シリアルに生きたい   作:ゴーイングマイペース

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 新生活の気配が徐々に近づいてくる今日この頃、皆様、いかがお過ごしでしょうか。作者はここしばらく、ほんの少しだけアンニュイな毎日が続いていました(白目)


41時間目 : 修学旅行3日目:昼~夕方 ~後は任せた!~

 シネマ村でフェイトに痛撃を与えてしばらく。

 あの後、刹那からの連絡を受け合流することになり、それなら刹那達が追いつくまでのんびりしていようとネギ、そしてカモと共に参道の中途にあった沢にて休憩を取っていた。

 そうしてしばらく、後方から女子特有の姦しい気配を感じそちらへと目を向けたのだが。

「せかい君、あの悪い人達とあの後も一緒におったんやろ? 大丈夫? ケガない?」

 

「おう、大丈夫大丈夫。ありがとな木乃香」

 

「そう? そんならよかったわー」

 

 まず目に入ったのは木乃香、そして木乃香を挟むようにその両脇を歩いている明日菜に刹那であった。パッと見た限り、特に異常があるようには見られない。

 特に木乃香はつい先ほどまで中々怖い思いをしていたはずだからと若干心配していたのだが、両隣を大好きな友人2人に固められてまさに両手に花状態であるからか、ニコニコほわほわと笑顔を浮かべてなかなかご機嫌な様子だった。

 それでも一応と言葉を交わしてみるも、むしろあの時、俺1人を“悪い人達”の元に残したのが気がかりだったらしく、逆に心配げな表情を浮かべ気遣いの言葉を投げかけられてしまったので、こちらが心配いらないアピールをすることになってしまった。

 ああ、安心したとまたほわほわ笑顔を浮かべる木乃香が可愛くて癒される、と少しだけ刹那の気持ちが分かる気がする。

 

 と、ここまでだけなら良かった。……そう、何の問題も無かったのだが……。

 

 

「ホラのどか、夕映! 思いがけず巡ってきたチャンスだよ! ここでやらなきゃいつやるの!」

 

「こ、こんな他にもたくさんのコたちがいるところで出来ないよー!?」

 

「その通りです! そ、そういったものはもっと場を整え、邪魔が入らないことを精査してから臨むべきで……」

 

「あらあら、宮崎さん達ったらあんなに顔を真っ赤にして慌てちゃって、とっても可愛いわ。ねぇ夏美ちゃん?」

 

「ソ、ソーデスネ」

 

「これはこれは、まるで自分も宮崎さん達同様、思わず勢いで恥ずかしいことをしてしまったのを思い出したかのような愛らしい表情ですね、村上さん」

 

「イヤやめてやれよ。あーホラ、村上まであそこの2人みたいに顔真っ赤にしちまったじゃねえか。お前ホント性格悪いなレイニーデイ」

 

「こ、これはまさか、アスナさんだけに飽き足らず、のどかさんに夕映さん、そして夏美さんまで……!?」

 

「いいんちょどうどう、流石にそれは先走り過ぎだって。まあもしそれが本当だったらって考えたとしてそうなるのは、私も報道部的な意味でわからなくはないけど」

 

 

「……で? コレどういうことだよ」

 

「あわわわ、こ、こんなにクラスの生徒の皆が」

 

「いや、そのだな……」

 

「あ、あはは……ゴメン」

 

 どうしてこうなったと困り顔をしている刹那、苦笑を浮かべる明日菜。

 そう、なんとも厄介なことに、コイツ等とシネマ村で行動も共にしていた、5班の残りと3班全員も一緒になってこの場にやって来るというミスをやらかしてしまったのである。見ろ、ネギなんか想定外の事態に慌て過ぎて涙目で震えだしてるじゃねーか。ホントどうすんだコレ。

 

「んふふ♡ 私から逃げようなんて百年早いよー」

 

 とにかく話を聞いて見なければ、と明日菜と刹那の事情を聞き出してみたところ、どうやら目の前でしたり顔をしながら携帯端末をフリフリと掲げ始めた和美にしてやられたとのことだった。そんな和美の様子を見て、シネマ村でやり合ってた式神妖怪達に丸裸にでもされとけばよかったのにと思った俺は間違っているだろうか。

 

