魔法少女リリカルなのは~心の剣と小さな奇跡~ 作:ディアズ・R
とりあえず本編どうぞ。
第二十八話 闇の欠片×救い
なんだかんだであっけない終わり方をした三日前のことを無かったかのように、パンを作る俺がいた。
足元で妖精版ジェシーと猫版リニスが騒いでいるが、気にせずパンを作る。
「完璧生物な私様がメインでいくべきですよ!」
「いいえ!私がメインで歌います!」
「猫は猫らしくニャーニャー後ろで言ってればいいんですよ!」
「なら貴女は上をあはは~とか言いながら飛び回ってればいいです!」
「ムキィィィ!!」
「フシャァァァ!!」
とても、うるさい。
何故ここで言い争う?
まあ、暴れ回って毛とか埃とか飛ばさないからいいけどさ。
ちょっと前に作って、ある程度冷めたパンを二人に与えてみる。
「「わ~い……ガフッ!?」」
今食べさせたのは、味覚破壊パン。
……ふざけ過ぎたと、反省はしている。
味は辛かったり、酸っぱかったり、甘かったり、ランダムだ。
まあ、とにかく、食べると一日ほど味覚消失ということだ。
今出来上がったパン生地を窯に入れ、へばってる二人を片手で持ち上げて出来上がっているパンを売り場に持っていく。
「やっと出て来たんか……ちょっと時間かけすぎやないか?」
「それは悪かったな。これで許せ」
「焼きそばパン?こんなもんで買収できるとでも……味が焼きそばパンちゃう!?しかもうまい!!」
見た目は完全な焼きそばパン。
何故か霜降り和牛的な味だ。
特に肉は使ってないが、何故かそんな味になった。
「お前も食うか?」
「いや、私は遠慮しよう」
「そうか」
はやての車イスを押しているリインフォース、通称リインは苦笑しつつ俺とはやてのことを見ていた。
パンを勧めてみるも断られてしまった。
パンを勧めて初めて断られたかもしれん。
……いや、全力拒否はされたことがあるな。
「ところで、なんか用だったんじゃないのか?」
「あぁ!そうやった!あまりの美味さに忘れるところやったわ!」
「で?」
「なんかヤバいらしいんよ」
「なにが?」
「えっと……なんやったっけ?」
「では、私が代わりに説明させてもらおう」
はやてが役に立たないので、リインが現在の状況の説明を始める。
まあ、それほどヤバくは無いだろ。
「闇の書の闇、通称ナハトヴァールを管理局の戦艦の主砲で破壊した際、完全に消滅させられなかったようで、その破片が意志を持ってしまったようだ。言うなれば『闇の書の残滓』と言ったところか。現在は『闇の書の残滓』が闇の書の闇として復活するための魔力を集めるために、強力な力を持った者の複製『闇の欠片』を作り出して、魔力を集め回っているんだ」
「それを何故俺に言う?」
「……夜空、お前の複製が強い上に他の者の複製と連携していて、勝てないんだ」
それは、なんと言うか、御愁傷様?
はやてもリニスも頷いてんじゃねぇよ。
俺の知ったことか。
「その、一緒に戦っては貰えないだろうか?オリジナルである夜空がこちらの戦力になれば、すぐに決着がつくと思うんだ。コピーの夜空にはジェシーがいないから魔法戦でなら何とかなるんだが、唄による支援と接近戦が強力でな。頼めないか?」
「……それがどうにかなったら、お前はどうするんだ?」
「……それは、その時にでも考えるさ」
「なんや?なんなんやこの空気?リニスさん、なんかわかるか?」
「私に振らないでくださいよ!あの決戦から三日、夜空もずっと何か考えていましたし、ソレ関係かと思いますよ?」
……もっと聞こえない様にしようぜ?
まあいい、とにかく協力すればいいのかな?
