人間としての生を望んだわ。だから人間として生きることのできる世界へと私が飛ばしたの』

 

 

そうか、アダムの半身でもあるリリス…彼女なら、この奇跡を起こすことも可能だろうね。でも。

 

 

「大丈夫かい?並行世界への移動なんて相当な力が必要だし、その反動もあったはずだよ?キミにはシンジ君を見守って欲しいと思っていたんだけどね」

 

『問題ないわ。もともとリリスが内包していたATフィールド。そして髭に取り憑いたアダムから足りない分を拝借しただけだから。私を形成しているATフィールドには影響ないように調整しているから平気』

 

 

…仮にも、わずかとはいえ思いを寄せていた碇司令を髭呼ばわりするなんて。

キミはボクより人間に近づいてないかい?

 

 

「ふふ…リリス。ボクはキミにお礼を言わなくてはならないようだね」

 

『お礼なんていらないわ、タブリス。ここには貴方が一番好きな、碇君がいないのだもの…私が貴方の立場だったら多分、早々に退場するでしょうね』

 

「いや、それでもだよ。感謝するよ、リリス」

 

『っ?!か、勘違いしないで、私は貴方の為にしたわけじゃないわ。碇君の為だもの。この事実をもって私は碇君にアプローチするのよ…髭?弐号機パイロット?邪魔するようだったら消すわ。うふっ…うふふふふふふふっ』

 

 

…見事に病んでるね。これは彼女なりの照れってことなのかな?

 

 

「は、ははは…君の照れる所を声だけとはいえ、拝めたのは幸運なんだろうね。早速、神のご加護があったのかな?」

 

『…貴方、本当に人間臭くなってきたわね。私も、貴方くらい順応できれば…』

 

「キミはボクと違ってシンジ君の側にいることができる…時間は沢山あるはずさ。少しずつ変えて行けば良い。世界は光り輝いているよ」

 

『私も…』

 

「ん?何だい?」

 

『私も、貴方にお礼を言うわ…ありがとう』

 

「うん…ん?そろそろ時間かい?」

 

 

わずかだが、時が止まった空間に揺れが生じ始めている。

限界が近いのだろう。

 

 

『ええ、いくらリリスたる私でも異世界で長いこと時間を止めていられないわ…最後に一つだけ』

 

「聞こうか」

 

『…もしこの世界に…万が一飽きることがあるのであれば…貴方が使徒として力を振るいたいと思った時には…私を呼んで…今度はランダムに飛ばしてあげるから』

 

「ふふっ…覚えておくよ。キミがくれたこの機会…精一杯楽しんでみせるさ。それじゃあ、あっちでも元気で、綾波レイ。シンジ君によろしくね」

 

『っ…貴方こそ。渚カヲル』

 

 

 

 

 

……

………時が動き始めた。

 

改めて周りを確認してみようか。

ここはどこかの路地裏みたいだね。飛ばす場所もちゃんと計算するとは…綾波レイ、キミも人間にちかづいている証拠だよ。

 

ともかく、単体の存在として生きることのできるボク達使徒とは逆に、集団でこそ力を発揮できるリリン…

ボクの、キミ達への興味は尽きることは無いよ。

アラエルが理解することができなかったリリン…じっくりと観察させてもらうよ。

 

 

よし、それじゃあ表に向かおう。

いつまでもここにいたんじゃあ観察どころじゃないからね。

 

 

…気配で分かっていたけど、人、多すぎやしないかい?

人混みの中に入るのは流石にボクといえど戸惑わざるを得ないよ。

ん?

 

 

何故キミ達リリンのめs…ではなかった、女性達はボクをガン見しているのかな?

 

 

「「「きゃ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」」」

 

 

な、何事だい?!

ボクと目があった女性達が悲鳴をあげたじゃないか。

 

 

ボクの格好の、どこかおかしいとこころがあるのだろうか?今の服装は学生シャツにズボン、どこにでもいる学生そのものじゃないか。

 

 

「か…カヲル君?、え、うそ、な、何で?!」

 

「えっ?」

 

 

思わず首を傾げてしまう。顎に手を当てて考えるけど…当然ながら答えがでるわけないよね。

何故ボクを知っている…ボクは老人たちに作られしシ者。一般の人が知っているはずないのに。

 

 

「あ、あの、一緒に写メ撮ってください!」

「私も!」

「私もお願いします!!」

「あの、良かったらこれからお茶でもしませんか?!」

 

 

ど、どういうことだろう?さっきまで5〜6人だった人だかりが、急に増え始めているね。

呆気に取られ、逃げるタイミングを失ってしまったようだ。それに、写メってなんだろう。

新たに開発された、使徒迎撃用の武器…いや、普通の人が持っているわけないか。

こっちに向けて電話のような箱で何をしているのかな?それも気になるね。

 

んー、下手にATフィールドで弾き飛ばすわけにもいかないし。

とりあえず、周りの女性を落ち着かせないと、逃げようにも逃げられない。

 

 

「落ち着いてもらえるかな?ボクは用事があ「「「きゃ〜〜、声までそっくり!?」」」……」

 

 

…こ、この状況はぼくには手が出しづらい状況だね。

こうして考えている間にも、あれこれとボクに話しかけてくるし…

どうにかして逃げることはできないだろうか…ん?あれは…?

