EOS開発物語   作:????

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そして物語は移り変わる


3話

「それじゃ、今回の目標を言うぞ」

 

アリーナに入る前、俺はアリーナの中を確認した。

そして、俺はアリーナに入るのは今回で2回目なのだが、それでも異様とわかる物がアリーナの中央にあった。

 

「今回の目標はシールドバリアを張ったISの装甲の塊だ。注意点としては、シールドバリアを張ってるからアリーナのバリアは切ってある。くれぐれも流れ弾とか出さないでくれよ」

「了解。それでは、出撃します」

 

そう管制室に伝えてアリーナの中に飛び入る。

前回とはまったく違った内容の装備で、右手にはロータス、左手には葵、腰に予備の葵をぶら下げている。

前回は背部に無理やり括りつけたが、その姿を見て日咲さんがアタッチメントを用意してくれた。

 

アリーナの中、正確に言うとISの装甲の塊の前に立つ。

ISの装甲の塊、ブロックと呼称しよう。そのブロックをよく見てみるも継ぎ目などはなかった。

どうやって破壊しようか……。

 

《ロータスの方から実験を始めようか、まずはロータスの銃床を見てくれ》

 

銃床を見る。そこには電力供給のためだろうか、なにかを接続できるようなプラグがあった。

 

「これは?」

《それは見ての通り、エネルギーを持ってくるためのプラグさ。それで、右方向の壁に向かって真っ直ぐ進んでくれ》

 

言われた通り右方向へまっすぐに進む。

壁に近づくとそこの壁が凹み、中からケーブルが出てきた。

 

ケーブルを手にとってまじまじと見る。

すると、ケーブルの先端が銃床の部分に繋げそうだったのでカチャリ、と音を立ててつなぐ。

 

《それでいい、何も説明しなくても動いてくれるお前に感謝するよ》

「それで、このケーブルはどれくらいまで伸びるんですか?」

 

それが重要だ。短すぎるとEOSの機動力が殺されてしまうし、長すぎるてもケーブルを千切られやすくなるため不利になること間違いなしだ。

 

《そのケーブルの長さは、アリーナの直径の3分の2くらいの長さがある。お前にはその中でやりくりしてもらおうことになる》

「了解。それでは、始めてください」

 

《シールドバリアー起動、展開を確認。いまから実験を開始する》

 

いままで展開していなかったのか。てっきり展開しているものとばかり思っていた。

 

《どうした高月? はやく攻撃に移るんだ》

「あ、すみませんでした。今から攻撃します」

 

右手のロータスを構え、予め聞いていいた通りの手順で発射準備を済ませていく。

チャージ…良し。弾…良し。冷却装置…良し。

 

「それでは……発射ッ!!」

 

そう前置きをして、ロータスから弾丸を放つ。

 

放たれた銃弾は目の前のブロックのシールドバリアに到達、その後、シールドバリアを貫通して本体まで到達した。

本体への着弾と同時に舞い上がった砂煙のせいで損傷の有無は分からないが、シールドバリアを貫通できただけでも驚くべきことだろう。

 

《ほう、シールドバリアーを貫通するか。さすがドイツというべきか、ISの軍事転用の最先端を行っているだけはある》

「第一射、ヒット。どうします? 二射目も撃ちますか?」

《いや、それよりも銃痕を確認してくれ。こちらからでは砂煙で見えない》

「了解」

 

ブロックに近づいて、体全体を使って周りの砂煙を掻き消す。

そして、砂煙が落ち着いてきた頃に銃痕が見えてきた。

 

《確認できたか?》

「はい、確認できました」

《どのようになっている》

「なんというか、穴が、開いていますね」

 

確か、電磁投射砲は銃弾の大きさによって、射程距離が変わるらしい。

理由としては弾が空気摩擦によって燃え尽きる、溶けるということだ。

 

なにが関係有るのかというと、このことから考えるに、ロータスは射程距離を気にすれば文字通りの一撃必殺足りえるということだ。

 

《ふむ、貫通しているのか》

「見事に貫通していますね」

《……それでは、本日の試験は終了とする。解散》

 

何か問題があったのか、管制塔の指揮官は解散の指示を出した。

 

今日の試験はこれで終わりか、さて、整備室に戻るかな。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

「お疲れ」

 

整備室に戻るとそんな一言を身に受けた。

相手は月垣で、整備室の中には月垣以外いない。

 

「あれ? なんで月垣がここにいるんだ?」

「失礼だね……ここはEOSの研究所、私もこの研究所に所属しているんだし整備室にいても変じゃないでしょ」

「そういえばここはEOS専用の研究所だったな」

 

すっかり忘れて、他にもなにか開発しているものとばかり思い込んでいたよ。

 

