if~城下町の転生者~   作:猫舌

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第3話

刹那サイド

 

 

会議から数日、僕は至って普通の日常を過ごしていた。会議の内容は無事成功し、A国との仲も上手く行っている。この前なんて感謝状まで送られてきた。当面はゆっくりとできそうだ。教室で頬杖を付きながら空を見上げる。綺麗な青空だ。きっといい事があるぞ・・・。そう思っていると、先生が教室に入って話し始める。

 

 

「今日は転校生を紹介するぞ。何と、外国人の美少女だ!」

 

 

先生の言葉に教室中の男子から黄色い声が上がる。転校生か・・・。いったい誰なんだろう・・・。

 

 

「早速来てもらおう。入ってくれ」

 

 

教室のドアが開き、転校生が姿を現す。制服に身を包んだ金髪の少女。一見可愛らしいが、その瞳の中には確かな強さがあった・・・って

 

 

「リヴェータ・イレよ。よろしくお願いするわ」

 

「ファッ!?アイエエエエエェェェ!?ナンデ?リヴェータナンデ!?」

 

「あ、刹那。今日からお願いするわ」

 

「いやいやいや。君違う学校に通ってたよね?成績オールAだったよね?」

 

「お嬢様学校ってつまらないのよ。男に偏見持ったレズしか居ないし。この前の会議の時に貴方のお父様に許可もらったのよ」

 

「父さんんんん!?」

 

 

僕の慌て様に、クラスの全員がポカンとする。こっちがしたいくらいだわ!?僕は深呼吸をしてから椅子に深く腰掛ける。

 

 

「リヴェータ、話あるから昼休みに屋上来いや」

 

「全く、そうカッカしてると胃に穴が空くわよ?」

 

「誰の所為だ誰の・・・!」

 

「妖怪じゃないの?」

 

「お前じゃ!?あと何処で知ったそのネタ!?」

 

「ルドヴィカがDVD貸してくれたわ」

 

「アイツ減給決定」

 

 

今、何処かの第二部隊隊長の声が聞こえた気がしたが無視だ無視。その後、先生が何とか取り仕切り、この時間はリヴェータへの質問タイムとなった。リヴェータが質問攻めにあっている間、僕は茜と話していた。

 

 

「ねえねえ、あの人ってせっちゃんの会社の・・・」

 

「秘書だよ。実力は確かなんだけど時々突っ走るんだよね」

 

「でも秘書ってことは・・・」

 

「ま、実質ウチのNo.2だね」

 

「じゃあ、強いんだ」

 

「少なくとも、この国では負けないんじゃないかな?」

 

 

本気出させれば、彼女一人で国が潰せる。思わずそう言いそうになるが、抑える。話している間にチャイムが鳴り、この時間の授業が終わる。次の授業は数学で、僕とリヴェータは余裕で解けるのだが・・・

 

 

「では、茜様。この問題を解いてください」

 

「は、はい!え、えっと・・・」

 

「・・・3x」

 

「さ、3xです!」

 

「正解です。では、次の問題・・・」

 

 

ホッとしながら席に着く茜に溜息しか出ない。

 

 

「ありがとうせっちゃん」

 

「今夜から勉強決定ね」

 

「うぅ・・・分かりました」

 

 

僕達のやり取りを見て、リヴェータが笑っていた。

 

 

「やっぱりこの学校に来て良かったわ。前の学校は本当こういうの無かったから」

 

「確か近くのお嬢様学校だったっけ?」

 

「はい、その通りです茜様」

 

「あ、そんな畏まらなくて良いから茜って呼んで?私もリヴェちゃんって呼ぶから」

 

「分かったわ、茜。これからよろしく」

 

「うん、此方こそ」

 

 

二人は楽しそうに話し始める。それから授業は続き、昼休みになった。僕はリヴェータと茜、偶々居た修兄の三人で屋上に行き、昼食を摂りながら質問を始めた。

 

 

「改めて聞くけど、どうしてこの学校に?」

 

「前の学校は偏見持った女子しか居なかったし、レズだったから嫌になったのよ。襲われたこともあったし」

 

「ほえ~、そう言う人達っているんだね。あ、せっちゃんの卵焼き大きい」

 