 

 

ヒュオッ…

 

 

足に僅かばかりの力を籠め、ジャンプして人混みの上を跳躍する。

そして呆気に取られているうちに、自動ドアをくぐり建物の中に入った。

 

 

 

 

 

ジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラ……『本日も当店にご来店くださり、誠にありがとうございます。台番号279番でご遊戯中のお客様、いらっしゃいましたら…』

 

ぐっ?!入る所間違えたかな…?あまりの音の煩さに顔をしかめる。

ふと出入り口を見ると、そこから入ってこようとしている集団がひしめいてるよ…

リリンの行動力は、中々に侮れないね。

 

 

「君?学生服で堂々と入って来るなんて良い度胸してるね」

 

 

ん?ボクに、かな?

後ろから声をかけられ、振り向く。

 

 

「……」

 

 

…失礼じゃないかな?人の顔を見て固まるなんて。

というか、ここは何をする場所なんだい?不思議そうに辺りを見回していると、声をかけてきたおじさんに腕を掴まれた。

周りを見ると、女性の店員さん?になるのかな、彼女達もこちらをガン見しているよ。

 

イヤな予感がするね。

 

 

…ATフィールド、全開…はマズイね、ボクは人間としてこの世界にいるんだから。

 

おじさん?何かな、このマイクは。え?何か喋れ?何を言い出すんだい、急に…

ボクが何も言わないでいると、店の奥からさらにご年配のおじさんが出てきて、ボクにメモを渡してくる。

 

 

「この台詞を言ってもらえるかな?御礼はいくらでも出すから!!」

 

 

…使徒たるボクに、買収が効くとでも思っているのだろうか?

でもこの世界に来て、先立つものが無いのは確か。

 

…うん、ここは敢えてのってみようか。

 

 

「ゴホン…あー…」

 

 

喉の調子も良いようだね。

それじゃあいくよ。

 

 

『この度は、当○○店に来てくれて嬉しいよ。ボクはカヲル。渚カヲル。どうして、って思うひともいるだろうけど、サプライズイベントで来てみたのさ。どうしてもって、店長に頼まれてね。今回は特別だよ。どうか、ボクが出現するリーチを一度でも出してくれると嬉しいな。キミ達が来てくれて…本当に嬉しかったよ。どうか時間の許す限り、楽しんでいってくれるかな?以上、渚カヲルでした」

 

 

ふう、こんなものかな?

 

 

おや?何だい、そのボイスレコーダーは?

ちょっと、女性の店員さんまで…仕事してもらえるかな?じゃないとお金貰えないよ?

 

全く、リリンは面白いね。一面を知れば知るほど他の一面もしりたくなる。

 

 

え?私がリリンの女性について教えてあげるって?

いやだなぁ、ボクの好意に値するリリンはシンジ君だけさ。これまでも、そしてこれからも…ね。

男性も女性も等価値なのさ、ボクにとっては、ね。

 

…何故顔を赤らめるんだい?名台詞?…キミが何を言っているのか、ボクには分からないよ。

 

 

 

さて、そろそろこの建物からお暇させてもらおうかな?

店長と名乗る人から『10000』と書かれた紙幣を20枚くらい貰ったし、当分はこれで凌げるはずさ。

前の世界と紙幣の価値が変わって無ければ、の話だけど。

 

それより早くこの場から立ち去らないと…ボクが入った時半分以上空いてた席が、ボクが喋り出した瞬間には全席埋まっていたからね。

ボクに気づかせないとは…リリンの機動力も驚異的ってことさ。

 

 

女性の店員さんに裏口まで案内してもらい、そこから外に出る。

 

 

「ありがとう。案内してくれて嬉しかったよ」

 

 

ボクがお礼を言うと、その女性は真っ赤になって俯いてしまった。

ふむ、この姿は何かと類似している可能性があるってわけだね。

 

俯いたままなので、ボクは辺りを見回して誰もいないのを確認すると、足に先程よりも力を篭めて跳躍。

隣のビルの最上階に飛び移る。

 

やれやれ、どうにか逃げおおせたか。

あの…『パチンコ』という娯楽は前の世界には無かったものだね。

機会があれば是非ともやってみたいものだ。あれだけのリリンが熱中するくらいだからね、きっと楽しいはずさ。

 

 

そして先程の観察で分かったことだけど、この姿で街中を歩くのは少々鬱陶しいことになりそうだね。

よし、次に行く所は服屋だ。お客さんが少ない時に、そして人通りの少ない店を選ぶことが重要になるよ。

 

 

…今日は何だか疲れたね。並行世界への移動、そして今日の追いかけ回されることによってボクの神経は疲れを訴えている。

ふふ、前の世界では体験できなかった『疲れ』を早速体験できるなんてね、幸先が良い。

綾波レイ、ボクが真の人間になる日は近いよ。

 

それでは明日もリリン達の観察を続けるとしようか。

 

 

 

あ、そうそう、この拾ったチラシに楽しそうな案内が書いてある、何かの縁だしここにも行って見るとしよう。

あき…は……はら?

読み方は多分こうだね。

 

 

『秋葉原』!

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