ハクノン紅茶とIS世界で頑張るのん!   作:是・射殺す百頭

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すみません。今回でも会長戦終わりません。ていうか今回は僕の作品では2話分くらいの長さです。


時のある間に薔薇を摘め:その2

次に目覚めると、そこはどこかの部屋だった。そこには、先ほどの少年と女性が生活を共に送っていた。

 

女性は少年に拳銃の取り扱い方を教えているようだ。一見物騒な風景だが、銃を除けばただ普通に母親が息子に何かを教えている場面にしか見えない。

 

「ああ、その通りだ。あれは母が子に自分の持ち得る物を託しているんだ。………………自分がいなくなった時に路頭に迷うことがないようにとね」

 

横にまた、先ほどの男が現れる。今度は敵意を持っていないことがハッキリとわかる。

どれ、顔でも覗いてやろう。

 

と思ったが、赤いフードを深く被っているために見えにくい。その上、どうやら顔には目以外が出ないように帯が巻かれているようで全く顔が見えない。

 

「そう簡単に素顔を晒すと思うか?」

 

「確かに、それもそうかも」

 

「ふん……………」

 

鼻を鳴らして彼は再び消えていった。

 

「さて、薄々感じてたことだけど」

 

この2人は、私がいる事に気づいていないという訳では無いだろう。おそらく私はこの世界の人間に認識されることが無い(・・・・・・・・・・)のだ。そう考える他ないだろう。

 

「もっと腕を上げるんだ。そんなデタラメな構え方じゃ当てるなんて無理だ」

 

「う、うん」

 

「君は反動制御どころか構え方すらまともに出来ないのか?全く手のかかるガキだよ」

 

そんなことを愚痴りながらも、彼女の顔には笑みが浮かんでいた。

 

「……………でも、ナタリア。僕はもう1人はしっかり殺せてるんだよ?」

 

「そりゃあ君の父親で、無抵抗だったからだろうが。抵抗してくるターゲットを無力化することの大変さを君はまだ知らないだけだ」

 

「うっ…………………そんなのわかってるよ…………」

 

そんなことを非難がましい目で見つめながらも溢す少年。

 

(本当なら、そんなことわかって欲しくは無いんだがな)

 

「え?なんか言った?」

 

そう、ボソッと彼女が呟いたことを私は聞き逃すことはなかった。しかし、少年にその声は聞こえていなかったらしい。

 

「やっぱり…………優しい人なんだ」

 

つい、私もそんなことを言ってしまう。

 

「いいや、それより!今日の講義のおさらいといくか!」

 

「えぇ〜………」

 

そんな2人のやり取りが、私にはどうしようもなく微笑ましく見えたのだ。

 

そこで再び、視界が暗転する。

 

 

 

 

次はまた、海だった。しかし、今度は浜辺ではなく海の上。

 

だが、今までと違うのは情景が動いていない。まるで時間が止まっているようだ。

 

日差しが登る所を見るとどうやら時刻的には夜明けごろらしい。

そして私が今立っているこの場所はーーー、

 

「ボート…………?」

 

そして私の眼前には、1人の青年が立っていた。すっかり成長しているが、どうやらこの青年は大きくなったあの少年のようだ。

まとまりのない、ボサボサな髪の毛が今でも少年時代の雰囲気を残している。

 

「そう。ボートだ。そしてそれだけじゃない。この時、彼女…………ナタリアは魔術師のオッド・ヴォルザークという男を始末した後だった」

 

するとまた背後からあの男が現れる。

 

「刺した者をグールへと変える蜂を使い魔としている男で、彼女が奴を始末したときに奴の体内にいた蜂が体外へと出て、あの旅客機の中にいた乗客や乗員全てがグールになってしまっていた」

 

確かに、よく見ると少し離れた上空に旅客機が飛んでいるのが見える。

 

「残ったのはナタリアただ1人。しかし彼女はなんとか操縦席に到達することに成功した。問題はその後だ。仮に空港に着陸を成功させたとしても、その後はどうなる?」

 

空港に着陸した後…………?

 

「ッ!………………空港の人間がグールに襲われる………!?」

 

「半分正解。だがそれだけじゃない。そのまま旅客機から蜂が流出する事がもう1つの障害だ。それでどうするか?」

 

どうする………?どうにかする方法があるのか?

