そんなこんなで、俺は鎮守府に泊まることになっちまった。幸い、身体の方は気絶したってだけで何ともないみたいだから、飯食って風呂入って寝るくらいは出来る。
妹達に帰らないとだけ連絡しておいて、俺は食堂に向かった。中は女の人しかいない。………いずらい。いや、ビスマルクとプリンツ2人同時に相手にしてた俺が言うのもなんだけど、女の子の中に男1人ってのは辛いわ……。
幸い、もう晩飯を済ませた人ばかりのようで、食堂には人は余りいない。俺は財布を取り出して、カウンターに向かった。
「す、すいませーん……」
「はーい?」
中から出てきたのはピンク色の髪の女の人。
「あら、あなたはビスマルクさんにお姫様抱っこで運ばれてきた人ですね?」
「えっ⁉︎お姫様抱っこで運ばれてきたんですか俺⁉︎」
「ええ」
うわあ……恥ずかしい……死にたい。てか女の子にお姫様抱っこされるとか……なにその公開処刑。
「はい、カレーですよ」
「どーも……」
「そんなに気にしなくても大丈夫ですよ。お姫様抱っこされてても女の子みたいで可愛かったですし」
「フォローになってませんからね⁉︎」
「あ、自己紹介を忘れてましたね。私は間宮です。よろしくお願いいたします」
「このタイミングで⁉︎……まぁいいや、俺は広田ヒロです。よろしくお願いします」
そう言って、俺は席に着いた。
「いただきます」
と、呟くとカレーを食べる。
「なにこれ美味っ!」
超美味いなこれ!遠月学園にでも通ってたの⁉︎そう思わせるほどにうまかった。が、さっきのシャウトは失敗だった。その声に聞き付けて艦娘達が集まってきた。
「おっ!もしかして、ビスマルクさんが抱っこしてた人っぽい?」
犬の耳みたいな癖っ毛の二人組が来た。
「本当にもやしっ子っぽい〜」
グサッと来た。
「夕立、失礼だよ。……えっと、僕は時雨。で、この子は夕立だよ」
「えっ?あー……ヒロです……」
「それで、ヒロさんはビスマルクとかプリンツとはどんな関係っぽい?」
「ぶふっ!」
い、いきなり何を言うんだこの野郎!
「い、いきなり何⁉︎」
「いや、最近あの2人は夕方に出掛けることが多くてね」
時雨の方が説明した。
「誰に会ってるのかーって聞いたら茶髪ヘタレもやしとしか答えてくれないし、気になってたんだよ」
………もうビスマルクに勉強教えない。
「うーん……でも、お兄さん結構イケメンっぽいー?」
「ふえっ⁉︎」
「夕立。だから失礼だって」
「えーだって本当に顔だけはカッコイイっぽいー」
「まぁ分かるけどね。それで、ヒロさん。せっかくだから一緒にご飯食べてもいいかな?」
「えっ?い、いいけど……」
「ありがとう」
と、こんな具合で2人と一緒に食うことになった。夕立はうどん、時雨は鮭の定食みたいなのを持ってくる。
「じゃ、いただきまーす」
「っぽい!」
で、夕立はうどんをすする。
「……夕立はいつもうどん食べてるの?」
「ぽい!だって早く遊びに行きたいもん!」
「バッキャろぉぉぉぉぉッッッ‼︎‼︎‼︎」
俺がガタッと立ち上がると、ビクッとなる夕立と時雨。
「育ち盛りがそんなもんばっか食ってどうすんだ!ちゃんと三食食わなきゃ身長もオッパイも人としての器も大きくならねぇぞ!」
「ご、ごめんなさいっぽい……」
「若いうちからしっかりしたもん食わねぇと、大人になったら後悔するぞ!ジャンクフード、インスタント食品、合成着色料、農薬、こんなもんばっかり食ってたら早死にするぞ!命を大切にしなさい!自分の将来後悔したくなけりゃキチンとしたもん食え!じゃないと成人病に……」
そこで、「グスッ」としゃくり上げたような声が聞こえた。見れば夕立が泣いていた。
「ぽ、ぽいぃ〜……」
い、言い過ぎたァァァアアアア‼︎しまったぁ!つい妹達に対する説教の癖で……!
「だ、大丈夫夕立?」
「ぽい」
「でも、ヒロさんも悪気があったわけじゃないんだよ。夕立のためを思って言ってくれたことなんだよ」
「ぽい」
な、なぜ「ぽい」で会話が成立している……。すると、時雨が俺を見てニッコリ笑った。
(謝れ)
ゾクっとしたし、何を言わんとしてるのか分かってしまった。あの顔は「謝らなきゃ殺す」だな。
「ゆ、夕立……その、ごめん、なさい……」
「………ぷいっ」
あれ?なんかさっきまでと違うんだけど。
「ゆ、夕だ……」
ゴチンッ☆と俺の頭に何かがふってきた。後ろを見るとビスマルクが立っていた。
「何やってんのよあんた。駆逐艦の子泣かして」
「や、それは……」
「言い訳する気?」
「いや何やってんのよって聞いたのビスマルクでしょ!」
「口答えしない!」
また殴られた。そして、そのまま何処かへ行ってしまった。気が付けば、夕立と時雨も離れたところで飯を食っている。どうやら俺は艦娘を敵に回してしまったようだ。