魔法少女リリカルなのは~心の剣と小さな奇跡~   作:ディアズ・R

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微妙に久遠√化回。
いろいろ気にしたら負けですよ?


第十六話・嵐×記憶

管理局の接触から数日。

なのはは、管理局に協力する事にしたらしい。

偶然、クロノの足を踏んでしまうそうだ。

リンディさんが、俺に会いたがっているらしい。

面倒なので、なのはと話さなくなった。

まあ、話しかけられたらパンを食わせるか、はやてに投げつけるかの二択だが。

ちなみにだが、はやての足は少しずつ治っていってるらしい。

俺と会う前は悪化する一方だった様だが、原因不明で担当医が喜んでいいのか悩んでいいのか頭を抱えているそうだ。

とまあこんなことを考えているが、現在嵐の真っ只中だ。

どうしてこうなった?

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

数時間前。

 

「夜空君!手伝って欲しいの!」

「……は?」

 

朝の4時にパンの仕込みをしていたら、なのはがいきなり言ってきた言葉だ。

当然いきなり言われても答えようがなく、首を傾げた。

ボケたのか?とも思ったが、どうやら面倒事の様だ。

だって、ユーノとアルフがいるし。

フェイトはどうしたんだろうか?

 

「いや~ジュエルシードを封印する時ミスっちまってねぇ~隣町に転移されちまったんだよ。戻ってみたらフェイトいないし、家も鍵がかかってて入れないし、デバイス無いから時の庭園にも帰れないし、途方に暮れてたらアリサって女の子に連れられてね~そしたらこの子が来て、一緒にフェイトを探してもらってるんだよ」

 

長々と話してくる犬の口に、松坂牛のステーキを挟んだコッペパンを捻り込む。

これで、他の肉を美味しいと感じにくくなるだろう。

参ったか!

……凄い嬉しそうな顔だな。

 

「うま~」

「夜空君!私も欲しい!」

「僕も!」

 

私も僕もと五月蠅いので、アルフと同じ様にしてやった。

美味しそうに頬張っている。

可笑しいな、パンの生地に唐辛子を練りこんであるんだが……ステーキが中和したのか?

それとも、ちょうどいいのか?

感想を聞いてみた。

 

「柔らかいの~」

「ちょっとピリ辛だけど、いいアクセントになってるよ」

「肉が美味い!」

 

むぅ……ハンバーガーにでもしてみるか?

二千円で売れば、元は取れるかな?

いやいや、そんなことより。

 

「ジェルシード探せばいいんじゃね?フェイトも、まだ探してんだろ?」

「ッ!?盲点だったの!!」

「流石夜空!」

「フェイト~何処にいるんだよ~」

 

なんか、バカになってないか?

気のせいだよな?

三人がパンを数個買って、何処かに向かって行った。

多分、管理局だろ。

 

「……俺も探すかな」

 

神棚に飾っておいたジュエルシードを取る。

そう言えば、リニス忘れてた。

生きてるかな?

リニスの部屋を覗いて見る。

 

「きゃぴ♪」

 

謎の行動をしているリニスと目が合った。

しばし沈黙した後、目を閉じてゆっくりと部屋のドアを閉める。

俺は、何も見ていない。

大丈夫大丈夫。

落ち着け。

おし、大丈夫だ。

自分を見失うな。

心を落ち着け、外に行くことにした。

リニス?忙しそうだから、放置で。

 

「置いてかないでください!!私が悪かったですから!!待って!!」

 

リニスが、俺の腰にしがみついてきた。

俺は、どんな顔をすればいいんだろうか?

とりあえず、優しい微笑でも浮かべておくことにした。

 

「その顔止めてください!!」

 

と言うわけで、猫版リニスを頭に乗せ町を練り歩くことに。

フラフラしていると、久遠を抱えた那美さんに遭遇。

勝負を仕掛けられた!

 

「夜空君、なんか変だよ?」

「俺も思った」

「まあ、夜空君が変なのは何時ものことだとして、久遠の事預かっておいて貰える?今から仕事で隣の県まで行かないといけないの」

 

今俺は、変人扱いされたのか?

街中を巫女服でうろつくこの人に?

いろんな人がチラチラ見ているのに気付かず、狐まで抱えちゃってるこの人に?