「和美、お前な……」

 

「えー? いいじゃない、桜咲さんから聞いたわよ。世界、アンタ強いんでしょ? なら男らしくドーンと守ってよー」

 

 自分でも分かるほどの呆れ面を浮かべながらそう和美の名を発するも、そう言いながら肘でチョイチョイと俺の脇腹をつつきつつ上半身を屈ませ、下から俺の顔を覗き込んでくる和美に、俺は呆れを込めた無言のデコピンで返してやった。

 

「いった! 何さー、守ってくれないの?」

 

「うるせーアホパイナップル。ここまで来ちまったならもう、守らざるを得ないだろうが。分かってて聞いてくんな」

 

「へっへー、それでこそ世界だよねー♪」

 

 俺の返答を聞き、ニッコリと笑顔を浮かべ屈めていた上半身を戻す和美。嬉しそうで何より……なんてことにはもちろんならない。やっぱり少しはイラッときたので、麻帆良に帰ったらコイツの取材に付き合った時の恥ずかしエピソードを報道部にリークしてやろうと思います。羞恥心に塗れて少しは大人しくしてるがいいわ(ゲス顔)

 

「ん? そういや姉ちゃんは?」

 

 確か今日は3班と行動を共にしていたと記憶していたのに、この場にその姿は無い。どこに行ったのだろうか。

 

「ああ、エヴァちゃんなら私らが世界とネギ君と合流するーって言ったらスグに『それなら私は茶々丸の所に行く』って言って行っちゃったよ。今頃はもう2班と合流してるんじゃない?」

 

「時間の許す限り京都観光したいのはわかるけど自由奔放すぎるだろ」

 

 そうまでして今の俺と関わりたくないのかと、この修学旅行が始まってからフリーダム過ぎる我が姉へと向かって思いを馳せる。

 ……いやまあ、その気持ちもわからなくはないんだけどな。と、俺はただでさえ先ほどから騒がしかったというのに、更にその激しさを増してきた周囲を喧噪へと意識を向ける。

 

 

「もう、聞いてますの世界さん! 私も年頃の男子である貴方がそういったことに興味を持つことまで否定はいたしませんが、いくらなんでもアスナさんだけに飽き足らず、のどかさん達にまで同時に手を出すなど――」

 

「ちょっと、いいんちょったらもう! 朝からずっと、私と世界との間には何もなかったって言ってるじゃない!」

 

「い、いいんちょさん。私とゆえゆえも世界くんにて、テ、手を出されてなんて……あぅ」

 

「……うーん、こうなったらもう、いいんちょが言ってる通りにしちゃった方がまだ芽があるんじゃ……」

 

「ちょ、何を言っているですかパル! で、ですからそういった事はきちんと順序良く段階を踏んでいくべきもので、そ、そのようにいきなり1人に対して複数などという爛れ過ぎているのは、よ、良くないです」

 

「おーいゆえっちー。その言い方だとまるで、いきなりじゃなかったら1人対複数でも別にいい、みたいになってるよー?」

 

「ほら夏美ちゃん、貴女もそんな端っこでモジモジしてないできちんとアピールしないと。せっかく世界君を名前で呼ぶようになれたのに、波に乗り遅れちゃうわよ?」

 

「おや、まさか本当に勢いに任せてそのような勇気を見せていたとは。これは是非とも詳しくお話を伺いたいですね」

 

「ちょっ、ちづ姉! それにザジさんまで! わ、私は別にそこまでは……っていうかそれを言うならちづ姉もじゃん!」

 

「わー、ちょっと見ない間にえらいことになってるなー。せっちゃんはいいの? 混ざってこなくて」

 

「おお、お嬢様!? そんな、私は別にコイツのことなど……ッ!」

 

 

 一瞬で後悔した。ちょっと他に意識を向けている間に、もうすっかり俺の処理能力範囲から逸脱していやがった。

 ……よし、放置しよう。そうだ、そもそも俺は東と西を結ぶ架け橋の第一歩になるだろ、親書を関西呪術協会に届ける、っていうネギの重要任務を手伝う為にここに来たんだしね。やっぱり一度引き受けた仕事に、他の些事で気を疎かにして手抜かりなんかがあったらいけないからね。目の前のことにだけ集中しないとね、うん。