「それにこの実験は一部の人たちに注目されていたんだから」

「注目? IS用の武装を使ったからか?」

「そうそう。それにしてもあの武装、今後、表では使われることはないだろうね」

「……シールドバリアを貫通したからか」

「一応ISの軍事使用は禁止だからね。機体まではなんとか誤魔化せるけど、絶対防御を貫通するってわかったら大変だ」

 

月垣はおどけたようにそう言う。

確かにISの軍事利用は国際IS条約で禁止されている。

しかし、今はその条約は殻だけの状態で中身はない。禁止かどうか決めるのは世論だけなのだ。

その世論が条約違反の有無を見分けるには、やはり目に見えて理解できる『攻撃力』しかないだろう。

このことから考えるに、対IS用のIS武装で一撃必殺は今後も作られることは余程のことが無い限り不可能と言える。

 

「……あ、人が来たようだね。それじゃ、私は行くから。ばーいびー」

「あ、おう。じゃあな」

 

手を振りながら整備室を出ていく。

あいつ、いつも似たような去り方をしているな……。

 

「ああ、ここにいたのか」

「ここにいたのかって……どういうことですか?」

「いや、どこにいるのかわからなくてな……他にもいろいろと立て込んでいたし。それより一人で何をしてたんだ?」

「一人? あれ、月垣とすれ違いませんでしたか?」

「あ? 月垣? 誰だそいつ」

 

…どういうことだ? 今のタイミングならすれ違っているはずだが……。

もしかして名前を知らないとか? そうか、日咲さん側からは何のアクションも起こしていないから名前を知らないのか……。

それなら仕方ないな。

 

俺は日咲さんに同情の視線を向けることにした。

 

「な、なんだその目は……」

「いえ、可哀想だなー、と思いまして」

「……コホンッ、今回の実験によってEOSによるIS用射撃武装の使用が確認された。そのため、次回の対IS試験ではIS用の射撃武装を使ってもらう」

「……次回は対IS試験ですか」

「ああ、だろうな。今後頻度が高くなるようだから体調を崩さないように気をつけろよ」

「了解」

「それじゃ、解散だ。次回の試験の詳細に関しては後でデータを送っておくからしっかりと確認しろよ」

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

翌日、あれから試験等は全く無く、俺の元へ来たのは今日の試験に関するデータだけだった。

 

その試験に関するデータの中身は、予想通りの対IS試験だ。

場所は前回と変わらないアリーナで、武装は電磁加速砲『ロータス』とブレード『葵』だけだ。

EOSにも補助の小型スラスターが追加され、速度関係の性能は上昇。

 

しかし、今回の試験も非常に困難なものになるだろうと予想されるだろう。

根拠も何も無いがそう思うのだ。

 

「そんじゃ、前回の仕返しをしてこい!」

「わかりました!!」

 

足のみを固定するタイプのカタパルトで、俺はアリーナの中へと飛び入る。

視界を前に上空へ向けるとそこにいるのはやはりフィーア。前回と同じ機体・武装できているが、前回、窮鼠に噛まれたことを覚えているのか警戒している様子だ。

 

 

着地、と共に試験開始と思うだろうが、俺にはやらなければいけないことがある。

 

《それでは、ロータスを接続してください》

 

そう、ロータスの給電だ。

俺は壁際によって給電ケーブルを取り出し、銃床に接続する。

ちなみに言うと、今回のCPの声は女性なのでちょっと、そうちょっとだけやる気が出ている。

 

《それでは、試験開始》

 

「……どうした? 前回のように攻めてこないのか?」

「いや、どう攻めるか考えているものでね」

「ふんっ、来ないならこっちから行くぞ!」

 

そう言って、フィーアの駆る『ラファール』がこちらに急接近してきた。

半ば突撃と様なものなのでジャンプとともに稼働させたスラスターによって横方向に避ける。

そして背中に葵を突き立てようと後ろを向くと

 

「なっ、何処に!?」

 

既に後ろにフィーアの姿は無かった。

 

「何処だ!?」

「こっちだ」

 

声の方向へ顔を向けると、ライフルを構えながら上空から降下してくる様子を確認できた。

バンッ、バンッ、とライフルを狙って撃ってくる。

 

しかし、その速度は既存の兵器と同じなので、ある程度の射線予測は可能だ。

俺は小刻みにスラスターを活用しながらペイント弾を避ける。

 

1発…2発……とライフルから弾が放たれ、やがてチャンスが訪れた。

そう、弾切れだ。

弾の数を精密射撃中に残り弾数を確認する余裕がなかったのか。

だが、そんな状況に動揺しながらもリロードをするフィーア

通常、リロードは数秒もかからない。しかし、俺には1秒もあればいいのだ。

 

即座にロータスの銃口をフィーアに向ける。

しかし、狙っていたのか、それとも偶然の産物なのか。動きまわって避けた罰が下った。

その罰とは、ケーブルの長さによる制限だ。

 

こうなってしまえばチャージを完了しているロータスもただの紐付の棒だ。

銃床のプラグからケーブルを引き抜き、回避行動へ移る。

 

1発…2発……また弾を数える作業へ戻っていくのか……?

