刹那サイド
「僕が保護されたのは1歳の頃・・・だったらしい」
「らしい?」
「実験体といえど、流石にそんなに幼い記憶なんて無いよ」
実験記録のデータを漁った時も1歳でデータが終わってる辺り、確かな事実だろう。修兄の疑問に答えながら思い出していた。そして光が手を上げる。
「せっちゃんは自分が叔母さんの子供って何時気付いたの?」
「・・・栞位の頃には知ってたかな」
「そ、そんなに前から・・・」
「ま、まあ後は僕を暗殺しようとして来た奴らに聞いたりとか」
「あ、暗殺!?何時だよそれ!」
「お、落ち着いて・・・」
修兄に揺さぶりを逃れて説明する。もう隠し事は何一つ出来なさそうだ。
「最初に暗殺されそうになったのは確か3歳位の頃かな?」
「3歳って、まだ真面に能力も使えないじゃねえか」
「だからこそでしょ?こんな生きた兵器潰さずにどうする?」
「お前は兵器じゃねえ!」
「それは一部の人間だけさ。考えてみなよ、どんな能力も創れて使える人間なんて只のバケモノだ。しかも王族って・・・」
僕の言葉に何も言えないのか、全員が押し黙る。
「刹那、お前がそんな頃から暗殺なんて聞いてないぞ」
「言ってないからね。言えないでしょ、3歳で戦闘しましたなんて」
父さんの言葉に返す。しかも相手が転生者な分、尚更質が悪い。まあ、そのおかげで相手の特典の王の財宝やその他諸々を手に入れたんだけど・・・。
「とまあ、色々あって暗殺者の一人からこう呼ばれたんだ。《創世者(クリエイター)》ってね」
「また凄い二つ名ね・・・」
「僕の能力から来てるんでしょ。向こうは僕を侵略の為の道具にしようとしてるみたいだしね」
「安心しろ、そんな事は絶対にさせないからな!」
父さんが僕を見て言うが、思わず苦笑してしまった。その様子に気付いた皆の視線に僕は答える。
「父さん、僕は貴方の部下に襲われたんですけど・・・」
「な、何ィ!?」
「あのさ、《月山 習》って覚えてる?」
「ああ、行方不明になったあの・・・」
父さんは数年前に失踪した部下の顔を思い出す。
「あの人、送り込まれた暗殺者だったよ」
「・・・嘘だろ?」
「嘘じゃないよ。外面は完璧だったね。でも、目が違うんだ」
そう、アイツは外面こそ善良な人間だったが、櫻田家の人間を見る度に目の奥にドス黒い欲望が見えた。前世は人の顔色を伺う事が多かった所為か、そういう事に敏感になっている。
「あと、ソイツ凄まじい変態だった。僕の血舐めて興奮してたし」
「うわぁ・・・」
誰かのドン引きする声が聞こえた。僕が一番言いたいよ。僕の腹に風穴開けて血を舐めた瞬間、ハーモニー!とか叫び始めるし。結局能力奪って、修兄の能力使ってマリアナ海溝に飛ばした。今頃分解されてるんじゃないかな・・・。
「とまあ、色々不穏な単語聞いたからコッソリ調べたんだよ。そしたら出てきましたさ・・・僕の出自と実の母が・・・」
酷い物だった。あと少し遅かったら僕は感情を消された殺人兵器になってたし・・・。
「とまあ、何だかんだでこの二人を引き取ったりして今に至るって事」
ヨシュア達を撫でながら話を終わらせる。部屋の空気がお通夜より酷い物になった。まあ、こうなるな。
「・・・あ~・・・良かったら家出てくけど?」
「ま、待て!何故そうなる!?」
「バレたら絶対気不味いし、20歳になったら一人暮らしをしようとは前から考えていたんだ」
会社の部屋使えば良いし。そう思っていると、栞が僕の服を引っ張る。その目には涙が浮かんでいた。
「兄様・・・居なくなっちゃうの?」
「・・・それは・・・」
「・・・嫌・・・居なくなっちゃ嫌・・・」
「栞・・・」
栞は僕の足にしがみついて離さない。どんどん溢れる涙でズボンを濡らす。
「好き嫌いしないから・・・良い子にするから・・・」
「し、栞・・・」