 

「おっ、ネギ。入り口が見えてきたぜ。いやー、俺、実は前にも1度だけ来たことあるんだけどさ、やっぱ雰囲気あるよなーここ」

 

「えっ、あの世界さん? 皆さん、さっきから世界さんについてのお話で盛り上がってるみたいなんですけど、それは「ネギ、いいから目の前にまで迫ってきたゴールに集中しろ、な?」アッハイ」

 

「おいコラ世界、複雑な家庭事情から逃げたくて仕事に没頭してるおっさんみたいな雰囲気出してねーで、あの大騒ぎしているバカどもの相手をしてこいっつーの」

 

 アッハッハ、中学生真っ盛りの俺がそんな哀愁漂わせてるわけないじゃないかー。やだなーちうちゃんってば。

 

 

 

 ○ △ □ ☆

 

 

 

「――……いいでしょう。東の長の意を汲み私達も東西の仲違いの解消に尽力するとお伝えください。任務御苦労!! ネギ・スプリングフィールド君!!」

 

「あ……、ハイ!!」

 

「おー、何かわかんないけどおめでとー、先生!」

 

「御苦労さまー♡」

 

 このかの実家である関西呪術協会総本山の、恐らくは謁見の間とでも言うのだろう場所に通されてしばらく。

 たった今任務を達成したネギへと、本人でもないのにはしゃいだ様子で祝いの言葉を投げかけている面々を他所に、門を潜るまでは同じように大騒ぎしていたあやかも、流石に場の雰囲気に逆らってまでその騒ぎを続けるつもりはなかったのか、すっかりお嬢様然とした態度で大人しく正座などをしていた。流石生粋のお嬢様である。

 ……できれば、そのまま俺と明日菜の事も忘れてくれれば嬉しいだけど、やっぱりダメかなぁ……ダメだよなぁ……。

 

「……おい世界、私らここにいていいのかよ。何かスゲー場違いっつーか、中学生の修学旅行じゃまず聞かないような単語が飛び交ってた気がするんだが」

 

「そんなこと気にするんならなんで来たんだよお前」

 

「いいんちょや那波が朝倉の話聞いてついてくっつったんだからしょーがなかったんだよ! 修学旅行でたった1人で行動しねーだろうが普通」

 

「何気に姉ちゃんディスったよな今」

 

 そんな益体も無い願望を頭の中で描いていると、この場でただ1人事態の推移に困惑の表情を隠せていなかった千雨が、我が姉をさらっと皮肉りつつ声をかけてきた。いやそこは止めようと努力しようよ。まあ聞き入れられるとは思わないけど。

 

「おやおやー、聞き捨てならないなぁ千雨ちゃーん? 私が『アスナ達、世界と合流するみたいだけどどうする?』って話した時、そこまで必死に止めようともしてなかったような気がするんだけどなぁー?」

 

「ん? んんん~? な~んかこっちからラブ臭レーダーへ反応がキてる気がするわよぉ~?」

 

「バッ!? 朝倉、早乙女、お前らちょっと黙ってろッ!」

 

 何やら和美とハルナが千雨に絡み出したかと思えば、そのまま千雨が2人に噛みつき出したので、巻き込まれちゃ敵わんとその場から離れる。

 すると、ネギとの話も済んだのか、関西呪術協会の長、近衛詠春がこちらにやって来た。

 

「世界君、お久しぶりですね。貴方も御苦労さまでした」

 

「はい、お久しぶりです詠春さん。ありがとうございます。……後、ついでと言ったらアレなんですけど、一応お耳に入れておきたいお話が。木乃香を攫おうとしてきた呪術師一味についてです」

 

「……ふむ。伺いましょう」

 

 俺は、かの一味に【アーウェルンクス】と名乗る少年がいたこと。シネマ村での戦いで、逃げられはしたものの、恐らく最大戦力であるだろうその少年にかなりのダメージを与えることに成功したことを話した。

 

「……アーウェルンクス、ですか。世界君はこの名がどういう意味を持つのかは……」

 

「はい、知ってます。わざわざ旧世界に来て何するつもりだったのかはわかりませんけど……。でも、核にかなりの損傷を与えた筈なので、多分もうあのまま京都からも逃げ出してると思います」

