刹那サイド
買い物から翌日、僕は車に乗せられてある場所へ向かっていた。やがて車は目的地である巨大なビルに到着する。僕は予め着ていたスーツ姿でビルの中へと歩く。ビルに入ると、受付や社員の人達が僕に挨拶する。
「「「「おはようございます社長!!!」」」」
「はい、おはようございます」
あまり好きじゃないんだけどな・・・この呼ばれ方。この会社は、数年前の事件を機に、僕が設立した国交守備組織《SMART BRAIN》である。エレベーターで上がり、社長室に入る。其処には、軍服をモデルにした服を着込んだ僕の秘書が居た。
「遅かったわね、社長さん?」
「悪かったよ、《リヴェータ》」
「全くよ。少し待っていろって、社会人なら時間の把握くらいしなさいよ」
「すみません・・・。で、今日の会議の資料貰える?後、現在の任務の遂行具合」
僕の言葉に資料を渡しながら、秘書官《リヴェータ・イレ》は淡々と答える。
「現在、同盟国であるA国の護衛に《ルドヴィカ》の第二部隊を派遣中。B国の違法兵器の差押に《アネモネ》の第三部隊が任務終了したから明日にはこっちに戻ってくるわ」
「ん。《トルーパーズ》の教育は?」
「それは第四部隊《スザク》に任せてあるから問題ないわ」
「いや、《キワム》の相棒が暴れないか心配なんだけど・・・」
「大丈夫よ、《クロ》は別の所で見てもらってるから」
リヴェータの報告に苦笑しながら資料に目を通す。
「リヴェータ、此処と此処の予算、もう少し削ってこっちの方に回して」
「分かったわ。それと、この資料なのだけれど・・・」
暫く話し合っていると、扉をノックする音が響く。僕がどうぞ、と言うと一人の男性社員が入って来た。
「社長、失礼します」
「やあ、《イツキ》君。おはよう」
「おはようございます。この前頼まれていた携帯回復薬の試作品が出来たので、その報告を・・・」
「うん、丁度片付いたし今から向かうよ」
「はい。そう云えばリヴェータの武器も修復終わってるって整備班が言ってたぞ」
「了解。それじゃあ、私は受け取ってから資料の見直しに入るから、会議の時に来るわ」
そう言ってリヴェータは一足先に部屋から出て行く。僕も《イツキ・マスグレイヴ》の後に続いて部屋を出た。
~研究室~
「社長、おはようございます」
「うん、おはよう」
皆に挨拶してから回復薬の試作品を確認する。どうやらこの前よりも上手く行っている様だ。でも・・・、
「何で粉のままなんですかねぇ・・・」
「液体にすると、効果が弱まっちゃって・・・」
「むむむ・・・どうしたものか・・・」
今日の所は出来るだけの改善点を見つけ、研究室を出た。社長室に戻った僕は、今日行われる、父である《櫻田 総一郎》との会議の確認をした後に昼食を摂って、会議の会場である宮殿へと向かった。
~宮殿[会議室]~
時刻は午後5時。席には、父さんを始めに、各国のお偉いさん方が座っていた。全員いることを確認し、会議を始める。主に司会は僕だ。
「では、今回の議題に入ります。このお手元の資料と共に、此方の映像を見てください」
僕はリヴェータに合図を出して、ディスプレイに映像を出す。其処には、大量の軍事兵器を並べ、笑顔を浮かべている男性の姿が映った。辺りがざわざわとする中、父さんが声を上げる。
「この兵器は・・・!」
「はい、数年前に敗戦したC国です。どうやら僕達が出向く前にB国の兵器が取引されていたようです。彼が狙っているのは、A国で間違いありません」
「A国は資源が豊富だからな・・・」
「あの地域は紛争が長く続き、我社が介入して、ようやく収まりましたから」
「何とかできないのかい?」
「明日になれば、我社の第三部隊が帰還します。隊員を数人入れ替えて派遣します」
「それはありがたいが・・・隊員達の負担は・・・」
父さんの心配する声に僕は心の内で溜息を吐く。
「ウチの隊員達はそんなにヤワじゃありません。それに疲労が多そうな人をメインに入れ替えますから」
「そうか、なら安心だ」
「少し、よろしいですかな?」
父さんの後に、手を挙げたのは脂汗を滲ませた別の国の政治家だった。あまり良い噂を聞かない人物だ。
「はい、何でしょうか?」
「君の所の第一部隊は出せないのかね?」
「第一部隊は非常時以外は出撃できないんです。強すぎて、国王から制限を掛けられているので」
「君は、困っている人々に対して出し惜しみをするのかね」
そう言ってニヤニヤ笑いながら政治家は僕を見る。どうやらぽっと出の僕が気に入らないらしい。僕は話し出す。
