〜ビスマルクside〜
私とプリンツとヒロは初ゲーセンに入った。ヒロはどうだか知らないけど。
「さて、何やる?」
「そんなこと言われても、何があるのか分かんないわよ」
「だよね、知ってた。じゃあ説明するから」
そう言って、ヒロは手前のでっかい箱みたいなゲームを指差した。
「あれがクレーンゲームっつって、お金入れて欲しいものを取るんだ。あの中のクレーンで。そな奥の方は格ゲーコーナー。俺には縁も所縁もないゲーム。妹の相手してあげてるくらいだからね。で、その右のほうにあるのはメダルゲームで……あとあっちは音ゲー」
「色々あるのね……プリンツはどうする?」
「私は何でもいいですよ。ビスマルク姉様の好きなもので」
「じゃあ……とりあえずテキトーに見て回りましょう」
「りょーかい」
で、とりあえず一番近いクレーンゲームのコーナーへ。
「ふーん……景品って言っても色々あるのね……」
「ああ。昔、妹にスゲェ強請られたっけなぁ」
「お菓子にぬいぐるみに美少女フィギュア……なによ、下らないものばかりじゃない」
「店内でそういうこと言うな!」
「そんなこと言われても……んっ?」
たまたま視界にぬいぐるみが入った。なんだっけあれ……鎮守府で暁や響達が持ってた………、
「リラックマ……」
だったっけ?そのぬいぐるみがあった。
「………………」
「欲しいのか?」
「違うわよ!」
後ろからヒロに声をかけられて、怒鳴り返してしまった。
「い、いらないわよあんな子供じみたもの!興味もないわ!」
「いやでもあれ見た瞬間のビスマルクの顔、初恋の相手を見つけたような顔だったよ?」
「はっ、ははは初恋ぃ⁉︎」
な、何言ってるのよいきなりこのバカちんは!
「いや、比喩表現だけど」
「セクハラよ!」
「違うよ!…………いや、社会人だったらセクハラだった気がする……」
最後の方は何を言ってるのか聞こえなかったが、私がセクハラだと思ったからにはセクハラね。間違いない。すると、ヒロはチラッとプリンツを見た。プリンツは何かを察したようにニコッと微笑むと言った。
「じゃあヒロ、私欲しいですしやりますね」
「おう。結構、簡単だから取れると思うよ」
「ふえっ⁉︎」
ま、まずい!取られる!
「ま、待って!」
私が声をかけると、2人がこっちを見る。心なしかニヤニヤしてるように見えた。
「わ、私が……やるから……」
するとわ2人はニヤリと笑って私に勧めるようにクレーンゲームを指して言った。
「「どーぞ」」
「あ、あんたたち!謀ったわね!」
「いいからやりなよ」
「そうですよー」
こ、こいつら……!いつか絶対に仕返ししてやる……!と、心の中で誓いつつも私はゲームの前に立った。で、100円投入。
「…………………」
「捜査はそこで横、そこで縦な」
「う、うるさいわね!そのくらいわかってるわよ!アホ!」
本当に何でもお見通しでムカつく奴何だから……!
「ビスマルクの戦い、見せてあげるわ!」
私は威勢良くそう言ってクレーンを動かした。そして、ここだ!という位置で手を離す。………上々ね。さらに、奥を合わせる。
「………もらった!」
そのまま私の欲しかったリラックマのぬいぐるみの胴体を正面からアームが捉えた。と、思った時だ。頭の方が重いからか、ズルリと落ちた。
「」
「「ぷふっ」」
「…………今、笑ったのどっち?」
私が2人の方を振り返ると、お互いに指を差しあっていた。なるほど、2人ともね。私はゲンコツを喰らわせてからもう一度トライした。今ので分かった。狙うはあの頭の部分ね。あそこが重い。
「もらった!」
だが、外して頭を掴むことすら出来ない。
「「ぷはっ」」
ギロリと睨むと、2人は知らん顔で携帯を弄り始めた。うん、後で殺そう。それより問題はこっちね……どうしたものかしら。とりあえず、やってみるしかなきわね。と、思って10回ほどやったのだが、取れない。
「きぃー!なんで取れないのよ!」
うがぁーっ!と髪を掻きむしった。
「まぁまぁビスマルク、俺に貸してみ」
後ろからヒロに声をかけられた。
「はぁ?あんたに出来るの?」
