ソードアートオンライン~空間と剣技の支配者~   作:刃零

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ちょっと長く書きすぎました。これからはもう少し短くなると思います。


始まりの日 Side:Rondo

「あと5分・・・」

 

  そうして俺/舞音亜李は13時を今か今かと待ちわびていた。

  理由は言わずもがな『あの』ゲームのサービス開始だ。

  俺は今年15歳という面倒な年齢になったところだ。

  何が面倒かってそりゃあ受験だ。

  中学受験をしていない俺にとっては、初めての受験なのだ。

  そこでちょっとした息抜きとして考えていたのがこの〈ソードアート・オンライン〉ということだ。

  ダメ元でβテストに応募して、当選すればすぐに買おうと考えていたのだが、案の定ダメだったので中古品が出るまで待とうかと思っていたのだが、やはり日に日に高まっていくVRMMO熱に俺の意志力では欲望を抑えることができなかった。

  そこで貯金と時間をはたいて大行列に並んだところ残り台数一桁というところで何とか購入できた。

  今思い返すと恥ずかしいが買ってから一週間程は興奮しすぎて夜寝るときはナーヴギアをかぶって眠ったものだ。

  だが遂に今日それは夢ではなく自分の体で、あの鉄と剣の世界『アインクラッド』を歩くことが出来るのだ。(正確には五感で感じるだが、そんな無粋なことは言わないでほしい)

  そのせいで昨日眠れなかったことは言うまでもない。

 

「友達、いっぱいできるといいな~」

 

  実際俺はリアルでの友人は多いし、自慢じゃないが運動も周りより得意だ。(ゲームが好きだというと俺のことについて驚かれることの中で2番目に入るほどだ)

  だがどうしてもアバターとか何とかを介すとどうにも口下手になってしまう。

  なのでこの〈ソードアート・オンライン〉では友人をたくさん作ってゆくゆくは大型ギルドの幹部メンバーだとかリーダーだとか攻略組の中心だとかになってみちゃったりしたいのだ。

 

「入ったら最初に目があった人と友達になろう。うん、そうしよう」

 

  下らないことを考えたり呟いたりしてる間に13時までもう30秒を切っていた。

 

「あっぶね~、危うくぴったりログイン逃すとこだった」

 

  5...4...3...2...1...

 

「リンク・スタート!!」

 

  俺はまだこの時気づく由も無かった。

  家の時計が5分遅れていたことに・・・

 

 

  プレイヤーネームをRondoとし、武器には片手剣を選択した俺は、(因みに俺は銀髪で肩にかかる程度の髪を紐で結んだ髪型に金色の目という風体だ)チュートリアルを即効で終わらせて遂に〈はじまりの街〉に降り立つともうすでにとてつもない人数のプレイヤーが街を歩いていた。

 

「あれ?おっかしーなー?」

 

  俺は?マークを浮かべながらメニュー画面を開くと13:12とかいてあったのだ。

  間違いなく俺はチュートリアルを10分以内に終わらせた筈だ。

  つまり、考えられることは・・・

 

「そういえば家の時計ちょっと遅れてたっけ・・・」

 

  そう思い、この先予想されるいくつものアップデートやメンテナンスで同じミスをしないように今すぐ時計を直そうとログアウトをしようと思いログアウトメニューを探した。

 

「あれ?」

 

  だが、どこにもログアウトメニューは見当たらない。(用途のよく分からない《倫理解除コード》なるものは見つかったが)

  それどころかGMコールも出来ないようだ。

  まあ、初めてのジャンルのゲームの開始初日だしそのうち何かの対処はされるだろう。

  とはいえ、ログアウトもGMコールも出来ないというのは決定的なミスだ。

  これは後続のVRMMORPGもしばらく出し辛くなるだろうな。

  と、柄にもないことを考えていると、ふと思い出した。

 

「そうだ!!友達!!」

 

  と、つい叫んでしまった。

 

「あ・・・」

 

  これはしまった、と思っていたところ今ダイブしたらしき、俺のさっきの失態を知らないであろうプレイヤーが目の前に現れた。

  そのプレイヤーは赤い髪にこれまた赤い悪趣味なバンダナを巻いた曲刀使いの男の人だった。

  そこで俺は迷わず、

 

「あ、あの!!」

 

  そのバンダナー(仮)はこちらを向き、頭上に?マークを浮かべながら、

 

「ん?どうしたんだ?言っとくが俺は始めたばっかで難しいことには答えられねーぞ?」

 

「いや、実はしばらく一緒にゲームをプレイしてくれる人をさがしててさ。やっぱ、1人より2人、2人より3人の方が楽しいだろ?」

 