変人扱いを受けている、だと!?

 

「テメェコーラ買って来いよ。ペ○シ買って来んなよ。コ○の方だからな」

「分かった分かった。リニスさんも何かいりますか?」

「カル○ス」

「はい、分かりました。すぐ戻ってくるから、ここで待っててね?」

 

そう言って、自動販売機を探しに行った。

見事なパシリだ。

今度、ケーキでも奢らせみよう。

那美さんから飲み物を受け取り、駅まで一緒に行った。

薫さんは元気だろうか?

最近会ってないんだよね。

リニスを右肩、久遠を左肩に乗せて海に向かってみた。

なんとなく、魔力的なものを感じだから行ってみたのだが……現在後悔中だ。

嵐に、巻き込まれました。

ここで、最初の時間に戻る。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

俺の持ってるジュエルシードが、ピカピカ光ってる。

そして、嵐の中に数個のジュエルシードが浮かんでいるのが見えた。

つまり、俺の持ってるジュエルシードに引かれてるんだな。

まあ、封印とか言うのしてないしな。

どうしたもんか。

 

「ビチャビチャなんですが……」

「くぅ……寒い」

「流石にどうしようもないな。まあ、ラスクでも食べてろ」

「「わ~い」」

 

……嵐の中で、何やってんだろ?

空を見上げてみると、黄色の光が見えた。

ジュエルシードの魔力が濃すぎて判り辛いが、フェイトがいるのかもしれない。

あと、何時の間にか腰まで海に浸かってるんだが。

コレヤバイよな?

お、今度は桃色の光が見えた。

なのはかな?

そういえば、足に魔力込めれば海の上立てるかな?

足と掌に魔力を込め、海に手をついて身体を持ち上げる。

どうやら、上手くいったようだ。

海の上に立ち、嵐の真ん中で、雨に打たれる、びしょ濡れの一人と二匹。

どんな状態だよ。

 

「あ、ジュエルシード落ちてきた」

 

海に落とすのもアレなので、キャッチする。

手持ちと合わせて、6つか?

残り5つが浮かんでる状態だ。

てか、嵐が徐々に強くなってるんだが。

手持ちのジュエルシードが凄い輝いてるんだが。

 

「……ニャー」

「……クォン」

「こういう時だけ動物になるなよ」

 

ジュエルシードから、今まで抑えられてた魔力が溢れ出している。

このままでは、前回の久遠の様になってしまう。

こういう時は、リニスの心器でも使って空を飛ぼう。

そう思ってリニスに話しかけようとしたら、二つのジュエルシードが海に落ちた。

偶然にも、その真下にタコがいたようだ。

そして、巨大なソレが浮かんでくる。

 

「……あの二人、シバキタオス」

 

巨大なタコが、10本の足を海面に出して現れた。

何故十本?と思わなくも無いが、ジュエルシードが願いを叶えたのだと納得しておく。

なのはとフェイトは、まだ上で話し合ってるのだろう。

 

「リニス」

「管理局からくすねた簡易デバイスがありますから、飛行や目晦ましぐらいなら何とかなりますが、先にあの二人をどうにかしてきます。負けたらダメですよ?」

 

そう言って、リニスは人型になって杖型デバイスを片手になのはとフェイトの方へ向かっていく。

流石に、あのタコ相手に素手は無理なので、久遠は残ってもらっている。

 

「そんじゃ、やりますかな?」

「クォン!任せる!」

 

久遠が人型になり、海面から僅かに浮きつつ紫の雷を纏う。

美人で、女性的な胸元に手を置く。

 

「お前の心、借りるぞ」

「ぅん!」

 

久遠の身体から【雷切】を取り出し、構える。

ここまで待っていてくれたのか、構えた瞬間に襲い掛かってくるタコ。

向かってきたタコ足10本を全て切り落とす。

あちらがジュエルシードで強くなるように、こちらもジュエルシードの魔力を吸収して、身体能力を何時も以上に強化できている。

なので、漫画の様に一瞬で切り刻むなんていう芸当が容易く出来る。

だが、強化されているのは相手も同じらしく、切った先からまたタコ足が生えてくる。

久遠が雷をタコにぶつけるが、少し焦げ後が付く位でダメージらしいダメージが無い様だ。

ジュエルシードを二つ使っているから、ゴム製にでもなったのだろうか?

