白猫と怪盗   作:un

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三話 次元と革命軍

 

 

「ひげっぴ~~元気?」

「おいおい、それで呼ぶなよ」

 

 革命軍のアジトにて、酒を飲んでいた次元の背後から巻髪の少女が騒いでいた。

 

 「そのひげってのはやめろ…」

 「いいじゃん!! いや~~ひげっぴが内に入ってくれて助かった!! 革命軍の兵士の訓練もいい感じだし、そうだ!! 今度変装のやり方教えてよ!!」

「俺は入ったとは言ってないぞ」

 

少女。エリーナが次元の背中を強くたたき、次元は自分の主張が聞いてもらえない箏を悟りグラスを傾けた。

 

 

話は数日前に遡る。

 

 白猫の涙から発せられた光に包まれ、仲間たちとはぐれた次元は一人荒野にいた。盗賊らしき男たちを蹴散らしその後一人で荒野を歩き夜になって野宿していた時だったーー

 

「ふー」

 

 愛用のたばこを吸いながら夜空を見上げていた。そして、ほんのわずかな、耳を澄ませてもわかりにくい足音が聞こえ腰のマグナムに手を伸ばす。

 

「…さっきからなんだ? 仕返しでもすんのか?」

 

 岩陰に向けマグナムを向け、引き金を指にかける。そして、岩影から出てきたのはーー

 

「ふ~~ん? 変わった武器使うんだ?」

 

 岩陰から出てきたのは、金の巻髪をしたどこか令嬢の雰囲気を持った少女だった。少女は不思議そうに次元のマグナムを見て、次元は出てきた少女を見て驚きマグナムを下ろした。

 

「たくっ、なんだってこんなところに女がいるんだが…さっさと家に帰んな」

「もう、何? こんな美少女を前にして何も思わないの? お・じ・さ・ん?」

「おじさんは今忙しいの、さっさと行け」

「え~~何それ? 今何もしてないじゃん、うける~~あ、ところでさ昼間盗賊倒してくれてありがとうね~~あいつらがいなくなったおかげでここまで進む箏ができたし」

「そいつは、どういう箏だ?」

「…屋敷の事は何も知らないようね…悪い事は言わないはすぐにここから離れなさい。」

 

 少女は真剣な顔でそう言って姿を消す。次元は少し考えた後たばこを捨て大岩に昇ると大きな屋敷が建っているのが見えた。

 

「こんなところにずいぶんと豪勢な屋敷があるじゃねえか、王様でも住んでいんのか?」

 

 懐に手を入れるが、タバコの箱の中が空だと気づき舌打ちをし豪華な光で照らされている屋敷を眺める。

 

「まずいな、弾薬があっても水と食料がないとどうしようもないぞ…」

 

 あと、タバコも必要だな。とつぶやき、次元は荷物を持ちしばらく歩いて屋敷に近づいた。屋敷には、数人の兵達が監視の目を光らせていたが次元は足音を立てず闇に潜んで屋敷に侵入し食料庫らしき地下に侵入するが

 

「やれやれ…面倒な箏に巻き込まれたな…」

 

 次元はため息をつきながら、薄暗い牢屋と中にいる老若男女をみて舌打ちをした。

 

 牢屋にいる涙目の子供や、傷を負った大人達と目が合いどうやってここから逃げるか考えていると、扉が開き見張りが入ってきた。次元は素早く見張り番を気絶させ、腰につけていた鍵を取り、牢屋の中に放り投げる。

 

「なぁ、すまねぇが水と食料はどこにあるかしらねぇか?」

 

 次元は牢屋の中にいる者達に質問し、一人、また一人と答える。食料庫の場所や、何故かこの屋敷に住む当主の部屋や財宝の部屋まで答えてくれた。どうやら、牢に入れられていたのはどこからか買われた奴隷や、屋敷でヘマをしてここに入れられた者などのようだった。

 

「勘違いするなよ、俺は別に助けるつもりはないからな」

 

次元は見張り番の衣類を取り、変装し牢の部屋を後にし屋敷の中を堂々と歩いて食料庫まで行く。途中、太った豪華な服を着た男を見かけ、その男こそが屋敷の当主なのだが次元は無視して食料庫まで辿りつき、置かれていた果実をかじる。

 

「さて、ここはどこだがしらんが…金も必要だよな…」

 

 この荒野から抜けた後、ルパンや五右衛門を探すにしても金も必要だと考え、次元は食料を漁った後、食料庫を後にし屋敷の中を移動したーー

 

 

 

「…警備は厳重か…」

 

 エリーナが岩陰に隠れ双眼鏡で屋敷を覗いてつぶやく。彼女の後ろには革命軍の同士達が控え、屋敷に囚われている者達の救助と、当主が悪事により溜め込んだ財産を奪う計画を実行に移そうとしていた。

 だが、当主は金に物を言わせあちこちから強い用心棒を雇っており迂闊に手が出せないでいた。

 

