if~城下町の転生者~   作:猫舌

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~櫻田家の掟~


修「ほれ、買ってきたぞ」

刹「ありがと。~♪あっ!」

修「どうした?」

刹「修兄!家でトイレットペーパーって言ったらダブルの花の香りでしょ!?」


第14話

刹那サイド

 

 

「遊園地?」

 

 

へ?となる僕の前で光がチケットを突きつけた。

 

 

「友達から貰ったんだけど、行こうよ!」

 

「僕は全然構わないけど・・・」

 

「本当!?じゃあ、今週の土曜日に一緒に行こう!」

 

「・・・うん、予定も無いから良いよ」

 

 

端末で会社のスケジュールを確認して大丈夫な事を示す。遊園地か・・・昔皆に連れてかれて以来だな・・・。少しワクワクしながら、休日までの時間が過ぎて行った。

 

 

~土曜日[駅前]~

 

 

快晴のお出かけ日和となった土曜日。何故か僕は光に頼まれて駅前で待ち合わせする事となった。約束の30分前か・・・早過ぎたかな。そう思いながら柱に寄り掛かって待っていると、変装して尚且能力で大人になった光が歩いて来た。僕も認識阻害の能力で関係者以外は一般人にしか見えていない。

 

 

「待たせちゃってごめんね」

 

「良いよ。そんなに待ってないし」

 

 

そう僕が返すと、光が小さくガッツポーズをする。・・・どうしたんだろう?

 

 

「まあ、取り敢えず駅に入ろうよ」

 

「うん。それにしても、せっちゃんとは久しぶりに出掛けるね」

 

「そうだね。何年ぶりかな?」

 

「今日は数年分取り返すつもりで遊ぼ。えいっ」

 

「おっと。どうしたのさ急に」

 

「折角のデートなんだし楽しもうかなって」

 

 

腕を組んできた光はとても楽しそうだった。思わず僕も笑顔になり、そのままホームへと向かった・・・。

 

 

~遊園地前~

 

 

「早く行こ、せっちゃん」

 

「待ってよ光。遊園地は別に逃げないってば」

 

 

相変わらず光はテンション高いな。疲れないのかな、と考えつつ光を追って遊園地へと入る。さてと、今日は楽しみますか!

 

 

「で、最初は何に乗る?」

 

「えっと・・・アレが良いな!」

 

 

光が指差した所にはメリーゴーランドがあった。・・・高校生でメリーゴーランドか。手を引かれるままに連れて来られたは良いが、何故同じ馬に乗る必要があるんだろうか・・・。一つの馬に光を前に、僕が後ろに乗った状態だ。光は王子様とお姫様!とはしゃいでいるが、僕にはよく分からない。まあ、光が楽しそうだから良いかな。メリーゴーランドを乗った次に向かったのは定番のジェットコースターだ。何でもこのジェットコースターはこの国で最も高さがあり、スピードが出るらしい。いよいよ僕達の番になり、ゆっくりと上へと上がっていく。おお、確かに高い。

 

 

「凄いね光。・・・光」

 

「此処まで高いとは思わなかった・・・」

 

「えっ」

 

 

次の言葉を出そうとした瞬間、ジェットコースターが一気に降りだした。

 

 

「おおおおおおおおお!楽しいねコレええええええ!」

 

「イヤアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」

 

「アッハハハハハハハハハハハ!」

 

「にゃああああああああああああああっ!?」

 

 

能力で飛ぶ時とはまた違った浮遊感に楽しさを隠せなかった。やがてジェットコースターから降りた僕はベンチで光を膝枕していた。膝では光がグロッキーな状態になっている。

 

 

「大丈夫?」

 

「あ、あともうちょっとだけ待って・・・」

 

「はいはい」

 

 

光の頭を撫でながら周りを見る。・・・さっきから視線を感じる。これは僕じゃなくて光に向いている?変装を見抜いた一般人の視線じゃない。僅かに敵意がにじみ出ている。僕は少し警戒していると、目の前を風船を配っているダンディ君の着ぐるみが通り掛かった。

 

 

「あ・・・ダンディ君だ~・・・」

 

「無理しないの。あ、気にしないでくださいね」

 

「・・・」

 

 

ダンディ君は無言でポケットから出店で売ってそうなブレスレットを取り出すと光の腕に嵌めた。記念にと言う事だろうか。外国みたいに勝手にミサンガ付けられて金取られるみたいな事態はゴメンだし。顔を青くしながら喜ぶという器用な行為をする光を暫く見つめてからダンディ君は手を振って子供達の方へと向かっていった。

 

 

「そう云えば視線が・・・まさかね」

 

「どしたの~・・・?」

 

「ん。何でも無いよ」

 

「そっかぁ・・・うん、復活!」

 

 

光はようやく起き上がり、僕達は歩き出した。

 

 

「何に乗る?」

 

「乗るんじゃなくて・・・アレ!」

 

 

