銀魂 真選組の新隊員 作:残月
刹那を屯所へ送り届けた山崎はお登勢から得た情報で志村宅へと来ていた。
忍の様なスタイルで屋敷へと侵入すると銀時が居たが看病と言う名の拷問を受けていた。
動こうとしただけで薙刀を振り回されたり、食事としてダークマターを差し出されたりと散々な目に遭っていた。
「万事屋の旦那……放っておけば勝手に姐さんに殺されるんじゃ……」
山崎は思った事がストレートに出ていた。
真選組ではお妙の事は『姐さん』と言う呼び名が定着していた。近藤の思い人でストーカーをしているがいつかは姐さんになると近藤が豪語している為である。
「冗談じゃねー!こんな生活してられっか!」
「待てコラァァァァァァッ!」
「逃がすか天パァァァァァァッ!」
等と山崎が思っている間に銀時は看病(拷問)から逃げ出した。それと同時にお妙と神楽が殺気立って後を追う。
山崎もマズいと思い、その場から離れようとしたがなんと屋敷の周りに金網が迫り上がり、誰も外に出れなくなってしまったのだ。
「見たか!今まで幾多のストーカーを撃退してきた志村家は最早、誰も通さぬ要塞と化したのだぁぁぁぁぁぁっ!!」
「道場の復興は?」
高笑いをする姉に煎餅を食べながらツッコム新八。諦めてるのか馴れているのか。この状況に無関心である。
「あの馬鹿か?あの馬鹿のせいでこんな事になってんのかぁァァァァァァッ!?」
閉じ込められた山崎は明らかに原因の元である近藤の悪態を付いていた。
「フッフッフッ……甘いですよ、お妙さん。誰も入ってこれない……裏を返せば、俺とお妙さんの決して出れない愛の巣が出来たって事じゃ無いですか!」
「この声は……」
姿は見えないが聞こえてくるドヤ顔声。その発生地点は庭の中にポッカリと空いた穴の中からだった。
「そうだ、ポジティブに考えろ勲……じゃなきゃ、あのバーゲンダッシュと同じ道を辿るぞ勲」
「やっぱり、居やがったァァァァァァッ!?」
山崎が穴の中を覗くと其処には落とし穴に落ちて体を竹槍に貫かれる前に四肢を壁に張り踏ん張っている近藤だった。その下には竹槍の餌食となったバーゲンダッシュアイスが落ちていた。
「その声はザキ!山崎か!?よりにも寄って死の呪文みたいな奴が助けに来やがったぁぁぁぁっ!」
「じゃあ座男陸(ザオリク)さん呼んできますね」
「あ、嘘々!更木君じゃ無くて良かったから!剣八君じゃ無くて良かったから!早く助けて!」
近藤を引き上げ様とした山崎だったが、その直後に、もう一つの穴からナース服の女性が助けを求めてきた。その名は『猿飛あやめ』。
近藤とは別にストーカーと呼ばれる女性で彼女は銀時の看病をしに来たらしいが罠にハマり、近藤と同じ様に四肢を踏ん張り、ギリギリ耐えていた。
因みに彼女の下にはメガネが落ちていた。
「なんだ、この穴には馬鹿しか落ちない仕掛けにでもなってるのか!?」
「あ、その声は銀さんね!助けに来てくれたのね銀さん!」
「違ーよ!なんだメガネを失うと耳まで悪くなるのか!?」
明らかに銀時ではない声に反応する、猿飛にツッコミを入れる山崎。
「ザキィィィィィッ!早く助けろォォォォォッ!」
「銀さぁぁぁぁぁん!」
「うるせーよ!本当に馬鹿しか落ちない仕組みになってんのか此処!?」
その後、近藤と猿飛を救出した山崎。
穴から出た近藤と猿飛に此処に来た経緯を話したが二人は監察と言うより、銀時とお妙が一つ屋根の下に居る事に反応していた。
「局長……あんまりストーカーはしないで下さいよ。刹那にも悪い影響だろうし、保護者がそんな事してるって周囲に知られたら刹那だって嫌がりますよ」
「うっ……そりゃあ……そうなんだが……」
山崎が刹那の名を出すと近藤は怯む。
刹那に悪影響を及ぼすと言う点に関しては近藤も自覚は有るようだ。
「銀さんを斬るですってさせるもんですかぁぁぁぁっ!」
「あ、ちょっと!?」
山崎が先程話した経緯の中で『銀時が攘夷志士ならば斬れ』に過剰反応した猿飛が銀時を探しに走り去っていく。
「局長……俺はどうすれば……つーか局長も副長にも勝てる相手に俺がどうしろと!?」
「落ち着け山崎。まずは万事屋を探すぞ、話はそれからだ」
『銀時を斬れ』出来るはずもない任務を言い渡されている山崎は頭を抱えるが先程と違った様子の近藤は山崎を落ち着かせると銀時を、探すと言い始める。
「奴は確かに怪しいが刹那の件もある。だが、あのちゃらんぽらんが尻尾を出すとは思わん。まずは話を聞いて……」
「あ、局長っ!?」
