修学旅行当日の朝。俺は久しぶりの麻帆良の外にテンションがMAXを越え振り切っている為か、始発で集合場所に向かうと言い出した我が姉、そしてその従者と共に、大宮駅へ向かう始発電車に揺られていた。
ちなみに我が所属クラスである麻帆良男子中等部3-Aは「水着女子たくさんのハワイ行きたくないとかお前ら枯れてんじゃねーのか」というハワイ派と「凡百の女子らの水着なんぞよりトップレベルの美少女とお近づきになるチャンスの方が大事に決まってんだろ舐めてんのか」という京都派でかなり議論が紛糾するという事態が発生したものの、最終的には京都へと決定した。
敗北を喫したハワイ派はしばらくテンションだだ下がりでうっとおしいことこの上なかったが、京都派の連中に何やら吹き込まれた途端息を吹き返し、一緒になって騒ぎ始めていたので恐らく問題は無いのだろう。まあその他に問題が発生していそうだが、少なくとも俺は知らない。
「はははははは! とうとうこの日が来たぞ! 苦節15年、とうとうあの忌まわしい呪縛から不完全にとはいえ解き放たれ、素晴らしき日本文化を余すところなく存分に味わえる日が来たのだ!」
なお、電車に乗っても未だにテンションが下がる様子が無い我が姉は、普通に他の乗客がいるにも関わらず未だに大笑いを続けている。
「なあ茶々丸。アレ、どうする?」
「ネット接続、検索開始……完了。『他人の振りをする』『そっとしておく』『無言で距離を取る』、などがヒットしました」
「オイそこのバカ弟子とボケロボォ!」
茶々丸の言った通りにされたくなかったら静かにしようねー、姉ちゃん。
○ △ □ ☆
「朝から金髪美幼女とご登場とは、良い御身分だな火星ィ?」
「それお前がいう金髪美幼女に極寒地獄に叩き込まれても同じこと言えんの?」
そんなこんなで大宮駅。先に着いていたらしい女子3-A先行組の面々と挨拶を交わしつつ超一味から肉まんを購入し、姉ちゃんと茶々丸に別れを告げ、我がクラスの面々がいる場所へと足を向けた。
そうして既に女子組と同じように幾人か到着していたところに同じように混ざった途端のこのクラスメイトの1人からのウザ絡みである。ちなみに名前は
「意味わからんこと言って誤魔化そうったってそうはいかねーぞ。たく、いいよなーいいよなーお前ばっかり。あの美少女揃いの女子中3-A全員と仲良いとかよー」
「あくまで全員
クラス全員美少女だという3-Aが無駄に際立っているというだけで、他のクラスにも普通に美少女はいるのである。というか麻帆良は総じてレベルが高い。今回の修学旅行で3-Aと同じように京都行きを選択している3-D、3-H、3-J、3-Sの今駅にいる面々だけを見ても、3-A並の子達もいるし、そうでなくとも高レベルの女子ばかりなのだ。なので、3-Aばかりに気を取られないように視野を広く持てば、コイツにも普通にチャンスはあると思うのだが。
「違う、違うんだ火星。確かに俺はモテたい。理想の女の子と出会いこれ以上は無いというような青春を過ごしたい。だけど、だけどだ。それ以上に……
――お前が3-Aの子達と仲が良いのが許せないんだよぉおおお!」
「そんなんだからお前彼女欲しい欲しい言ってる癖にいつまで経ってもできないんだよ」
広い視野以前の問題だった。もうこいつ修学旅行一杯黙らせておいた方が京都行き全員の為になる気がする。やっちゃっていい? ねぇやっちゃっていい?
