ソードアートオンライン~空間と剣技の支配者~   作:刃零

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死のゲーム

  俺とキリトははじまりの街を発って数十分で目的地である《ホルンカ》に着いた。

  まず、はじまりの街で俺たちはクラインとの狩りでたまった素材アイテムを売った。

  俺もキリトも生産職になる予定は無いのでな。

  それと、ライオンからドロップした《虚空の剣》だが、どうやら買い取り価格0コルらしい。

  三十本あったから少し期待してたのに。

  そんなわけで持ってても何も困らないものなので持っておくことにした。

  そして、その金でとりあえず革装備を購入した。

  俺とキリト、お揃いだ。

  色は違うぞ。

  で、なぜ俺たちが《ホルンカ》へ行くかというとより強い武器の為だ。

  キリト曰く、ここでは強化すれば第三層までは使える武器が手に入るクエストが受けられるらしい。

  その武器が片手剣だから俺にもキリトにも役に立つだろうということらしい。

  すると、キリトはいきなり民家に入ろうとした。

 

「いやいや、ちょっと待てって!いきなり人ん家入んのはまずいって!せめてノックするとかさ~・・・」

 

  俺が大反論するとキリトは一瞬驚いた顔をしたあと、何言ってんだこいつ、って顔をした。

  なんだこのやろう。

 

「何言ってるんだよ。お前別のゲームでも民家には入ったことが無いとか言うんじゃないだろうな。他のゲームと一緒でこの《アインクラッド》でも民家でクエストが受けられたり、アイテムがもらえたりするんだよ。むしろ掲示板で受けるよりも民家で受けるクエストの方が多いぞ」

 

  なるほどな。

  確かに他のゲームではアイテム欲しさに手当たり次第に民家に入りまくっていた。

  確かに自分の姿で不法侵入は気が引けるが、ゲームだと割りきればどうってことはない。

 

「じゃあ、お邪魔しまーす!ってえっとすいません間違えました」

 

「お前なぁ・・・」

 

  元気よく入った俺だったが、なぜ即効出てきたかというと、恐らくまだ幼い少女が、奥の部屋で咳をしている声を聞いたからだ。

  多分そんなことないと思うけど、お母さんらしき人も何か、誰だよ、みたいな顔をしてたような気がする。

 

「入ったのに出てたら意味無いだろ」

 

「分かってるよ!でもお前も見ただろ?あのお母さん、絶対怒ってるもん!」

 

「NPCだからそんなこと気にするなっていうつもりは無いけど、そこまで思ってないよ、多分」

 

  多分だそうです。

  あぁ~入りたくねぇ。

 

「ほら、時間無いから行くぞ」

 

「・・・はい」

 

  引きずって行かれました。

 

 

 ―――――

 

 

  クエストの内容は病気の娘のために薬を作るのに必要な植物の胚珠をとってきてほしい、というものだった。

  一見簡単そうに聞こえるが、その植物というのが厄介なモンスターらしい。

  また、キリト曰く胚珠を落とす《花付き》の出現率は相当低いらしい。

  それを2つだ。

  キリトには苦労をかける。

 

「じゃあ早速行こう。その前にまずスキルを確認しておこう。多分、《片手剣》しかスキルスロットに入ってないなら《索敵》を入れるといい。この先はソロでやっていくと思うから。でもロンドがギルドに入るつもりなら他のものの方がいいかもな」

 

「いや、その予定はないし、入るとしてもそん時はそん時だよ。しばらくはソロだろうし」

 

  ちなみに現時点だと俺の方がキリトよりレベルが3も上だ。

  キリトはクラインを見てたから満足にはレベリングが出来なかったんだろう。

  片や俺は一人でたくさんモンスターがいる狩場を独占状態で使い、その上ボス級のモンスターまで一人で倒したからな。

  それはそうと、俺はもうひとつのスキルスロットに《索敵》を入れるためにスキルを見ていると、見覚えのないスキルが増えていた。

 

「なあ、キリト。この《空間支配》ってどんなスキル?」

 

「《空間支配》?聞いたことないぞ、そんなスキル」

 

「ものは試しだよな」

 

  そう言って俺はもうひとつのスキルスロットに《空間支配》を入れてみた。

  ・・・しかし何も起こらなかった。

  ってオイ!!

  何でだよ!

 

「キリト!これ何も起きないんだけど!」

 

「えっ?空間支配とかなら、そうだな~アイテムとか入れられるんじゃないか?」

 

「やってみる!」

 

  ストレージを開き《虚空の剣》を選択してみると、なんか一つ増えてた。

 

「なんか、《ホロウ・ストレージ》ってのが出てきたぞ」

 

「一回入れてみろよ」

 

  言われるがまま入れてみた。

  アイテムが消えた。

 

「オイ!!消えたんだけど!」

 

「知るかよ!」

 

「あぁ、俺の剣がぁ・・・」

 

