仮面ライダーシンフォギア   作:tubaki7

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第四話 落涙

「奏太君が・・・仮面、ライダー・・・?」

 

 信じられない。目の前で姿が変わり、戦うための躰に造りかえられた奏太は今、ノイズを相手にその力を振るている。先ほどまで自分と会話していた少年の、不器用でどこか寂し気な面影はどこにもなかった。

 

『シッ!・・・躰が、軽い?』

 

 背後のノイズを切り捨て、今まで感じたことのない違和感に奏太は戸惑う。これまでは普通に戦うだけでもけだるさを感じていた躰が、今はその感覚が微塵も感じない。どことなく力が湧いてくるような、そんな言い知れる感覚が彼を戦いへと駆り立てる。

 

〘オンサセイバー!〙

 

 いつもは、使うと体力の消耗が極端なこの剣も今はその大きさに反比例して軽い。普段よりも鋭い太刀筋で、奏太は眼前に迫った二体のノイズを一瞬で灰へと変えた。そしてそのまま振りぬいた勢いを利用しつつ、今度は入れ替わるようにして襲い掛かってきた一匹を回し蹴りで弾き、近くに控えていたノイズと衝突させて灰にする。

 

『これなら・・・やれる!』

 

 ベルトのバックルを開き、変身の為に使用した白い手のひらサイズのディスクをオンサセイバーにセット。スイッチを押せば、中のディスクが激しく回転し、ベルトから伸び、全身に張り巡らされスーツに浮き出ている血管のような管を伝ってエネルギーが刀身へと流れ込む。

 

〘フィナーレ!〙

 

『これで、フィニッシュだ!』

 

 腰だめに構え、前方向けて右斜め上から左斜め下に向かって振り下ろし、今度は矢継早に左足を軸に回転、後方に横一線に振りぬく。光の斬痕が空中に少しの間、振りぬいた軌跡を示すように残り、消える頃には全てのノイズがその存在を灰に変えられたあとだった。

 

「・・・・」

 

 圧倒的なまでの戦闘力。常人であれば一匹でも死を覚悟するノイズの群れを、あっさりと退けてしまうその力は未来から言葉を奪うには充分すぎるものであり、同時に僅かばかりの恐怖を抱かせるには過ぎたものであった。それを察してか、こちらに振り返るも言葉を発することなく少し俯く奏太。今更変身を解いて元の姿に戻ったところで返ってくる言葉とリアクションはわかりきっている。今目の前にある少女の顔は、驚愕というよりも・・・・恐怖。得体のしれないものに対して懐く感情としては適当だと言えよう。

 

『・・・無理することねぇよ。コレが俺だ。アンタの気持ちもわかる。・・・じゃあな』

 

 去ろうと踵を返す奏太。が、その手を響が握った。驚く未来、そしてそれは仮面で顔こそ見えないが、奏太も同じであった。

 

「ありがとう。未来を助けてくれて」

 

 反応はない。無言。ただ、握った手がわずかに震えていたのを響は見逃さなかった。

 

『・・・お前・・・』

 

 そして、響が奏太に触れたことにより彼は彼女の〝記憶〟と〝心〟に触れる。そこから流れ込む、様々な〝音〟。それにより、奏太は全てを悟った。彼女が戦おうとする衝動と、人助けの理由。そして、その奥に隠された悲しみを。

 

「え・・・?ちょ、どうしたの!?」

 

 気が付けば、変身を解いていた。そればかりか、響がまるで心配そうな顔をして自分を見ているではないか。

 

「どうって・・・」

「えっと・・・怪我、したの?泣いてるけど・・・」

 

 言われて、初めてそこで自分が泣いていることに気が付く。頬に手を触れてみれば、伝う滴に触れることができた。

 

「・・・大丈夫、だ。それより、そっちは?」

「うん。奏太君が守ってくれたから、私も未来も大丈夫」

 

 そう言って微笑む響。はにかんだ顔が、何故かその時は儚く見えた。

 

「響・・・」

 