「別に向こうの国が跡形も残らない更地、またはクレーターになっても良いのでしたら派遣いたしましょう」
「・・・い、いえ、大丈夫です・・・」
僕の言葉に政治家はプルプルと震えだす。実際そうなる可能性もある。だって、第一部隊の隊長リヴェータだし。容赦無いんだよね彼女。その後、会議も無事進み、午後7時手前に終了した。全員が退室したあと、僕は父さんと話す。父さんは心配そうな顔をしていた。
「刹那・・・本当に大丈夫かい?無理してないか?」
「大丈夫だよ。それに、このままじゃまた戦争が始まっちゃうよ」
「でも、お前はまだ成人すらしてないんだぞ?幾ら能力があるからとは言え・・・」
「なら、この国の大人でこのままA国を守れる人は?部隊は?」
「・・・無い」
「でしょ?でも、僕達ならやれる。いや、僕達しか居ないんだ。・・・ウチの社員にね。何人かのA国の人達もいるんだ。彼等を安心させる為にも頑張らないと」
「・・・分かった。任せたよ、我が国の希望」
「お任せ下さい、我が王よ」
僕は父さんの前で頭を垂れる。そんなやり取りを済ませて、僕達も会社へと戻り、部隊の再編成や対策を練る。気が付けば夜の9時過ぎとなっていた。家族には泊まりと連絡してあるから問題はない。社長室に備え付けられた仮眠室のシャワーを浴びてからベッドに横になる。疲れがあったのか、意識は直ぐに落ちていった・・・。
~翌朝~
「ただいま」
朝になって帰宅すると、既に皆登校している様で、母さんだけだった。僕は会議と大事を取って、二日間公欠にしてもらっている。二日程度休んでも問題無い位の学力は持っている。部屋でゆったりしていると、姉の声が聞こえた。どうやら今日は生徒会は無かった様だ。僕は部屋から出て、話し掛ける。
「お帰り、《かな姉》」
「・・・ただいま」
僕の言葉に相変わらずぶっきらぼうに答えるかな姉こと《奏》は今日も不機嫌そうだ。あまり僕が戦場に首を突っ込むことをよく思っていないらしい。
「また、戦争の話?刹那がそこまでする必要無いのよ?」
「ううん。これは僕が、僕達が成し遂げなければいけない事なんだ」
「でも貴方はまだ16なのよ!?姉さんでも関わらないわそんな事」
「それもそうだよ。《選挙》までは時間もあるし、姉さんの能力は戦闘には不向きだ」
そう、僕達櫻田家は現在、次の王を決める選挙の真っ最中である。現在はアピール期間中だが、葵姉が卒業と同時に本格的な選挙期間が始まる。街には、皆のポスターが貼られ、この家だけで地方選のポスターみたいになっている。僕は王になる気はなく、王になった誰かのサポートとして会社を続けていく方針だ。話していると、かな姉は自分の部屋へと戻ってしまった。暫くすると、他の子達も帰って来た。
「ただいま、刹那兄」
「お帰り、《遥》」
「ただいま、せっちゃん」
「うん、《岬》もお帰り」
双子である《岬》と《遥》の姉弟が帰って来る。その後ろを末の弟と妹の《輝》と《栞》も帰って来た。
「兄上、ただいま戻りました!」
「お帰り輝。あ、その手の消えそうだよ」
「なっ!どうしたんだジャッカル!」
僕の言葉に、右手にマジックで書かれた魔法陣に輝は必死に話し掛ける。この子は小学生にして、痛い子になり始めている。お兄ちゃんは心配だよ。そう思っていると、服を引っ張られる感覚があり、下を見ると栞が僕を見上げながらクイクイしていた。
「兄様・・・ただいま」
「お帰り。幼稚園は楽しかった?」
「うん。今日はね、皆で歌を歌ったの」
「そっか。何を歌ったの?」
「《津軽海峡冬景色》」
「ハードル高っ!?」
何歌わせてんだこの幼稚園!?ちょっと見てみたい気もするけど・・・!考える僕に栞は聞いてきた。
「兄様、今日一緒に寝ても良い?」
「良いけど、どうしたの急に?」
「だって昨日居なかったから」
「そっかそっか、栞は寂しがり屋だね」
「兄様暖かい・・・好き」
「うんうん、お兄ちゃんも皆も栞の事大好きだよ」
思わずギュッと抱きしめる。うん、可愛いなぁ。是非とも優しい子に育ってほしいものだ・・・。
「頼む!答えてくれジャッカル!」
「・・・まだやってたの?」
この後、ジャッカルは輝の悪魔の筆(マジックペン)で新たに書き直されました。
刹那サイド終了
はい、第2話でした!
この小説は日常系だけではなく、刹那の大切な人を守るための戦いも書いていきます。
よろしければ、感想やお気に入り登録お願いします!
《rainバレルーk》さん、《ヴォルザ》さん、早速感想ありがとうございました!
ではまた次回!