仮面ライダーシンフォギア   作:tubaki7

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第七話 君ト云ウ音響キ、護ル為ニ

 咆哮と轟音が轟く戦場。ありとあらゆるものが破壊され、もはやかつての景色はそこにはない。爆発が爆発を誘発し、辺りには濛々と黒煙が登る。そんな映像が、特異災害対策機動部二課の司令室、中央メインモニターに映し出されている。

 

「奏太君、暴走中の響ちゃんとエンゲージ!」

「ベルトの発動を確認。戦闘に入りますッ!」

「急に連絡してきたかと思えば、任務の場所を教えろとは・・・若いとは、凄まじいな」

「ですが、今響さんを止められるのは彼だけです」

 

 対峙する二人はやがて距離を詰め、奏太は拳を、響は手にしたデュランダルをぶつけ合う。完全聖遺物デュランダル。その破壊力は、この映像を見れば一目瞭然だ。装者さえも取り込み、波長が合ってしまえばコンディションを無視してでも破壊衝動を増幅させてしまう。今まで発動すらしなかった完全聖遺物。やがては命を護る為に使われるべき力が今、その牙をむき全てを破壊しつくさんと猛威を振るう。誰よりも争いを嫌う、優しい少女の真っ直ぐな心すら黒く染め上げて。

 

  だが、今の自分に出来ることはない・・・・だから。

 

「頼むぞ・・・仮面ライダー」

 

 何も出来ぬ歯がゆさを拳を握ることで誤魔化す。そんなもので完全に紛れることなどないが、それでもこうせずにはいられない。

 

 

 

 

 ♪

 

 

 

 

『響・・・オイ響ッ!』

 

 距離を取って呼びかける。しかし返ってきたのは返事ではなく咆哮と攻撃。再び刀身が光って伸び、こちらに向かって頭上から振り下ろされる。回避しようとする奏太。が、そうはせず舌打ちをして振り返り走り出す。

 

『ンなクソッ!』

 

 茫然と座り込んでいたネフシュタンの少女を担ぎ、走る。抵抗するかのように肩で何かをしきりに叫んでいるがそんなことは知った事ではない。あのままあそこで受け止めようなんて馬鹿な真似をすれば、木端微塵に押しつぶされてしまうからだ。兎に角走る。天高く空を裂こうとばかりに伸びる刀身は、暴走した立花 響の咆哮と共に地面を抉った。その余波で辺りの瓦礫が吹き飛び、施設のガラスが割れるだけでなく、丈夫な筈の特殊素材のコンクリートにさえ亀裂を入れる。その爆風に煽られ、二人して地面に転がった後、振り返ってそれまで自分達が立っていた場所を見る。あれが直撃したら・・・・そう考えるだけで生きた心地がしない。

 

  だが、あの子を止める以外にこの場をなんとかする術がない。

 

『やるしかないか・・・!』

 

 覚悟を決める。立ち上がろうとしたその手を、小さなてがギュッと握った。振り返れば此方を見上げる弱々しい瞳と出逢う。躰は小刻み

 

に震え、何かに縋るかのようなその視線は仮面の中でもしっかりと確認できた。戦っている時はバイザーでわからないが、こうして近くで見ると案外可愛い顔をしている。言動からは想像もつかない。もっと男まさりな感じかと思っていただけに、奏太は度肝を抜かれたようにハッとなる。

 

「・・・行くのか・・・?」

『ああ』

「お前、さっきのアレ見ただろ!?完全にイカレちまってる・・・ここに居たら巻き込まれるぞ!」

 

 たしかに・・・と奏太は思った。自分は二課の所属ではない。もとはと言えば一般人だ。そんな自分がここで命を懸けてまでして成すことではないし、もう一人あの組織には装者がいる。きっと彼女もこの騒動を聞いて向かっている事だろう。自分よりは適任かもしれない。そもそも訓練も何も積んでないのだから、役に立つかどうかなんて目に見えている。そう、無謀だ。無茶だ。無理だ。

 

  ―――だとしてもッ!

 

『約束したんだ。男が交わした約束を破るなんて、かっこつかないだろ?それに、アイツはこんな事していい奴じゃない。だったら・・・やってやるさ。たとえ腕がちぎれようが足がもがれようが。それが今の俺にできるたった一つの事だから』

 

 そう言って少女の手を離す。剣を手に、再び奏太は荒れ狂う黒い獣のもとへと駆けた。その背中を見送りながら、少女はただ一人項垂れる。己の非力さと情けなさに。

 

『響ッ!』

 

 デュランダルが元の刀身に戻ったタイミングを見計らい、奏太は切り込んだ。キンッ、と刃同士がぶつかり合う音が鳴り、両者の間に火花を散らす。

 

『おいお前、いい加減にしろよ!?でなきゃ痛い目みることになるぞ!』

 