「とりあえずアースラに行くか。海璃、海斗、ちょっと出かけてくるからな」
「「は~い」」
「ほんじゃま、行きますかね」
◇◇◇◇◇
アースラのミーティングルームにやってきた。
なのはやフェイト達が集まっている。
そう言えば、アリサとすずかがなのはのこと探してたな。
俺は別に魔法使いじゃないから、詳しい説明を求められても困るだけだし。
とりあえず、最近顔を見せないなのは達に話しかけるか。
「アリサとすずか」
「はぅ!?」
「出会ったら最後と思っとけ」
「……助けてくれないの?」
「どれだけ説明要求されたと思う?」
「……ごめんなさい」
アイツ等しつこいんだよ。
アリサは頭良いから理論整然とした質問攻め、すずかは感情に訴えかける様な悲しそうな声で、一時間毎に電話がかかってくるんだ。
別に一週間だろうが一ヶ月だろうが寝なくても平気だけど、アイツ等の健康問題がな……
「とにかく、今回のことが終わったらしっかりと話し合え」
「……うん」
「そんな心配そうな顔するなって」
なのはの頭を撫でてやる。
頬がほんのり桜色に染まるが、何時もの笑顔を見せてくれる。
だがな、お前はもう一つ忘れている。
「アリサとすずかへの説明は手助けしてやる。けど、高町家への説明はしらんぞ」
「……え?」
「なのはさ、管理局で働きたいんだろ?なら、家族に説明しないと」
「……ゑ?」
「まあ、頑張れ」
「……………に、にゃぁぁぁぁぁ!?」
頭を抱えてしまったなのはを無視して、リンディさんに話しかけようとした。
写真を見て真っ赤になりつつ、ニヤニヤしてた。
リンディさんはやめよう。
八神一家の所に行ってみる。
俺は笑顔でパンを差し出す。
ハムとレタスのマヨネーズ和えサンド・イッチである。
店売り価格、200円。
「差し入れだ♪」夜空
「あるからいらんわ」はやて
「私も必要ないな」リイン
「遠慮する」シグナム
「んなもんいらねぇよ!」ヴィータ
「近づけないでください!」シャマル
「匂いがしない物は断らさせてもらおう」ザフィーラ
……逃がさないぞ。
ヴィータとシャマルの言い方が気にくわなかったので、無臭のハーブパンを口にぶち込む。
口臭がとても良い臭いになる代わりに、食べた瞬間味覚が暴走する。
白目を剥いて倒れる二人を尻目に、笑顔で他の八神家にパンを勧める。
「差し入れだ♪」
『頂きます!』
余は満足じゃ。
さて、テスタロッサ一家は毎日ウチのパン屋に来るから別に話しかけなくていいだろ。
劉達は今戦闘中らしい。
……もう、俺も行くか?
でも、行くならリンディさんに話しかけないといけないんだよな。
……なんか嫌なんだけど。
「あの、リンディさん」
「うぇへへ……ハッ!?よよよ夜空君!?な、なにかしら!?」
凄い勢いで写真を隠しやがった。
若干気になるが、面倒なのでさっさと済まそう。
「闇の欠片との戦闘に混ざってきます」
「あ、あぁ!そうなの!助かるわ!一分後になのはさん達と一緒に行ってもらえるかしら!」
「了解した」
焦りようが半端じゃないんだけど。
一体、何の写真なんだ?
◇◇◇◇◇
劉達と交代で転移されたのは、ナハトヴァールとの最終決戦の海上だった。
すでに結界が張られているようで、荒れ放題だった。
戦争かよ、と言いたくなる状況だった。
辺りを見渡していると、そいつと目が合った。
黒いローブが全身を覆い、風に靡く。
ジェシーの魔法で空中を歩き、突起した岩の上に立つそいつに近づく。
五メートル程度の距離で止まり、話しかける。
「お前は、俺か?」
「俺は、お前か?」
お互いに同時に問いかけた。
瞬間理解した、こいつは俺だ、と。
一瞬でお互いに距離を詰める。
黒いローブが取れ、目の前に
「消えろレプリカ」
「死ねオリジナル」
クロスカウンターで吹き飛び、レプリカが岩に、俺が海に叩きつけられる。
魔力を全身に巡らせ、水を蹴ってレプリカに回し蹴りを放つ。
上に跳んで避けられ、蹴りが岩を破壊する。
レプリカの踵落としを裏拳でずらし、正拳突きを鳩尾に叩き込む。
空へと吹き飛んでいくレプリカを、黒い服のなのはが受け止めた。
「クソッ!シュテル!お前の心を貸せ!」
「んっく……」
シュテルと呼ばれた黒なのはから、黒い長剣の心剣を取り出したレプリカが、空を蹴って俺に斬りかかる。
レプリカの斬撃を紙一重で避けながら、レプリカのことを考える。
こいつは俺の筈なのに、俺とは違う。
何が違う?何が違えばこうなる?