 しかし笑顔を浮かべる響とは対照的にどうしていいかわからず、困惑と不安が混じった顔を浮かべる未来を見て、奏太は目線を落とした。ああは言ったものの、受け入れられるとは思っていない。誰だってそう。得体のしれないものを相手に平気で立ち回れて、こちらに危害を加える気はないと言われても警戒心まで解ける筈などないのだ。ましてや、変身してなくても厄介な能力まで常に解放されっぱなし。自分でもどうしようもないとわかっていても、いざそうなってみるとみないのとではやはり違うものだ、と奏太は響に目線を移す。

 

「・・・これ」

「これって・・・奏太君の番号と、アドレス?私持ってるけど・・・」

 

 走り書きではあるが、それは確かに確認できた。しかしこれは自分も持っている為意味はない。

 

「お前にじゃない。・・・小日向用だ」

 

 そして突然名指しされた未来。急に名前を呼ばれた為少しビクンと肩を跳ねた。

 

「お詫び・・・ってほどじゃないかもしんねえけど、なんかあったら何時でも呼んでくれ。アンタには、その・・・色々と悪い事したからな」

 

 とは言え、彼女は「わかった」と言った。今は戸惑っているかもしれないが、それでも言い切ったのだ。それには応えなければならない。

 

「それに、約束したからな。新作メニューを食わせてやるって」

「あ・・・」

「・・・待ってる」

 

 そう言ってバイクにまたがる奏太。なんだかんだで放っておけずに手を出してしまうという性格をしているということを理解している響にとってはなんとも微笑ましい光景にも見えるが、それ以上に険悪と言っていいほどの空気だったのが一気に晴れたことにまた笑顔になる。

 

「やったね、未来!」

「う、うん・・・」

「言っとくが、お前はダメだからな」

「えぇ!?なんで!?」

「それはあくまで小日向と約束したもんだ。お前は含まれてない。つか、普段の喰いっぷりがアレなら店が潰れる前に俺が破産する」

「そんなぁ・・・」

 

 先ほどまで命のやり取りをしていたとは思えない場の和み具合にそれまで強張っていた表情も緩くなる。

 

「フフ、もう響ったら」

「あ、やっと笑った」

「え?」

「未来ってば今朝からずーっと恐い顔してるんだもん。やっぱり笑ってる未来の方がいい」

 

 そういって微笑む親友をみて、ようやく自分が今までどんな顔でいたのかを思い出す。確かに、そんな顔をしていたかもしれない。主に原因は奏太にあるのだが、それでも今はこうして笑うことができる。こんな雰囲気を一瞬で作ってしまうこの子はやっぱりすごいなと思いつつ。

 

「ね、奏太君」

「ん?」

「・・・後ろ、乗せてもらえるかな。足挫いちゃって」

「おう」

 

 一度降りて、未来に歩み寄る。そして手を差し出したところで、奏太は一瞬ためらいがちになる。が、それをじれったく思ったのか未来の方から少し強引に奏太の手を握った。力のせいで人と手を繋ぐことを避けてきた奏太であったがここでふと気が付く。それがあまりにもおかしくて、思わず口元が緩んだ。

 

「どしたの?今度は笑ったりして」

「いや・・・こんな簡単なことだったんだって思ってな。よっ」

 

 握られた手を握り返し、力いっぱい引っ張って痛い思いをさせないようそっと立たせ、すぐに肩を貸す。

 

「病院に届けてくる。そっちは学校だろ?早く行った方がいい」

「うん。それじゃ未来、また後でね」

「うん。また学校で」

 

 そう笑顔で別れ、未来は奏太に送られながら病院に向かう。その後ろ姿を見送りながら、響は一呼吸おいて足を学校へと向けた。

 

 

 

 

 ♬

 

 

 

 夜。静まり返った、厳粛な室内は暗く、ゆらゆらと漂う火が自分を囲むようにして14個。中央に静座し、静かに精神統一を行う。

 

  思い返すのは、全てを失ったあの日。自らの不手際故、弱さ故に守ること叶わなかった命と笑顔。それらはまるで一振りの刃となって翼を傷つけていく。が、それでも人類守護の命を背負った防人、風鳴翼は揺るがない。この身は剣、涙など不要。ましてや笑顔など・・・・。しかしよぎるのは、奏の力を受け継いだ少女。そして、望まぬ力を振るいながらも、自分に向き合ってきた少年の言葉。

 

 ―――そんなモンを人に向けて撃つことが、アンタの言う防人の使命だってのか?