おそらくフィーアもなぜ反撃されたか気づいているだろう。

そんな中、またやるのか……?

否、そんなことはしたくない。

 

俺はペイント弾を避けながらロータスを構えるタイミングを狙う。

……身体には当てないように……ここだ!

精密射撃と言えないが、なかなかの精度で弾が向かっていく。

ここでロータスの役割は終わりなので、地面に置く。

 

着弾は……!?

 

「……まさか当たるとはな」

「ああ、その御蔭でこちらの装甲がはじけ飛んだぞ」

 

そう、フィーアの駆るラファールの浮遊ブロック、スラスターは弾け飛んでいた。

きっとロータスが直撃したのであろう傷は機械なのに生々しく、その中身を外気に晒していた。

 

「これで、前回と似たような構成になったわけだが……」

「フンッ、何が同じ構成だ。こちらはスラスターが片翼使えなくなっているんだぞ」

「…ま、そうか」

 

あちらの状態は、片翼が使用不可、残り弾数はほぼ無限。

対してこちらの状態は、推進剤は残り僅か、武装は葵のみ。

これは、この状態は……。

 

「最初の試験の状況に似てるな……」

「今回、こちらが押されているがな」

「ま、こういう状況なら、やることは一つだな」

 

スラスターを吹かしてみる。

……どうやら少しなら大丈夫なようだ。頼むぜ相棒。

 

「そんじゃ、いっちょ行きますか!!」

 

まずは左手に持った葵を勢い良く投げつける。

フィーアはその行動を読んだのか、それともやることを理解していたのか、軽く避ける。

 

「そして!!」

 

パワーアシスト全開でのジャンプ、届くかじゃない。届かせるんだ。

 

「届けぇぇ!!」

 

届いた!! いや、違う。あいつも決着を着けたがっているのだ。こちらにフィーアが向かってくる。

 

「はぁぁ!!」

「あぁぁ!!」

 

2つの機械が決着を着けるかの如くぶつかり……合うわけもなく俺はスラスターを使ってフィーアの腋を潜り抜けて、更にスラスターを使用して背中に乗る。

 

「スラスターの存在を完全に忘れていたな」

「クソッ、完全に忘れていた!!」

 

背後に着いたらやることは1つだけ。

俺はそのままフィーアの背中を葵で限界まで何度も何度も切り裂いた。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

《シールドエネルギーエンプティ、試験は終わりです》

 

「ふぅ、終わったか」

「な、にが、終わったか、だ」

「ああ、悪い悪い。上から退くよ」

 

そう言ってフィーアの上から降りる。

 

ふむ、しかし……勝てたのか。

あの世界最強と言われているISに……。

 

《!? ふたりとも! その場を離れて!!》

 

声に従い、フィーアを抱えて飛び跳ねる。

すると今までいた場所に銃弾が打ち込まれた。

 

銃弾!? ペイント弾じゃないのか!?

 

「おい管制塔! これは一体どういうことだ!!」

《どういうことも何も、私達もまったくわかりませんよ!!》

「クソッ」

 

葵で地面を削って砂煙を立てる。

敵ISは……クソッ、自分で立てた砂煙でまったく見えねぇ!

 

仕方なく俺はアリーナの外へと逃げる。敵が何かも分からないうちに戦えるかっての。

アリーナの入り口は……あった!

 

かろうじて見える視界の中でアリーナの入り口を見つけて、その中に飛び込む。

 

「おい! 誰かいないのか!?」

「だれもいるはずないだろ」

「あれ!? フィーア!? あ、そうか。お前は気を失ってたわけじゃなかったんだよな」

「なんで気を失う必要があるんだ」

 

あれ、なんで気を失ってるって思ったんだろう。

あ、存在感が無いからか。まあ、何はともあれ無事なようだ。

だが、フィーア一人が無事でも現在の状況は危機的なのは変わりない。

どうすればいいのだろうか。

 

「とりあえず中に入って誰かに聞けばいいだろう。考えるのはそれからだ」

「フィーア……そうだな。とりあえず中に入るか」

 

扉を開け、アリーナから脱出すると同時に、地面を通して大きな衝撃に襲われる。

 

