IS インフィニット・ストラトス ~未来をパラドックス~   作:智明

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今回はちょっとした番外物。
主役は簪ちゃんです。


十・五話 ~エスタブリッシ・ザ・ミーニング・トゥ・エグズィスト~

私には姉がいる。

明瞭快活で文武両道、中心になってあらゆる人々が近づき、巻き込み・・・そして皆を引っ張っていた。

そんな姉を・・・私は憧れてた。

ただ憧れただけでなく姉の様になりたいとも思った。

だが・・・努力を重ねていく内に私と姉は根本的に違う事に気づいた。

私と違い、姉はあまりにも強大すぎた。

どんなに努力を重ねようともその差は埋まる事は無かった。

いっぱい頑張ったのにその足元にもとどかなかった。

誰も私に見向きもしてくれなかった。

皆、姉ばかりに夢中だった。

憧れてた筈の姉を・・・私は恐れる様になった。

 

△▼△

 

私は苦手としていた筈の姉がいる学園の入試を受けた。

何故わざわざそんな事をしたのかと言うと・・・例え無理でも私は姉を超えたかったのだ。

いつまでも姉の影に隠れてるのが嫌だったから。

姉への恐怖を克服し、私は自分の存在意義を確立したかった。

あの頃から私は更に努力を重ねた。

例え誰にも認められなくても、例え姉には敵わなくてもせめて一矢は報いたかった。

そしてついに努力が報われる日がやって来た。

適正検査の結果私のIS適正はA、それだけでなく国家代表IS操縦者の候補生としても選ばれた。

大丈夫・・・もう以前の私とは違う。

今度こそ姉に怯えず堂々としてみせる!・・・その矢先だった。

入学前に完成する筈の私の専用機は開発が見送られたのだ。

理由は世界で唯一の男性IS操縦者・・・彼の為の専用機を作る為だった。

その数週間後、別の男性IS操縦者が現れたがどうでもよかった。

笑うしかなかった・・・だって後少しだったのに・・・。

別にISが欲しかった訳ではない・・・だがそれが私の新しい自信に繋がる筈と思った。

また・・・誰も私に見向きもしてくれなかった。

皆、彼ばかりに夢中だった。

私の努力の全てを台無しにしてくれた彼を・・・私は憎かった。

 

▼△▼

 

私はIS学園に入学した。

周りの人達は新しい学園生活に期待を寄せながら噂の男子達と仲良くなりたいとで話が盛り上がった。

聞いていて不愉快だったので私は耳を塞いだ。

授業は以前から習っていた物ばかりだった。

先生には悪いと思いつつ、隙を見て私は居眠りをした。

最近は眠れない・・・不安と怒りと悲しみで頭と心がぐちゃぐちゃになっていた。

精神的に不安定になってきている。

正直言って噂の彼と出会ったら私はカッとなって飛びかかって彼を殴っていると思う。

本当に・・・疲れた。

私は重い足取りを引っ張りながら整備室へと向かった。

理由は姉が気を利かせて未完成の私のISをこの学園に運んでくれたから。

さすがに感謝はしたけどそれをやってのけた姉の権力は恐ろしいの一言に尽きる。

手伝うかとも聞かれたが私はこれを拒んだ。

別に姉の事を嫌いと言う訳ではない・・・ただ存在を、いてもいい理由が欲しいのだ。

姉は以前、自分のISを自身で組み上げた事がある。

それが如何に難しいのか・・・私自身が一番よく知っている。

だからこそ私もやる。

自分の存在意義を確立する方法なんてもう何も思いつかない。

これでも駄目だったらきっと私は壊れるだろう。

壊れた私なんて誰も見向きもしてくれないのだろう。

別に人気者になりたい訳じゃない。

一人でもいい、普通でもいい、私の存在を認めてくれる人を・・・私は欲しかった。

 

△▼△

 

いきなり最初から手詰まりだった。

未完成のISの部品を床で綺麗に並べてみたがどこから手をつけていいか分からないのだ。

プラモみたいに組み立て用の説明書があるわけでは無い。

設計図はあるがさっぱり分からなかった。

甘く見たつもりはないがこれは予想を遥かに超えた。

どうすればいいの・・・どうしたらいいの・・・。

彼の登場によってこのISはいらなくなってしまった。

いずれ量産し、製品化するなら彼が扱ったISの方がコピーがいいし売れたりもするだろう。

このISも私と同じ・・・私以外誰も見向きもしてくれないのだろう。

きっと私もこの子の様にバラバラになるだろう。

そんな事を考えて私は直ぐ後ろに人がいる事に気がつけなかった。

後ろを振り向くとそこにいたのは男子だった。

私は直ぐに警戒したけど動けなかった・・・男子は二人いるって聞いたけど顔は分からない。

憎い例の彼の名前だけはさすがに覚えてたけど。

 

「・・・誰?」

「あー・・・俺の名前は秋葉原夕霧で・・・」

 

違った・・・彼は二人目の方だった。

 

「・・・そう」

 

