EOS開発物語 作:????
本日、EOSの本格的な稼働データを取るための実験が行われる。
俺が転属してしばらく経ったが、今更なぜ本格的な稼働データを取るのかというと、純粋な稼働データの不足だ。
実を言う所の転属してから今までの間、俺は稼働データを取るのではなく機体の調整、ISで言うところのフィッティングをやっていたのだ。
要は専用機にしていたんだな。
……そういえば、聞いたところによると俺が転属させられた理由は、恥ずかしいことながら俺が優秀なだったからなどではなく、前テストパイロットが急死したからだそうだ。
ちなみに前テストパイロットは女性で、死亡理由は転倒事故の際のEOSのバッテリー重量による圧死らしい。
まあ、あの60kgもするバッテリーが乗っかってきたら、女性の身体では持たないだろう。
ああ、話を戻そう。
本格的な稼働データを取るとのことだが、その内容はテスト寸前で伝えられるらしい。
今はデータを取るためのアリーナ、コロッセオみたいな場所に向かっている途中だ。
「……
「…ふむ、向かっている途中だし、準備時間の短縮といえば上司を抑えられるか。で、実験の内容だっけ、聞いて驚くなよ? なんと今回の実験にはISも使われるんだ!!」
「IS? え、もしかしてとてつもなく重いものでも運ぶんですか?」
「ふっふっふ、現実逃避はやめとけ。見苦しいぞ?」
「……もしかして対戦相手はISですか?」
「そうだよ! よくわかったな!」
「あなたが誘導してきたんでしょ……」
この人は
「所で日咲さんは今回の実験はどうなると思います?」
こんなことを言うのはアレだが、この人に付き合ってきてわかったことがある。
「あ? 今回の実験がどうなるかだって? もちろんEOSが負けるに決まってるだろ!」
この人は自分の思ったことをそのまま口に出してしまうタイプなんだ。
そのせいだろう、あのフレンドリーが売りであるような研究所で孤立気味だ。
だが同時に嘘もつかないということなので信用もされているようである。
おっと、また関係のない話になってしまった。どうやら俺は自分の思っていた以上に話を脱線させるのが好きらしい。
「ちなみにどうして負けると思うんです?」
どのような負け方だろうか、運動性能の不足?それとも継戦能力の不足か?
「それはな、攻撃力の不足だ」
「攻撃力? そういえば今までEOSの武装を見てきませんでしたね……」
「も、もうすぐ見れるから……そ、それまではEOSを楽しみにしてるといい」
「? はあ……」
なにか違和感を感じるが流しておくとする。
それよりも、もうすぐ、ということはアリーナに着くのももうすぐなのだろう。
ちなみに今までEOSの武装は見たことがない、と言うのは本当だ。
一体どんな武器なんだろう。無難にライフルとか……? それとも最近開発されたというレーザー兵器とかだろうか。いや、でも、もしかすると近接武装だったりするかもしれない。
「着いたみたいだな」
「ここが……?」
目の前に広がるのは広い空間。直径はどれほど有るのだろうか、詳しくは分からないが1kmを優に超えている。
更に言うと、そこには既に先客がいた。
「『ラファール』デュノア社が生産した最新型のISだな。なんでもパイロットと一緒にこの研究所に来たらしい」
「パイロットも…? どこの所属のパイロットなんですか?」
「さあ? 噂によるとドイツ軍から左遷されてきたのだとか、まあ、俺のような一研究者には知らなくていいことだな」
「非合法研究所……?」
どういうことだろうか。
「ま、お前もこんなことは忘れておいたほうが身のためさ」
「はあ……」
「そんなことよりもこっちへ来い」
日咲さんが壁に手を触れたかと思うと、その壁が上にスライドしながら開いていった。
その中を覗くと、中には昨日までの期間で完全に俺の専用機と化したEOSが。
「さっきも伝えたが、お前にはこのEOSであのISと戦ってもらう」
「やっぱりですか……」
「ああ、ちなみに相手の弾はペイント弾だから安心しろよ、」
ホッ、安心した。こっちはEOS つまりISで言うところのシールドバリア-がないのだ。
そんな状態でIS用の武器を使われてみろ、死ぬぞ。
「っと、そういえば武装の方は?」
「ああ、武装だね……それはこっちだよ」
そういって別のシャッターが開く。
その中には日本刀のようなブレードと一般兵が使う単発で誘導式のロケットランチャーがあった。
「……これは?」
「いや、ね? EOS開発って時間とかいろいろかかるじゃん?」
「だから? もしかしてEOSに夢中になって武装のほうに手を付けていなかったとでも?」
「いや、ね? EOS開発って時間とかいろいろかかるじゃん?」
「……はぁ」
どうやらさっき