 「こっちも数は少ないし、できれば戦闘は避けたいけど…ん?」

 

 屋敷の方からなにか音が聞こえ、エリーナが双眼鏡を覗く。すると、屋敷から火の手が回っており、見張り番や用心棒達が慌てている姿が見えた。

 

「どうなってるの?」

「リーダー、どうしましょう?」

 

 革命軍の一人が判断を仰ぎ、エリーナは思考する。なんで火事が起きたのかは知らないが、敵が混乱しているこの時を逃す訳にはいかない。

エリーナは同士達に計画の実行を告げ、彼女達は動き出した。

 

 

 一方、火事が起きている屋敷では。

 

 「な、何をしている!? 火を消せ!! 」

 

 太った男が慌てた声で見張り番や用心棒達に火を消すよう命令をしていた。

 

「し、しかし旦那様!!」

「ひ、火の手が激しくて!!」

「そ、それに何故か貯水の蓋が固くて開かないんです!!」

 

火が広い屋敷のあちこちから同時に発生して混乱しているのと、さらに飲み水としても使っている貯水の蓋が何故か開かず消火活動ができないでいた。

と、当主に一人の見張り番が慌てた様子で話しかける。

 

「た、大変です!! 旦那様の金庫室にも火の手が回っております!!」

「な、なんだと!! わ、私の金が!!」

 

 当主は狂った声を出し、バタつきながら走り金庫室の鍵を開き中を確かめる。

 

「な!? 火、火などついては、ないではないか…」

 

 金庫室に火の手がない事に安堵する当主。だが、見張り番の出した催眠スプレーをかがされその場で眠ってしまう。

 

「ほぉ、金銀財宝じゃないか」

 

 変装を解いた次元が金庫室に入り金貨を手にする。未だにここが異世界だと気づいていない次元は、当主がどこかのマフィアで闇家業で稼いだ財宝だとしか思わず持てる分だけ財宝を荷物につめた後、寝ている当主を金庫室に連れ込み。彼の衣類を奪い服を着込み、当主の顔に似せたマスクをかぶった。

 

 後はこの姿で屋敷の兵達に屋敷から退避するようにでも言い、自分はトンズラする考えを持ちながら、どんどん燃えていく屋敷を進むとあちこちで剣のぶつかり合う音が聞こえた。

 

どうして火災の中で争いの声が聞こえるのか気になり、当主に変装した次元はそっと玄関の広場を覗くと、屋敷の兵達がなにかの集団と戦っていた。

そして、その集団の中で先ほどあったエリーナの姿があり持っている弓で次次と傭兵の動きを止める。だが、エリーナの死角になっているところから一人の傭兵が弓を構え彼女を狙っているのが見え、速攻でマグナムを抜き弓を破壊した。

 

「!?っ あれは!!」

 

 当主に変装した次元に向け、エリーナが弓矢を放ちマスクの頬をかする。マスクはひびが入りすぐに次元の素顔が現れ、それを見たエリーナや周りの人間が驚くが突然屋敷が揺れた。

 

「畜生、爆弾のタイマーもう少し遅くすればよかったか…」

 

 当主の衣類を脱ぎ捨て、自身に襲いかかる傭兵を気絶させながら階段を降りエリーナに近づく。

 

「ここはもうやばい、にげろ!!」

「で、でも捕まった人達が…」

「…ええぇ、畜生!!」

 

 エリーナの顔をみて、次元は毒づきながら彼女達に牢屋の場所まで案内させた。燃えて崩れていく屋敷を見て兵や傭兵達は我先へと逃げ誰も彼らの邪魔をする者がおらず、やがて数時間後――

 

 

 

「…ふぅ、あぁ、タバコ吸いてぇ…」

 

 燃え盛る屋敷からエリーナ達と共に脱出した次元は、朝日が昇る空を眺めながらポケットの中を探るが目当てのタバコは既に切れており、舌打ちをした。

 辺りでは、革命軍の同士達が救助した人達の介抱と、いまだに半裸で寝ている屋敷の当主を運んだり、さらに屋敷から手に入れた財宝をみて喜ぶ者などとにかく忙しそうにしていた。

 

「こんなところにいたんだ、おじさん?」

 

 船の端に座る次元に声をかけるエリーナ。次元はそっぽを向き、朝日で輝く海を眺めている。

 

「おじさんはやめろ」

「ありがとう、おじさんのおかげで助かった…ところで、おじさんは何者? 」

「さぁな…」

 

 その後船は革命軍のアジトに辿りつき、その後次元はエリーナ達との話しからここが異世界だと知り。行くあてがないならここにいれば? と話しになり、かつてとある王国の兵の訓練をした事もあり、革命軍の兵の教育などをしていつの間にか仲間達から信頼されていた。

 

「たく…これも全部、あの石っころのせいだ…」

 

 ルパンが手に入れた白猫の涙を恨みながら、次元はグラスを傾けるのであったーー

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