  バンダナーは少し考える・・・と思いきやほぼ即決で

 

「そうだな!俺はクラインだ、よろしくな!」

 

  そう言って手を差し出してきたので俺も手を握り返して聞いた。

 

「ああ、よろしく!俺はロンドだ。で、お互いほとんど情報なしってことだよな?」

 

  「そうだな~あんま詳しいことはわかんねーな・・・ってあ!そこのあんた!その迷いの無ぇ歩き!もしかして元βテスターか?」

 

  そう言ってクラインは街の中をおそらくフィールドに出るために早足で進んでいた黒髪の勇者然としたプレイヤーを呼び止めていた。

  黒髪の男は

 

「ああ、そうだけど」

 

  と、少し困惑したような表情で答えた。

 

「じゃあちょっと俺たちに戦闘のレクチャーをしてくれないか?俺はクライン、こっちの白髪がロンドだ」

 

「白髪言うな。俺の髪色は銀色だ。それより、俺からもレクチャー頼みたいな。いいかな?」

 

  すると黒髪の男は納得と言った表情で

 

「そういうことならいいぜ。俺はキリト、よろしくなクライン、ロンド。じゃあ必要なもの買いそろえたら早速行こうか」

 

  そう言って、キリトは歩き出したので俺とクラインは後ろからついていった。

 

 

 

「クラインはほんと上達しないな~」

 

  俺は笑いを堪えながら言うと、クラインは

 

「うっせー!お前が出来すぎなんだよ!」

 

  と口を尖らせて言う。

  実際クラインがまだキリトの助けを得てなお、青イノシシことフレンジーボアに苦戦しているのに対し、俺はもうすでに1人で数体を倒しついさっきレベルも2に上がったのだ。

  クラインの言葉に少し得意気になっていると、

 

「確かにロンドは正直、俺の想像以上だよ」

 

  とかキリトが真顔で言い出すもんだからちょっと照れ臭くなって

 

「キリト、俺はそこら辺で軽く狩ってるからそこで拗ねてる奴に教えてやってくれ」

 

  俺はそっぽを向いて言うと、少し離れてまだたくさんいるイノシシを狩ることにした。

  歩いている途中に聞こえた、

 

「うるせー!拗ねてねーよ!」

 

  そのクラインの言葉でついに吹き出してしまったがそれは置いておく。

  またイノシシを数体狩り、レベルも3に差し掛かるだろうというとき周りにいたはずの青イノシシがいなくなっていることに気づいた。そしてもうひとつ気づいたことがある。

 

「ッ・・・!!なんだよあのデカさ・・・!」

 

  そう俺の目の前に現れたライオンのようなモンスターは紫がかったもやもやとしたものを纏い、目を3つ持っていた。

  本来ならキリトやクラインに伝えて手伝ってもらうべきなのだが、今を逃すと二度と出会えないような気がした。そこで、俺はダメだった時はまあ、その時だと思いそのライオンに注目した。

  HPバーの数は2本、この時点で既に未知の領域なのだがさらに驚愕したのはそのモンスターの名前だ。

 

「The Ruler of Space・・・空間の支配者ってとこか。それより《The》ってことはネームドモンスターってことだよな?」

 

  ネームドモンスターと言えばフロアボスやフィールドボスなど特殊な一体のみのモンスターということだ。

 

「そんなのが何でこんなとこに・・・?」

 

  だが、あちらから襲ってくる気配もない。

  だったら・・・

 

「こっちから行かせてもらうぜ!!」

 

  そう言って剣を抜き、片手剣突進技の《レイジスパイク》を放った。

  そして遂にぶつかるといった瞬間そのライオンは紫色の煙に飲まれるようにして目前から消え去った。

 

「どういうことだ・・・?」

 

  俺が困惑していると突然後ろに現れてその爪で俺の背中を切り裂いてきたのだ。

 

「くっ・・・!」

 

  だが俺のHPはまだ10%も削られてはいない。

  どうやらこのライオン瞬間移動かと見まがうようなスピードと紫色の煙による特殊なハイディング以外のパラメーターはそこまで高くないだろうと俺は推理した。

  それにそのライオンは今の瞬間移動の反動か動けないでいる。

 

「今しかないな・・・」

 

  そして俺は再度《レイジスパイク》を放った。

 

「よし!!当たった!!」

 

  俺の手から放たれた剣はライオンのHPの25%を削った。

 

「グォォォォ!!!!」

 

