そんなわけで、俺とプリンツは2人で出掛けた。
「で、どこ行くの?」
「どこでもいいですよ?」
「はぁ⁉︎なんだそりゃ!」
「ヒロと一緒なら何処でも」
言いながらニコッと微笑むプリンツ。うっ……なんでこうドキドキさせるようなこと言うかなこの人は……。しかし、行きたいところか……うーん……。
「あ、じゃあ行きたいところあるんだけどそこでもいいか?」
「はい。じゃあ行きましょうか」
そんなわけで、俺が行った場所はスーパーだ。
「さて、じゃあ行くか」
「はい!」
我ながらスーパーでデートはどうかと思うが、今日はたまごが安い。が、1人2パックまでなので付き合ってもらうことにした。
「ここがスーパーですかぁ……初めて来ました」
「え?そなの?」
「はい、ドイツで建造されてからすぐ日本に来ましたから」
「………それでよく日本語話せるね」
「なんか、こう……最初から話せて」
「なんだそれ……」
生まれながらに異国語話せるとか羨ましいわ。
「それで、何を買うんですか?」
「卵と牛乳のあと野菜と……安けりゃ肉かな」
「分かりました!じゃあ私取ってきますね!」
「いやいや、いいよ。野菜とかにも色々と選び方があるんだ。プリンツは俺と一緒にいてくれればそれでいいからさ」
「…………へっ?」
「んっ?」
かぁッと顔を赤くするプリンツ。
「なっなっなっ、何をいきなり言ってるんですか⁉︎」
「はっ?」
言われて落ち着いて自分で言った言葉を思い出す。
『俺と一緒にいてくれれば、それでいいからさ……それでいいからさ……いいからさ……(←エコー)』
自覚した瞬間、俺の頬もかぁッと熱くなった。
「ちっ、違う違う違う!そんな意味で言ったんじゃないから!求婚したとかそんなんじゃなくて……!」
「き、きゅーこん……あうぅ……」
ぷしゅうぅ……っと、頭から湯気が上がってる。純情だなぁ、この人……。
「と、とにっとにかく!違う!そんなんじゃないから落ち着いて!てか文脈的に考えて違うじゃん!」
「そ、そうですけど……ダメですよ。女の子にそんな事言っちゃ……」
「ご、ごめんなさい……」
「べ、別に怒ってるわけではないので……」
お互い、顔を赤らめたまま、とりあえず買い物続行。微妙な雰囲気の中、俺はもやし21円を籠に入れた。
………………気まずい。こ、こんなときにビスマルクがいてくれれば………いや、多分あの人がいても余計乱されるだけな気がする。
「あっ」
どうにか突破口を考えてると、プリンツがおやつコーナーの方に向かった。そっちに用はないが、一緒に買い物をする以上、ついていかなきゃと思い、後ろから追っかけた。
「じーっ」
ジーって言いながらものを見る人初めて見た。その視線の先にはピュレグミがあった。うーわ……懐かしい。よくカナが買ってきて食べてた。
「欲しいのか?」
声をかけた。
「いえ、私は別にいいんですけど、姉様が欲しがりそうだなーって。ハート型のグミ」
ちょっとまって、さっき「あっ」って言って見つけたけどあの場所から見えたの?マジ?と、思ったが後から聞いた話だと、「姉様の好きそうな物を見つけるセンサー」がついてるらしい。なおさらわからん。
「それ、買ってく?」
「ふえっ⁉︎い、いいですよそんな」
「俺の奢りでいいから。ほら、ビスマルク勉強よく頑張ってるし」
「うっ……そ、そうですか?じゃあ……」
渋々、俺にピュレグミを渡すプリンツ。
「プリンツもなんか買うか?」
「へっ?」
「ビスマルクの分だけじゃ不公平でしょ」
「い、いいですよ!私は別に……!」
「じゃあビスマルクの分も買えないな」
「うっ……卑怯ですよヒロ」
「卑怯で結構。どうする?」
俺が聞くと、プリンツはむむむっと30秒くらい唸った後、言った。
「お、お願いします……」
「OK」
で、ビスマルクの分とプリンツの分のオヤツを籠に入れて、買い物を再開した。そのまま、キャベツだの人参だの何だのを買い物籠に入れて、買った。
「ふぅ……ようやく終わった……」
俺とプリンツは並んで帰る。
「送ってくよ。鎮守府まで」
「あ、すいません……」
奢ってやる、といった時みたいに拒みはしなかった。多分、無駄だと感じたのだろう。
「これが、主婦の買い物だ。プリンツ」
「すごかったですね!野菜を選んでるときのヒロ。私が持っても重さの差なんて全然分からなかったのに……」
「主婦業は人間の感覚を最大限にまで研ぎ澄ますからな」
「なんかカッコイイですね!」
うーん……そこまで純粋だと将来詐欺とかに引っかかりそうで不安だなあ。あと「お前は主婦じゃないだろ」みたいなツッコミが来なかった。寂しい。
「私も女の子だし、そういうスキル身に付けないとなぁ……」
「こんなものはすぐに身につくよ。家事をしっかりやって、ケチくさい人間になれば」
「でもヒロはケチくさくないじゃないですか」
「は?俺はケチだぞ。ご飯粒の一粒も残さないしキャベツやブロッコリーは芯まで食べる」
魚の骨まで食って死にかけたこともあったな。
「でも、ケチな人は普通、お菓子とか買ってくれませんよ?」
「…………確かに。じゃあ俺ってケチじゃないのか?」
「そうですよ。自分の評価なんて、自分でするものじゃないですから」
確かにその通りだ。自分を客観的に見るなんて不可能だ。必ずどこかに自分の願望や望みが入る。
「………っと、鎮守府着きましたね。じゃあ、私はこれで」
「ああ。頑張れよプリンツ」
「はい!ヒロも勉強とか色々頑張ってください!では、失礼します!」
そのままプリンツは鎮守府に入っていった。俺はその背中をぼんやり見つめながら、帰路についた。