いつか平和な海で   作:瑞穂国

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こちらでは、ものすんっごいお久しぶりです、はい

本当に久しぶりの投稿となりました今回は、我らがコンゴウさんとヒエイさん

原作だと、ヒエイはいい参謀な感じですが、映画は結構無理してリーダーやってる気がするなあ、と

この二人も、映画ではあんまり絡みなかったですよね。あの、コンゴウがかぶりつくシーン以外

仲のいい姉妹だとは思うんですが

というわけで、今回もどうぞよろしくです


大切だから

温暖化のせいで季節感の薄くなっている日本にも、暦の上では冬が来る。とは言っても、雪が降るほど寒くなることは、ここ横須賀ではまずない。だから、今私の周りに深々と降っている雪は、概念伝達の仮想空間の中で、擬似的に産み出されたもの。

 

それでも、とっても風情がある。半年ほど前の彼女には見られなかったことね。

 

そんな、幻想的な空間を作り出した本人―――ヒエイは、何やら難しい顔をして、湯気の立つ紅茶を出してくれた。私と、彼女の分。向かい合う席に、ヒエイも腰を降ろした。

 

そういえば、彼女の姉も紅茶好きだったわね。その辺、影響を受けてたりするのかもしれない。

 

「どうぞ、お飲みください」

 

「ええ、いただくわ」

 

腰掛けたヒエイの薦めを素直に受けて、私は前のカップに手を伸ばした。いい香り。これは心安らぐ匂いだと、私のコアはよく認識している。

 

「おいしいわ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

緊張気味にこちらを窺っていたヒエイは、ほっと胸を撫で下ろす。それから自分も唇を湿らせて、概念伝達で私を呼び出した、本題を話しだした。

 

「それで、あの・・・ムサシ様に相談というのは、ですね」

 

改まった口調のヒエイに、私は苦笑いを浮かべてみせる。生真面目な性格は、メンタルモデルになっても変わらないみたいだ。

 

「ムサシ、でいいわよ」

 

「は、はあ。―――それでは、ムサシ」

 

「なあに?」

 

私が尋ねると、再び迷うような間があった。

 

「その・・・実は・・・」

 

思いつめた表情のヒエイに、私も静かに息を呑んだ。これは、かなり覚悟のいる事案かもしれない。

 

やがて、両目をギュッと瞑ったヒエイが、えいやと勢いをつけるように、その口を開いた。

 

「さ、最近、コンゴウお姉様と話ができなくてっ!」

 

・・・。

 

・・・・・。

 

・・・・・・・。

 

・・・えっと、何?私は盛大な惚気を聞かされてるの?

 

「ごめんなさい、話の流れが全然見えないのだけれど・・・」

 

超戦艦の演算能力を以ってしても、処理できない事案なんてあるものなのね。

 

「その、実は―――」

 

ヒエイの話を、惚気を全て抜いて簡潔にまとめるとこうだ。

 

和平の発効に当たって、コンゴウが“ブラック・ティーパーティー”を開くことを知ったヒエイは、これを彼女からの独立―――もとい、コンゴウに認めてもらいたくて、“生徒会”を結成することを決意。以後、コンゴウとは別れて、“生徒会”の活動に精を出してきた。が、活動に一生懸命になり過ぎた余り、随分と長い間、コンゴウと連絡を取れていなかった。そのことに思い至った彼女は、コンゴウと概念伝達で話をしようとした。が、

 

「一体、どうして話をすればいいのか、と」

 

あれこれ悩んで、結局未だに話はできていないと言う。

 

なんだ、この惚気話は。超戦艦、あまりの阿保らしさに絶句中ですよ。

 

でも、こうして思い詰めて私に相談してくるヒエイを無碍にはできない。ちょっと考えてから、私は口を開いた。これでも、姉妹の仲に関してはそれなりによくわかっているつもりだ。

 

「心配することないと思うわよ。コンゴウだって、あなたと話をしたいと思ってるはず。だから、そういうのは気にしなくて大丈夫だと思うわ」

 

「そういう、ものでしょうか・・・?」

 

