IS インフィニット・ストラトス ~未来をパラドックス~   作:智明

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一話 【Dear my Brother】

俺と由奈は外へ出る為現在はエレベータに乗っている。

地上に着くまであと十五分。

それまで俺は自分の気持ちを整理する。

過去に飛ぶ。

俺は了承したがそれを行うには外に出る必要があるらしい。

普通こういうのは人目が付かない場所が定番かと思ったが由奈曰く野外の方が好都合とのこと。

 

「………」

 

会話は無い。

それもそうだ、後数時間で俺はこの世界を別れる事になる。

気まずくて会話どころじゃない。

いや、それなら逆に最後だから何かを話さなくちゃって事になるが…あいにくというか気分が乗らない。

由奈もそれを察してたか、さっきからずっとだんまりだ。

顔色を見る。

かなり青ざめてて表情も強張っている。

無理もないか。

俺は過去に行って未来を変える。

それはこの世界と目の前にいる姉を自分自身の手で殺すっという意味なのだから。

由奈はタイムマシンを開発してた時から覚悟してたのだろうけどいざ現実になると怯えずにはいられないだろう。

なら後もう一台タイムマシンを作れば二人で過去に行く事が出来る。

これで解決!

って訳にもいかない。

この姉は困った事に一度作った物は二度作りたがらない人なのだ。

命が掛かってるのにそれでも作らない。

後で聞いたがこれは決してポリシーなどでは無くただの癖らしい。

一度開発を終えると作り方はスパッと忘れる為作ろうにも作れないそうだ。

作り方を書き留めても意味不明の文字の羅列に変貌し、本人でも何を書いたのか全く分からないとの事。

なので由奈はタイムマシンを俺に託して自分は残るつもりでいる。

この消されるかも知れない世界に。

本当は怖い筈。

誰だって自分の存在を歴史から消されたくない。

当たり前だ。

怖いのは当たり前だ。

天才と言っても由奈だってただの人間なんだ。

笑ったり、泣いたり、悲しんだり、怯えたりだってする。

この過酷な世界に生まれて平然としている訳がない。

辛いに決まっている。

死にたくないに決まっている。

…でもこの辛い現実を変えるにはこれに賭けるしかないのだ。

 

「そんなに現実が辛いならいっそ自殺でもして全てから解放されれば?」

 

昔そんな事を言われた事があった。

人によっては必ず実行する人もいるし彼らにとってそれが正しい正常な判断なのだろう。

だけど俺達姉弟にとってそれは違う。

怒り。

不満。

俺達はこの世界をあるがままに受け入れる事なんて出来やしない。

だから抗うんだ。

例え死ぬほど怖くても。

 

△▼△▼△▼

 

遂に地上に辿り着いた。

俺は辺りを見渡すとそこは相も変わらず草も生えない荒野だった。

ここはパシフィックと呼ばれる国だ。

かつては太平洋と呼ばれる大海原だそうだ。

その真下には俺達が住んでいるアンダーグラウンドと呼ばれる大都市がある。

 

「さて、この辺でいいでしょ」

 

エレベータからそう離れていない場所に由奈は準備を始める。

え、見られてもいいの?

せめて柵ぐらい張ろうよ。

 

「別に見られても困る事は無いわ、元々一回限りの使い捨てだしね…それに外に出たのはただの事故防止策、本命は加速が欲しいかな」

 

加速???

 

「はい、手を出してみて」

 

言われた通りに手を差し出したら逆に何かを手渡された。

指輪?

 

「これがタイムマシン?」

「違うよ、それはゆうの新しいIS」

「え、何で?」

「ゆうが前に使っていたISはコアごと大破したからね、ちなみに新しく作ったISは私のオリジナルでもあるから性能は期待してていいよ」

「ちょっと待て、俺はこれから過去に行くのにこんな未来兵器を過去に持ってて大丈夫か?むしろ必要なのか?」

「必要だよ…そもそもゆうはどうやって過去を変えるつもりだったの?」

「それは…」

 

考えてなかった。

確かに過去に行く手段はあるけど過去を変える方法を全く考えてない。

俺のやるべき事なのに…。

 

「言っとくけどベタに話し合いで解決とかは無理だと思う、それは過去の歴史が証明ずみ…それに過去には敵もいる、力を持った敵がね…ゆうのISはその為の力」

 

成程…これで合点がいった。

何故由奈は開発者である自分自身ではなく俺に任せようとしたのか。

それは戦いが必ず起こると最初から知っていたからだ。

由奈は女性なのだがISは使わないし使った事も無い。

戦いが起こると想定されているのなら戦闘経験のない由奈よりも俺の方が適任って事なんだろう。

 

「ゆうのISは確かに過去の人からしたら完全にチートだけどこれは負けられない戦いなの!だからこれぐらいの反則は許される筈!」

「お、おう」

 

まぁ、負けられない戦いなのは同意。

由奈の言い分はほぼ正しい。

それによく考えたら切り札は必要だしこのISは貰っておくべきだろう。

うん、そういう事にしておこう。

 

「ふぅ、脱線したがそろそろ次に移ろう…はい」

「今度は腕時計か」

 

俺も技術者だから流石に分る。

時計と言ったらもうアレしかないだろう。

 

「ただの腕時計よ」

「マジで!?」

「ISが疑似的にタイムマシンの役目を果たしているからね」

「疑似的?」

「さっき言った加速、これはISで補う事にしたのだけど…」

 

簡単にまとめるとこういう事らしい。

俺のISはタイムトラベルが可能らしい。

リミッターを解除し、俺のISに搭載されたプラズマリアクターの出力を限界まで上げてその後はひたすら飛び続ける。

光の速さで飛ぶ必要はなく、ISの加速も徐々に早くなるのが理想らしい。

つまり瞬時加速(イグニッション・ブースト)によるゴキブリダッシュはNGだそうだ。

プラズマリアクターから発せられる電流が俺の体を包みそしてそのままISごと過去にジャンプする…らしい。

ちなみにこれだけの事をやって俺の体は無事で済むのか?