ついでに言うと、嵐の中で雷なんか使っているからバリバリして神経が焼け切れそうだ。

その雷止めなさい。

 

「あ」

「ん?どうした、くお―――」

 

唐突に久遠が何かを見つけて、声を出したので久遠が見ている方に目を向けると……ジュエルシードが落ちてきていた。

タコの頭に。

キレていいだろうか?

ジュエルシード合計三個を吸収したタコは、足が16本、黒い雷を纏い、口元から毒々しい墨?が漏れていた。

 

「コレはヤバイ」

「どうしよう?」

 

とうとう久遠の雷すら吸収して、自身の雷を強化し始めた。

再生速度が速すぎて、タコ足を切り落とすことすら出来ない。

なのはのとフェイトの魔法なら何とか出来るかもと思わなくも無いが、あの二人がここにいることの方が危険だ。

浮かんでいるジュエルシードは後二つ。

これ以上強化されたら、冗談すら挟む余地無く本気で勝てない。

ちなみに、こういう時だけ考えた嫌な予想が当たると言うフラグが、数分後に回収されることになる。

 

「久遠!合わせろ!!」

「わかった!」

 

タコ足を避け、タコの本体に近づく。

久遠から放たれた雷を【雷切】で受け、一時的に帯電させる。

タコから放たれる毒墨ごとタコを切り伏せる。

 

「雷神剣……名前、普通だな」

 

タコと夜空が交差し、タコが沈んでいく。

【雷切】に帯電していた雷が、霧散する。

沈んだジュエルシードを回収しに行こうとしたら、ソレは落ちてきた。

 

ポチャン。

 

しばし沈黙。

再起動した時には、全てが遅かった。

浮上してきたのは、足の数が三桁はありそうなタコの原形を留めていない化け物。

 

「……アイツ等、殺す」

「……久遠も手伝う」

 

タコ足地獄を夜空と久遠は体験することになった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

夜空がタコと戦う前の上空。

 

「フェイトちゃん!!」

「ッ!?なのは……」

「こんなこと、もう止めよう?」

「……私は、私に出来ることをする。それが、母さんの為になるなら、なんだってする!」

「フェイトちゃん……」

 

暴走したジュエルシードが生み出した、嵐の中へ入って行くフェイト。

その行動を見詰めるなのは。

少しずつ嵐が動いていることには、誰も気付かない。

 

「そんなの、間違ってるよ……家族が、親が、自分の子供が傷付くことを、望む筈が無いよ……」

 

顔を俯かせて何事か呟くなのはが、顔を上げて嵐を睨みつける。

その瞳に、迷いは無い。

下では、夜空の足が浸水中。

 

「だから私が、フェイトちゃんを救ってみせる!!レイジングハート!!」

《Yes master》

「見つけた!ディバイン・バスター!!」

 

なのはの呼びかけに、シューティングモードに変更しながら応えるレイジングハート。

そして、魔力を操作して視力を極限まで強化する。

夜空には劣れども、元々の才能でカバーする。

ジュエルシードが六つ暴走しているからか、フェイトも近づけないのが見える。

それでも、なんとか一つのジュエルシードの活動を停止させていたが、魔力の暴走が酷すぎてそのまま落下していった。

それを見つつ、ジュエルシードを撃ち抜いた。

二つのジュエルシードが海へ落ちていく。

嵐で下が見えないが、この時夜空はタコと遭遇。

 

「フェイトちゃん……私は、諦めないよ!」

 

そう言って、嵐に突っ込むなのは。

フェイトと合流しようとしていたのだ。

なのはが近づいてくるのを横目に、残り三つのジュエルシードに相対するフェイト。

落ちたのは、後で回収すれば問題ないと考えている。

問題だらけで、夜空が戦闘中。

 

「バルディッシュ!サイズフォーム!」

《Arc Saber》

 

魔力斬撃用の圧縮魔力の光刃を、ジュエルシードに向かって放つ。

光刃はブーメランのように回転しながらジュエルシードにぶつかり―――

 

「セイバーブラスト!」

 

刃を爆破させる。

暴走を停止したジュエルシードに手を伸ばそうとしたら、魔力光弾がフェイトに放たれ、反射的に回避行動を取るフェイト。

そのせいで、ジュエルシードがまた海へ落下していく。

これで苦労してるのは夜空。

 

