ある日。私、ビスマルクはプリンツと一緒に日本に来ていた。ドイツからとある鎮守府に移動することになったのだ。だが、
「…………迷った」
どこよここ。よく考えたら日本語喋れても読めないのよね……。ヒラガナやカタカナなら分かるけどカンジが駄目……。
「ビスマルク姉様、ここさっきも通りませんでした?」
一緒にいるプリンツが純粋な目で言ってきた。
「う、うるさいわね!分かってるわよ!ちょっと戻ってきたくなっただけなんだから。確かこっちの道で合ってるはずよ」
「はい!頼りにしてますね!」
「うっ………」
胸が痛い……本当は迷子になってるだけなのに……。はっ、いやいや、迷ってなんかないわ。こっちであってるはずよ。…………あの看板さっきも見た気がする。
「あっちね!」
「はい!」
もうテキトーでいいや。そう思って私は指差した方に向かって歩き出した。その時だ。
「あの、すみません」
声をかけられた。
「はい?」
振り返ると、制服のようなものを来た男の子が立っていた。茶髪でチャラチャラしたような外見の。おそらく、日本のダンシコウコウセイという奴ね。
「何か?」
ナンパして来るような男は好きじゃない。特にチャラチャラした奴は尚更。だから、少し威圧的に返しておいた。
「い、いえ。もしかして、道に迷ってるんじゃないかと思いまして……」
「ブフッ!」
な、なんで分かったのよ!い、いや迷ってないけど!ていうかプリンツの前で言わないでよ!
「ま、迷ってなんかないわよ!」
「や、でも……俺、そこのコンビニでずーっと立ち読みしてたんですけど……3回くらい似たような2人組が通ったような気がして……」
「そ、そっくりさんよ!」
「そんな目立つ格好してる人、そういないと思いますが」
「うぐっ………」
た、確かに艤装つけてなくてもこの格好は目立つ……。でも、ここで迷ってるなんて言ったらプリンツに今までテキトーに進んでたことがバレる……。
チラッとそのプリンタを見ると、相も変わらず純粋で綺麗な瞳が私を見ていた。本当にごめんなさいプリンツ……。
「………わかりました。余計な口を挟んですみませんでした」
すると、前のチャラ男がそう言って頭を下げた。
「では、失礼します」
そう言うとコンビニへ引き返していく。つーかまだ立ち読みする気?
「って、まっ……待って!」
思わず声をかけてしまった。すると、その子はクルッと振り返る。一瞬迷ったものの、助けが来てくれたんだ。私はその子の後を追い掛けて、耳打ちした。
「そ、その……やっぱ迷ってます……」
「す、すみません……近いんですけど……」
「はい?」
「い、いえ………」
近いと何か問題あるのかしら……。まぁいいわ。
「だから、その……案内してくれると、助かるんだけど……」
思わず指をいじいじさせながらお願いしてしまった。
「わ、分かりました」
「………顔が赤いわよ?」
「へっ⁉︎こ、これはあれ……暑くて!そんな事より何処に行きたいんですか?」
誤魔化したわね……。まぁどうでもいいけど。
「鎮守府よ」
「鎮守府……?分かりました。案内しますね」
「そ、それで……お願いがあるんだけれど……」
「分かってますよ。後ろの子に迷ったことは内緒に、ですね?」
「え、ええ……」
「では、行きましょう」
そう言うとその男の子は私がさっき進もうとしていた道と正反対の道を歩き出した。…………お願いしておいて良かったわ。