「うるせえッ。いいか火星、お前ばっかり美味しい思いをするのも今日限りだ。何故ならこの修学旅行で俺、イヤ俺たちは
だってどうせしょうもないことしか言わないしお前。あー、今日も五月の肉まんが美味い。
○ △ □ ☆
「京都ぉーっ!!」
「これが噂の飛び降りるアレ!」
「誰かっ!! 飛び降りれっ!!!」
「では拙者が……」
「おやめなさいっ!」
「まったくあのガキ共は。もう少し静かにこの古き良き日本の風情を楽しむという心意気を持てんのか。嘆かわしい」
「何でこっち来てるの姉ちゃん。あと発言がやたらババ臭くなってきてるぞ。それに茶々丸は?」
「班分けなどという狭苦しい縛りがあっては15年ぶりの外の世界を存分に楽しめないだろうが。それと茶々丸なら別の班だ。偶にはアイツにも暇をやって労をねぎらってやろうと思ってな」
「良いこと言ってる風に聞こえるけど、それ自分が思う存分観光して回る為の体の良い口実じゃねーのか」
そんなこんなで京都に到着。まずは麻帆良中学揃って清水寺を始めとした京都観光である。
俺たちとは若干離れた位置にいる女子中3-Aの連中も、新幹線では何やら騒ぎが起きていたようであるものの、そんなことはすっかり忘れたとばかりに清水寺の本堂にて大はしゃぎしている。
そんな中で、朝の電車での俺と茶々丸のセメント対応が堪えたのか何やら中身そのままの発言をしつつ大人しく清水寺を楽しんでいるように見せかけているものの、瞳の強い輝きとあちらこちらに視線をむけるそのせわしなさから未だにテンションが振り切ったまま下がっていないことを隠しきれていない我が姉。まあ確かに15年ぶりの外なうえに、未だにこうして学業の一環などでしか麻帆良外を自由に出歩けない身の上なので、多少のはしゃぎっぷりには目をつぶるべきだろうか。
あと、姉ちゃんの小賢しい策により暇をもらったという体で引き離されることとなった茶々丸だが、どうやら古や超と一緒の班にいるようである。確かに超一味が揃っているらしいあの班なら、茶々丸も存分に修学旅行を楽しめることだろう。
「ほら、そんなつまらんことを言っていないで行くぞ世界! 次は
「いや俺たちも一応クラスごとに行動してるんだけど」
「そのお前のクラスとやらは既にめいめい自由気ままにそこらに散らばっているようだが?」
そう言って断ろうと後ろにいるはずの我がクラスの方へと振り返るも、すでに過半数は今こそチャンスと各女子クラスの元へと突撃を敢行し、それ以外のそういったことには興味を示さず純粋に観光を楽しんでいる少数の面々は既に別の場所へと向かった後であった。どうやら姉ちゃんという見た目はとびきりの美少女と一緒にいた俺は、わざわざ誘わなくても既に観光を楽しんでいる最中だと思われたらしい。
そうして結局、我がクラスのまとまりの無さと薄情さに涙が止まらなくなりそうになりながらも姉ちゃんに引きずられて行き、地主神社に音羽の滝、そしてそこに集まっていた女子中3-Aの元へと行くことに。
「……で、これ何?」
「あっ、世界さん! 大変なんです! お、音羽の滝のにお酒が仕掛けられていたらしくて、クラスの皆さんが「ん……? 何かお酒くさくないですか?」 あー! その甘酒ですよ新田先生瀬流彦先生!」
そんな風にして姉ちゃんと共に辿り着いた音羽の滝でまず目に入ってきた光景は、3つの滝の内の縁結びにの水に混入するよう仕掛けられていたという酒を飲んで酔い潰れている女子中3-Aの面々だった。
……ある程度わかっていたこととはいえどこもかしこも1日目でこれとか、無事に5日間のこの修学旅行を終わらせられるのだろうか、と不安にならざるをえない始まりであった。
・最強のロリ吸血鬼、テンションMAX
まあ15年も同じ土地に閉じ込められてたらね。しょうがないよね。
・麻帆良男子中3-A、仁義無き戦い
ハワイ派の男子はいったい京都派に何を言われたんだろうね?
・主人公クラスメイト、その1
命名の由来などは特に無し。話の都合上この先活躍する見通しも無し。
・麻帆良女子中等部3-A 修学旅行班割り
1班 : 柿崎美砂 釘宮円 椎名桜子 春日美空 鳴滝風香 鳴滝史伽
2班 : 古菲 超鈴音 長瀬楓 葉加瀬聡美 四葉五月 絡繰茶々丸
3班 : 雪広あやか 朝倉和美 那波千鶴 長谷川千雨 村上夏美 ザジ・レイニーデイ
4班 : 明石裕奈 和泉亜子 大河内アキラ 佐々木まき絵 龍宮真名 相坂さよ
5班 : 神楽坂明日菜 綾瀬夕映 近衛木乃香 早乙女ハルナ 桜咲刹那 宮崎のどか
エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル
数十分ほど悩んだ結果、こんな風になりました。でも原作との班分けとか見てても機能してないこと多々だったし、あまり意味は無くなるかもね。
・茶々丸、まさかのマスターと別行動
マスターのお許しもあるしせっかくだから、と割と乗り気だった模様
・主人公は罠に対処しないのん?
理由は近い内にさらっと明かされるかも。
とりあえず京都編最初はこんな感じで。こんな風にチマチマ進んで行ったり、かと思えば文章大増量なんてこともあるかもしれませんが、どうかお気を長くしてお付き合いをお願いいたします。
それでは今話はここまで。感想や評価も毎回、首を長くして待ち焦がれていますのでぜひぜひ送ってきてくださいね!