「そこまでだ。時空管理局クロノ・ハラオウン。これ以上好き勝手はさせられない」

「ッ!?今更出て来て!」

「クロノ君!邪魔なの!!」

「こういう時ぐらいその態度は止めてくれ!」

「お前こそ邪魔しちゃダメだろ」

 

クロノと劉がフェイトの前に転移してきた。

そこになのはも合流。

ただし、なのははクロノに敵意バリバリだった。

劉は最近、無理に近づいてくることも無く、ごく普通に友好関係だったりする。

御影、ホタルは飛行が出来ないので待機。

姫は、今日風邪で寝込んでいる。

アルフとユーノは、結界を張るので精一杯。

 

「クロノと俺がジュエルシードをどうにかするから、二人はゆっくりしてくれ」

「な!?劉!何を言ってるんだ!!」

「はいはい」

 

劉はクロノの首元を掴んで、ジュエルシードへ向かう。

それをフェイトが許容する筈も無く、クロノと劉に攻撃しようとする。

 

「サンダー・ス―――」

「フォトン・ランサー!」

「―――マッシャー!?」

「うぉ!?」

「クソッ!」

 

フェイトの放った砲撃魔法を妨害するように、一発の魔力弾が通過。

僅かに反れた砲撃魔法をクロノと劉が避け、ジュエルシードに命中する。

五つ目のジュエルシードが海へ落下していく。

下から浮かんで来たのは、リニス。

夜空と久遠がキレた原因は、リニス。

 

「貴方達!!いい加減になさい!!」

「リニス!?」

「リニスさん!?」

「貴女は夜空の!?」

「なんで下から?」

 

ここまでが、夜空と上空の出来事。

夜空は、ジュエルシード四つを取り込んだタコに勝てるのだろうか?

上空にいるメンバーは、夜空に気付くのだろうか?

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「クッ!この!」

「夜空!後ろ!」

「分かってる!!」

 

三桁はあるであろうタコの足。

どれだけ斬っても再生し、絶え間無く襲い掛かってくる。

それを捌ききるも、流石に疲労の色が見えてくる。

何処から攻撃が来るかは大体の感覚で分かるが、身体が着いて行かなくなってきている。

その上、嵐で体温を奪われ、目が濡れて上手く見えない。

そんな状態で戦闘が続けられることは普通出来ない。

 

「危ない!くぅ!?」

「久遠!?ガッ!」

 

流石に限界が来たのか、夜空は身体の動きを止めてしまった。

それを待ていたかの様に、夜空に群がるタコ足モドキ。

そこに、夜空を庇う為に前に出た久遠。

夜空と久遠は、海の上を跳ねながら吹き飛ばされる。

そして、海の底へと沈んでいく。

夜空は、歪む視界の先に久遠を見つける。

手を伸ばそうとしたが、身体が動かない。

手を伸ばせば、届く所にいるのに。

手を伸ばすことすら、許されない。

そこで、右手に握られている物を思い出す。

アレだけ派手に吹き飛ばされたのに、しっかりと掴んでいた久遠の心。

 

(俺は……)

 

その先を考える前に、夜空の意識は暗闇に飲まれていった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

気が付くと、見知らぬ神社にいた。

ここがどこかを知る為に、周りを見渡そうとしたら小さな笑い声が聞こえた。

その声の方を見てみると、一匹の狐と少女がそこにいた。

話しかけようとするが、声が出ない。

それに、よく見てみると狐は久遠の様だった。

それを見て、ここが久遠の記憶の可能性を思い浮かべる。

一匹と一人が楽しそうにしているのを眺めていたが、一瞬で景色が変わる。

先ほどの少女を探し回る久遠。

途中で怪我をし、人間形態になって助けを求める。

そして、一人の少年が現れる。

見せられる光景は、仲の良さそうに笑い合っている二人。

また景色が変わり、久遠がある光景を木の陰から見詰めていた。

その光景は、少年が殺される瞬間。

手足を引き千切られ、胴体の中心に木の杭を打ち込まれ、最後の仕上げとばかりに首を切り落とされる。

見えていた景色が消え、暗い空間に変わる。

そこには、久遠がいた。

一定距離をとり、久遠に話しかける。

 