 

 不可抗力とは言わない。あの技、天ノ逆鱗はどう加減しても喰らえばタダでは済まない技だ。そしてそれを選び、適切と判断して繰り出したのも自分。いくら血が上っていたとはいえ、言い訳になどならない。認めよう。彼の言ったことは正しい。

 

  だが。それで責められようと、譲れぬ想いもある。

 

 折れるわけにはいかない。例え、最後の一人になったとしても。再度決意を固めた翼は利き腕の横、控えるようにして横たわっていた日本刀を取り抜刀。横一閃した勢いのまま回るようにして切り抜けば、ろうそくの炎が揺れる。・・・そう、揺れるだけ(・・・・・)にとどまっただけに終わった。それに思わず出てしまう舌打ち。集中できていない証拠だと自分を叱咤し、息を一つ。すると、部屋の隅に置かれた服の上で携帯端末のディスプレイが光りと共にバイブレーションを起動させ震える。画面には、緊急通信を示す文字が。

 

「はい」

《翼か。今こちらでノイズの波形を捉えたのだが・・・》

「すぐに向かいます」

《ああ。だが気を付けろ。今回の相手は・・・―――》

 

  ―――あの、ネフシュタンの鎧だ。

 

 その言葉を聞いた時。心が踊ったのを、翼はたしかに感じた。二課からの要請を受け、翼は戦場へと赴く。その身に戦う為の鎧を纏い、剣を手にして星が輝く闇夜を跳ぶ。反応の合った位置からこの場所までは比較的近い距離にある。車などの交通手段ではかえって時間をかけてしまうため、直線距離でならギアを纏い跳躍した方が速く着く。そして、その判断は正しかった。

 

「ん?・・・チッ、んだよハズレか」

 

 着地したのは、人気のない夜の公園。言葉から察するに、何かを誘っていた・・・?

 

(いや、そんなことなど関係ない。アレは私の不手際で奪われた物。ならば、私の手で引導を渡すのが筋というものッ!)

 

 武器を構え、跳躍。振りぬいた刃はしかし、空を切る。が、それで済むわけがない。

 

「それで躱したつもりかッ!」

 

 脚部のユニットが展開。さながらスラスターの如くそれを使い、さらに跳躍。得物をさらに巨大化させ、今度は斬撃を放つ。が、相手も手練れなようで翼の攻撃をとんぼ返りして回避し、仕方なく地面に足をつける。

 

「上ができるからって、調子に乗んなよ人気者ッ!」

 

 敵―――ネフシュタンが黒い球体を放ってくる。それを横に転んで躱し、すぐさま膝立ちになり、踏み込む。下から上への切り上げ、そこから矢継早に振り下ろされる刃の軌跡は暗い空間を引き裂き、月明りを反射して一瞬二人の間を照らす。

 

「ネフシュタンの鎧・・・たとえ完全聖遺物と呼ばれていようとも、そのポテンシャルも扱えないのであれば恐るるに足らんッ!」

「ハン、そいつァこれを見ても言えんのかよ!」

 

 武器か。そう思い一端距離を取る。が、それは相手に向けて振りぬく剣でも、弾丸を放つ銃でもなく。

 

「ソロモンの杖・・・ッ!」

「ご名答だ。さぁ、アンタは此奴らと遊んでな!」

 