こんな簡単にバレることなんだから隠さなければいいのに……。
「で、これでどう戦えと?」
「どうもこうも戦えないんだよなぁ……」
「……要するにあれか、適当に戦って負けてこいと?」
「君、ちょくちょく素が出るよね。いや、今はそんなことはどうでもいいんだけど」
「はい、どうでもいいです。で、負けてこいって認識でオーケー?」
「は、ハイ。負けてきてください」
…どうやらこの対戦は何もできずに負けることになりそうだが……せめて一歯は報いたいな。
「それでは、出撃する」
俺は右手に1本持ち、背中には3本ものブレードを背負い、左手にロケランを持ってカタパルトから出る。
パワードスーツを着ているからか、重みは殆ど無い。しかし、この軽く持てる時間も制限が有るのだ。
バッテリーの残り電力95%、カタパルトから出るだけで全体の5%もの電力を消費する。どんなことに電力を割いているのかというと、それは主に左手に持っているロケランの重量軽減だ。
そのためなるべく早くこれを使い切りたい。
開始のアラートがなる。
「こいつは効くか!?」
まず俺が初めに取った行動は重しを捨てる、要はロケランでラファールをロックオンして撃ったのだ。
単発式の為、1発撃ったら用済みな重しをすぐに投げ捨てる。
俺が重しを捨てている間にISがとった行動は一つ、回避行動だ。
ISにはPICが積んである。そのため旋回性能も異常なほど高い。
壁際に近づいたとおもいきや旋回性能をフルで発揮させ、ロケットを避ける。ロケットの向かう先には壁があり、当然爆発することになる。
「はは、ははは。なんだこれ、無理じゃないか?」
「ああそうだ、無理だから諦めて投降しろ」
「!?」
俺の呟きにパイロットが反応する。
その声を聞いて俺は驚いた。
「おまえ……いや、なんでもない」
「?」
ISのパイロットの声は良くて12歳、下手をすると10歳位の声なのだ。
たしかにラファールの各部をよく見てみると、規格に合わないものを無理矢理合わせているような跡が見られる。
「で、なんだっけ。ああ、投降しろってか」
「ああ、この試合に勝ち目など無いだろう。ならば投降したほうが楽ではないのか?」
……すこしカチンと来た。さてはこのガキ、舐めてやがるな?
見てろよ、今にも痛い目に合わせてやる。
「断る!!」
そう言うと同時に俺はパワーアシストを全開にして、右手のブレードをISに向かって投擲する。
流石にEOSによるパワーアシスト全開での投擲は速いらしく、相手ISに一撃与えることができた。
相手が怯んでいる間に背負っているブレードを両手に持つ。
そして機械だよりの猛ジャンプ、ISに届いt……
「届いた、とでも思っているのか?」
その声を聞くと同時に俺に腹部が真っ赤に染まった。
◇◆◇◆◇
「いやーっ、負けると思ってたが、まさか一撃与えるとは思わなかったぞ」
「流石にあの物言いにはカチンと来ましたからね」
「ああ、通信で聞いていた。流石にあの言葉にはカチンと来るよな」
今、俺は腹部にペイント弾を受け、真っ赤に染まったEOSを洗浄している最中だ。
「はぁ……なかなかうまくいかないものですねぇ……」
「それは当たり前だろ。人間うまくいかないことばかりさ」
「そうですね……」
何度も言っておくが、これは川沿いの草むらで夕陽を見ながら話しているものではなく、ペイント弾で汚れたEOSを洗浄しながらしている会話だ。
「ここにいたのか……」
「……? 今、女の子の声がしませんでしたか?」
「いや、俺も確かに聞こえたが……」
はてはて、と周りを見回して見ると扉の横に銀髪で目が光っている少女が存在していた。
いや、少し違うな、瞳孔が光っているんだ。
「君は……?」
「私の名前はP-4……いや、フィーアと呼んでくれ」
P-4? なんだ、ドイツでは既にマイナンバー制度でも採用されてたのか?
「お、おう。わかった。で、フィーアはなんの用でここに来たんだ?」
「ああ、先ほどのEOSの操縦者と会話したくてな」
「そういうことか、それじゃあ自己紹介を。元日本軍所属の高月黒斗だ、この研究所のテストパイロットを務めている。よろしくな」
「ふむ……元ドイツ軍所属、フィーアだ。よろしく」
あ、日先さんの言った通りドイツからの転属か。
「で、会話と言ったって何を話せばいいんだ?」
「先ほどの試合中の心境を聞きたくてな」
「ああ……とりあえずこれが終わってからでいい?」
「ああ、それでいい。それでは先に食堂にいるぞ」
「食堂か……頑張れよ」
「……? ああ、何を頑張ればいいのかはわからんが待ってるぞ」
そうして彼女は食堂へ向かっていった。
しかし、瞳孔が金色ってすごいなぁ……。虹彩も黒だったし、ドイツの最新ファッションか何かか?