「さっきの、二人の名前は?」

「女の子が、みつ。初めての友達……男の子が、弥太。初めて好きになった人……二人とも、優しかった」

「そっか……神職っていうか人間のこと、まだ憎んでる?」

「……分かんない」

 

こちらを見ずに、久遠は言う。

これは、後押ししないとダメだな。

 

「俺だったら、憎んでるな」

「……久遠も、憎んでる」

「俺だったら、怒ってるな」

「……久遠も、怒ってる」

「久遠は、人間が嫌いか?」

「……人間は憎いし、怒ってるけど、嫌いにはなれない」

「どうして?あんな酷いことをしたのに、何で嫌いになれないんだ?」

「だって人間には、みつや弥太みたいな優しい人がいる。那美や薫みたいに一緒に居てくれる。なのは達みたいに可愛がってくれる。なにより、夜空が……守ってくれる」

 

そう言って、久遠は俺の方を向く。

さっきの記憶を見て、泣いたのだろう。

目元が赤くなっている。

久遠に近づいて、頭を撫でてやる。

 

「なら、しっかり守らないとな。あの二人も、見守ってくれるってさ」

「え?」

 

久遠が振り向くと、みつと弥太の二人がいた。

完全に消える一歩手前の状態のようで、少しずつ消えていっている。

久遠の背中を押し、告げる。

 

「どうしたい?」

「……うん!」

 

久遠が二人の前に行く。

そして、手を差し出す。

 

「もう、久遠は寂しくないよ。でも、二人とはずっと一緒に居たい。だから、一緒に行こう!」

 

二人は困ったように微笑み、小さく頷いて久遠の手を取る。

二人が光の粒子になり、久遠の体へ入っていく。

久遠がこちらを向き、駆け寄ってくる。

 

「夜空!行こう!」

「そうだな。必然とはいえ、後押ししたのは俺だからな。借りるなんて言わない。お前達の心、確かに受け取った」

 

久遠を抱きしめ、暗い空間が白い世界へ変わる。

久遠が身を乗り出し、唇と唇が合さる。

驚いて目を見開く。

久遠が離れ、一言。

 

「夜空、大好き♪」

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

目を開けると、暗い海の底にいた。

身体は動かない。

それでも、魔力は動かせる。

自身の持つ新たな心器に、魔力を込める。

それだけで、自身の周りに不可視の結界が張られる。

完全に使いこなせていないのか、右腕のみが動かせる状態になった

だが、それだけで十分。

右手に持った新たな心器【天之尾羽張(アメノオハバリ)】を振るう。

たったそれだけの動作で、目の前の海を斬り裂いた。

魔力を込め、斬りたいものを見ながら振るう。

それだけで、全てを斬ることができる。

それが【天之尾羽張】の力。

海水が一時的に無くなった地面に立ち、もう一度刃を振るう。

自身のいた海の底と、異形と化したタコとの距離を斬り裂いた。

その結果、一瞬でタコの目の前へ移動する。

ジュエルシードがタコへ供給している魔力を、斬り伏せる。

異形のタコは普通のタコに戻り、海へ落ちるジュエルシードを浮かんできた久遠と一緒にキャッチする。

 

「ふぅ、終わったか」

「だね……夜空」

「ん?」

「ありがとう」

 

今までで最高に良い笑顔を魅せられた。

少し照れてしまった、不覚。

照れを誤魔化す様に、嵐を斬り裂く。

最後のジュエルシードが落下してきて、それを掴む。

そして、上にいるアホ共の魔法を全て斬り裂いてやった。

 

「さて、帰るか」

「クォン」

 

狐に戻った久遠を頭に乗せ、落下してきたリニスだけをキャッチ。

他は全員海へ落ちて、もがいている。

 

「えっと、何があったんですか?」

「気にすんな」

「気にすんな♪」

 

背後でバシャバシャしているが、一切気にしない。

魔法と一緒に、魔力を斬っておいたので、今日はもう魔法が使えないだろう。

フェイトは魔力が無いと帰れないだろうから、ギリギリの量を残してある。

今日の晩御飯を思い浮かべつつ、海の上をゆったりと歩いていく。

そして、びしょ濡れになった服の言い訳を考えるのだった。

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