 ソロモンの杖。ネフシュタンの鎧と同じく完全聖遺物と呼ばれるもので、それは翼と響が扱うシンフォギアのスペックを遥かに凌ぐ性能を秘めているもの。シンフォギアが聖遺物の欠片から作られているのに対し、完全聖遺物とは書いて時の如く聖遺物そのものであり、それを起動、扱うに至るまではそれなにのフォニックゲインが必要となる。そして、彼女が使用しているのは二つ。つまり、二つもの完全聖遺物を扱えるだけのフォニックゲインを秘めているということになる。さらに今手に持っているソロモンの杖は〝バビロニアの宝物庫〟にアクセスできる、いわば鍵と言うべきもの。ノイズはその宝物庫からあふれ出してくるもので、あの杖は言ってみれば鍵であり、ノイズにたいする首輪であり、制御具でもあるのだ。

 

 それを、持っている。その事実がどれだけ厄介かは、押して知るべしである。

 

「さて、と。そろそろ来るころか・・・」

 

 その言葉の通り、ギアを通して伝わってくる音が一つ。アームドギアを展開せず、己の拳と蹴りのみでノイズを撃破する、奏のギアを使う少女。融合症例第一号の異名を持つ立花響だ。

 

「翼さん!」

 

 ノイズに囲まれた翼を見て声をかける。が、援護に入ろうとする響を見て翼は。

 

「助太刀など不要!この程度、どうということはないわッ!」

 

 一瞬で包囲網を壊し、再度斬りかかる翼。しかし実物を目の前にしての焦りか、太刀筋が徐々に乱れ始めている。鬼気迫る二人の攻防にただただ見入る響だが・・・それがいけなかった。

 

「かかったなッ!」

 

 その言葉と同時に、何かが腕を絡めとる。目を凝らせば、そこには背の高いノイズが二体控えているのに気が付く。しかし気が付いたところですでに後の祭りで、手足を拘束され身動きを封じられてしまう。

 

「チッ・・・最初から目的はあの子の方!」

「またまたご名答。そして、目的はもう一つ・・・」

 

 聴こえてくる、バイクの音。マズい、そう脳内で警鐘が鳴る。しかし、事態は止まらない。翼の中で、さらに焦りが募っていった。

 

「オイオイ、どーなってんだこれ・・・小日向の連絡聞いて来てみれば・・・」

 

 拘束される響。苦戦する翼。そして、今度は白い鎧を纏う少女に、ノイズ。構図からしてピンチなのはわかる。が、それよりも納得できないのは。

 

「なんで人間が・・・」

 

 そう。相手がノイズならまだわかる。が、翼が今剣を向けているのは紛うことなき人間だ。それも、自分とさして年の変わらない。以前見た、響と戦った時の彼女のようにまた人を傷つけようというのだろうか。

 

「お前、まさかまた!」

「だったらなんだというのだ。アレは私の・・・私の罪だ。私一人でやらねば、意味がないッ!」

 

 再び斬り合う二人。事態を一向に呑み込めないでいる奏太だが、わかることは一つ。

 

「気に入らねぇ・・・けど、そっちの白いのも気に入らねぇ!」

 

 二人から聴こえてくる音は、どちらも同じような波長。何かに憑りつかれたように戦い、本当の想いさえも歪められたように見えなくなっている。それが気に入らなくて、奏太は割って入る。

 

「変身!」

 

 カノンになると同時に、翼が離れたタイミングで奏太が拳を突き出す。スイッチのタイミングは完璧だが、奏太が殴りたいのは、あの少女だけではない。今度は振り返って翼にも拳を繰り出す。

 

「なんのマネだ!?」

『なんのマネだぁ!?そりゃこっちのセリフだ!アンタ、あの時言ったことちっとも覚えてねーだろ!?』

「今はそんなこと気にしている場合ではない!アレは・・・アレだけは!」

 

 手を触れずともわかる。今翼はかなり焦っている。過去に縛られ、本来の目的を見失うほどに。それほどにわかりやすく、そして危険だ。

 

『何焦ってんのかはしんねーけど、相手は人間だぞ!?まさか、殺してでも取り戻そうだなんて考えてねーよな・・・?』

「―――ッ。・・・わからないさ。目の前で、成す術もなく散らせてしまった命の重さなど。自らの未熟さ故の過ちなど・・・これは、私の責務だ!」

『その責務で誰かを傷つけて、それでお前は満足か!?』

「元より、理解されるつもりなどない・・・ッ」

「ごちゃごちゃうっせんーんだよ。とっととお寝んねしやがれ!」

 

 二人めがけて放たれる、あの黒い球体。しかし今度は一発目とは比べものにならないほどの大きさだ。回避・・・間に合わない!