 

「答えは簡単だよ」

 

そういって男が指を鳴らす。その瞬間、時間が動き始める。

 

すると、目の前にいた青年が何かを取り出して構える。あの独特な形状。知っている。ネットで何度か見た事がある。あれはーーー、

 

「スティンガー………………ッ!?まさかっ!」

 

青年は呟く。

 

「あんたは僕の本当の家族だ」

 

「やめっ……………………!」

 

しかし、私の制止の声が彼の耳に届くことはなかった。

 

スティンガーとは、英語で毒針の意味を持つ携行式の防空(・・)ミサイルである。

 

つまり彼は自らの育て親を、それこそ本物の家族のような絆で結ばれていた者をその手で始末したのだ。

 

涙が止まらない。確かに恐怖はあった。しかしそうではない。恐らく私は悲しいのだ。

そうするしかなかったこの青年の生き方が。

 

「どうして…………!?なんでこんな……………!」

 

「どうして?当たり前のことだ。あれだけの蜂を逃さず全て始末するのがどれほど難しいかなんてわかりきってるはずだ。それに、既にナタリアからはダイビングの用意は出来ていないと言われた後だ。神様ってやつは、あれだけのことをやらかしたナタリアだけを生きては帰さないつもりだったんだろう」

 

「それでも!」

 

「他に手がある」と、そう言いたかった。しかし私にはそれが言えなかった。

 

「そう。言えないだろう。だって他に手なんてないんだから」

 

それが正義だと、それ以外の方法はなかったと男は言う。

 

「正義なんて言うのは要するに自己満足以外の何でもない。この時点でそれに気付ければよかったのに。この馬鹿な男にはそれがわからなかった。この後どうなったか、想像がつくだろう?歪な正義がどんな終わりを迎えたのか」

 

ああ、頭の中に流れこんでくる映像にはどこか既視感を感じる。

 

人を助けるために人を殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して

 

その果てに待っていたのは世界との契約だった。そこでやっと男は気づいたのだ。本当に全てを救えるなんてことはありえない、そんなものは空想上の御伽話なのだと。

私はそれを背後から見続けた。

 

その通りだ。この男の言ったことはなんの間違いでもない。本当の正義の味方なんてものは一方通行な正義を執行するだけの存在であり、そんなものに救えるものなんてただの1つもありはしないのだ。

 

「それでも…………………それでもッ!!」

 

なにも救えない?なにも生み出さない?ただ壊すだけ?失わせ続けるだけ?

 

違う!そんなはずはない!確かに正義のために失われたものがあった!それでもーーー!

 

「確かに救われたものがあった!誰かの笑顔を守れた!それが何にも無いはずがない!」

 

「ふん、綺麗事ばかり並べるな。『正義』なんぞに何が出来る?ただ壊して、自己満足で終わりだ」

 

「だとしても!決して後悔だけはしない!だって失われたものは無価値じゃない!その犠牲のためにも!悲しみを抱えながら!引きずりながらでも!前に進み続ける!」

 

その瞬間、視界が割れて砕け散った。海も空も、全てが崩れていく。

 

 

 

そして現れたのは、霧がかった砂浜だった。

 

「ここは………………?」

 

「僕のデータ領域の最深部さ。さて、ここまで来るとは思っていなかったがその根性に免じて話くらいは聞いてやる」

 

「あれ…………フード」

 

男はフードをつけていなかった。どういう心変わりだ?

 

「僕なりの敬意さ。アンタがここまで来るとは思っていなかったと言っただろう?だからさ」

 

「そう、それはどうも。さて、本題に入ろうか?」

 

我ながら今さっきまで叫んでいたとは思えないほどに冷静だ。

多分、頭に上ってた血が『話を聞く』という台詞で降りてきたんだろう。

 

「時間がない。完結に言うよ?ある勝負に勝ちたいから力を貸して」

 

「勝負の手助けをすること自体は構わない。が、それはメリットがあったらの話だ。別にリスクを冒す訳じゃないが、ノーリターンなんて無意味だ。僕にメリットはあるのか?」

 

メリット?この男のメリットか…………考えてなかったな…………基本損得で動くタイプかこの男。

 

「正直に言うと、無い。でも、貴方の正義が損得の観念で動く訳ないよね?だって、別に感謝されるためにやった訳じゃない。貴方の言った通り。『正義は自己満足』ってやつ。要するに、誰かを救ったことで満足するってことだよね?」

