if~城下町の転生者~   作:猫舌

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第15話

刹那サイド

 

 

あれから僕は家へと帰り、父さんと話していた。なにせ《宝具》を真面にこの国で使った事なんて無いからね。当然その事を聞かれた。

 

 

「それで、アレは何なんだ?」

 

「言っても分からないと思うけど・・・」

 

「と言う事は昔襲ってきた人達の能力かい?」

 

「うん、でもあまり使いたく無いんだけどね」

 

 

僕は溜息を吐きながらテーブルに置かれていたお茶を飲む。正直僕も把握しきって居ない。そもそも宝具とは僕の前世の世界で嘗て名を轟かせた古今東西の英雄達の武器だ。そしてその名を言霊として紡ぎ、明かす事で本当の力を発揮する事が出来る。これを《真名開放》と言う。そして宝具にも色々あり、武器以外の物も例外としてある。例えば世界其の物を書き換える宝具や、武器ではなく拳だったり特殊な炎だったり等、数え切れない。流石に文明を破壊する剣とか王の財宝から出て来た時はヤバかった。基本使わない事をモットーとしている僕だが、転生者相手なら話は別だ。前に戦った異能を全て無効化する右手を持った転生者は恐ろしかった。まあ、普通に剣で細切れにしてから焼却したけど。様は通常の物理攻撃で行けば勝てる。宝具について思い出していると、ドアを開けて光が入って来た。

 

 

「せっちゃん・・・ごめんなさい」

 

「何で謝るの?」

 

「だ、だって私が捕まった所為でせっちゃんが・・・」

 

 

そう言って涙を流す光を僕は抱きしめて撫でた。全くこの子は・・・いらない所で責任感発動させるんだから・・・。

 

 

「謝るのは僕の方だよ。最後の最後で気を抜いてしまった僕の責任だ」

 

「そんな事無いよ・・・だってせっちゃんは私を助けてくれたよ。誰が何て言ってもせっちゃんは私を守ってくれた王子様だよ」

 

「そっか。うん・・・ありがとう」

 

 

僕は光を強く抱きしめて、自分の顔を見れない様にした。今の僕はみっともない表情をしているだろうから・・・。その日は光と一緒に寝る事となった。・・・これで終われば良かったんだけどな・・・。

 

 

 

 

 

~翌日[リビング]~

 

 

「刹那!その腕どうしたのよ!?」

 

 

次の日の朝、袖を捲って洗い物をしている時にかな姉が叫んだ。僕の腕は赤黒くうっ血していた。

 

 

「ああ・・・ちょっとヒリヒリすると思ったらコレか」

 

 

久しぶりに起こった感覚に懐かしい気持ちになった。宝具を使うと、次の日は大体筋肉痛か今の様な事になる。幾ら転生者だからと言ってあんな強力な物をデメリット無しに使える訳が無い。幸い僕は無駄に体が丈夫だからこの程度で済む。仮に修兄達の様な一般人が使ったら真名開放した瞬間、体が潰れるだろう。《突き穿つ死翔の槍》だってまだ軽い方だ。前に別の転生者に使った事がある森羅万象その全てを破壊する宝具を使った時は一週間意識不明の大重症だった。

 

 

「え、えっと万能薬!」

 

「ストップ!そんな事したらこの国破産するから!?」

 

「でも刹那が!」

 

「ああもう!コレくらい一日あれば治るし、慣れてるから良いって!」

 

「一日こんなにしてる気なの!?」

 

「平気だよ。僕は皆と違ってバケモノ並の体だから」

 

 

安心させる為に言ったのに、何かめっちゃ悲しそうな顔されたんですけど・・・。何時の間にはリビングのドアの影から修兄がこっちを見ていた。何泣かしたって顔してるのさ?僕何かした?

 

 

「お願いだから自分をバケモノなんて言わないでよ・・・」

 

「いやでも実際心臓貫かれたりしても生きてる訳だし、僕能力で十数回程度なら死んでも蘇生しちゃうんだよね」

 

「・・・」

 

 

僕の言葉にかな姉は何も言えなくなっていた。それは修兄も同じだ。それでも二人の表情は悲しそうなままだ。気まずくなった僕はさっさと片付けて学校へと向かった。

 

 

 

 

 

~学校[屋上]~

 

 

昼休みになり、リヴェータと屋上で昼食を摂りながら朝の事を話していた。

 

 

「全く皆心配しすぎだよ」

 

「そうでも無いわよ。家族や仲間の私達からすれば心臓が幾つあっても足りないわよ」

 

「でも何だかんだで生きてるじゃないか。次もああ、また生きてるんだろうなって程度の認識で良いじゃん」

 

「出来るワケ無いでしょう?貴方は自分の無茶が他人に心配を掛けると言う事を自覚しなさい」

 

「・・・やっぱそれが可笑しいよ」

 

「は・・・?」

 

 

僕の言葉にリヴェータがポカンとする。珍しい表情に少し笑いを堪えながら話す。

 

 