 

「そうですね。その少年の目的がなんであれ、そこまでの負傷をしながらこれ以上その一味に肩入れして行動はしないでしょう。ありがとう世界君、もしその少年が健在だったなら、この本山の守護結界ですらもしかすれば危なかったかもしれず、まんまと木乃香を攫われていたかもしれません」

 

「あー……木乃香は俺にとっても大事な友達ですから」

 

 詠春さんの俺の言葉に少々後ろめたい気持ちが生まれる俺。実際には、俺がフェイトへと奇襲をしてまで仕留めようとしたのはほぼ明日菜の為であり、木乃香を守る為だけの行動というわけではなかったからだ。

 ……ま、まあ結果オーライってことで。

 

「ところで世界君。ネギ君にはもう話したのですが、君も今日は泊まっていきませんか。旅館のことなら心配いりません、私が身代わりをたてましょう」

 

「……えーっと」

 

 どうしよう。どれだけ言っても疑いを解かないきかん坊(あやか)からさっさと逃走する為に、帰りの護衛を呪術協会の人らに任せて俺だけさっさと旅館に戻るつもりだったんだけど。

 ……よし。

 

「いや、身代わりを立てたとしても何かしらの不備は起こるかもしれません。ですから、1人は旅館に戻った方がいいと思いますので……」

 

「む、そう言われればそれもそうですね」

 

「すみません、せっかくお誘いいただいたのに」

 

 ふはははは、計画通り! これぞ、『如何にももっともらしい事を口にして違和感無くこの場を去ろう作戦』!

 

「いえいえ。確かに残念ですが、機会は別に今日だけと言うわけではありませんしね。今度は是非、こういった堅苦しい任務などを抜きにして、このかの友人としていらしてください。このかの父親として歓迎させていただきますよ」

 

「はは、ありがとうございます。じゃあ、門限に間に合うように帰らなければならないので俺はこれで。ネギ達のこと、よろしくお願いします」

 

 そうして、最後まで俺との別れを惜しんでくれた詠春さんに詫びの言葉を入れつつ、俺は未だに騒いでいる連中に気付かれないよう、こっそりと関西呪術協会を去ったのだった。

 

 

 え? 明日菜? ダイジョーブダイジョーブ。宴会用意してくれるらしいから、皆で一緒にどんちゃんやればそんな些細な事なんて忘れちゃうって!

 

 

 

 

 ○ △ □ ☆

 

 その後、関西呪術協会総本山にて。

 

 

『……あれ? ネギ、世界どこ行ったか知らない?』

 

『あ、ハイ。世界さんなら僕たちの身代わりが何か変な事しないか見張る為に、旅館に戻るって言って1人だけ帰っちゃいましたよ』

 

『え? それホント? もー、シネマ村でのことを説明してくれるって約束してた筈なのに。まあでも、そういうことならしょうがないし、また明日に』

 

 

『――ほほう、世界さんはお帰りになられたと。ではアスナさん、やはり貴女からお話を聞かなければならないようですわね。……私、こうやってこのかさんの御実家に来なければいけなくなった件も含めて、貴女方に聞きたいことが朝よりも増えてしまいまして……お話、してくれますわよね?』

 

 

『げっ、いいんちょ! アンタまだ……って、そういうことか、あのバカ世界ぃいいい!』

 

『あ、あはははは……』

 




・多い多い多い
 あやかお嬢様からは逃げられない!


・フリーダムエヴァンジェリン
 一番最後にガン○ムとか付けても違和感無さそうとか思った(小並感)


・お? ちうちゃんどうしたのかな?
 パパラッチとパル様が楽しそうにしている。つまりはそういうことだ。


・主人公、ひたすら逃走
 1人だけならともかく、多人数の女子があんな会話してるところに突っ込む勇気が男子中学生に備わっているかというとね……



 あー、時間が止まらないかなー、なんて考えながら日々をダラダラ過ごしながらチマチマ執筆を進めることしばらく。気づけば前回の投稿から1週間を余裕で過ぎてしまっていました。
 あー、時間操作能力者になりたい。それでタイムスリップしたーい。

 などとしょーもない話をしつつ、今回はここまで。まだまだ修学旅行は終わりませんよー。

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