「行かないで・・・!」
そう言って栞は大泣きし始める。こんな栞を見た事は一度も無かった。焦っていると、輝と光も泣きながらしがみつく。
「兄上・・・行っちゃダメです!」
「せっちゃん行っちゃヤダーーーーっ!」
どうすりゃ良いの・・・。考える暇もなく、中学生組にもホールドされる。
「絶対にそんな事させないから・・・!」
「どんな過去だろうと刹那兄は僕達の家族だ!」
・・・良い弟達を持ったなぁ、僕・・・。思わず溢れてくる涙を拭く前に修兄達にも抱きつかれる。
「ごめんね・・・ごめんねせっちゃん!」
「気づけなかった私達は最低ね・・・」
「辛かったな・・・ゴメンなぁ・・・!」
「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」
皆の優しさに耐え切れず、僕は大声で泣いた。そんな僕を皆は強く抱きしめてくれた・・・。
「・・・お見苦しい所をお見せしました」
泣き止んだ僕は恥ずかしさのあまり今すぐ消えたい気持ちに襲われた。あんなに大声出して泣いたのは初めてだ。前世でも無かった。出したら殴られたしね。
「・・・お父さんの泣いた所初めて見た」
「僕もだ・・・」
息子達よ、お父さんの痴態を見ないでくれ・・・。軽く死ねるから。
「あの・・・かな姉、そろs「ダメよ」デスヨネ~」
「ダメに決まってるでしょ。でないと何処かに行っちゃう・・・」
そう言ってかな姉は僕を抱きしめて離さない。足元には栞と茜が未だに引っ付いてる。助けを求めるが、全員に目を逸らされた。解せぬ。
「ほ、ほら離れて。もうすぐ撮影あるんだから」
「それなら今日はもう中止だ」
「ぐぬ・・・よ、ヨシュア達を送っていかないと!」
「ねえ、ヨシュア君、ミレイユちゃん。良かったら家に泊まっていかない?」
「良いの!?行こうお兄ちゃん!」
退路が無い・・・。この後開放されるのに二時間掛かった。
~二時間後[櫻田家・自室]~
「此処がお父さんの部屋・・・」
「ベッド大き~い!」
あれから食事と入浴を終えて、パジャマ姿のヨシュアとミレイユを部屋に入れる。ヨシュアは部屋をジロジロと見つめ、ミレイユはベッドに寝転がる。僕のベッドには昔から皆が入ってくる事が多かった為に、気がついた時には馬鹿デカイベッドが置かれていた。僕を中心に、三人で川の字になってベッドに入る。
「・・・今日は疲れた」
二人も疲れていた様で、あっと言う間に眠った。僕もその寝顔を見て、安心して意識を落とす事が出来た・・・。
刹那サイド終了
三人称サイド
刹那達が寝付いた頃、櫻田家のリビングには総一郎、五月、葵、修、奏、茜が集まっており、昼間の事を話し合っていた。
「なあ、親父。刹那って昔から狙われてたのか?」
「正しく云えば、お前達の警護から飛び火したのもある」
「守ってくれるのは嬉しいけど、せっちゃん自分の事考えないからね・・・」
「しかも嫌な顔一つせずに傷ついて・・・」
「私・・・あの子にずっと隠してた事、恨まれてないかしら?」
「「「「「それは無い」」」」」
全員一致だった。基本優しい刹那は隠してきた理由が自分を気遣って居る事も知っているし、それがあろうとも此処まで愛情を持って育ててくれた五月の事は心から尊敬している。それは普段の態度にも現れており、刹那がこの家の人間をどれだけ愛しているのかは明白であった。
「それにしても、俺ももうお爺ちゃんか・・・」
「可愛かったなぁ、二人共」
「まさか弟が子持ちとはなぁ・・・」
「学生でお父さんってマンガみたいだよね」
その後、刹那や、その子供達の過去話を話して解散となった。だが、長男と親父は気づいていた。刹那の子供と言う単語が出る度に女性陣からオーラが吹き出すのを・・・。二人は天井を見上げながら思った。また修羅場か・・・と。
三人称サイド終了