そう言って光が指差したのはお化け屋敷だった。中へ入ると、中々にリアルなセットだった。僕はお化け屋敷が苦手だ。別にお化けは怖くない。ただ、人形や血の塗料から発される独特な匂いが薄暗い部屋でムアッとするのが嫌なのだ。あの匂いだけでも何とかならないだろうか・・・。そう思いながら進むと目の前に井戸があった。あ、コレ出てくるパターンだな。案の定貞子的な人が出て来た。

 

 

「う~ら~め~し~や~」

 

「ひっ!?せ、せっちゃん・・・」

 

「大丈夫だから」

 

 

必死に腕にしがみつく光を慰めながら進む。因みに今の幽霊さんこのお化け屋敷にある食事処の看板を最後に見せてきた。うらめしやって裏飯屋って事かい。こんな所でステマするなよ・・・。その後はずっとしがみついて目を閉じている光を誘導しながら進む。流石に障子を突き破って江○2:50分が出て来た時は驚いた。光にセクハラしようとしたから思わず当身をしてしまったが平気だろうか・・・?暫くして出口を抜けた僕達は幽霊さんの宣伝していた食事処へ行った。何て言うか・・・普通のレストランだった。

 

 

「てっきり妖怪が経営してると思ったけど・・・」

 

「や、止めてよ!怖くて行けないよそんなの!」

 

「えぇ・・・」

 

 

ビビりすぎでしょこの子。そんな話をしながら運ばれてきた食事を頂く。僕はオムライスで、光はナポリタンだ。食べていると、光が物欲しそうな目で僕のオムライスを見ていた。

 

 

「・・・食べる?」

 

「うん!あ~ん」

 

「自分で取りなよ・・・仕方ない。はい、あーん」

 

「はむっ・・・おいひぃ」

 

「それは良かった」

 

 

すると今度は光がナポリタンを巻いたフォークを僕に向けてくる。僕にやれと?諦めて僕は光の差し出したフォークにかぶりつく。うん、美味しい。至って普通のナポリタンだ。

 

 

「あ、そう云えば光。歴史のテスト悪かったんだって?」

 

「ぎくっ。な、何の事やら・・・」

 

「全く・・・」

 

 

そう云えば光はテスト隠そうとする時って基本僕を何処かに連れて行こうとしてるな・・・。まあ、今回は偶々重なったんだろうけど。実はこの世界の歴史は前世と大幅に違う。まず、前世と共通の歴史と名前の国が日本だけなのだ。大陸の形は変わらないのだが、国や海域の名前が何もかも違う。流石に教科書にA国と書いてあった時は驚いた。何故名前が真面にある国とそうでない国があるんだ?数年前にリヴェータに奪った特典の説明をした時もそれでかなり苦労した。前世みたいな戦争が無い日本って存在したんだなぁ・・・。その代わりもっと大きい戦争があったみたいだけど。

 

 

「・・・行きたかったな、ローマ」

 

「ローマって何処?」

 

「ん?何でも無いよ」

 

 

大人になったらヨーロッパに行きたいって思ってたのに・・・この世界ではその辺りは同盟国の領地になっている。そんな事を考えながら食事を終えた僕達は店を出て他のアトラクションを探しに行った。その後も色んなアトラクションに乗り、制覇する事が出来た。空は赤く染まり、閉園10分前の音楽が鳴った。帰ろうとすると、光に止められる。

 

 

「ちょっとトイレ行って来るから入口で待ってて」

 

「分かったよ。早くしてね」

 

「うん!」

 

 

そう言って光は走っていった。僕はゲートの前に移動して光を待つ。だが閉園時間を過ぎても光は戻って来なかった。そして僕の頭の中に最悪なイメージが湧いた。僕は遊園地の中へと再び駆け出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「光ー!何処に居るの!?」

 

 

僕の叫び声に答える者は居ない。可笑しすぎる。従業員すら見当たらない。そう思っていると、殺気を感じてその場を飛び退く。次の瞬間、僕の居た場所へ何本もの矢が突き刺さった。飛んで来た上を見上げると、観覧車の上に気を失った光を抱えたダンディ君が弓を向けていた。

 

 

「光!」

 

「おっと。動かない方が身の為だよ彼氏君☆」

 

 

どうやら相手は僕の認識阻害に掛かっている様だ。ダンディ君は僕に向かって言葉を続ける。

 

 

「この娘を矢で貫かれたく無かったら櫻田刹那を呼んできなよ」

 

「・・・分かった」

 

 

そう言いながらコッソリと能力を発動した次の瞬間、光はダンディ君の腕の中から消えて僕の前に瞬間移動した。その光景を見て着ぐるみの上から見ても分かる位にダンディ君は狼狽していた。

 

 

「な、何だ今の!?」

 

「・・・《瞬間移動・Ⅱ(トランスポーター・セカンドシフト)》」

 

 