  ライオンは痛みに歪んだ顔のまま再び俺の前から消えた。

  俺は剣を構えたまま周りを見渡すと《レイジスパイク》ではギリギリ届かないかというところの風景が歪み、ライオンは再び現れた。

  瞬間移動に注意をしながらも少しずつ間合いを詰めるが、動く様子はない。

  そして俺が再び《レイジスパイク》のモーションをしようとすると、すぐ目の前にライオンが現れたのだ。

 

「クソッ!!」

 

  俺はそう言いながら現在の体勢から発動しやすい片手剣基本技《スラント》を発動した。

  これは簡単な技であるだけに威力も低い・・・筈だったのだが偶然額にある3つ目の眼にヒットすると相手のHPを残り僅かなところまで削ったのだ。

 

「あの防御力なら多分通常技一発で!」

 

  そう思い走り出した瞬間俺はあり得ないものを見た。

 

「何で何も無いところからあんなに剣がでてくるんだよ・・・」

 

  そう、ライオンの周りからいくつもの剣が現れたのだ。

  この〈ソードアート・オンライン〉は大胆にも魔法という要素がほぼ一切無いのだ。

  あえて挙げるなら転移という要素位が唯一魔法的要素を含んでいると言えるだろう。

  なのに現に俺の目の前では魔法という他無い現象が起こっているのだ。

  瞬間移動はとてつもないスピードと特殊なハイディングによるものかと思っていたが、これはどう頑張っても魔法としか説明できないだろう。

  ライオンの周りから現れた剣の数はざっと数えて20本はあるだろう。

  すると一斉にその剣は天高く空に放たれたかと思うと俺の頭上からその剣は俺目掛けて降ってきたのだ。

 

「ッ!!」

 

  言葉を発する暇すらなく俺に降り注いだ剣を何とか幾つか弾いたものの幾つかは俺に容赦なく刺さっていった。

  俺の残りHPは恐らくあのライオンと大して変わらないだろう。

 

「お互い先に攻撃が当たった方が負けだろうな」

 

  俺はそんな状況にも関わらずこの戦闘で最も冷静な判断をし、集中を高めた。

  だんだんとライオンの動きだけしか見えなくなっていく。

  そして完全にライオン以外への意識を遮断すると、俺は本能で動き始めた。

  ライオンも既に瞬間移動を捨て、俺を迎え撃とうといった様子でどっしりと構えていた。

  俺は研ぎ澄ました本能にしたがってまっすぐに歩き出した。

  遂にライオンの爪の攻撃範囲に入りライオンが腕を振り上げた瞬間俺はライオンの腕めがけて剣を振り上げた。

  おそらく、少しでも剣の早さが劣れば俺は死ぬ。

 

「・・・ッ・・・!!!」

 

  その俺の剣はライオンの腕が降り下ろされるよりコンマ数秒であろう差でヒットした。

  そうしてライオンの爪が俺を切り裂く直前に目の前のライオンは無数の青い欠片となって爆散した。

  俺は疲労のせいでばったりとその場に倒れ込んだ。

  幸いその間モンスターは現れなかった。

 

 

「そろそろ戻らなきゃな・・・」

 

  そう言ってふらふらと立ち上がった時には既に時計の針は(当然アナログ時計ではないがそこには触れないでほしい)4時前を指していた。

 

「それにしても俺、何で最後あんな大胆なことしちゃったんだろうな~」

 

  もしかしたら最後ソードスキルを使っていたらもっと楽に勝てたのかもしれない。

  だけど、何となくあれが正解だったような気がする。

 

「ま、生き残れたしいっか」

 

  今はそれを喜ぶべきだろう。

  得たものといえば30本程の『虚空の剣』という重さが無いことと容量が必要でない以外は初期の片手剣と性能の変わらない剣と経験値といったところだろう。

  まあ、その経験値のおかげでレベルが4になったのが今のところ一番の成果だろう。

 

「早く帰ってキリトとクラインに自慢してやろーっと」

 

  そうして俺は足早に最初の狩場に帰ったのだ。

 

 

 

「「もう、レベル4になったのか(よ)!?」」

 

「まあな、それよりキリト、クラインはちゃんと戦えるようになった?」

 

「当ったりめーよ!ロンドよお、てめえちょっと俺のこと馬鹿にしすぎじゃねーか?」

 

  キリトに聞いたつもりが答えたのはクラインだった。

  キリトの苦笑いを見ればクラインがまだそこまで上達していないのは察したが一応

 

「はは、悪い悪い冗談だよ」

 

 こう言ってクラインをなだめているとキリトが俺の装備している武器を不思議そうに見ていた。

 

「ん?どうしたんだ、キリト?」

 