「フィーア! そういえばお前のISはどうした!?」

「どうしたも何も、待機状態で放置してきたわ!!」

「クソッ、屁の役にも立たねぇなぁ!!」

 

どうやらフィーアのラファールはアリーナの中に置いてけぼりな状態なようで、現状を打破するためのモノはない。

 

「こっちだよ!」

 

聞き覚えのある声が聞こえた。

そちらの方へ身体を向けると、そこには手ぶらの状態の月垣がこちらに向けて手を振りながらそこにいた。

いつもながら、何をしているんだあいつは……。

 

「お前はこの状況で何をしているんだ?」

「そんな呆れた顔を向けられると困るんだけど……」

「実際呆れているからこういう顔を向けるんだろうが」

「むー、確かにそうだね」

 

こいつは……脳天気なのか、それともただのバカなのか。

この状況でこういった会話ができるなんて……。

 

「で、お前はどういった用事でここにいたんだよ」

「んー、言えないかな?」

「言えないって……あれか、また機密事項です、とか言うわけじゃないだろうな」

「機密事項ですぅ~」

「お前っ…! はぁ、怒るのも馬鹿らしくなってきた。それじゃ、俺はもう行くからな」

「あ、待って」

「ん?」

 

月垣が背中のバッテリーをいじったかと思うとエネルギーがみるみる満ちてゆく。

どういうことだ?

 

「お前、何をした?」

「後ろを見てみなよ」

 

後ろを振り向くと、そこには見慣れたモノに似ているケーブルがあった。

なんだこれ。充電でもしているのか?

 

「充電しているだけだよ。推進剤は別のところから持ってこないといけないから、スラスターは動かせないと思ってね」

「お、おう。ありがとう」

「それと、彼女はどうするの……?」

 

月垣の視線の先にはフィーアがいた。

…そうだな、こいつの近くだったら安全かもしれん。

 

「できれば、で、構わない。お前が保護してやってくれないか?」

「保護、ね。いつまで?」

「さあ、終わりが見えないからなぁ」

 

果たしてこの騒動はいつ終わるのか。

流石に武装したISが乱入してくるほどの騒動だ。早々簡単には終わらないだろう。

 

「……わかったよ。じゃあ、私が保護しておくから。……君も安全なところに行きなよ?」

「おう、わかった。じゃあな」

「じゃあね」

 

ーー再び、無事に逢えることを願って。

 

ん? いま、月垣がなにか言ったような。

……気のせいだろうか?

 

……さて、日咲さんのところに行くか。

 

◇◆◇◆◇

 

 

「さて、行ったね」

 

高月を見送った後、月垣はその場にとどまったままでいた。

そして、その隣には高月から託されたフィーアの姿があった。

 

「この後はどういった行動を取るんだ?」

「んー、とりあえずここから出ようか。この施設も、もう限界みたいだし」

「そうだな、出口はどちらの方向だ?」

「あっちだよ」

 

指を出口の方へ向ける。

 

「あちらか……少し遠そうだな」

「仕方ないね」

 

その言葉が終わると同時に、大きなものが崩れ落ちる音が聞こえた。

施設をISが攻撃しているのだ。

 

「……ふむ、では急いで外に出ようか」

「そうだね。それじゃ、わたしが先に行くから君は後に付いて来てね」

 

月垣がそう言って走りだすと、フィーアも後ろに付いて来た。

 

「本当に私が後ろで良いのか?」

「この状況で正確に道を覚えてるのは私だけでしょ? 君は道を覚えてるの?」

「……後ろは任せろ。道案内は頼むぞ」

 

後ろをチラチラと振り返りながら走る月垣。

さすが軍人というべきか。冷や汗は掻きながらも、月垣のその姿を一瞥しただけで何も言わないフィーア。

 

月垣たちが選択したルート上にある廊下には色々な機材が散乱していた。

カート、工具、棚、材料。

普段、そこを通る者がいわゆる技術者しかいないゆえの惨状だった。

 

その雑然としたルートを移動中に、再び大きな衝撃に襲われる。

 

何事も無く歩き続ける月垣。しかし、衝撃などの訓練は受けていなかったのか、フィーアはバランスを崩す。

 

「おっ、と」

「大丈夫かい?」

「あああ、大丈夫だ。少しバランスを崩しただけで」

「そっか、それじゃ、行くよ」

 

そう言って、出口の方向へと月垣は進みだす。

先ほどの衝撃よりも更に大きな衝撃が施設の中に響く。

 

2回目には耐え切れなかったのか、転倒するフィーア。

 

衝撃で倒れる棚。

 

落下するのはその中に収まっている工具の数々。

 

落下する先には倒れたフィーア。

 

 

鮮血で廊下が染まった。

 




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