「…………うぅん…朝か…」
窓から入ってくる日光に当てられ、ヴァーリは目を覚ました。眠そうに目をすぼめ、自慢の白髪には寝癖がついてしまっている。
『相棒、よだれが垂れているぞ。』
ヴァーリの『白龍皇の光翼』に宿る、かつては二天龍と呼ばれた二体の龍の片割れ、白い龍(バニシングドラゴン)ことアルビオンが、ヴァーリに指摘する。
「うん…ジュルル……ありがとうアルビオ……ク~」
『ぅおい!!!?』
原作では絶対に見られなかったであろうこのヴァーリのだらけきった姿、これも全て雷門竜也というイレギュラーが原因である。
虐待を繰り返す親の元から逃げ出し、行き倒れていたあの日、本来彼は堕天使総督であるアザゼルに拾われるはずだったのだが、それを横からかっさらって行ったのが竜也である。そして雷門家の次男として迎え入れられ、家族の温もりを知り、裏の世界から一歩引いた生活をしてきた彼は、まだ幼いとはいえ原作の戦闘狂じみた性格からは考えられないほど常識的なのだ。
『まったく、そんな調子では赤いのとの戦いには勝てんぞ。』
「だ~か~ら~、何度も言うけど俺はそんなのは興味ないんだってば。長きに渡る戦いの運命とか言われてもそんなの知ったこっちゃないし、…それにイッセーとは戦いたくないし。」
そう、彼はイッセーが赤龍帝だということを兄である竜也から知らされているのだが、彼はイッセーとの戦いを望んでいない。彼にとってイッセーは大切な友人なのだ。
『我が儘を言うんじゃない!我ら二天龍は遥か昔から戦い続けてきた。言わばこれは抗うことのできない運命だ!それに龍は力を、戦いを引き寄せる。いずれはあの小僧も目覚めるだろう。今回はこちらが早かった、それだけだ。』
「……て言うかそもそも何で二人は争ってるのさ?」
『ギクッ……そっ、それは言えん…』
「嘘つけ、どうせ忘れてんだろう?忘れるってことは大したことじゃないんじゃないか?」
『いっいや違うぞ!そうじゃないぞ!ちゃんと覚えてるけど言えないんだ!!!!』
「ふ~ん」
『おいっ!!!信じてないなその顔はぁ!!!』
「ヴァーリちゃ~ん、朝ごはんできてるわよ、降りてらっしゃ~い」
「は~い母さん今行くよ」
『おいっ!!!まだ話は終わってないぞ!!!ヴァーリ!!?聞いてんのか!!ヴァーリィィィィ!!!!?』
そんなアルビオンのシャウトを無視してヴァーリは食卓に向かう。
「おはようヴァーリちゃん。あらあら、寝癖がついちゃってるわよ。お母さんが直してあげましょうか?」
彼女は「雷門 茜」竜也とヴァーリの母親であり、のほほんとした笑顔の素敵な女性だ 。
「大丈夫だよ母さん、それくらい一人でできるよ。」
「そうだぞ母さん、それくらい出来んでどうする?ヴァーリ朝っぱらからだらしないぞ。男ならもっとシャキッとしないか。」
「父さん、後ろの髪が跳ねてる。」
「えっ!!嘘!!!うわっ恥ずかしっ!!!」
もう片方の息子に醜態を指摘されて盛大にテンパるこの男は、二人の父親にして雷門家の大黒柱「雷門 秀」である。少し間が抜けたところがあるが、いざという時は頼れる父親だ。
そして、そんな父を呆れた目で見て頭に飼い猫のクーを乗せているのは、ヴァーリの兄の竜也である。
「おはよう兄さん、また夜遅くまで起きてたの?」
「まあな、ボソッまた新しい魔法が考えついてな、後にでも見せてやるよ。」
「ボソッああ、楽しみにしてるよ。」
「あらあら、竜也ちゃん、夜更かししちゃいけませんよ?」プニ~~
「ふえぇぇぇ~~、わひゃっひゃ、わひゃっひゃふぁらふぁーひゃん(わかった、わかったから母さん。)」
「フム、よろしい。ではではそろそろいただきましょうか♪」
「「「「いただきます!」」」」
◆◆◆◆◆◆◆◆
「兄さん遅れるよ?」
「わかってるよヴァーリ」
「おっす!!タツ兄、ヴァーリ」
「おはよー!タツヤくん!!ヴァーリくん!!」
元気よく二人に声をかけたのは、ご近所さんにして幼なじみの「兵藤一誠」と「紫藤イリナ」である。二人にとって竜也は頼れるアニキ分で、ヴァーリは仲のいい親友だ。
「じゃあなクー、行ってくるぜ。」
「ニャ~」
竜也が頭からクーを下ろし塀に乗せる。
大切な家族がいる、友達がいる、ヴァーリは毎日が幸せだった。これからもこの幸せがずっと続けばいいと、そう思った。
「おーいヴァーリ、置いてくぞー!」
「あっ、今行くよ兄さん!」
◆◆◆◆◆◆◆◆
『……完全に忘れられとるなお前…』『ダッセー!』『ダッセー!』
『………………グスン』