  そう言って何も無いとこから剣を抜くように手を振った。

  すると、無くなったと思っていた《虚空の剣》が俺の手の中に現れた。

  まるであのライオンのようだ。

  いや、そういうスキルか。

  恐らくあいつを倒したからだろう。

  となると、恐らく撃ち出すことも出来るだろう。

  剣から手を離すと剣は消えた。

  恐らく《ホロウ・ストレージ》に戻ったのだろう。

  誰もいないところに向かって剣を撃ち出すイメージをした。

  すると、剣は狙ったところに向かって一直線に飛んでいった。

  飛距離は大したことないが、これは相当使える。

 

「凄いな、そのスキル。《SAO》じゃそんな遠距離攻撃無かったはずだぞ」

 

「しかもこの《ホロウ・ストレージ》俺のアイテムストレージから独立してるみたいなんだ」

 

  驚くべき発見はたくさんあったが、そこを掘り下げるのはあとだ。

  とにかく今は急がないといけない。

 

「悪い、キリト。とりあえずもうひとつのスロットにはこれいれとくよ。時間とらせたな。じゃあ早速行こうか!」

 

「ああ!」

 

  俺たちは森に入った。

 

 

 ―――――

 

 

  俺たちが倒す《リトルネペント》のレベルは3。

  俺から見ればネペントのカーソルは赤より少し薄い色だが、キリトから見ると赤より濃く見えているだろう。

  胚珠は《花つき》からしかドロップせず、また《実つき》の実を潰すとフィールド中のネペントが襲いかかってくるらしい。

  だから、《実つき》だけは絶対に回避しなければならない。

 

「はあぁ」

 

  とはいえ、何体ただのネペントを倒しても《花つき》が出る気配は一向にない。

 

「これぐらいザラだぞ。俺なんてこれよりもっと時間かかってたんだし。」

 

  倒す分には問題ないのだが、疲労はたまる一方だ。

 

「でも、倒せば倒すだけ《花つき》が出る確率が上がるぜ」

 

「本当か!?」

 

  ようやくただのネペントを倒す意義が見つかった。

 

 

 ―――――

 

 

  更に数体倒すとキリトのレベルが上がった。

 

「おめでとう、キリト」

 

「ああ、ありがとう」

 

  キリトはどうやらステータスアップ操作をしているようだ。

  そういえば、俺はステータスアップをすっかり忘れていた。

  レベルは違うのにそんなに倒す時間が大差無かったのは知識の差だと思ってたけど違ったのか。

  俺のお茶目さん☆

  無理があったか。

  俺はステータスポイントが9あったので、筋力に5、敏捷に4振った。

  基本的にバランスよく割り振って、必要に応じてどちらかを一気に上げるスタイルで行こうと思っている。

  俺とキリトはステータスアップ操作を終えて、ウインドウを消した俺たちの背後で不意に、パンパンという、乾いた何らかのサウンドが森に響いた。

  俺とキリトはほぼ同時に飛び退き、剣の柄を握る。

  全く気付かなかった。

  だが、そこにいたのはネペントではなく、ましてやモンスターですらなかった。

  プレイヤーだ。

  つまり、あのパンパンという音はあのプレイヤーがキリトのレベルアップに対して拍手した音ということだ。

  全く、焦らせてくれるぜ。

  当のプレイヤーは剣を持つでもなくポカンとした顔で立っていた。

  そりゃそうか。

  レベルアップに拍手したらいきなり剣に手を掛けた男が二人もいたら俺もああなるだろう。

  なんか悪いことしたな。

 

「ごめん、脅かして。先に声をかけるべきだった」

 

「いや、こっちこそ・・・過剰反応してごめん」

 

  俺は傍観に徹した。

 

「れ、レベルアップ、おめでとう。ずいぶん早いんだね」

 

「早いってほどでも・・・。それをいうならそっちこそ。誰かがこの森に来るのはもう二、三時間後だと思ってた」

 

  確かに、俺たちは誰よりも早くここに着いたはずだし、混乱の最中、ここまで一人で来るのは、並みの奴じゃないだろう。

 

「あはは、僕も一番乗りだと思ってたよ。ここは道が分かりにくいからね」

 

  つまるところ、《元βテスター》ということだ。

  口には出さないが、キリトも気づいているだろう。

 

「君もやってるんだろう?《森の秘薬クエ》。あれは、片手剣使いの必須クエだからね。報酬の《アニールブレード》を貰っとけば三層の迷宮区までは使える」

 

「見た目はイマイチだけどな、あれ」

 

  マジかよ。

  見た目ダメなのか。

  まあ、別にいっか。

  俺の場合外に出して持ち歩かないし。

  少年はハハハと笑ってから驚く事を言った。

 

「せっかくだから一緒にクエ進めない?」

 

「え・・・でも、一人用クエだったと思うけど・・・」

 

  確かにこのクエストは一人用だった。

  一緒にやるメリットってあんのかな?

  そう思った俺の心を見透かすように少年は言った。

 

「そうなんだけどさ、《花つき》はノーマルを狩れば狩るほど出現率が上がるだろ。三人で乱獲した方が効率いいよ」

 

  確かにそうだな。

  そう思っているとキリトが困ったようにこちらを見てきた。

  しょうがないな。

  ここはひとつお兄ちゃんが一皮脱いであげよう!