 

「僕の正義の味方は店仕舞いだよ。悪いがもう請け負ってないんだ。無意味な戦いに首を突っ込めるほどの力は僕にはないんだ」

 

だったら簡単だ。力を差し出せばいい。

 

「なら、私が理由をあげる。貴方が戦う理由を。貴方を、『私のための正義の味方』にする」

 

「アンタは何を言っているんだ?僕を正義の味方にするだと?」

 

「力をあげる。貴方に戦う力を」

 

向こうの話なんか聞いていられない。一方的に話を進める。

 

「おい、話を…………」

 

「貴方が!なんと言おうと!貴方を私の正義の味方にする!私に力を貸して!」

 

「…………………………」

 

男は黙ってしまった。ちょっとやりすぎた?

 

「なにが、アンタをそこまでさせる?何故そうまでして僕の力を欲する?」

 

何故?理由か……………理由は、

 

「勝ちたい人がいる。負けたくない。私に力をくれた人を、負けさせたくない。ただ、それだけ」

 

「………………それだけか?たったそれだけ?そんな理由でここまで来たのか?」

 

「え?なにかおかしい?」

 

その言葉を聞いた男は大きな溜め息を1つ吐いて、頭を抱え始めた。

 

「いいか?誰に騙されたか知らないが、このデータ領域に意識を挿入させるには相当な負担が脳にかかるんだ。下手をしたら脳みそが焼け焦げることになる。ここに来た時になにかあっただろう?」

 

「んー、いや?島で少し暑いなぁって感じただけだよ?」

 

「はぁ………………データで出来た世界に温度なんてあるわけ無いだろ…………」

 

あっ、あああぁぁ!?そういうこと!?あれって気温じゃなくて、脳の温度が上がってたってこと!?

 

「うっわぁぁ…………!アーチャーの奴(あのバカ)、後で絶対〆る…………!」

 

「……………………人のことを、随分信用しているんだな………?」

 

ん?なんだ?突然?

 

「当たり前じゃん。長い間一緒にいた相棒だもん。もう家族みたいなものだよね、保護者的な存在」

 

「家族…………………か」

 

ああ、もしかして地雷踏んだ?いや、ここまで来たら踏み込むべきか。地雷源に踏み込んだなら、地雷が爆発するより早く駆け抜けるだけだ。

 

「うん、だからそんな奴の顔に泥を塗るわけにはいかない。そんな奴がピンチだから、何をしてでも助けたい。命を賭けたとしても」

 

自分のために命を賭けて戦ってくれたアイツのために、私も命を賭して戦う。流石に死ぬのはゴメンだけどね。

 

「………………………名前」

 

え?今何か言ったか?

 

「今、なんてーーー」

 

「名前だ」

 

「うえ?」

 

名前?私の?

 

「雇い主の名前くらいは把握しておくべきだろう」

 

ええ?な、なんだ急に?

 

「認めよう。アンタが僕の、雇い主(マスター)だ」

 

そう言いながら、男は顔に巻かれた帯を解いていく。

 

「………………貴方は…………」

 

そう言えば、小さい頃の顔しか正面の顔を見たことがなかった。雰囲気が違って、全くわからなかった。

 

「貴方、だったんだね」

 

その顔には見覚えがあった。あの月下の夜。『いつか正義の味方になる少年』と『いつか正義の味方を目指した男』が共に月を見上げて誓った。″夢を継ぎ、必ず叶える″と

そう、男の名はーーーーー、

 

「僕は『エミヤ』、守護者になる前は『衛宮切嗣』と呼ばれていた」

 

ここに、過去と未来の正義が契約を果たした。




あんれ?わっちにしては、長くないかや?
ていうか本当にすみません。実は、僕zeroは原作読んでない上に、アニメもそこまで見込んでいないので、切嗣の価値観については完全に自分の想像です。本当にすみません。
あと、アガルタクリアしました。面白かったです。不夜城のキャスターは好きなので欲しかったんですけど、最後の方の『あの一言』がちょっといただけなかったです。なんとなく彼を軽く見たような気がして………僕は彼のこと大好きなので(likeなれどloveにあらず……!)あっ、ネタバレかも知れないですね。すみません
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