「だから父さんに言ったんだね。でも説明は欲しかったよ。ほら、持ってきなさい」

 

「えっと・・・イレさん?は、ノーマルなんだよな?」

 

「ええ、私は普通に刹那の事が好きよ?」

 

「「ファッ!?」」

 

 

二人はリヴェータと僕を交互に見て唖然とする。僕はその光景を見ながら食後の茶を啜る。

 

 

「いやいや、何で平然としてるんだお前は!?」

 

「いや、だって知ってるし」

 

「あ、私刹那に振られてるのよ」

 

「いや、だとしてももう少し取り乱すでしょ?」

 

「私は一回程度じゃ諦めないわ。何度でもアタックするだけよ」

 

 

そう言うリヴェータの目はマジだった。修兄と茜は何か尊敬してる目で見ている。その後僕達は午後の授業を受け、リヴェータと別れて家に帰った。帰ると其処には父さんが帰ってきていた。

 

 

「お帰り、三人共」

 

「ただいま父さん。早かったね」

 

「ああ、今日は早く終わったんだ。刹那達のお陰で厄介事が減ったんだよ」

 

「そっか。それは良かった」

 

 

暫くリビングでゆったりとする。僕達は四人でゲームの通信プレイをしていた。

 

 

「父さん、敵と壁の間に打ってよ?」

 

「分かってるよ。それっ」

 

「お父さんのモンスター凄い!」

 

「流石神化アーサーだな・・・」

 

 

ゲームをしていると、他の皆が帰って来た。かな姉は相変わらず僕に対して不機嫌なままだ。かな姉が僕を大事に思っている事は良く分かってる。でも、あの時みたいに何も守れないのは嫌だから・・・。全員揃うと、父さんが口を開いた。

 

 

「全員、休日に予定はあるかい?」

 

「どうしたのさ急に」

 

「お前達にはテレビに出てもらう」

 

「ええええええええ!?」

 

「茜、うるさい」

 

 

茜のリアクションは予想通りだった。ああ、大体何やるのか分かってしまう自分が嫌だ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~休日[テレビ局前]~

 

 

沢山のギャラリーに囲まれながら僕達はテレビ局のディスプレイを見上げていた。其処には、キャスターの男性と父さんが映っている。キャスターが意気揚々と喋りだした。

 

 

『テレビの前の皆さんこんにちは。なんと、今週の櫻田ファミリーニュースには、櫻田家御兄弟全員に来ていただいております!』

 

 

う~ん、やっぱりこうなるか。茜が僕の上着の中に隠れて出てこないんだけど、どうすれば良いんだろうか。待っていると、キャスターが話を続ける。

 

 

『国民の皆様もご存知の通り、王族の皆様には特殊能力があります。本日はとあるゲームに参加してもらい、能力を発揮してもらいたいと思います!』

 

 

面倒臭・・・。また能力手加減しないといけないのか・・・。能力使うのは好きじゃないんだけど、使うにしても中途半端な出し方すると楽じゃないんだよね。

 

 

『とあるゲームとは、[危機一髪!ダンディ君を救え!]』

 

 

映像が切り替わり、テレビ局の屋上に設置されたライオンのヌイグルミが大量に置かれているのが映し出された。

 

 

『御兄弟の皆様には、このダンディ君を兎に角沢山集めてもらいます』

 

『因みに、最下位だった者は城のトイレ掃除だ』

 

 

その言葉に、注目されなくて済むと思ったのか茜がやる気を出す。でも、考えてごらんよ。城にトイレって幾つあると思う?そう思っていると、競技が始まり、輝が前に出る。

 

 

「僕はこのビルを登ります!」

 

 

そう言うと、輝の周りを薄く光が包み、輝は驚異的なパワーで壁をよじ登り始める。すると、キャスターの説明が入った。

 

 

『四男、輝様の能力は怪力超人(リミットオーバー)》。超人的なパワーを使う事ができます!』

 

 

輝はどんどんよじ登っていく。そろそろ限界かな?そう思っていると、輝は落ちそうになった。まだまだ修行が足りないね。危なっかしい手つきで何とか屋上までたどり着いた様だ。