 

『があああああああああッ!』

 

 しかし、吹っ飛んだのは奏太ただ一人。翼との間に入り、咄嗟にオンサセイバーで相殺を試みるも失敗し弾き飛ばされてしまい、地面を転がる。

 

「ハッ、この程度か。かったりぃ・・・ま、これで任務達成だ」

 

 コイツの目的は、この二人を拉致すること。そしてそれが達成されてしまえば、次はいつ戦えるかはわからない。それに、この場を見逃すとも限らない。チャンスは・・・もう、残されていない。ならば―――

 

「行かせるものかッ!」

 

 小刀を投げる。が、それは少女に当たることはなく、地面へと突き刺さってしまった。

 

「オイオイ、ノーコンにもほどがあんだろ。ま、そんな痛めつけてほしけりゃ二度と立ち直れないようにし・・・」

 

 そこまで言って、体の自由が利かないことに気が付く。見れば、小刀が突き刺さった場所には自分の影が。

 

「影縫い・・・これで貴様は動けまい」

 

 その言葉の通り、まったく動く気配がない。精一杯力を込めて強引に動かそうとするも、まるでびくともしない拘束。そして、直後感じた悪寒。それは、奏太も同じだった。

 

「さぁ聴くがいい。これが、防人の歌よッ!」

 

  あたりに響く歌。それは、終わりを意味する歌。自身の全てと引き換えにし、歌う歌。すなわち―――〝絶唱〟。アームドギアを介さない今の状態では、おそらく翼は助からない。そして、直感する。翼の狙いが、最初からコレであったことに。

 

『・・・バカ野郎・・・ッ』

 

 命を散らしてまで、果たしたい使命。彼女を縛る過去、防人の責務。

 

 くだらない・・・

 

『バカ野郎ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおぉおおおおおお!!!!!!!!』

 

 くだらないッ!

 

  叫びながら、ダメージの残る躰に鞭を打って走る。最中、バックルより右側にある三つのスイッチの内一番上を三回押す。

 

〘ビート、ビート、ビートアップ!〙

 

 高速移動。ボタンを押して発動できる能力を使い、二人の間に割って入る。そして―――右手を拳に握りしめ、翼を殴った。直後、収束しかけていたエネルギーが一気に解放され、波打つ。凄まじい衝撃と波動で響の拘束ははがれ、ノイズも全て消滅する。倒れる翼は目から血の涙を流し、少女の方は鎧がもうボロボロ、奏太も満身創痍と言った状態だ。そんな中、翼が言う。

 

「何故だ・・・何故止めた!?あと一歩というところで・・・ッ!」

『目の前で命を絶とうとしてるバカを止めた・・・ただそれだけだ。それにな・・・アンタが一体どれだけの覚悟を持ってるかなんて知らねえ。でもな、自分の身勝手な悲しみや怒りで他人を巻き込んでいい権利なんて・・・どこの誰にもねぇんだよ・・・ッ!』

 

 翼の咎めに対しての奏太の返答。それだけ言うと、まるで糸の切れた人形のように変身が解除されて倒れる。服はズタボロ、躰のあちこちから、切り傷のようなものがあり血が出ている。そんな姿を最後に、翼も意識を手放してしまい、その場に倒れた。

 

「翼、さん・・・・奏太君・・・?返事してよ・・・ねぇ・・・・ねぇってば!?」

 

 倒れる二人によろよろと歩みよる響。

 

「嫌だよこんなの・・・・目を開けてよォ!」

 

 流れる涙。響く声。それらは虚しく木霊し、闇夜に溶けた。

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