「ん、いや、その武器初期装備じゃないよな?どこでてにいれたんだ?」

 

  そう聞かれ、俺は「待ってました!」とでもいうようにその日あったことについて話した。

 

 

 

 

「やっぱりロンドは想像以上だよ・・・。1人でネームドモンスターを倒すなんて・・・」

 

「お前本当に今日始めたばっかりかよ・・・?その話を聞く限り全く信用できねーよ」

 

「いや、本当に今日始めたばっかりだって」

 

  キリトが驚愕し、クラインがぶうたれているのを苦笑いしながら見ていると、クラインが何かを思い出したように「あっ!」と声を上げた。

 

「どうしたんだよクライン?」

 

「実はあっちでピザを5時半に注文しててな」

 

「準備万端だな」

 

  と俺が言うと。

 

「おう!今日は寝ずにやるぜ!ってことでそろそろ落ちるわ。ありがとよキリト、ロンド」

 

  そう言ってクラインがログアウトをしようとするとキリトが3人でフレンドになろうということでお互いのフレンド登録を済ませ、クラインがログアウトをしようとしたところ、クラインが「へ?」だのなんだの言っているので俺が

 

「何かあったのか?クライン」

 

  そうキリトが聞くとクラインが

 

「ログアウトメニューがどこにも無えんだよ」

 

「そんなはずは無いだろ、ちゃんと探してみろよ」

 

  キリトはそう言いながら自分もログアウトメニューを探すが、

 

「本当だ・・・初日だからか?」

 

  と信じられないというふうに言った。

 

「そういえば・・・」

 

  俺はログイン直後のことを思い出していた。

  その時は確かにログアウトメニューがないことに気づいたのだった。

 

  「確かに無かったな。多分キリトの言った通り初日だから回線が混線とかしてるんだろ」

 

「GMコールはしたのか?」

 

「いや、それもできなかったんだ」

 

「ああ、確かに出来ねーな」

 

「まあ、そのうち強制ログアウトなり何なりで出してもらえるだろう」

 

  そのキリトの一言で俺はそうだなと納得していた。

  因みにクラインはピザが冷めることを嘆いていた、全く能天気な奴だがこういう時はこんなやつがいてよかったなと思う。

  そうこうしているとリーンゴーンという鐘の音が聞こえ、俺たち含めプレイヤーはまとめて《はじまりの街の》広場に集められていた恐らく、ここでGMからのコールがあるのだろうと思っていた。

  だが、現れたものはその予想を裏切るものだった。

  それは到底ログアウトが出来なくて不安になっているであろうプレイヤーを安心させるにはあまりにもおぞましいものだったのだ。

  まるで血の滴に形作られたかのような深紅のローブ。

  その中の顔はちょうど影になってうかがいしれない。

  そもそもその中に顔があるかすら分からない。

  だが、その容姿に俺は本能的に不安を覚えた。

  そしてその赤ローブから低く落ち着いた、よく通る男の声が聞こえた。

 

『プレイヤーの諸君 、私の世界へようこそ』

 

  どうやらこの赤ローブはβテストでGMが身に纏っていたものらしいが、私の世界とは一体どういうことだろうか。

  そう思っていると俺の心の声に答えるようにその赤ローブは再び言葉を発した。

 

『私の名前は茅場晶彦。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ。』

 

「な・・・・・・」

 

  隣でキリトが驚いたような声を出していた。

  確かこの茅場という人物は常に裏方に徹し、メディアに出ることを避けていた。

  だから今までにこんな目立つことをしたことはなかった筈だ。

  そして次に茅場から放たれた言葉は現状を把握しようとする全てのプレイヤーの努力を嘲笑うかのようなものだった。

 

『プレイヤー諸君は、すでにログアウトボタンの消失に気づいていると思う。しかしゲームの不具合ではない。これは〈ソードアート・オンライン〉本来の仕様である』

 

「し、仕様だと」

 

  クラインがささやくように言った。

  さらにアナウンスは続いた。

 

『諸君はこの城の頂を極めるまで、自発的にログアウトすることはできない』

 

  俺はこの言葉の意味がすぐには理解出来なかった。

  だが、異常な宣言であることは瞬時に理解できた。

 

 

 

  俺はそこからの話を呆然と聞いていた。

  俺たちプレイヤーに与えられた、ここから出る方法は2つ。

  ここ、《アインクラッド》を100層まで攻略するか、この世界で死に現実の体も死ぬかだけだった。

  そして続く出来事で俺は更に驚いた。

 

『それでは、最後に、諸君のアイテムストレージに、私からのプレゼントが用意してある。確認してくれたまえ』

 

