ビスマルクとプリンツと俺   作:スパイラル大沼

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純粋

 

 

 

〜ヒロside〜

 

翌日、俺がいつものカフェに向かうと、プリンツしかいなかった。

 

「あっ、ヒロ。こんにちは」

 

「こんにちは。ビスマルクは?」

 

「お姉様は出撃していまして……今日は私だけです」

 

「そっか。まぁいっか」

 

で、いつものようにプリンツの前に座った。ニコニコした笑顔。………ダメだ。やっぱり、この人の表情は読めない。本当は日本語くらいできそうに見える反面、本当にわからないのかも、と思わせてくる。まぁ別に読まなくてもいいんだけども。

 

「? ヒロ?」

 

顔を見過ぎていたせいか、きょとんと首を傾げられてしまった。にしても本当に可愛い顔してるな。こんなのがあともう1人いて、その人たちに勉強を教えてる俺って実はすごく幸せなんじゃないか?

 

「や、なんでもない。それより今日のプリントを……あれ?…あっ、あった。はいこれ」

 

「いつもありがとうございます」

 

「いいよ、そんなこと。まぁ大体説明するから聞いててね」

 

「はい!」

 

と、こんな感じでいつも通りお勉強会を始めた。

 

「……と、まぁこんな感じで、四字熟語ってのは比喩的表現のが多いんだ。意味を覚えれば漢字も分かるようになると思う」

 

「なるほど、分かりました!」

 

と、気持ちのいい返事をして俺の作ったプリントを始めた。しかしまぁ、よくあの説明で解けるもんだ。正直、そこまで分かりやすい説明できたとは思えないのだが、プリンツはどんな説明も良い返事をして笑顔で取り組み、満点を取ってくる。

だが、まったく話を聞いてないわけでもないのは見ていて分かる。むしろ、どんな事にも興味津々だ。そう見える。この人が何処まで本気で、何処まで素でやってるのか、それが全く読めない。

あぁ……ダメだ。別に読む必要はないだろ。俺の悪い癖だ。読み切ったところで、俺がプリンツに何か言うわけでもないだろうに……。

 

「あの、ヒロ?どうしました?」

 

自己嫌悪して、おデコに手を当てて下を向いてると、プリンツに心配されてしまった。

 

「いや、何でもない。終わったら見せてくれ」

 

そう言って俺は鞄の中から理科の教科書をパラパラ捲る。

 

「………お勉強ですか?」

 

「ん?おお、来年は受験生だからさ」

 

「大変ですね」

 

「ああ。国公立の大学入らないといけないからさ」

 

「こ、こっこう……?」

 

「国公立っていうのは国からの公共予算で出来た大学だから私立に比べて安いんだ。だから、そこに行きたい」

 

「へぇ〜……でもそれなら、私達の事なんてほっといたほうが良かったんじゃ……」

 

「別に平気だよ。昨日も言ったけど、困ってる人はほっとけないタチなんだ。それに、人にものを教えるのは自分の復習にもなる」

 

嘘は言ってない。事実、最近まで忘れてた漢字も思い出してきて、使えるようになってきた。まぁ香焼とか使う機会ないけれど。そんな事を思ってると、俺の手をプリンツが握った。

 

「あまり無理しちゃダメですよ?」

 

「っ」

 

うおぉ……ドキッとしたぁ……。普通いきなり手を握るかね……女の子と手を繋いだことすらない俺にとってハードルが高いよそれは。

 

「あ、あの……プリンツさん?」

 

「はい?」

 

キョトンと首をかしげるプリンツ。あぁ、今わかった。この人の表情が読めないのは裏がないからだ。全部、純粋さで出来た人だ。口にすることはほとんど本音。だから、俺のあんな説明でも本当に理解してるし、事実出来ている。別に、俺が警戒する必要はなかった。

 

「出来ましたよ」

 

「ん」

 

プリントを受け取り、俺は採点する。

 

「………うん、大体出来てる。けど、ここの『老若男女』は『ろうにゃくなんにょ』だから」

 

「ろうなくにゃんにょ?」

 

「老若男女な」

 

「ろうにゃくにゃ……ろうな……ろうにゃくなんの……」

 

「ははは、まぁ言いづらいよね。こんなの絶対使わないから覚えなくていいよ。俺の16年間でも一回も使ってないし」

 

「は、はぁ。分かりました」

 

「さて、じゃあ今日はここまでかな」

 

俺はそう言って帰り支度を始めた。

 

「あ、あのヒロ!」

 

「どのヒロ?」

 

「いやそうじゃなくて……。この後、時間空いてますか?」

 

「ん?まぁ、ビスマルクがいないから早く終わったし、空いてるには空いてるけど……」

 

「なら、どこかいきませんか?遊びに」

 

「えっ?」

 

今何つったこの子?

 

「いいじゃないですか。私、この後する事なくて、姉様も出撃してて暇なんですよ」

 

「いや、そんなん言われても……」

 

女の子と2人きりでお出かけなんて妹以外したこと無いし……いや、妹ともねぇな。あいつら2人で1つとか抜かしてたし。

 

「嫌なら、いいけど……」

 

「うぐっ……」

 

しゅんっとするプリンツ。やめてその顔……なんか罪悪感という名の槍が身体中にブッ刺さってくる……。

 

「わ、分かったよ……行こう」

 

「ほんとですかぁ⁉︎」

 

「うおっ!眩しっ!」

 

世界中を照らし出すような笑顔を向けてくるプリンツ。ここが例え戦場の焼け焦げた焼き野原であったとしても一面にヒマワリが咲き誇っていただろう。

 

「じ、じゃあ、どこ行く?」

 

「とりあえず、お店を出ましょう!」

 

ニッコニコ笑顔のプリンツに手を引かれ、俺はなす術なく引き摺られた。

 

 

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