「だって僕は能力を創る事だってできるし、他人の能力を奪う事だって出来る。それに元からの身体能力だって高い方だ。そんな生きた兵器である僕に心配する時点でちょっと変じゃない?」

 

「そんな事しったら貴方のDNAがあるヨシュア達はどうなるのよ?」

 

「あの子達は望まずして力を手にしてしまったんだ。なら心配するのは当然さ。でも僕は自分の意思で、この状況に居る。謂わば自業自得さ。そんな僕に心配するのは良くないよ。無駄に疲れるだけさ」

 

「貴方はそこまで・・・!」

 

「むぎゅっ!?く、くるしぃ・・・」

 

 

突然リヴェータに抱きしめられる。本当に何で僕に此処までしてくれるんだろう。僕なんてただ壊していく事しか出来ないのに・・・。大丈夫だよ。次は誰もそんな思いしない様に徹底的に壊すから・・・。皆を守る為の僕の決意は更に固まる事となった・・・。

 

 

刹那サイド終了

 

 

三人称サイド

 

 

夕方のカフェテリアに二人の人物の影があった。内の一人はSMART BRAINの社長秘書《リヴェータ・イレ》。そして、もう一人の人物とは《櫻田 五月》であった。二人は定期的に刹那について色々情報交換をしていた。五月が提案した物であり、母親として刹那の普段を知りたいと言うものだった。そして今日刹那の言っていた事を聞き、絶望した様な表情で泣き出した。このカフェテリアは現在人払いされ、警護されているが、仮に一般人が居ればパニックになっていただろう。

 

 

「やっぱりあの子は・・・」

 

「はい。正直に言いますと、刹那は人としての感情の幾つかが欠けています」

 

「・・・やっぱりそうなのね」

 

「一番大きいのは自分に対する感情です。彼は自分をこの国を守る為の駒だと思っています」

 

 

リヴェータの言葉に五月は再び涙を溢れさせる。物心付いた頃から何処か達観した子だとは思っていたが此処まで自分を投げ出すとは思っていなかった。否、思いたく無かったのだ。

 

 

「あの子は小さい頃から難しい本を読んだり、あまり物を欲しがらなかったわ」

 

「そう云えば会社が出来たばかりの頃も自分の給料を私達に回してました」

 

 

二人は刹那の性格に頭を痛ませる。親である五月と恋人であるリヴェータならば尚更の事だ。リヴェータはいち早く立ち直り、話を続ける。

 

 

「その次に彼はとある存在に対して一切の躊躇がありません」

 

「とある存在・・・?」

 

「私の中で絶対の秘密でしたが、親である貴方にはどうしても知っていて欲しい事なんです」

 

 

そう言ってリヴェータは決意を決めた表情で一冊の本を五月の前に出す。

 

 

「これは数年前に任務があった国で見つけた人の記憶を見せる本です。私は訳あってこれで刹那の記憶を見てしまいました」

 

「これに・・・あの子の記憶が」

 

「この中に刹那が壊れてしまった全てがあります。何れ陛下にもお見せしたいと思っています。せめて貴方達は知っておいて欲しい」

 

 

リヴェータに促され、五月は恐る恐る本を開く。その瞬間、周りの風景が変わって二人はボロボロな施設の中に居た。

 

 

「此処は・・・孤児院?」

 

「あれを・・・」

 

 

看板に書いてある施設名を確認して、リヴェータに言われた場所を見ると、酒を浴びる様に飲んでいる大人と、その足元に転がって荒い息を吐いている傷だらけの子供が居た。まだ3、4歳と言った所だろう。その子供は白く、長い髪をしていた。そして髪に隠れていた目の色は、赤だった。五月は思わず走り出し、子供を庇う様に覆い被さろうとする。だが、幼い体を自分の腕はすり抜けていった。そして子供は大人に抱え上げられ、その幼い瞳に酒用のアイスピックが突き刺され、ライターで傷口を焼かれた。その光景を五月はハイライトの無い目で見つめ、リヴェータは血が出るほどに拳を握っていた。

その後もその子供の悲惨な人生を見せつけられた。ありもしない罪を着せられ、世界から否定され、そして唐突にその苦痛とも言える人生を終え、別の世界で新たな人生を歩みだした。そして唐突に転生者と名乗る者達に襲撃され、家族や周りの人達を狙われた”子供”が段々と壊れていく様を見させられ、気が付けば二人は現実へと帰還していた。

 

 

「・・・うぅっ」

 

「・・・」

 

 

二人の中で記憶と共にその悪しき存在が浮かび上がる。リヴェータは五月に言う。

 

 

「お願いです。刹那を見捨てないでください。それこそ彼が本当に壊れてしまう」

 

「そんな事しないわ。あの子は私の息子ですもの。絶対に裏切らないわ」

 

 

五月の目には確かな決意が宿っており、二人の内で《刹那更生計画》が立てられて行った・・・。

 

 

三人称サイド

 

 




次回は番外編です。
内容は刹那が此処まで壊れた経緯を詳しく掘り下げて行く内容です。
閲覧ありがとうございます。
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