少し安堵したように、ヒエイがこちらを窺った。まあでも、彼女の心配も、わからなくはない。大切に思うからこそ、大好きだからこそ、いざ久しぶりに話そうと思うと、どうしたらいいのかわからなくなるものなのかもしれない。

 

こういうのって、結局意を決して会ってしまうのが一番早いと思うのだけれど・・・。

 

目の前のヒエイの様子を見るに、それは無理そうね。

 

・・・よし。

 

「ねえ、ヒエイ?」

 

「あ、はい、ムサシ」

 

私が呼びかけると、ヒエイは真っ直ぐにこちらを見返した。

 

「あなたの心配はわかったわ。コンゴウには、私からそれとなく、あなたのことを聞いてみる。そうすれば、あなたも少しは、話しやすくなるんじゃないかしら?」

 

「よろしいのですか?」

 

「ええ」

 

大したことはできないけれど、これくらいはいいだろう。少しでも、ヒエイの後押しになればいいのだけれど。

 

表情を輝かせて、勢いよく頭を下げたヒエイの期待に応えるべく、私はコンゴウと接触する口実を探し始めた。

 

 

口実を探す必要がなくなったのは、それからたった一日後のことだ。今度はコンゴウの方から、私に接触してきた。

 

ひらひらと舞い落ちている雪は、どこか見覚えのある風景だ。その中で椅子に腰掛ける彼女は、無言で私に椅子をすすめると、暖かな紅茶を淹れてくれた。

 

良い香り。でも・・・あれ?私の記憶が正しければ、これって・・・。

 

こほん。そんな咳払いと共に、コンゴウがゆっくりと口を開いた。

 

「わざわざ呼び立ててすまなかったな、ムサシ」

 

「いいのよ。私も丁度、あなたに用があったところなの」

 

コンゴウは一瞬不思議そうな顔をした後、「そうだったか」とだけ呟いた。

 

「それで、私の用件というのは、だな」

 

いつでも冷静で淡々とした彼女には珍しく、言い淀むような間があった。

 

「・・・最近、ヒエイが全く連絡を寄越してこないのだ」

 

・・・。

 

・・・・・。

 

・・・・・・・。

 

・・・えっと、何?私は盛大な惚気を聞かされているの?

 

「コンゴウから連絡してあげたら?」

 

その方が、ヒエイも喜ぶと思うし、とまでは言わなかった。

 

コンゴウは、まるで男子に告白する女子中学生か何かみたいに、もじもじとはっきりしない答えを返した。

 

「それはその・・・何か違うというか・・・。私から連絡を取るのは、恥ずかしいというか」

 

もう、お前ら二人でやってろ!と、叫ばなかっただけ、超戦艦は理性的だと思う。ほんと。

 

帰ったらお姉ちゃんに思いっきり甘えてやると、私は固く決心した。

 

「・・・どうしたらいいだろうか?」

 

そんなの、私は知らないわよ。

 

本当に、この二人は。手の掛かるところまでそっくりな、似た者姉妹なのだ。

 

妹が心配なくせに、それを表に出そうとしない姉と。

 

姉に甘えたいくせに、素直になれない妹。

 

もう、本当に。苦笑が漏れちゃうくらいに、仲良しなのだ。ハルナとキリシマが嫉妬しても知らないわよ?

 

そしてそんな二人のことを、愛おしい姉妹と思っている私も―――

 

「わかったわ、コンゴウ」

 

いじいじと人差し指をいじるコンゴウが、いつもの冷たい表情はどこへやら、パッと明るい顔になった。

 

 

「―――っていうことがあったんだよ」

 

「そう。それは大変だったわね」

 

コンゴウ型長女と次女の顛末を語った私に、お姉ちゃんは優しく微笑んだ。

 

太陽が傾き始めた部屋。ソファに座るお姉ちゃんに、私は膝枕をしてもらっている。柔らかくスベスベな、雪のような肌の太ももを直に感じて、まさに至福の一時。ああもう、本当にずっとこのままがいい。

 

「それで、その後はどうなったの?」

 

私の髪をそっと撫でながら、お姉ちゃんは楽しそうに続きを促してきた。

 