 勢いをそのままに刃を相手の刀身に滑らせてマウントを取ることに成功する。上からグッと抑え込むものの、想像を絶する力で押し返そうとして来る。それをなんとか堪えつつ説得を試みてはみるが、それでも押し返してくる。拮抗していた状態から互いに距離を置き、再び剣を交える。片や全てを破壊しつくさんとする不滅不朽の伝説、片や荒ぶる音を沈め邪を滅する科学。相対する二つの力がぶつかり合い、火花を散らす。

 

「奏太君ッ!」

 

 二人から離れた場所、瓦礫の陰に身を潜めていた櫻井了子が、身を出して手を振りながらこちらに呼びかけてくる。

 

「胸よ!胸のコンバーターにその剣を当てる事が出来れば、きっと暴走も止まるわ!」

『胸・・・コレか!』

 

 暴走する響の胸元に赤く光る装飾品を見つけ、手を伸ばす。コンバーターはシンフォギアの核となる部分。装者とギアを繋ぐ重要なユニットだ。そこに干渉することができれば、という了子の言葉通りの行動。だがその手は暴れる響によってコンバーターに触れることは叶わず、代わりに―――

 

「・・・・意外と大胆ねぇ」

 

 その言葉が示す通り、奏太の手は響の双丘に触れてしまっていた。「あ、」という間抜けな声の後一際大きな雄叫びをあげて吹き飛ばされ、地面に転がる。ワザとじゃない。そう心の中で必死に弁解する。実際ワザとではないのだ、触りたくて触ったわけではない。

 

「テメェこんな非常時になにやってんだ!盛ってんじゃねぇッ!」

『っるっせーなァ!こっちだって必死なんだよ!それに今のは俺じゃなくて、暴れたアイツがわりぃ―――っ』

 

 言い終える前に、感じた悪寒に従って二人はその場を跳び退く。再び発せられた衝撃が、その間を薙いだ。

 

「ッチ・・・仕方ねぇ、手伝ってやる」

『さっきまで震えてたのによく言うぜ』

「ち、違う!あれは・・・そう!鎧の副作用で、ちょっと・・・ほんのちょっと、動きずらくなってただけだ」

 

 苦しい言い訳。でも、その申し出はありがたく受け取ろうと奏太は構える。

 

『だったらその副作用とやらがまた出てこない内にとっとと片付けるか。言っとくが、しくじったらテメーを盾にしてでも俺はやるからな』

 

 それが男の言う事かよ。そう言ってやりたかったがもうそこまで悠長に構えている暇はないらしい。さっきまで暴れるだけだった響がいよいよ頭を抱えて苦しみ始めた。

 

「あたしが動きを止める。その隙にやれ!今度は盛んなよ・・・!」

『だから盛ってねーっつの・・・そっちこそしくじんなよ!?』

「二度言われなくてもッ!」

 

 ネフシュタンの鞭が伸びて響を拘束する。しかし想定していたよりもかなりの力でもがいている為、そう長くは抑えていられない。それを奏太に告げると、首を縦に振ることで了解の意を示した。

 

『響・・・俺はお前の笑顔に救われた。だから今度は・・・』

【フィナーレ!】

『俺がお前を救うッ!』

 

 刀身が光り輝く。それを腰だめに構え・・・駆ける。咆哮と共に駆け抜け、響の胸元にその刃を振り下ろす。エネルギーを蓄えたオンサセイバーはコンバーターを直撃し、鞭ごと響を斬り裂いた。

 

『響ッ!』

 

 倒れる響。膝をついたところでギアが強制解除され、抱きかかえられる。デュランダルもその機能を完全に停止したようで、先ほどまでの輝きはなく、地面に転がる。

 

「響、おい響!しっかりしろッ!」

 

 変身を解いて呼びかける。肩を数回揺すれば、ゆっくりと閉じていた瞼を開けた。

 

「名前・・・初めて、呼んでくれた・・・」

「・・・何度も呼んだぞ」

「うん・・・聴こえた・・・奏太君の声・・・あったかい声・・・嬉しかった」

 

そう言って弱々しくも笑みを浮かべる響。それを見て奏太の緊張の糸が切れた。ようやく守ることができた。本当の意味で、命を・・・それを実感した時、深く息を吐きだせば自然と自分も笑みがこぼれた。しかし互いの無事を喜び合う二人を見て複雑な感情を抱く者もいる。ネフシュタンの鎧―――雪音クリスはただ一人拳を握る。

 

(・・・何やってんだアタシは・・・ッ!)

 

 どうしていいかわからず、湧き上がる感情に戸惑いながらクリスはその場から逃げるように立ち去る。それを背後に気付きながらも、奏太は敢えて見逃した。今彼女と事を構える必要はない。そう思ったからだ。今はただ、この子の命を守ることだ出来た。その事実だけでいい。

  立花 響救出の報せは本部にも届いていた。湧き上がる歓声に風鳴弦十郎は安堵の息をつく。

 

「・・・まったく、親子そろってヒヤヒヤさせる」

 

 今はもう居ない友と呼べる男の姿を思い浮かべながらそう零す。まだ全てが終わったわけではないが、とりあえずの山場は乗り越えることだできたことを、今は嬉しく思った。

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