「さて、頑張りますか!」
「おう、そうだな!」
あ、日咲さんの存在を忘れてた。
◇◆◇◆◇
「それじゃ、食堂に行ってきますね」
「おう、その間に武装関連の解決先を練ってるからな」
「お願いします」
面倒な洗浄シーンなどカットして、俺は食堂へ走って向かう。
武装関連というのはそのままの意味で、EOSの武装に関してだ。
流石にブレードとただの重しでしかないロケラン一丁でISに挑むというのはキツイ。
そのため
「あれ? 高月くんどこに行ってるの?」
「ん? ああ、
「うん、大体5日と3時間ぶりかな?」
「そんなものだったっけ? まあいいや。で何してたんだ?」
「うーん……言えないことかな?」
言えないこと……あーんなことやこーんなことかもしれない。いや、ないか。一応国連の研究所だし。
多分機密事項なのだろう。
「で、はじめの質問に戻るけど、どこに行ってるの?」
「ああ、食堂に向かっているんだ。新しく来た女の子に呼ばれてさ」
「ふーん。それはそうとそっちは食堂と逆方向だよ?」
「え?」
近くの看板を見る。
あ、ホントだ。食堂と真逆のところに来てる。あれ? 疲れかな?
流石に今日の稼働実験は精神的な意味で危険だったから疲れてるんだろう。
「ああ、忠告ありがとう。それじゃ、俺は行くから」
「うん、ばいびー!」
「ああ、バイビー」
変な掛け声とともに俺は月垣と別れ、食堂へのルートに戻る。
しかし、道に迷うとはな……この研究所に来て1周間と半分ほど、どうやら俺は未だに道を覚えていないらしい。
地図なんてあったっけ。
ポケットを探ると、中から小さな紙が出てきた。
なになに?
ーーー これを見ている時には私はもういな……いいや、こういう前置きはどうでもいいかな。それはさておき、食堂への道は裏に描いてあるからね~ by.月垣恵 ーーー
裏を見るとさっきの場所から食堂までのルートが描いてあった。
あの短時間でどうやって描いて、どうやってポケットに忍ばせたんだ? まあ、謎は残るけど役に立ったことは事実だし、特に害になってるわけでもないからいいか……な?
最近、どうでもいいことはすぐに流そうとしている節があるな、どうしたんだろう。
……環境が変わったせいだろう。さて、食堂に向かおう。
右に曲がって、左に曲がって、この道は真っ直ぐか。そして食堂へ到達っと。
「お、高月が来やがった。こっちだこっち! またあいつらがやらかしてるぞ!」
ん? あいつら、また新人いじめをしているな……。いや、いじめというよりは弄りに近い感じだろうけど。
ちなみに今回の新人は女だからか、食堂のおばちゃんは絡んでないようだ。ここいら辺に不平等さが出ている気がする。
「で、お前らはまたやってんのか?」
「いや~、なれさせようと思って……」
「…はぁ、とりあえず俺に話があるらしいから、また今度ってことで頼む」
「しょうがねぇなぁ……」
やっと立ち去ってくれたか。
さて、
「すまないな、不格好なんだが道に迷ってしまった。さあ、話をしようか」
「そうだな」
フィーアの対面の席に座る。
そして、改めてフィーアの顔を見てみると、
「……綺麗だな」
「…? なにか言ったか?」
「いや、なんでもない」
プラチナのように輝く銀髪、漆黒の虹彩とそれに映える金色の瞳孔。
その姿はどこぞのお伽話に出てくるお姫様みたいだ。
ドイツ人はこれが普通なのか……?
「さあ、試合中にお前が思ったことをすべて聞かせて欲しい」
「試合中に思ったことね……あ、これ死んだな。としか思わなかったな」
「死んだな……? それは物理的な要因で、か?」
「いや……現代語というか、なんというか」
「ふむ、どういうことなのかわからん」
「ああ、あれだよ。死なないとわかっていても死ぬかもしれないじゃない? ISとの戦闘だからね、なにが起こるかわからないし……。そう、俺は恐怖したんだ」
「戦闘行為と言っても試験だ。それにミスなどあるわけないだろう」
「それはそうだけど……うーん」
なんと言ったものか、俺にはこの状況を脱するための一言が思い浮かばない。
「そうだな、想定値以上の結果が出ることがあるだろ?」
「ああ、極々稀に起こることらしいな」
「それと一緒だよ。何もいいことばかりが稀に起こるわけじゃない。都合の悪いこと、軍で言えばジャムなんかがそうだね。そういうことが試験でも起こりうるんだよ。」
「そういうものなのか……?」
「そういうものさ、深く考えないほうがいい。それが楽に生きるために重要なことさ」
……こんなことを女の子に教えてるとなるとどこかからお叱りをもらいそうだな。
だが、仕方ない。俺がこの状況を脱するためには必要なものだ。お叱りなら後で受けるさ!