「それがもう、大変だったんだって」

 

そう言いながらも、声が弾むのとにやける頬を抑えることができなかった。

 

善は急げ。人間のことわざに従って、私はすぐに動いた。お互いに、相手に連絡を入れる決心が着かないのだから、二人を一緒に、私が誘うことにしたのだ。

 

コンゴウとの概念伝達から一日。それぞれを概念伝達で呼び出す。もちろん、お互いが来ることは伏せて、あくまで私と二人きりの会話という形で。普通なら、概念伝達使用時の認証コードでわかってしまうのだけど、それくらいの欺瞞は、圧倒的な演算処理能力を有する私のコアをもってすれば容易なことだ。

 

かくして、私の概念伝達空間に足を踏み入れた二人は、そこでお互いの存在を知るのだった。

 

「最初はね、もう二人ともガチガチで。相手のこと意識しまくりなのに、全然話せなくて」

 

でも、ぽつりぽつり、ちょっとずつお互いの近況報告から。それから、あれやこれやと、話をし始めた。

 

コンゴウが見た、クジラの話。ヒエイが見た、イルカの話。それぞれの僚艦のこと。美味しいお菓子。ピーマン。ハルナとキリシマの近況を知らせたのは、私。

 

お気に入りの紅茶の話になった時、二人はそれはそれは嬉しそうにしていた。

 

「あの二人は、もう大丈夫だよ」

 

「ええ、そうね。ムサシのおかげね」

 

「そんなことないって」

 

元々、仲のいい姉妹なんだ。ただ少し、環境の変化に戸惑っていただけ。

 

―――「ありがとう、ムサシ」

 

そう言って笑った二人が見れただけで、なんだか私も、幸せな気持ちになった。

 

「これからは、こまめに連絡を取るようにするって」

 

「そうね。それがいいわ」

 

お姉ちゃんが頷いて、華のように微笑む。私のコアが蕩けてしまいそうな綺麗な表情に、私も満面の笑みで応えた。

 

「それで、ムサシ?」

 

「なあに、お姉ちゃん?」

 

「どうして、膝枕をしてほしかったの?」

 

すりすり。ふっくらとしたお姉ちゃんの太ももを手でさすりながら、私は考える。

 

「うーん、よくわからない。二人を見てたら、なんとなく」

 

我ながら、要領を得ていない気がする。お姉ちゃんに甘えようと固く決心したのは私自身だけど、その根拠となると・・・。

 

やっぱり、コンゴウ型姉妹の、微笑ましい交流を見たから、としか言えなかった。

 

それでも、お姉ちゃんはなんとなく、私の感覚をわかってくれたみたい。一際嬉しそうに目を細めて、

 

「そう。ふふふっ、ムサシは甘えんぼさんね?」

 

笑顔を湛えて、そう言うのだった。

 

「いいのー。妹は、姉に甘える特権があるんですー」

 

そう言って私が口を尖らせると、お姉ちゃんの笑みがさらに大きくなった。澄んだ瞳、長いまつ毛、潤んだ唇。私が大好きな、お姉ちゃんの笑顔だ。

 

自然と、私の表情も綻ぶ。二人して笑った。

 

「ムサシ、そろそろお茶にしない?」

 

「うん、紅茶がいい!」

 

お姉ちゃんの提案に跳ね起きる。お姉ちゃんの淹れてくれるお茶は、緑茶も紅茶もおいしいけど、今日は紅茶が飲みたい気分だった。

 

昼下がりの部屋に、芳醇な薫りが漂う。少しの苦みを伴った琥珀色の紅茶を、二人でゆっくりと傾けた。

 

 

 

後日、「うちの旗艦が姉(妹)の惚気話ばかりしてきてつらいです」との訴えが、アタゴとマヤ、ミョウコウ型姉妹からもたらされたのは、また別の話だ。




いかがでしょうか?

原作はコミック派の作者、コンゴウ戦の続きが気になって気になって、夜六時間しか眠れない日々でございます

次回をどうするか考えてるのですが、パウル君出したいんですよね・・・ダメかな・・・

また、次がありましたら、よろしくお願いします
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