近藤が今後の捜査の方針を決めようと話をしていく最中、山崎が叫び前方を指を差す。
其処にはお妙、神楽、猿飛に詰め寄られる銀時の姿が。
「銀さぁぁぁぁぁん!」
「見つけたぞ天パァァァァァァッ!」
「逃がすかぁぁぁぁぁっ!」
猿飛が銀時に飛び掛かり、お妙と神楽が獲物と拳を振るう。
それらが銀時に当たるかと思えば銀時の姿が消えた。
先程と同様の落とし穴が銀時の真下に有り、銀時は穴に落ちたのだ。
そして矛先を失った三人の行動に異常が生じる。猿飛の脇腹に神楽の拳がめり込み、猿飛は前のめりになる。前のめりになった事でお妙の頭にヘッドバットを決める事になった。そしてお妙は意識が飛び、振るった薙刀は猿飛には当たらず、そのまま神楽の頭を叩く形となった
三竦み状態で意識を失った三人は重力に引かれ、落下する。そう、先程と同様に穴の下で四肢を使い耐えていた銀時の上に。
『ギャァァァァァァァァァァァァァァッ!!』
志村宅に銀時の悲鳴が木霊する。
「局長……」
「流石に見捨てるには後味が悪いな。お妙さんを救出してから俺達も帰るか」
山崎が困った様に近藤に視線を送るが近藤はお妙だけを助けに行ってしまう。
「山崎、トシには適当に話をしておけ。今後の捜査には俺も加わる」
「局長、もっともらしい話をしてますけどストーカーを正当化させたいだけですよね」
山崎は気付いていた。ストーカーが刹那に悪影響を及ぼすのなら、その行為を正当化する理由が必要な事に。
近藤は万事屋を監察する事を名目にお妙をストーカーする気なのだと。
「じゃあ俺、帰りますね」
「おう、俺もお妙さんを助けたら帰るさ」
命綱を木に括り付けてから落とし穴に入っていく近藤を山崎は見送りつつその場を後にした。
「なんやかんや言っても……旦那が攘夷志士とは思えないんだよなぁ……駄目人間だし、でも不思議と人が集まるんだよなぁ……結果がどうであれ」
山崎は金網を登り、なんとか要塞と化していた志村宅の壁を通り抜けた。
山崎は銀時を思うと不思議な気持ちになっていた。
銀時はちゃらんぽらんだが筋は通すときは通すし、割と義理高い。そして駄目人間の割には人が集まり、その中心に居る。
自分には推し量れる人間じゃないなと思う山崎だった。
「あ、あの……」
「あれ、アンタ……」
そんな時だった。山崎は後ろから呼び止められる。
山崎が振り返れば其処には昼間会った安兵衛と一人の少女が居た。
「アンタ……確か、山崎だったな」
「安兵衛さん?なんで此処に?」
顔見知りである二人は互いに何故此処に居るのかを尋ねる。
「ああ、俺はあの後、鉄子に会いに行ってな……そしたら鉄子が此処に来る用事が有るっつーから道すがら話ながら来たんだ」
「あの後、直ぐに行ったんですか?行動力有りすぎでしょ」
鉄子に知られたくないのか安兵衛は山崎に肩を回しヒソヒソと話をする。
「つーか、お前さんはなんで此処に?」
「もしかして、この家の人ですか?」
「いや、違うんだけどね……危ないから入らない方が良いよ」
山崎から離れた安兵衛と鉄子が山崎に質問をするが山崎はそれを否定して、此処が危険だと告げる。
「じゃあ、その……銀さんに伝えて下さい『私はもう大丈夫です』って」
「………はい、伝えます」
鉄子は微笑みながら山崎に伝言を頼む。山崎は鉄子の微笑みに見惚れるが安兵衛がサングラスを光らせていたので諦めた。
「あっと……鉄子。この山崎は刹那の嬢ちゃんと知り合いなんだとよ」
「え、そうなんですか?」
「え、ええ……確かに刹那とは知り合いですが……」
安兵衛の言葉に驚く鉄子。そのまま山崎に問うと肯定の言葉が返ってきたので鉄子は一度、俯く。
そして顔を上げると意を決した様に口を開いた。
「刹那にも伝えて下さい。『必ず最高の刀を打つ』と」
「……わかりました。必ず伝えます」
先程とは違い鉄子の瞳には炎が宿ったかのような職人の瞳になっていた。それを感じたのか山崎も笑ってその言葉を伝えると言うとその場を後にした。
屯所へ帰った山崎。刹那に鉄子の事を伝えようとしたが既に刹那が就寝中だった為に鉄子の伝言は後日となった。
そして土方への報告書は簡易に纏め上げ、報告すると土方から『作文か!』とツッコまれていた。
余談ではあるが近藤はあの後、お妙以外の穴に落ちた者を救出して、後の看病を新八と共にする事となる。
お妙には嫌がられるかと思いきや、刹那の話題で結構盛り上がり中々に良い雰囲気となっていた。
シスコンの眼鏡が多少嫉妬していたのも別のお話。
次回、真選組のマスコット登場。