この能力は修兄の能力を強化した物で、自分の半径1km以内の視覚に一瞬でも入った何かを瞬間移動させる事が可能になる。しかもこの能力は使えば使う程効果の範囲も広がって行く優れ物である。

 

 

「光は返してもらうよ」

 

「お、お前まさかSMART BRAINのメンバーか!?」

 

「メンバーっていうか・・・社長だね」

 

 

認識阻害を解除してダンディ君を睨み付ける。ダンディ君は唖然としてからクククと笑い始めた。そして急に着ぐるみをパン生地の様に捏ねだした。すると着ぐるみの色が血色の良い人肌に変わる。そしてそれは一人の人間となった。

 

 

「俺は転生者の《物部 変化(もののべ へんげ)》。能力は体を捏ねる事であらゆる無機質に変身できる《劣化変化(メタモル・ジャンク)》だ!」

 

「・・・生き物はダメってことか。正しく劣化だね」

 

「うるせえ!俺はお前が許せねえんだよ!」

 

「僕と君って面識あったっけ?」

 

 

少なくとも無かった気がするんだけど・・・。そう思っていると物部は叫んだ。

 

 

「本当なら俺が主人公の筈なんだ!」

 

「・・・はい?」

 

「俺より先に主人公の家系に転生しやがって・・・ふざけんな!」

 

「いやいやいや。だってダーツで決まっちゃったんだもん」

 

 

僕だってどんな所なんて知らなかったしそもそも櫻田家が主役なのこの世界!?ま、まあ確かに王族であんな家族構成中々無いもんね・・・。

 

 

「くそっ!栞を俺好みに育てようと思ったのによ・・・」

 

「あ゛?」

 

 

プチンッ!

 

 

「光だって能力で色んなプレイ出来るし」

 

「あ゛あ゛?」

 

 

ブチブチッ!

 

 

「何より五月が一番エロいよな!」

 

「その口閉じろ雑種!」

 

 

ブチギレた僕は王の財宝を発動して剣や槍を飛ばす。物部は自身を巨大な剣に変化させて、空中に浮いた状態で薙ぎ払った。何て出鱈目な能力だ。自分で浮かべるとかチートだよ。

 

 

『危ねえな。まさか英雄王の力を使えるとは』

 

「お前らのお仲間から貰った能力さ。まあ、買い物にしか基本使わないけど」

 

『勿体ねえな。そんな力があればこの世界を支配できるのによ』

 

「興味ないね。それよりさっさと肉片になれよ雑種」

 

 

再び射出。またも弾かれた。思わず舌打ちが出る。すると光が目を覚ました。僕と物部を交互に見て、状況を理解すると顔を青くした。それもそうだろう。戦闘の中に居るのだから。

 

 

「光、君を家に転移させるから直ぐに父さん達に周辺の避難を頼んで」

 

「で、でもせっちゃんが!」

 

「僕は大丈夫。それに・・・此処から先を光が知る必要は無いから・・・」

 

「せっ・・・ちゃん?」

 

 

僕は光に触れて瞬間移動を発動させて家へと転移させた。そして物部を見上げる。

 

 

『カッコつけちゃってよ。お前は此処で死ぬんだぜ』

 

「残念ながら僕はそう簡単に死ねないんでね。殺したかったら本気で来い」

 

 

僕は王の財宝から一本の槍を取り出し、構える。その槍は血の様に紅く、異様な気配を纏っていた。僕は意識を集中させて物部を標的に捉えた。

 

 

『う、嘘だ!王の財宝の《宝具》は《真名開放》出来ない筈だ!』

 

「----その心臓、貰い受ける」

 

 

この槍の本当の力を発動させる為の詠唱を呟く。すると槍は更に紅く染まり、今にも敵を貫かんと震えだす。僕は体に力を込めて剣の形を取っている物部に向かって槍を投げた。その心臓を貫く英雄の槍の名を紡いで。

 

 

「《突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)》!」

 

『ぎゃぱっ!?』

 

 

僕の投げた槍は物部の心臓があった位置であろう部位を貫く。物部は元の体に戻って、左胸に大きな穴が空いた状態で観覧車から落下し、嫌な音を立てて地面へ叩きつけられた。そして僕の手には何時の間にか槍が戻って来ていた。それを王の財宝へ戻し、物部の亡骸を見つめる。転生者は基本殺す事にしていた。数年前に一度だけ転生者を見逃した事があった。だが数日後に人質を取ってこの国を滅茶苦茶にしようとしたどころか人質を殺そうとした時点で風使いで首から上を断頭した。

転生前にアテナに聞いた事がある。基本転生者同士は相容れない。もしそんな事があればそれは奇跡に等しい、と。確かに僕が今まで会った転生者は皆欲望のままに動いていた。それは僕も言えた事では無いが・・・。確かに相容れない訳だ。

風に乗って鼻に突く血の匂いとサイレンの音を聞きながら僕は自嘲気味に笑った・・・。

 

 

刹那サイド終了

 

 

 

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