  俺は言われるがままアイテムストレージを確認した。

  すると、所持品リストの最上段にそれはあった。

  そのアイテムの名は、《手鏡》。

  それを一体何に使えというのか。

  疑問はあったが、俺はそれを声に出すわけでもなく、《手鏡》をオブジェクト化した。

  手に取ると、それは何の変哲も無い手鏡であり、何が起こるわけでもない。

  そこに映るのは間違いなくこの世界での俺の顔だ。

  俺の隣にいるキリトもクラインも首をかしげている。

  これで身だしなみでも整えろってか、と思ったその刹那、俺の周りにいたアバター達は白い光に包まれた。

  どうやら俺も例外なくその光に包まれているようだ。

  その二、三秒後さっきと変わらない風景が広がって・・・はいなかった。

  俺の隣にいたはずのキリトとクラインは消えていた。

  その代わり、黒髪の女の子と野武士面の男が立っていた。

 

「お前ら誰だよ・・・?」

 

「お前ら・・・誰?」

 

「おい・・・誰だよおめぇら」

 

  俺と、女の子もとい女の子みたいな男の子と野武士の口からははほぼ、同じ言葉が流れた。

  その瞬間、俺は咄嗟に手元の鏡を見るとそれと同時に《手鏡》の意味を悟った。

  鏡の中には見れば「活発」の二文字を思い浮かべさせる顔立ちに、前髪は鼻の辺りまで伸び、後ろ髪は首根っこの辺りまで伸びている。

  体にはトレーニング成果であるしなやかな筋肉がついていた。

  そしてその髪の色は太陽の光を跳ね返して煌めきを放つほど明るい『金色』だった。

  その姿は辺りの黒や茶色という暗い色が広がる中で明らかに目立っていた。

  鏡の中に映っていたのは紛れもなく、現実世界の俺の容姿そのものだった。

 

「うおっ・・・・オレじゃん・・・」

 

  同じく隣で鏡を覗いていた野武士が仰け反った。

 

「てことは、お前キリト!?で、そっちのはクラインか!?」

 

「「じゃあ、お前はロンドか!?」」

 

  二人は息を揃えて言った。

  俺も二人も若干声が変わっていたがそんなことを気にする余裕はなかった。

  鏡は俺たちの手からこぼれ落ち、「パリンッ」という音とともに消滅した。

  周りには先程のような美男美女はほとんど消えていなくなり、ただ、リアルな若者達の集団があるだけだった。

 

「なんでこんなことを・・・!?」

 

  そうクラインが叫ぶと、それに返事をするように赤ローブは答えた。

 

「私の目的はこの世界を作り出し、観賞するためにのみ私はナーヴギアを、SAOを造った。そして今、全ては達成せしめられた』

 

『以上で《ソードアート・オンライン》正式サービスのチュートリアルを終了する』

 

  無機質な声でそう締めくくられた直後、幾つもの声が上がった。

  俺も当然ショックだった。

  だが、それは声に出すより前に不安によって押し潰された。

  あくまで、受験の息抜きのつもりだったのだ。

  こうなれば友人にも長い間会えなくなるだろう。

  そんなことを考えていると、キリトが不意に口を開いた。

 

「ロンド、クライン、ちょっと来い」

 

  そう言ってキリトは俺とクラインの腕を掴み広場の外の街路の一本に出た。

 

「ロンド、クライン、俺はすぐに次の村へ向かう。お前らも一緒に来い」

 

  キリトは低く冷たい声でそう言った。

  俺は一人じゃきっとやっていけない。なら俺はキリトと共に次の村へ行こう。

  そう決めて、キリトにその旨を伝えようとすると、クラインが先に口を開いた。

 

「すまねぇが、俺は他のゲームで知り合ったやつが広場にいるはずなんだ、置いては行けねぇ。だから俺は置いてってくれて構わねぇ」

 

「そう・・・か・・」

 

  キリトは小さく呟いた。

 

「キリト、俺はお前と一緒に行くよ。多分迷惑も掛ける。それでも連れていってくれるか?」

 

「ああ・・・もちろんだ・・・!」

 

  俺たちが振り返り歩き出すと、

 

「キリト!おめぇ案外可愛い顔してやがんな!結構好みだぜオレ!ロンドも男らしい顔してやがる!さっきのお前より今のお前の方が強そうだぞ!」

 

「お前もその野武士ヅラの方が十倍似合ってるよ!」

 

「俺もさっきのお前よりこっちのお前の方がつよそうに見えてるよ!」

 

  そうして、俺たちはクラインと別れた。

  そして、いよいよデスゲームが始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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