「何故、何故当たらない!?俺はオリジナル以下だとでもいうのか!俺は、俺は!!」
「……お前」
コイツは俺のコピーであって、俺じゃないってことか。
水無月家に拾われなかったら、俺はこうなってたかもしれないのかな?
つまり、俺とコイツの違いは、パンである。
「……なら、違いをしっかりと教えてやらないと、なぁ?」
「なにを……ッ!?馬鹿にするなぁぁぁ!!」
右手にクロワッサン、左手にフランスパン(半分にカット済み)を持ったら、レプリカがブチ切れた。
俺なんか変なことしてるかな?
ちなみに、クロワッサンはジャムをつけないと誰にも食べられない。
硬いとかそう言う次元じゃなくて、噛もうと口に含むと口の動きが停止する。
分かり易く言うと、口内限定時間停止である。
正直、なんで作れたのかわからない。
あと、千切ることはできるのに切ることはできない不思議なクロワッサンである。
フランスパンは投げると必ず口に入る。
はやてで何回も試した。
両方とも、味は保証できるぞ。
フランスパンをレプリカの顔に向かって投げる。
首を捻って避けようとするも、フランスパンの機動力に負けて、口内への侵入を許した。
「モグッ!?」
「お前と俺の、決定的な違い……分かるか?」
「モ、モゴッ!?」
「それはな、パン職人としての誇りだ」
『それは違うと思う』
……黙ってろよ。
クロワッサンをはやての口に投げようと思ったが、なんとなくはやての戦ってる黒い方のはやての口に投げてみた。
「ぬぉ!?……?噛めんぞ?むぅ……なんなのだこれは!!」
「なんでそっちなんや!こっちやこっち!」
うるさいはやては放っておいて、レプリカに向き直る。
レプリカの隣に黒なのはがいた。
なのはは何をやってるんだ?
「待ってよ~ちゃんとお話しようよ~」
なのはは黒なのはにお話をしようとしているが、ガン無視されてるようだ。
何回か戦ってるらしいけど、どうしてそうなった?
黒なのはの方を見ていたら、話しかけてきた。
「……何故、本気で戦わないのですか?」
なのはの顔なのに、真剣な表情が似合っている。
ニコニコさせてみたくなるな。
今はしないけど。
「理由なんかないな」
「……貴方が本気を出せば、すぐに終わると思うのですが」
「ん~ホントに理由なんかないんだけど……しいて言うなら、お前等の目的が悪いことだと感じないからかな?」
「……なるほど」
「ところで、お前とはやてもどきと青髪フェイト、俺のレプリカとかと何かが違う気がするんだが、教えて貰えるか?」
「……こちらだけ質問するのは、フェアではないですね。私達三体はマテリアルと言う存在で、闇の欠片とは別モノです」
「へ~名前とかあるのか?」
「理を司るマテリアル、星光の殲滅者シュテル・ザ・デストラクターを拝命しています」
「む……心域の剣流星、水無月夜空だ」
なんかカッコ良かったので、対抗してみた。
「シュテルと呼んでください」
無視された。
ちょっと恥ずかしい。
でも、マテリアルね……何か重要な気がするんだが?
いや、今はどうでもいいな。
「てか、今は敵だろ?」
「……そう、でしたね」
なんなんだ?