「どうだろうな……とにかく、代われよ」
言われて、私は大人しく引き下がった。ふふん、取れるものなら取ってみなさいっての。それ、すごく難しいんだから……と、私は高みの見物を決め込もうと思った。だが、
「よっ……と」
「」
あっさり取りやがった。しかも2つ。
「はい、どっちがいい?」
「……………」
「ビスマルク?」
「納得いかない!」
気が付けば私は大声をあげていた。
「はぁ?」
「なんで取れるのよ!」
「や、昔よく妹に強請られたから……何回かやってるうちに出来るようになっただけだけど」
「うぐっ……!」
「とにかく、ほら」
ヒロは私にリラックマを押し付けた。
「あげるよ」
ニカッと微笑まれた。私は思わず顔を赤くしてそのぬいぐるみを受け取った。
「………あ、ありがと」
「良かったですね、姉様」
「プリンツ、あなたはあとで覚えてなさい」
「なんで⁉︎」
ガビーンとした声を出すプリンツにも、ぬいぐるみが放られた。
「ほらっ」
「へっ?」
「あげるよ」
ヒロが渡したのだった。
「い、いいですよ別に!悪いですし……!」
「ビスマルクにだけってのも不公平だろ?もらっといてよ」
「………じ、じゃあ…いただきます」
「食べるの?」
「違いますよ!」
反論しつつも、プリンツはぬいぐるみを小さく抱き締めて、えへへっと小声ではにかんでいた。……可愛いわね。
「さて、じゃあ次は何やる?」
ゲーセン巡りを再開するようにヒロが言った。
「いや、ゲーセンはもういいわ」
「へっ?」
だって、欲しかったものは手に入れたし。
「それより、日本のデパートに行ってみたいわ。ね?プリンツ?」
「そうですね」
「………ん、分かった。じゃ、行こっか」
そんなわけで、ゲーセンを出た。そのままデパートに向かって歩いてる時だ。前を歩いてるヒロの肩が誰かとぶつかった。
「オイ」
「はい?」
そのぶつかったやつは明らかに人相が悪そうだった。日本にもいるのね、こういう連中……。
「てめぇ、人にぶつかっといて礼もなしか?」
「えっ?」
「や、だから人にぶつかっといて礼もなしかって言ってんの」
「両手に花とかモテるねぇ、兄ちゃん」
これが、ジャパニーズヤンキーって奴ね。
「すいません。では、」
ヒロは一言詫びてその場を去ろうとした。だが、その肩をガッと掴まれる。
「ごめんで済んだら警察はいらねんだよ。慰謝料払えコラ」
「ちょっとあんたら……!」
文句の1つでも言ってやろうと私が口を開くが、ヒロが片手で制してきた。
「慰謝料なんて払わない。お前達に払う慰謝料なんかない」
「あ?なめてんの?ねぇ?なめてんですか?」
「なめてないよ」
言いながら向こうのヤンキーはゴキゴキ手を鳴らす。すると、ヒロも首をゴキゴキ鳴らし始めた。
「なら、無理矢理奪ってやるよ」
「上等だよ」
そのまま2人はお互いに拳を振りかぶり殴り掛かった。まさか、ヒロって喧嘩もできるの⁉︎と、思ったら、ヒロの拳は空を切り、ヤンキーの拳だけがヒロに直撃した。
「ごっふぁ!」
「「「弱ぇーのかよ!」」」
私やプリンツどころか不良までもがツッコんだ。
「いや…俺、喧嘩とか生まれてこのかたしたことないから……」
「それでなぁーんであんな自信満々で挑んだのあんた⁉︎」
「はーっはっはっはっ!」
すると、ヤンキーが笑い出した。
「それならいいわ。よくも舐めてくれたなオラァッ!」
そのまま倒れてるヒロのお腹を蹴った。
「グハッ!」
「こんのっ……!」
私は思わずそのヤンキーの肩をつかんだ。
「あ?なんだてめぇ。一緒にボコられてぇか?」
「そいつに手を出さないで」
「ほう、ボコられてぇってか……」
と、言いかけたそいつの肩を私は思いっきり握った。メシメシッ……と、音を立てるヤンキーの肩。
「殺すわよ?」
「チッ」
舌打ちしてどっか行った。
「だ、大丈夫ですかヒロくん⁉︎」
プリンツがボコボコになったヒロを抱き上げた。
「どうしてそんな無茶したんですか!」
「……………」
「あれ?意識がない……?」
と、いうわけで仕方ないのでヒロを鎮守府の医務室に連れて行った。