 

 

「よーしっ、私だって!」

 

『五女、光様の能力は《生命操作(ゴッドハンド)》。あらゆる生物の成長を操作できます。ただし、効果は24時間です!』

 

「じゃあ、始めようかな!」

 

 

そう言って光は近くの木に触れて能力を発動し、屋上まで伸ばす。

 

 

「あ、あれあれ!?伸びすぎたーーーー!」

 

 

屋上より高く木が育ち、光は降りられなくなった。次はかな姉が前に出る。

 

 

「私はこれで!」

 

『次女、奏様の能力は《物質生成(ヘブンズゲート)》。あらゆる物質を生成できます!』

 

 

まあ、その分口座から引き落とされるけどね。仮に未来の物を作ったら、かな姉は破産する事間違いなしだ。かな姉はドローンを数台生成し、それを屋上へと向かって飛ばした。暫くすると、輝とかな姉にポイントが入る。すると、今度は岬が前に出る。

 

 

「私も・・・頑張らないと!」

 

『四女、岬様の能力は《感情分裂(オールフォアワン)》。7人までの分身を作り出すことができます!』

 

 

その7人はそれぞれ7つの大罪をモデルにされている様で、様々な性格の子が出てくる。岬が能力を発動させると、7人の岬が出て来た。

 

 

「頼んだよ皆!」

 

「お兄ちゃん、私と一緒に行こ?」

 

「ずるいぞ!刹那兄とは私が行くんだ!」

 

「兄様は私と~」

 

「一緒に登ろ?刹那兄様」

 

「焦らないでゆっくり行こうよ~」

 

「お腹すいた。ご飯食べたい」

 

「もう諦めようよ」

 

「ちくわ大明神」

 

「「「「「「「お前誰だよ」」」」」」」

 

「何やってるの!?皆行くの!」

 

 

分身達はブーたれながらビルの中へと入る。チラリと別の方へ視線を向けると、栞が消火栓と話をしていた。その会話を見て、葵姉が聞く。

 

 

「栞?どうしたの?」

 

「あのね、消化器さんが近道教えてくれたけど、分からなくて」

 

「そう、それで何て言ったのかしら?」

 

「B2、荷物用エレベーター、27回で乗り換えって・・・」

 

「あのルートね。来た事あるから覚えているわ」

 

『六女、栞様の能力は《物体会話(ソウルメイト)》。生物から無機物までの会話が可能です!続けて長女、葵様の能力は《完全学習(インビジブルワーク)》。一度覚えた事は絶対忘れません!』

 

 

まあ、葵姉の本当の能力は違うんだけどね。僕と同じで強力すぎて隠してるパターンだ。本人は気づいてないみたいだけど、僕は知っている。僕の能力の中で、相手の異能を見抜く能力があり、偶々それで知った。別に口外する気は無いし、その事で苦しんでいるのなら力になるつもりだ。葵姉は栞に付いてビルの中へと入って行った。現在、残っているのは僕、修兄、茜の三人である。

 

 

「じゃあ、俺も行くか!」

 

『長男、修様の能力は《瞬間移動(トランスポーター)》。地球上の何処へでも一瞬で移動できます。触れた物や人を移動させる事も可能です!』

 

 

正直修兄が一番便利だよね。修兄は一瞬で屋上まで行ってしまった。次には遥が動き出し、遥の周りを数字が埋め尽くす。

 

 

『三男、遥様の能力は《確率予知(ロッツオブネクスト)》。ある程度の未来を確率で予知します!』

 

 

あ、この子絶対茜と組んでビリ脱却する気だ。茜は僕の上着の中でワタワタしている。僕は溜息を吐いて、茜を上着から出す。

 

 

「せ、せせせせせっちゃん!?どうしよう!」

 

「分かったから。ほら、これ腰に巻いて。全国に下着晒す気?」

 

「あ、危なかったー!?」

 

「・・・ほら、行くよ」

 

 

僕は上着を腰に任せた茜と、能力を発動する。

 

 

『次男、刹那様の能力は《風使い(シルフィード)》。風を使いこなし、飛んだり、高速移動が可能になります!三女、茜様の能力は《重力制御(グラビティコア)》。重力を操作する事が可能です!』