そこで今まで無視していたレプリカが動く。
大上段からの切り落し。
白羽取りで防ぐ。
それを見て、レプリカがうっすらと笑う。
「ヤバ!?」
「砕け!!」
咄嗟に剣から手を離して、バックステップで距離をとる。
瞬間、剣から黒いオーラが溢れる。
「チッ……シュテル、お前も手伝え」
「……了解です」
ん~やっぱり変だな。
闇の欠片の方は悪意満々なんだけど、マテリアルの方は全然悪意を感じない。
でも、二人同時はヤバいかも。
あ、なのはがいるじゃん。
なのはを探してみると、蒼髪フェイトとはやてもどきのコンビを相手にしていた。
なのは以外も、自分のレプリカだったりなのはと協力してたりだ。
暇人がいねぇ。
ジェシー呼ぶか。
「行くぞジェシー」
「アイアイサー!」
セットアップをし、カートリッジシステムが最適化された銀の手甲、急所を守るだけの軽鎧を纏い、白と黒の翼を広げる。
いつぞやの武器漆喰とは別の、大剣を両手に持つ。
柄部分が鎖で繋がっている、刃が赤と青の大剣。
《これぞ漆喰よりもシンプルな兵装!その名も双子ちゃんです!》
「……」
「……」
「……」
《あぁ!皆さん冷たい!》
ジェシーの発言をスルーして、赤の大剣をレプリカに、青の大剣をシュテルに向けて斬り払う。
ちなみにこの大剣、色はついているが属性とかはない。
赤いから炎を纏うとか、青いから凍結させるとか、そんなことはできない。
剣と杖で斬撃を防がれ、三メートルほど離れる。
二人が剣と杖の先をこちらに向け、魔法を放ってくる。
「破壊を齎せ、
「ブラストファイアー!!」
俺は両手の大剣を手放し、パンッ!と両手を合わせて目の前に裂け目を創り、二人の攻撃を裂け目へと呑ませる。
レプリカはそうやって防がれることが分かっていたようだが、シュテルの方は驚愕している。
やっぱりマテリアルは、リインやナハトヴァールとは別の存在と見て良さそうだ。
しっかし、めんどくさい奴らだな。
……とっととレプリカ倒して終わらせるか。
「ジェシー、デカいので一気に終わらせるぞ」
《まかせんしゃい!フハハハハハ!!これが私の新・必☆殺魔法!
『ぇ―――』
俺の今の状態での魔力を全て消費して放たれた極光が、離れたところで戦っていた奴らを敵味方問わず飲み込んだ。
結界を消滅させて
極光に飲まれた奴らは海に落ちて行く。
闇の欠片達は消滅しており、マテリアルの二人は消滅しかかってる。
これ、後で俺が文句言われるよな?
《どうしよ……よし!見なかったことにしよう!》
「いや、無理だろ」
《マスター!骨は拾ってください》
「わかった」
魔力すでに全快しているので、やろうと思えばもう一回撃てる。
まあ、撃たないけど。
とりあえず裂け目を創ってマテリアル二人を回収する。
魔力を送ってみるが上手く吸収しない。
守護騎士連中と同じで魔力で構成されてると思っていたが、どうやら違うようだ。
先ほど消滅していった闇の欠片の力の残滓を集め、二人へと送ってみる。
すると上手く力を吸収できたようで、薄くなっていた身体が元の状態に戻る。
それと同時に二人が目を覚ました。
「花畑!?……あれ?」
「闇が光に負けるだと!?……んん?」
青髪フェイトとはやてもどきの二人は、キョロキョロと辺りを見渡す。
ちなみに、二人のことは猫の様に持ってる。
暴れられても面倒なので二人の杖?は没収し、魔力封じのバインドで拘束してある。
二人は状況を理解したのか、ジタバタしだす。
「は~な~せ~!!」
「貴様ぁぁぁ!!我にこのようなことをしてタダで済むと思うでないぞ!!」
……落とすか。
「「あ」」
ボチャンッ!
