銀魂 真選組の新隊員 作:残月
ある日の事だった。刹那は街のパトロールをしていたのだが、今日は珍しく沖田が一緒だった。
「どーしたんでい刹那?」
「いつもパトカーでドライブしてる沖田が珍しく私と歩いてるのが変」
刹那はそんな沖田を珍しい者を見る目で見ていた。
「おいおい、俺だって仕事してるだろ。刹那は普段から土方さんと一緒だからそう見えるだけだ」
「………そう」
沖田の言葉に刹那は素直に頷けなかった。それと言うのも、伊東が真選組に来てから刹那は妙な居心地の悪さを感じていたからだ。
そして真選組屯所に戻った刹那はあり得ないものを見てしまう。土方の様子が明らかにおかしいのだ。
近藤と喧嘩をしたり、部屋で大音量でアニメ鑑賞、そしてバリバリのマ○ジン派にも拘らず、ジャンプを読み更に部屋の本棚には『To L〇VEる』が収められていた。
そこには土方が普段絶対にしないような奇行ばかり。そして極めつけと言わんばかりに……捕らえた犯罪人の浪士から何を企んでいたかを吐かせる為に拷問をしていた真選組隊士。業を煮やした土方が、俺がやると言い始めて他の隊士達を追い出し拷問を始めた。何をしているのか気になった隊士がソッと扉を開いて中を覗いてみると………土方と浪士が布団を並べて、二人揃って横になっていた。
「何、好きな人とかいるの?」
「いや……別に……いないけど」
何故か修学旅行で好きな子を教え合うような状況にその場の全員が首を傾げた。
「なんだよ〜、俺も言ったんだからお前も言えよな〜。ズリー、ズリーよ!ハメたな!ハメたろ!お前も吐けよ〜!」
「わかった!わかったって、吐くよ」
口調も拷問の方法も最早別人と言える状態の土方に隊士達は困惑を隠せなかった。
そして……
「うーむ……どうしたんだトシは……」
近藤は腕を組み、悩む仕草を見せている。それと言うのも、会議の時間だと言うのに土方が姿を表さないためだ。普段なら会議の始まる一時間前から居る筈なのに今回は姿が見えない。そして最近の土方の奇行は真選組内部でも噂になっており、近藤も以前、土方と口論になってからあまり話をしていないので不安が募っていた。
「……刹那ちゃん。その服装は?真選組の制服はどうしたんだい?」
「土方が似合うからこれ着なさいって持ってきた」
そんな微妙な空気の中、伊東が刹那に話し掛ける。刹那の現在の姿はボロボロのダークドレスの様な服を身に纏い、髪もツーサイドアップに結ってある。ぶっちゃけ金色の闇である。
「可愛いねぇ刹那ちゃん。写真撮るよ」
「あ、ズルいぞ!」
「俺も俺も!」
「ほら、刹那!ポーズ決めて!」
「え、えっと……こう?」
刹那の姿を写真に納めようとその場に居た者が挙って写真を撮り始める。刹那は戸惑いながらも隊士達のリクエストに応えながらポーズをしていた。
「貴様等、これから会議だと言うのに騒ぐな!」
「近藤さん、一眼レフカメラを持ちながらだと説得力皆無です」
近藤は隊士達を叱咤するべく叫ぶが、当の本人が刹那の目の前でシャッターを押しているから説得力はまるでなかった。
そして伊東は土方が最近、局中法度を破っている事を理由に土方を処罰するべきだと近藤に進言し始めたのだ。
その事に反論しようとした近藤と刹那が口を開きかけた、その瞬間。遅れてきた土方が会議室に現れた。沖田のパシリとして。
その光景に誰もが唖然とし……その中で伊東と沖田だけが悪どい笑みを浮かべていた。