納得して彼に対する警戒を解いた。

だも何で彼は近づいたのだろう。

別に面白い事をしてる訳でもないのに。

 

「・・・要件は?」

「あ、いや・・・要はないが少しそれが気になってな・・・」

 

彼は床にある部品に指を指す。

それに釣られて私も視線を落とす。

 

「それ・・・打鉄弐式だろ?」

 

その言葉に私は驚いた。

何でこの子の名前を知ってるの。

 

「・・・驚いた・・・この子のプレゼンテーションもまだ一回しかやっていないのに、しかも途中までしか組み立ての状態・・・よく分かったね」

 

そう・・・彼が知る機会があるとするなら一年前にビッグサイトで開かれたISプレゼンテーションしかないだろう。

 

「まぁ・・・これでもマニアだからな」

「何の?」

「メカマニア」

「・・・ふーん」

 

確定・・・やはりオタクだった。

そして一人でもこの子に見向きもしてくれた人がいた。

私はないけど。

そういえば私が他人と会話したのって随分久しぶりの様な気がする。

いつもは受け答えばかりだからこんな風にしゃべるのはかなり新鮮・・・しかし疲れる。

 

「あのさ・・・えっと・・・名前、聞いてもいいかな?」

 

いきなり私の名前を聞きに来た・・・別にいいけど。

 

「・・・更識簪」

「あのさ・・・更識さん、もし良かったら俺も手伝っていいかな?」

 

何を言ってるのこの人は・・・とりあえず答えは・・・。

 

「イヤ」

「・・・おうふ」

 

あ、凹んだ・・・言いすぎたかな・・・。

 

「一応力仕事とかもあるだろうしここは男子の俺がいた方がいいと思うぞ」

 

あ、復活早い・・・でも・・・。

 

「必要ない」

「えっと・・・人数多い方が作業効率いいぞ」

 

確かにそれは事実だ・・・だけど・・・。

 

「いい・・・それにどうしてもこれを一人でやらなきゃいけないから・・・」

 

そう・・・私は姉を超えなきゃいけない・・・やらないといけないのだ。

 

「何で?」

 

当然の返し、でもこれは私自身の問題。

せっかく声をかけて手伝うと申し入れてるのに・・・。

心苦しいけど突き放そう。

 

「・・・言わない・・・それにISについて何も分からないでしょ・・・」

「そんな事はないぜ・・・これでも知識だけは豊富なつもりさ」

 

え、本当に?・・・いやでも、技研でも研究員の半分以上は男性だったし有り得る・・・のかな?

 

「・・・それでもイヤ」

 

一瞬揺れたけど・・・うん、断ろう。

 

「うーん、そっか・・・じゃ何か困ったらいつでも声をかけてよ、必ず手伝うからさ」

 

本当にいい人なんだね。

ずっと断り続けていたのが馬鹿らしく思えていきた。

でも私の問題には巻き込めない・・・だから・・・。

 

「・・・うん・・・とりあえず考えとく」

「そっか、それじゃあ俺は反対側にいるからな」

「寮に行かないの?」

「えっと・・・俺の専用機、今日来てるんだ」

「専用機・・・」

 

そういえばなぜ彼がここにいたのかが不思議に思ったが・・・そうか。

やっぱり・・・男子は特別なんだね。

 

「おう、アメリカ製のな・・・じゃ!」

 

彼は自身の専用機がある反対側の収納場へと向かった。

もう少し・・・話してみたかったな・・・。

名残惜しくも私は視線を再び床に落とす。

私は本当にこの子を完成できるのだろうか。

さっきは勢いよく威勢を張ったものの、やはり・・・分からない。

私は再び後ろへ振り向く。

彼はISを目の前にして頭を抱えてなにか悩んでいる様だ。

何か失敗したのかな・・・。

彼は手伝うと言った。

助けてくれるのかな・・・。

彼は私の最初で最後の人かも知れない。

私を認めてくれる人・・・私を見てくれる人・・・。

もう意地を張らないで・・・自分から行って話しかけて・・・。

彼ならきっと私を見てくれるかも知れない。

私は彼と話すのがよかった。

壊れかけの私を・・・手すけて・・・。

 

▼△▼

 

ピピピピピピピッ・・・・・・。

アラームにセットしておいた時計が鳴る。

 

「んぁ・・・」

 

時刻は六時の朝。

部屋は真っ暗だがそれはカーテンが日差しを全力で防いでいるからだ。

 

「・・・起きなきゃ」

 

むくりと起き上がってベッドを降りる。

机に置いてあったIS用の簡易ディスプレイ・・・つまり眼鏡を拾い上げてそれをかける。

彼女は更識簪・・・このIS学園に通う一年生。

 

「・・・変な夢を見た」

 

簪は目を瞑り、先程の夢を思い出す。

 

「大丈夫・・・今度こそ、大丈夫だから」

 

まるで自分に言い聞かせるかの様に何度でも言葉にする。

 

「うん・・・まずは秋葉原君を誘おう・・・」

 

簪はルームメイトが不在の部屋を出て夕霧がいる部屋へと向かった。

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