食物連鎖の頂点とされるヒト“食糧”として狩る者たちが存在する…
「ハァ、ハァ」
人間の死肉を漁る化け物として彼らはこう呼ばれる…
「頼む…見逃してくれ…」
…「喰種」と
がぶっ
「ハァー、やばい本当にE組行きになるかも」
そう言いながらがっくりと肩を落としているのは僕の幼馴染の渚ちゃんだ。今渚ちゃんを励ますのに僕は尽力している。今何で渚ちゃんが、落ち込んでいるのかというと僕らの通っている椚ヶ丘中は成績不振の者はE組という隔離されたクラスへ行かされる。そこへ行った日にはもう人生が詰んでいると言われ様々な差別も受ける。だから皆必死にそこへ落ちないよう勉強している。しかし渚ちゃんは成績がそこまで良くないのでこのままじゃE組行きになる可能性があるのだ。
「だ、大丈夫だって。渚ちゃん英語得意だし何とかなるよ」
「そんなの言ったら誰にだって得意教科くらいあるでしょ。あんたはいいよね成績いいからこんな心配せずにすんで」
「そ、そんな事ないよ。それに次のテストは僕も全力でサポートするからさ、ね?」
「まぁそれだったら安心かな…あんた成績はそこそこ良いしね」
何気ない話を友達と一緒に語り合うごく普通の生活。しかし僕はこのごく普通の生活が好きだ。僕は別に将来すごい人になりたいなんて夢もなく普通の生活ができればそれでいいと思っている。だからこうやって渚ちゃんと話しをしている時間は好きだ。
「じゃあまた明日」
「うんじゃあね」
しかし僕はこの時思いもしなかった…普通の日常というのは簡単に奪われてしまうという事を…
「え、えっとアイスココアのセットをお願いします。」
次の休日僕はとある喫茶店に来ていた。一か月ほど前にたまたま見つけたお店だがこれがなんと大当たりのお店だった。静かな雰囲気もあってここで本が好きだ。個人的には隠れスポットで最近はよく来る。今度渚ちゃんに紹介しようかな
“次のニュースです。最近20区では大食いと呼ばれる危険な喰種による捕食が増えてきていますのでご注意を”
最近物騒だなあ。僕みたいなのがすぐに食べられちゃうなのかな?なんてことを考えるのをやめて高槻泉の本を読み始めた。高槻作品は僕のお気に入りで‘黒山羊の卵’から読み始めている。こんなに一人の作者にのめり込んだのは初めてで今度サイン会に行こうか検討しているくらいだ。
どかっ
「いたっ、すいません少しよそ見してました…」
「いえっ、こちらこそ全然気付かずすいませんでした。」
「あれっこの本…あなたもしかして高槻作品を読むのですか?」
「知ってらっしゃるのですか?」
ふと見てみると眼鏡をかけた美人の女性が僕の本に興味を示していた。
「しってるも何も大ファンなんです。こんな所で偶然にも同志に出会えて嬉しいです。」
「ぼ、僕もあまり語り合えるような友達がいなくて…素直に嬉しいです。」
「あのここで出会ったのもなにかの縁ですしお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
「さっ佐々木神威と言います。えっとあなたは?」
「神代リゼと申します。リゼと呼んでください。あのあなたは読書が好きなんですか?」
「ええそうです。むしろそれくらいしか趣味がなく」
「そうだったんですか…あの…もしよろしければ今度どこか一緒に本屋へ行きませんか?私好きなんです誰かと読書について語り合うのは。」
「ほっ本当ですか!僕もあまりこういう機会がなくて僕なんかでよろしければ是非!」
「決まりですね。では後日また。失礼します。」
「はい、さようなら。」
何か話の流れにのって本屋へ行く約束をしてしまったがもしかしてこれはデートなのか?渚ちゃん以外の女の子と殆ど遊んだ事すらない僕にとっては勿論デートは初めての事だった。でも今はデートよりも趣味の合う人に出会えたことを喜んでいた。しかしこの時僕はリゼさんの本当の狙いに気づけないでいた…
「あっ神威くん、遅くなってごめん。待った?」
「大丈夫です。今来た所です。」
「ふふっ本当に?じゃあ行きましょうか」
それからは楽しい時間が続いた。やっぱり趣味の合う人とは話も合うというかこんなにも話せたのかというほどリゼさんと話した。夢の本屋デートは最高だったしリゼさんの紹介してくれたお店は風情があってとても美味しかった。楽しい時間というのもあっというまでデートも終わりの時間を迎えようとしていた。
「今日はとても楽しかったわ。ありがとう神威くん」
「いえ、僕の方こそありがとうございました。とても楽しかったです。」