海に落としてしまったが、両手両足拘束してあったので、浮かんでこないかもしれん。
兵装双子ちゃんを呼び戻し、戦闘を再開する。
といっても、裂け目を利用した全方位魔法攻撃でフルボッコにするだけだが。
両手の大剣には特に意味は無い。
「クッ!この!真面目にやれ!」
「そうしない理由は貴方が一番わかっていると思いますが?」
「うるさい!」
シュテルの方はもうヤル気が感じられないんだが。
裂け目に入って、レプリカの背中を蹴り飛ばす。
前によろけるレプリカをX字に斬り裂く。
「ガッ!?ふざけるな!!」
レプリカの振るう剣を避け、一旦距離をとると自分の心剣を取り出してきた。
だがその心剣は、俺の心剣とは違い黒く禍々しい剣だった。
「命を喰らえ!
レプリカの心剣から黒い蛇の様なモノが、何十匹も襲いかかってくる。
名前からして触れたら死ぬとかそんな感じだと思うので、避けたり切り払ったりして対処する。
「俺は!紛い物じゃない!贋作じゃない!偽物じゃない!貴様を、オリジナルを殺せば、俺こそが本物だ!!だから、消えろぉぉぉぉぉ!!!」
その言葉は、叫びだった。
心が、叫んでいた。
俺は両手の大剣を消し、動くのをやめる。
そんな俺に、餌に群がる魚の如く殺到して来る黒いモノ。
「は、はは、やった……これで、俺が……」
「お前の想いは、確かに伝わったよ」
「ッ!?」
俺を覆う純白の魔力が、死を齎す呪いを祓っていく。
まっすぐレプリカ、いや、彼に向かって進む。
「く、来るな……」
「お前は俺だ」
「来るな!!」
「そして、俺はお前だ」
彼は闇を広げるが、すぐに白へと変わる。
彼の心剣にひびが入る。
シュテルの心剣は光になって、シュテルの中へと戻って行った。
シュテルは俺と彼を見て、動かない。
「でも、俺は俺であって、お前はお前じゃない」
「ぁ……ち、ちが……俺は!」
「俺は、誰かになりたいなんて一度も思ったことは無い。なのに、お前は俺になりたがった。だからお前は、自分を自分と思っていない。だから、心剣が他者の命を奪うモノだった」
「お、れは……」
事実を認めるのを恐れる彼の胸倉を掴み、目線を合わせる。
例えどれだけの嘘を重ねても、心が叫ぶ真実は隠せない。
心剣士は、人の真実を否応なく見続ける存在だ。
綺麗な心も、汚い心も、全ては真実。
一度でも人の心に踏み入ったのなら、その真実から目を逸らすことなど、俺は絶対に認めない。
「離せ……俺は、お前じゃない……」
「間違えるな。俺はお前で、お前は俺だ。そして、俺は俺で、お前はお前だ」
「ぁ……ぅ……」
「真実から目を逸らすな。お前もわかっているんだろ?」
「……」
「さっきはちょっとばかしふざけて言ったが、俺にあって、今のお前に足りないのは、自分を受け入れ、信じ続ける決意だよ」
俺は、生まれたての赤子を見守る様に彼を見つめる。
彼は全身から力を抜き、その瞳から涙を流す。
「俺、は……お前が、羨ましかった……闇の欠片として複製された時、お前の記憶も複製された……いつでもそばに誰かが居て、いつでも笑いあえる仲間がいて……どれだけ頑張ろうと、どれだけ努力しようと、俺はお前のコピーでしかない……悔しかった……どうして俺は、紛い物なんだ……だから、俺はお前になりたかった……お前に、憧れてた……」
「……そうか」
「俺を、消してくれ……お前の贋作としてじゃなく……俺として……」
「あぁ……お前の心、借りるぞ」
彼から手を離して少し離れ、彼の胸元に手を当てて心剣の柄を握る。
ゆっくりと引き抜いた純白の剣。
それを、上段に構える。
「なぁ……パン作りって、楽しいか?」
「……楽しいよ」
「そっか……すまなかった、夜空」
「気にするなよ、空」
「空?……あぁ、俺は、空か……ありがとう」
「汝に未来が在らんことを……
白き剣が彼を、空を斬り裂いた。
空は笑って、光となって消えていく。
それと一緒に、手に持っていた空の心剣も消えていく。
そして、その光が教えてくれた。
マテリアル達と闇に囚われた哀れな少女を救え、と。
「……随分と少ない情報で無茶を言うな」
光に苦笑しながら言ったら、お前がお前であるならそれぐらいやってみせろ、そう言われた気がした。
俺みたいなこと言いやがって、そう思いつつも小さく笑ってしまった。
「さて、さっさと終わらせて、パン作りに戻らんとな」
海に落としたマテリアルの二人を救出しているシュテルを眺めながら、次にすべきことを考える。
救うべきは、マテリアル達ともう一人の少女。
どうすべきか考えていると、何故か怯えている二人を背にしたシュテルが話しかけてきた。
「あとは私達ですね。どうしますか?殺し合いをしますか?」
「いや、お前等を救ってくれって言われたもんでな」
「え?誰にですか?」
「誰でもいいだろ。てか、そっちの二人は何で怯えてるんだ?」
「さぁ?」
俺何かしたっけ?
