IS インフィニット・ストラトス ~未来をパラドックス~   作:智明

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三話 【Destiny】

俺は今、M市にある二十階建てのビルの屋上で町を見下ろしている。

この時代に来てから既に十日が過ぎた。

ホームレス生活を送っているが食事事情以外はそれなりに何とかなってる。

そう、問題は食事だ。

しばらくは小さい虫で何とか空腹を抑えているがいい加減まともな食い物が食べたい。

唯一の救いといえばこの時代の日本の公園には新鮮な水がある。

未来では変な物質を元に作られた人工水しか飲めない。

味?

想像に任せる。

 

△▼△▼△▼

 

町を歩く。

ただぶらぶらと。

明確な目的があるが未来を変える為の段取りが思いつかない。

俺の相手は謎の組織でもなければISを暴走させているテロリストでもない。

俺の相手は世界の流れそのものなんだ。

今の俺はこの世界にとっての小石みたいな物だろう。

確かに俺にはISがある。

この時代だと普通ISと言えば一機程度でも一国と渡り合える戦力と言われてるが俺の場合一機で大陸だからな。

あきらかにおかしい。

だが、例えそうだとしても世界を変える程ではない。

多少の変化はあっても根本的な解決にはならない。

焼け石に水って奴だ。

つまり俺一人じゃ限界がある。

だから…そうだな…。

誰かを巻き込まないといけないんだ。

なるべく大勢が。

その誰かは俺の中ではほぼ決まっている。

未来を変えるには仲間がいる。

問題はどうやって接触するか。

運命でもない限りそんな都合良く会える訳でもないし。

…と考え事をしながら道を歩いていると丁度ここから10メートルの先に男共が一人の女の子を無理やり車に乗せた。

そしてそのまま走って逃げた。

ザ・リアル誘拐だった。

ランドセルを背負ったので誘拐された子は小学生だろう。

そこは間違いない。

 

「…ふむ」

 

さて…これ、俺が助けるべきかな?

確かに俺ならさっきの車に追い付けない事もないが…。

………。

……。

…いや、やっぱ助けよう。

別にヒーローを気取るつもりは無いが俺の目的は未来救う事だ。

この人助けもその未来に繋がっている筈。

 

「…なにより」

 

幼い頃。

両親が殺されて俺は誘拐された。

姉の由奈は何とか逃げられた。

俺も隙を見て何とか逃げる事が出来た。

誘拐犯から逃げ続けたその後、俺はスラムで暮らした。

地獄の様な毎日だったがあの日々がなかったら今の俺が無い。

今はあの時暮らせて良かったとさえ言える。

だが、それでも俺は自分の人生を壊してくれた誘拐犯だけは絶対に許せなかった。

だから助けよう。

 

△▼△▼△▼

 

俺は今、屋根伝いで走っていた。

さっきまでは歩道を走っていたが現在ショートカット中。

更に屋根を飛び越える。

由奈がISを改造してくれたお陰でISの馬力がそのまま俺の体にフィードバックされる。

空を飛ぶ事は出来ないが常人離れした身体能力が発揮出来る。

ただし終わったら筋肉痛だけどな!

ちなみにこれはISによる身体支援の応用だ。

屋根伝いで走って十五分。

いた。

目的の車が。

俺は屋根を飛び降りる。

そしてその車を遮る様に立った。

車からスピードを緩める気配がない。

俺をひき殺してそのまま逃げるつもりか…。

 

「だが関係ない…」

 

俺の右腕が青白く輝きだした。

量子化されたISの右腕だけが部分展開される。

そして拡張領域(バススロット)から量子化された一丁の拳銃を呼び出す…。

名は『ヴィントver1.01Y改』。

狙えをタイヤに定め。

そして撃つ。

拳銃から放たれたのは実弾ではなくビームだった。

俺は実弾派だから最初は驚いたがなぜビームなのかその理由を思いつく。

過去に行けばきっと補給が利かないと由奈は覚ったのだろう。

それならいっそエネルギーチャージで間に合うビーム仕様の方がキャストアウェイ状況に向いてると思った筈。

さて、タイヤは打ち抜いたが車はまだスピードを緩めない。

このまま走り去るつもりか?

そうはさせない。

俺はヴィントを仕舞い今度は別の武器を呼び出す。

現れたのは刀剣の形をしたIS用武装『紅桜』である。

俺は静かに刀を構えた。

それは幼少の頃からやっていた構えの一つだった。

両親が死に、姉と離れ離れになった後も俺はずっと振り続けた。

毎日欠かさず(・・・・・・)

そして擦れ違い様に黒いバンを縦に両断した。

勿論中の人達を一切傷つけず。

 

「…うっ」

 

俺は真っ二つにされたバンの中で気絶してる女の子を見つけた。

サイレンの音がしてきたので彼女を抱き抱え、その場を離れる事にする。

 

△▼△▼△▼

 

ふむ、困った。

今現在我が家と化していた公園のベンチにて女の子を寝かせている。

あの場からとっさに連れ込んだがよくよく考えたらあの場から連れ出す必要は無かったよな?