 

 

僕は足に風を纏わせて、茜は自分の重力を操作して一瞬で屋上まで上昇する。屋上に着くと、茜のカゴにダンディ君を幾つか入れておく。

 

 

「はい、これでビリは免れたよ」

 

「ありがとうせっちゃん!」

 

「じゃあ、後は頑張ってね。僕はあの子を何とかしてくるから」

 

 

幾つかダンディ君を確保してから、僕は木の上から降りれない光るの元へと向かった。

 

 

「ほら、掴まって。屋上まで連れてくから」

 

「うう・・・せっちゃん~!」

 

「よしよし、もう大丈夫だから」

 

 

光は震えていた。それもそうだろう。何10mの高さに放置だからね。僕は光を抱きしめて撫でる。すると光の震えは段々と収まっていった。

 

 

「せっちゃん良い匂い・・・それに安心する・・・」

 

「そっか。臭いとかキモいとか嫌われなくて良かったよ」

 

「そんな事しないよ。寧ろ・・・」

 

「ん?」

 

「な、何でもないよ!」

 

 

光の言葉に疑問を持ちながら、僕は屋上へ戻り、光を降ろす。暫くすると、汗だくになった遥が屋上に来た。だが、残りのダンディ君を見て自分の最下位に絶望する。僕はやれやれと思いながら自分のカゴの中に入れていたダンディ君を渡す。

 

 

「はい、これでギリギリセーフだよ」

 

「良いの?兄さん負けちゃうんだよ?」

 

「僕は別に掃除は嫌いじゃないし、王になるつもりはないからね」

 

 

僕の言葉に一瞬悲しそうな顔をしてから、遥はありがとうと言って残りのダンディ君の回収を始める。そして時間終了の合図が鳴った。今日の結果は、

 

 

1位:修

 

最下位:僕

 

 

となった。皆僕の順位に不満そうだったが、別に気にしてないと言ってその場を治めた。僕は結果を確認した後、茜に言う。

 

 

「茜、能力使う時を見越して、スカートやめるかスパッツとか履いたら?」

 

「うう・・・反省してます」

 

「素直で宜しい」

 

 

こうして、櫻田家の対決は幕を閉じた。トイレ掃除には茜、光、遥が手伝いに来てくれた。別に気にしなくても良いのに・・・。

 

 

刹那サイド終了

 

 

奏サイド

 

 

ゲームをした日の夜、私はお風呂に入りながら考えていた。刹那が戦いに身を投じた理由を。

本当は分かっている。原因は私にあるのだ。

小さい頃の事、私はやんちゃな子で、当初常に無表情だった刹那を連れて遊びに行っていた。思えば昔から刹那にベッタリだった。あの頃から私は刹那に特別な感情を持っていたと思う。無表情な子でも、行動の一つ一つに私達の事を気遣ってくれているのがわかったからだ。それは家族共通で分かっていた。

そんなある日の事、私は些細な事で家族と喧嘩になり、外へと走り出してしまった。止まった時には何処かも分からない場所にいて、陽も暗くなっていた。そして、私は不審者に誘拐されてしまった。不審者の隠れ家で、縛られた私は恐怖で震えていた。そして不審者の手が私に触れようとした瞬間、

 

 

----かな姉に・・・触るな!

 

 

あの常に無表情で、真面に喋らなかった刹那が感情をむき出しにして小さい体で不審者を蹴り飛ばした。そして刹那は私の体の拘束を解くと、私を抱きしめて泣き出してしまった。

 

 

----ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・

 

----・・・何でせっちゃんが泣くのよ

 

----だって・・・僕には力があるのに守れなかった。僕が弱いから・・・

 

 

この時から刹那は少し歪んでしまった。家族や友達の為に怪我をするまで無茶をする様になり、小学生になってから守備組織までも作り上げて行った。

だから私は許せない。自ら死に突っ込んでいく刹那が、彼を大きく変えてしまった自分が・・・許せない。

 

 

「ごめんね・・・せっちゃん・・・」

 

 

私の声は浴室に虚しく響くだけだった・・・。

 

 

奏サイド終了

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