「こら! 女の子になんてことを教えてるのさ!」
「その声は……月垣!? お前なんでこんなところにいるんだ!?」
「失礼な、私が食堂にいたらおかしいかい?」
「いや、そんなことはないが……」
因みに言うとここは食堂の端、入り口からはなかなか見えないところだ。
俺の場合、絡まれていたから見つけることができたが、二人で普通に会話するだけの利用で見つかることは殆どない。
「で、このかわいい女の子はだれ?」
「ああ、この子は」
「フィーアだ。元ドイツ軍所属で、今日をもってこの研究所のISパイロットとして転属した」
「ふーん。ドイツ軍、ね」
「なにか?」
「いや、なんでも。それで、こんな可愛い子と逢引き? 君もやることはやってるね~」
「ばっ、そんなことじゃねえよ! 大体こいつの見た目は明らかに10代だろ!」
「どうだろうね~」
信じてもらえないらしい。どうしたものか。
「そうだ、お前も何か言ってくれよ」
「私が……? そうだな、私たちは逢引きなどをしているわけではない」
「じゃあなんでこんなところにいるのさ」
「それはだな、私がこいつのことを気にいったからだ」
「……気に入った?」
なんじゃそりゃ、気に入ったってなんだよ。アレか、まだ日本語に慣れていないのか?
「気に入ったってどういうこと?」
「いや、日本語では話したくなることを気に入った、というのだろう?」
「ああ、日本語ができてないのね。そっか、逢引きじゃないなら別にいいや。じゃ~ね~」
「ああ、またな」
ん? あいつ食事をしないのか?
いや、食事をした後に話しかけてきたのかもしれないな。
「それで、だ。思ったことはさっき言ったことで全部だ。取り敢えず今日のところは解散でオーケー?」
「ああ、それでいい。それではな。」
そういって彼女は食堂から出て行った。あれ、なんかこの状況、俺があいつを食堂から追い出したように見えるような……。
◇◆◇◆◇
「それで、今回の改良はどういった結果に収まったんだ?」
「火力はIS用の武装で補うことにしたよ」
ここはEOSの保管場所でもあり、整備室でもある日咲さんの研究室だ。
目の前にはペイント弾の色を完全に落としたEOS。
だが、いつもとは違う点がその隣りにあった。
「…『ロータス』ラファールと一緒にドイツから送られてきたIS用の武装だ。あいつら自国のISは出さないくせにフランスのISは平気で送ってきやがったからな、せめてもの条件で武装も送らせたんだ」
「見た目はただの火薬銃のようですが」
「ああ、見た目はな? 中身はなんと、試作型の電磁加速砲なんだぜ!」
電磁加速砲……? それが実現するのは数年先だという話だったが。
「全てはISさまさまってことだな。ISを解析するうちに未発見の技術が使われていたりとかで色々なところで技術革新が起こってるんだってさ」
「あれ、顔に出てました?」
「いや、皆こういう技術革新の場面に出会うと同じことをを思うからな」
そういうものなのか……?
「ま、そんなことはさておき、こいつを使ってみないか?」
「……どのみち実験なんでしょ? あーあ、肩が外れなければいいけど」
「気にするな、反動制御の方はプログラムで組み込んである」
「それならいいんですけどね……」
アリーナへ向かう。
研究室からアリーナまでのルートは一応覚えているが、一人で行けるか、と問われると多分無理だと応えるだろう。
因みにEOSは職員の方が運んでくるらしい。
「さて、もうすぐEOSの方も着くみたいだからこの間の武装確認でもしようか」
「この間って言っても……ロケットはアレでしたし、ブレードだけですよね?」
そのブレードで反撃できたからいいんだが。
そもそもあのブレードはなんでISにダメージを与えられたんだ?
「実はね、あれの成果のおかげでIS用の武装をEOSに流用することの許可が出たと言っても良いんだよ? あれは日本製のIS『
「ISブレード? それがどうしたんですか?」
「つまり、頑張ればEOSでもIS用の装備を使えるという証明ができたんだ」
……なるほど、目には目を歯には歯をISにはISを、ってことか。
だがISには絶対数がある。なのでEOSを使ってIS用の兵器で攻撃をしようって魂胆か。
「ま、色々と制約があるからポンポン使えるってわけじゃないんだけどな」
「そりゃそうですよね」
「……ところでお前の敬語ってやっぱりキモいな」
「公私は分けてるつもりなんで勘弁して下さい」
「いや、でもこの前」
「あ、EOSが来ましたよ。行きましょうか」
そう言って俺は運ばれてきたEOSへ近寄るのだった。
明日も投稿します。というか4話までは毎日更新です。
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