少し名残おしいがこれ以上遅くなるとリゼさんが心配だしこれ位が丁度いいだろう。
「じゃあこれで…」
「ちょっといい?神威くん」
「何ですか?」
「あの…最近ここら辺で喰種の大量捕食事件が起こっているでしょ?私一人だとちょっと心配で…」
「わかりました。任せてください僕が家まで送っていきます。」
「まぁ!ありがとう神威くん」
こうして僕はリゼさんを家まで送って行くことになったのだが困った。ぼくは運動神経が悪いし弱いので多分リゼさんの方が強いくらいだと思う。でもあのまま一人で帰らせるわけにもいかないしついていくしかなかった。それに二人でいる分危険な人も多分出ないだろう。
「それで渚ちゃんがね…」
「ふふ、あなたのお友達は面白いね」
帰り道リゼさんとたわいもない話をしていた。ただリゼさんは話をのせるのが上手いのか僕は話すことに夢中になり徐々に人通りの少ない場所に来ていることに気づかないでいた…
「あのね…神威くん話があるの」
「何ですか?」
そう言うとすぐさまリゼさんが抱きついてきた。えっ、こっ、これはどうしたらいいのか?こんなことになるのは初めての僕はドキドキしていた。
「私ね、神威くんが始めてあの喫茶店に来た時から神威くんのこと…
これが噂に聞く告白というやつなのか。どうしよう僕は確かにリゼさんといると楽しいけど愛しているかと聞かれると少し違う気がする。でもリゼさんの告白を断るのも悪い気が…
ずっと見ていたの」
次の瞬間何が起きたのか全く認識できなかった。
「へっ?」
噛?なんだ?なんだこの目‼︎
「はぁぁあおいし…」
「うわあああっ‼︎」
「あらっ、大丈夫ですか?うふふふ。ねぇ神威くん 私ね逃げ惑う人を追いかけて食べるのが大好きな。恐怖に怯える姿が何度みても堪らないんですよ」
何をいっているんだこの人。全く理解出来ない。あれっ血っ⁈血ってこんなに生温かいものだっけ?ああやっとわかってきた…僕は…僕は…この人に殺されるんだ‼︎
理解してからは簡単だった。まず恐怖で体が動かなくなりまともに言葉も発せなくなっていた。
「ウフフ、その表情 素敵ですよ」
「そうですよね…まさか“そう”だなんて…思いもしなかっただでしょう?」
ゴキッ ゴキッ ズグゥ
彼女の腰の辺りから何かおぞましい物が生えてきた。嘘だ…嘘だ…
「私が‘喰種”だなんて‼︎」
「うっ」
「神威くぅぅぅん ゾクゾクさせてェ」
「うああああああああ‼︎」
「あははっ、待ってよ」
そこからは地獄のデスゲームが始まった。ルールはいたってシンプル…捕まえられたら…死あるのみ
なにあれ なにあれ なにあれ なにあれ なにあれっ
彼女今なんて言った?ぐ、喰種っ⁈
僕は…馬鹿だ‼︎ 今思えばあの時僕にぶつかってきたのも、休日に遊びに誘ってきたのも、全部彼女の計算だったんだ‼︎とにかく今は逃げないとーーーー
だがそう彼女から簡単に逃げられるはずもなく簡単に彼女の尻尾のようなものにあしをすくわれてしまった。
「ぐっ」
「あはは、捕まえた」
「神威くぅん 喰種の“爪”は初めてでしょう?お腹の中優しくかき混ぜてあげますよ…ウフフ」
「うあぁぁぁぁぁぁあ」
「五月蝿いわね」
ズブ
リゼさんのいう喰種の爪とやらで僕の腹は貫かれた。その瞬間今まで感じた事のない激痛が全身を走った。
「ぐあぁぁぁぁぁぁあ…」
ガクン
「うふふ死んじゃったかしら。私神威みたいな可愛い顔の男の子が大好きでね…それにほどよく脂も乗ってるし筋肉質じゃないから柔らかくて食べやすそうで…さて今週食べた二人とどっちが美味しいかしら…」
グラグラッ… プツッ
リゼ「あらっ?」
ドゴォォォォォォォォォォォォン
「がはっ………なんで………あ…たっ………がっ」
ガクン
おいおいなんかすげぇ音が聞こえなかったか?
えっ?
ねぇ?あれっ鉄骨の下…人じゃない⁈
うわっ‼︎きゅ、救急車を呼ぶぞ‼︎
何…………だ……………?
こ……つ……に……リ……の……かく……を……
せ…せい……こ……子にも……包があります
なにっ……じゃあ………もまさか⁈じゃあ……彼に……リゼのに…くを……それで……経過を……観察……
ーー僕は小説の主人公でもなんでもない…ごく平凡な、どこにでもいる中学生だ
……だけど…もし仮に僕を主役にひとつ作品を書くとすれば……
ピッ ピッ ピッ
パチッ
それはきっと…………“悲劇”だ
今回は最初にリゼの話を持ってきました(というかあとに入れたら大変で話がグチャグチャになる…)
お気に入り登録して頂ければ幸いです。