  キリトの年齢知らないけど。

 

「そうだな、じゃあ協力をしよう。ところで、パーティーって組んだ方がいいかな?」

 

「ううん、別にパーティーは組まなくてもいいよ。もちろん、先にやってたのは君らなんだから、最初の二つのキーアイテムは譲るよ」

 

「分かった。俺はロンド。よろしく」

 

「よかった、じゃあしばらくの間よろしく。僕はコペル」

 

「俺はキリトだ。よろしく」

 

「あれ・・・キリト・・?どっかで・・・」

 

「人違いだよ。さあがんがん狩ろうぜ!他のプレイヤーが追い付いて来る前に《胚珠》三個集めないと」

 

  俺たちは短いあいさつを済ませ、狩りを再開した。

 

 

 ―――――

 

 

  俺たちは狩りを続け、キリトとコペルはレベル3に、俺はレベル5に上がった。

  だが、武器の消耗が激しいため、一度戻るかどうかの相談をしていた。

  すると俺たちの前で粗いポリゴンブロックが合わさって形をなしていった。

  モンスターのPOPだ。

  数は二つ。

  そして、遂に完全な形をなしたそのモンスターの頭部には花がついていた。

 

「・・・!!」

 

  だが、そのとなりには頭部に実をつけたものもいた。

  《実つき》を傷つけずに倒すことも出来るだろうが、デスゲームとなった今危険なことは避けたい。

  だが、いつまた現れるかも分からない。

  俺たちが答えを決めあぐねていると、コペルが口を開いた。

 

「僕が《実つき》の相手をするから、二人は速攻で《花つき》を倒してくれ」

 

「・・・解った」

 

  キリトは答え、俺は無言で頷いた。

  決めれば行動は早く、《花つき》をすぐに倒し、胚珠を回収して、一人で《実つき》の相手をしているコペルの援護に向かった。

  しかし、コペルは憐れむような目をこちらに向けてきた。

  そして、戦闘をブレイクさせ、短く言った。

 

「キリト、ロンド、ごめん」

 

  コペルはネペントに向かって単発垂直斬り、《バーチカル》を発動した。

  剣の向かう先は《実つき》の実。

 

「ダメだろ・・・それは」

 

  キリトが力なく呟く。

  そして剣は容赦なく実に叩きつけられた。

  パァァーン!

  と、凄まじいボリュームで破裂音が森に響いた。

 

「な・・・なんで・・・」

 

  実を潰したことであふれた煙から飛び退いたコペルに向かって言葉を投げ掛けた。

  あれは事故ではない。

  わざと実を潰した。

  考えられることは、《MPK》。

  四方からネペントが殺到する音が聞こえた。

  そしてコペルは草陰に消えた。

  姿までも。

  おそらく、《隠蔽》スキルだ。

  そして俺たちはネペントに囲まれた。

 

 

 ―――――

 

 

  俺たちは何とかネペントを撃退することが出来た。

  とはいえ、満身創痍ではある。

  そして、倒したネペントの中に《花つき》がいた。

  晴れて胚珠は二つになった。

  しかしコペルは───

  死んだ。

  《隠蔽》を使って隠れていたようたが、目のないモンスターには効果はないらしい。

  彼は恐らく俺たちが手に入れた胚珠を奪おうとしたのだろう。

  コペルがいたであろう場所には片手剣とバックラーだけが残されていた。

  俺たちはそれを地面に突き刺した。

  ずっとは残らないだろうが、しばらくは墓標の役割を果たしてくれるだろう。

  俺は初めて目の前で人の死を目にした。

  もちろん、真実かは分からないが、恐らく本当に死んだだろう。

  それは、このゲームがデスゲームであることを改めて思い知らせた。

 

「戻ろう、村に」

 

「ああ」

 

 

 ーーーーー

 

 

  村に戻ってすぐ胚珠を渡した。

  少女の母親は嬉しそうにそれを受け取り、俺とキリトそれぞれに報酬の剣を礼と共に差し出した。

 

「ありがとう・・・」

 

  俺たちは短く言った。

  これでクエストは終わりだったが、俺たちは母親に付いていき、病気の少女の部屋へと入った。

  少女は薬を飲むと俺たちに言った。

 

「ありがとう、お兄ちゃんたち」

 

「うっ・・・くっ・・・」

 

  言葉を聞いた途端キリトは布団に顔を埋め、涙を流し始めた。

  きっと、キリトにも妹か弟がいてそれを思い出して泣いているのだろう。

  そう思うと俺にも込み上げてくるものがあった。

  現実に置いてきた妹の事だ。

  双子だから年は変わらないが、父も母も仕事でめったに帰って来ないため、いつも家では二人だった。

  あいつを一人にしてしまった。

 

「・・・っ」

 

  気付くと俺の目からも涙が溢れ出した。

  少女は困惑し、一瞬迷っていたが、俺たちの頭を撫でた。

 

「大丈夫?お兄ちゃんたち」

 

  俺たちが泣き止むまでその小さな手は動き続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

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