飛行島。
文字どうり、空に浮かび移動する島の事で、今では人だけでなく獣人や機械人形など様々な種族が住むようになった。
そんな多くの種族が住むこの島にもギルドがあり、赤髪の少年と銀髪の少女。
さらに、言葉を話す白猫がギルドの建物にいた。
いつもどうり、依頼で魔物を倒したことを報告しラーレッタに伝えるが、今日はいつもと違った。
「だから、お仕事終わった後にでも。お茶でもどうかと」
「はぁ...」
赤い上着を着た男からしつこくお茶の誘いをうけ、ラーレッタだけでなくアイリスたちも困った顔をしていた。
依頼先で出会った男はルパンと言い、彼が言うには異世界から来たとのことだが、彼女達はあまり信じていなかった。
魔物を共闘して戦ったあと、そのまま行く当てのないとの事でなし崩し的に連れてきてしまい今に至る(島に来て、獣人などを見て騒いだところもあったが)
「いや~~変な所に迷いこんでどうなるかと思ったけど。こんな美人がいるなんて!!
お耳のとんがりは最近の流行りかしりませんが、似合ってますよ!!」
「こら!! 何ナンパしてんのよあんた!?」
キャラトラが鋭いツッコミを放つがルパンは耳を貸さず、ラーレッタの手を離さない。
かつて、毒蜘蛛の入れ墨をした女暗殺者や、女戦士のみで構成された武装組織の一人だろうと同じように接してきた彼には誰が何を言っても変わらない。
もっとも、そんな彼の気質のおかげで闇を抱えていた彼女達は自由や愛を知ることができたのはこの場にる者には知らないことだが。
「さぁさぁ、こんな狭いところじゃなくて。太陽のある外で...」
「何を騒いでおる」
ルパンの声を遮ったのと同時に、ふさふさの毛が生えた剛腕がルパンの首筋を掴む。
「な、おい!! 今いいとこなんだから、邪魔すんな!!」
ルパンが背後を見ると、ライオンのような男が。いや、二足歩行で言葉を話す獣人がいた。
「先ほどからおかしな声が聞こえたとおもえば、こいつが原因か。まったく、
おかしな奴が増えたようだ」
「いいから離せって!! だいたいなんでライオンが人間みたいに立って話してんだよ!!」
ルパンが叫ぶが、獣人ことバロンは鍛冶で鍛えられた腕力でそのままルパンを建物の外に連れて行ってしまう。アイリスが声をかけるが「ここでは、他の者の邪魔になるので場所を変えましょう」と告げ、アイリスたちはバロンの背後についていく。
やがて観念したか、バロンにまるで荷物のように扱われて運ばれるルパンを見て、
軍服を着た者や、クラゲのような髪飾りをした少女などが見る中、一同がついたのは
バロンの仕事場である鍛冶屋だった。
「ふむ、ここなら騒がしくても問題なかろう」
「ちくしょう、人を荷物扱いしやがってこのライオンが!!」
バロンに悪態をつくが、バロンは別に気にした様子がない。端からみれば、猿がライオンに向け挑発しているみたいで少し笑えるが、アイリスたちはこれ以上ややこしい事をさけ、黙って話を聞く。
ルパンから盗んだ白猫の涙の涙が原因で、今に至ることを聞き
「泥棒!!」
とキャトラが叫ぶが「俺は大泥棒だ!!」と反論しバロンは思考してから
「もしや、それはルーンなのでは?」
と答えたーー
「けっ、不思議な力が宿る石っころってことか、そのルーンってのは?」
酒瓶を片手に、話を聞いている次元。
エリーナは、手に持つ赤いルーンを見せ説明していた。
「そうそう。中には、すんごい力を秘めたルーンがあるから。もし見つけた頂戴ね?」
「へいへい」
異世界に来て数日。すっかり革命軍のメンバーと打ち解け、時には仕事を手伝うようになっていた。ルパン達を探す手がかりを得るためもあるが、もしこの先どこかに行くのに金が必要になるために仕方がなかった。
しかし、これまでの実力やとある王国で兵達に教育した経験から「先生」「教官」と呼ばれるようになったのは誤算だったが。
「ってことは、白猫の涙ってのがルーンであれば説明がつくな。さて、どうすっかな」
次元がつぶやき、エリーナが一瞬悲しい目をするが、いつもの雰囲気でその場から立ち去る。彼女は次元から事情は聞いており、事が片付いたら元の世界に戻る事も知っていた。
「ふぅ、なんだろう。この胸のもやもやは...」
苦しい人々を救うために戦う革命軍の長は、名前の付けようがない一つの悩みを抱え
ながら、仲間たちの元に戻るのであった。