と由奈に聞いてみたらシールドバリアーと絶対防御を常にパッシブ状態にしておけば俺の体がバラバラになる事はないらしい。

バラバラとかこわ。

さて、らしいがやたら多いけどこれは仕方がない。

由奈も実験は繰り返してやってるけど実験成功の確証が殆ど得られていないのが現状。

ただ、それでも成功すると断言している。

ヒントはタイムカプセル。

何のこっちゃ…。

だがこれで完璧とは言えない。

飛ぶ事に成功しても目的の時代に辿り着けなければ意味がない。

まぁ、それを解決する為の必須アイテムが今俺が持ってるこの腕時計なのだ。

一見何の変哲の無い腕時計なのだがこの腕時計は過去の座標を特定する為の装置。

俺が望む時代に辿り着くには明確な情報が必要らしい。

もっとも分かりやすいのは日付。

それさえ明確にすれば迷う事はないそうだ。

 

「それでも弱点はあるけどね、十年位なら細かい日付は決められるけどこれが五十年、百年単位とかだったらかなりアバウトになるな」

「目指してるのは五百年前だから…」

「かなり大雑把になるわね」

 

まぁ、そこまで贅沢は言ってられない。

あの人達(・・・・)が生きている時代にさえ辿り着ければそれでいい。

どうやって過去を変えるか…その時に考えばいいか。

 

「…そろそろ始めようか」

 

集中する。

突然俺の周辺が青白く輝きだした。

瞬間、俺の視界は紫色になった事に気づく。

原因はいつの間にか装着しているバイザーの存在だ。

手足を確認する。

俺の手足も機械のソレになっていた。

視線を下すと俺の胸元にはプレートがあった。

多分男である事がばれない為のカモフラージュ。

あの時代は色んな意味で特殊だからな。

頭を後ろに向けば三対六枚の翼がある。

そして最も印象深かったのはこのISの色である。

黒。

 

「このISの名は?」

「決まってないよ、向こうに着いた時にISのフィッティングをしながらでも考えて」

「…分った」

 

俺はISを浮かせ、ゆっくりと上昇させる。

ふと、由奈の方を見る。

 

「本当に…本当にいいんだな?」

「…」

「俺は過去を改変して未来を変える…本当に…後悔は無いんだな?」

 

それはまるで自分自身にも言い聞かせているみたいだった。

引き返すなら今の内だと。

だが由奈は…。

 

「…」

 

笑顔だった。

本当は怖い筈なのに気丈に振る舞おうとしている。

喋らない。

喋れない。

きっと喋ったら今までの決意が揺らぐ。

だから一言も喋らずに俺を見守っている。

なら俺も…。

 

「…」

 

俺は腕時計を取り出した。

ISの腕越しなのだが器用に腕時計を操作する。

五百年前に設定しておいた。

20XX年 ??月 ??日

 

「スゥー…ハァー…」

 

始める。

ユニット…リミット解除

プラズマリアクター…セーフティー解除

リアクター…出力レベル最大

シールドバリアー…出力レベル最大

絶対防御…常時パッシブモード

センサー…オールクリア

…エンゲージ

 

そして飛ぶ。

前進しながら飛ぶ。

徐々に加速を加える。

更に加速。

加速。

加速。

加速。

そしてそれは唐突に来た。

光が俺を包んだ。

…そして。

 

△▼△▼△▼

 

「…行ってしまったか」

 

最後ぐらい別れを言いたかったがそれは堪えた。

ゆうの幸せを願うならこれが一番正しいのだから。

未来を変える事の成否については別に期待はしていない。

むしろ興味も無い。

だって…全ては方便なのだ。

 

「…」

 

私は孤独だった。

父と母が殺されて弟は誘拐された。

私は逃げて、逃げて、逃げ続けて。

でも、逃げた先には…。

そして私は大人達に捕まった。

天才に求められているもの何て一つしかない。

それは新しい玩具だった。

私は逆らえなかった。

望んでもない罪を勝手に背負ってしまった。

私は一億を一瞬で殺した怪獣になってしまった。

 

そして数年後。

 

大人達は満足したのかもう私への興味は失せた。

きっと新たな天才を捜すのだろう。

新たな玩具を手に入れる為に。

そして自由になった私はアンダーグラウンドに身を移す。

まさかそこで最愛の弟と再会するとも思わず。

ゆうとの再会は嬉しかった。

私にとって唯一の肉親は彼だけなのだから。

たまに口うるさいし喧嘩もするけどそれも家族だからこそ出来る事。

ゆうとの時間は私の宝だ。

出来る事ならずっと一緒にいたい。

ただ、この時代にいたらゆうはまた早死にする。

再開する前も結構危ない橋を渡っていたそうだ。

このままではまた失う。

家族を失う辛さはもう沢山だ。

それなら…失うくらいなら逃がそう。

平和と言い伝えられたあの遠い時代に。

 

「もう会う事も無いだろうけど…バイバイ…ゆう」




由奈「そうだった!死んだゆうの頭は保存してあるじゃん!早速クローン作ろう!」
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