動けない様にして海に落としたぐらいなんだけど……わからんな。
「まあいいか。一応名乗っておくぞ?俺は水無月夜空だ」
それを聞いて、怯えるのをやめた青髪フェイトが元気に名乗る。
「僕は力のマテリアル!レヴィ・ザ・スラッシャー!人呼んで雷刃の襲撃者!」
マテリアルは二つ名を付ける決まりでもあるのだろうか?
はやてもどきが偉そうなポーズで名乗ってくる。
若干足を震わせながら。
「我は王!闇統べる王!ロード・ディアーチェ!我の前にひれ伏すがいいわ!」
今思ったけど、どいつもこいつも見た目はそっくりなのに全然違うな。
と、それは置いといて。
良くわからん少女のこともそうだが、まずはこいつ等をどうにかして救わないと。
「とりあえず、ジェシー」
《やっと私の出番ですか!?なんかシリアスだったんで黙ってたんですけど、私のターンですか!?》
「そうだ、お前のターンだ。どうやらこいつ等は、自分達のことを今一理解できていないみたいだから、解析しろ」
《え?そんなの調べるまでも無いんですけど?》
「……は?」
《いえ、夜天の書のデータ解析した時にいろいろわかってましたし。闇の書の最深部に封印されてる砕け得ぬ闇っていうのがありまして、その体を構成する核である永遠結晶【エグザミア】。そしてそれを支える
「……お前から聞いた記憶がないぞ?」
《……その時、ニ○生が》
「後で潰す」
《いやん!》
俺とジェシーのそんな会話を聞いていたマテリアル三人は、呆然としていた。
自分達の知らないことをごく普通に言ったんだから、そうなるのもしょうがないな。
ただ、ロードは逸早く気を取り直して考え始める。
ぶつぶつ何か小声で言っている。
「エグザミア……エターナルリング……我等三基ではなく、四基?……………そうだ!システムU-D!」
「「!」」
「え?何?なんか思い出したの?」
ロードが何か思い出したようで、システムU-Dというのを聞いて他の二人も何かを思い出す。
なんなんだシステムU-Dって?
こいつ等に関係してることだと……なんだ?
「どこにいるかわかるか?」
「ぬぅ……わからん」
「おいちょっと待て」
「えぇい!黙れ黙れ黙れ!敵でしかない貴様に説明する義理などないわ!!」
……シュテルに聞こう。
ロードの口を塞ぐようにアイアンクローで掴み、シュテルに聞いてみた。
「むぅぅぅぅぅ!!!」
「何処にいるとか、大体でいいから分からないか?」
「……すいません」
「いや、分からないならいいんだ。気にするな」
「僕分かるよ!あっちの方!」
レヴィが海鳴市の方を指差して言う。
そのシステムU-D、暴走とか人類滅亡とかしないよな?
少し話し合って、マテリアル達と協力してシステムU-Dの保護を目的に動くことになった。
なのは達はアースラに転移しておいた。
アイツ等を気絶させてしまったのは結構な痛手だな。
人を探すなら人手は多い方が良いからな。
さっさと見つけて、新作パン作成したいもんだな。
なんか予想以上に長くなった。
しかもまだ続くし。
これは、GOD編とした方がいいですよね?
というわけで、章分けしました~
現在次話作成中、お楽しみに~♪