だって警察来てたし後は彼らに任せておけばそれでよかったし。

 

「…う、うぅん」

 

お、どうやら眠り姫がお目覚めの様だ。

 

「…おはよう」

「…ここは?」

 

うーん、どう説明しようか。

 

「えっと、ここは隣町のT市にある公園ですよー」

「…君は…さっきの」

「…さっき?」

「刀を持った…」

 

…見られた?

いや、確認出来なかったけどこの娘はもしかしたら車の中にいた頃は気絶してない?

この娘が気絶したのは俺が車を攻撃した後か?

いや、そんな事はどうでもいいか。

少し考えよう。

確かにISは起動させたがそれは部分展開だけだ。

多分ISの事はバレてない。

いや、この際ISはいいのか。

問題は俺が男であるという事だ。

この時期に男がISを動かせたって騒がれる訳にはいかん。

うむ、それは間違いない。

何故なら俺が動かせたという事実はやがて別の可能性を生むからだ。

もしかしたら他にもいる…っとな。

いずれバレる事だが今はまずい。

俺は良くてもあいつ(・・・)は良くない。

今のあいつはまだ小学生だ。

小学生のままIS学園に入れられるとか明らかに未来は変わるが間違いなくデスルートだ。

仮にあいつがISを動かせたとしてもまだ子供だ。

あいつが最終的にモルモットにされる未来が目に見えてる。

 

「お、おい」

「うん?あ、お、おうなんだ」

 

いきなり話しかけて来るからびっくりしたわー。

 

「さっきの光、それに腕…あれはIS…なのか?」

 

うわー…見られてたかー…。

 

「実は、私も見覚えがあるんだ…それに君は男子で、どうしても気になって」

 

てかとっさとはいえよく見えたなアレ。

目がいいわこの娘。

さて、どうしよう。

口封じするにも相手はまだ子供だしなー。

いやでもこの娘がそんな事を言いふらすとは思えないし。

この娘なら恩を仇で返す筈が無いか?。

…いや、それも絶対ではないか。

うーん、どうしましょうか…。

うーん。

…………。

………。

……

…あ、閃いた。

 

「そうだ、さっきのはISだ」

 

何をいきなり言い出すんだ俺は。

 

「しかし、君はどう見ても男にしか見えないのだが?」

 

うん、そこだよね。

何せこの世界の常識はIS=女性専用だからな。

男の俺がISを動かしてるなんてこんなの普通じゃ考えられないもんな。

 

「それについては事情がある」

「事情とは?」

「それは言えない」

「何故?」

「言えない、だが君を誘拐犯から救う為に仕方なく(・・・・)正体を晒す事になってしまったんだ…本当は極秘なのになー」

「うっ」

「どうかな、俺の事は見なかった事にしてくれると助かるのだが…」

 

…どうだ?

 

「…ふぅ…分った、この事は他言無用にする」

 

よっしゃー!

恩人面しながらごり押しで納得させるのに成功したぜ!

 

「そうか、そうしてくれると本当に助かるが…」

「ああ…本当に誰にも言わない」

「本当か?」

「本当だ、誓って誰にも言わない…約束だ」

 

うーん、まっすぐで健気だなぁ。

かわいい。

 

「はは、分ってる…信じてるさ」

「あ、あぁ」

 

その一瞬。

少女の頬が赤面して見えたのはきっと夕日のせいだろう、うん。

 

△▼△▼△▼

 

さて、話は一段落した所でそろそろ夕飯のしたくをしよう。

まずは火を起こす。

 

「…何をしてるんだ?」

 

あれ、さっきの娘がまだいた。

無視するのも気が引けるしとりあえず適当に喋るか。

世間話は大事。

 

「焚火」

「…え、もしかして野営?公園で?」

「違う、ここで済んでる」

 

お、火が付いた。

後は風を仰いで。

 

「…君、家は?」

「無い、ISだけが全財産」

 

ぬう、中々に燃え上がらない。

これ面倒なのよなー。

 

「…よし、決めた」

 

お、上がった!

よし、燃え上がれー…ゆっくりと燃え上がれー…。

 

「な、なぁ」

「ん、何だ?」

 

今火がいい感じに燃え始めたから出来れば後にして欲しいなー。

 

「今日、家に来ないか?」

「……………何と?」

「その夕食をご馳走したいんだ…その、そう…助けていただいたお礼がしたい!」

 

夕食…か。

…どうする。

今日のとっておきに昨日公園の池でザリガニを釣った。

だがこの娘はご馳走を振る舞うと言っている。

どうする。

 

▼△▼△▼△

 

甘える事にした。

だって最近はロクなもん食ってないからな。

お礼って言ってたし貰っても罰は当たらんだろう。

 

「ここを真っすぐ行けば私の住むマンションに着く」

 

偶然にも同じ市に住んでいた。

いや、俺は公園で寝泊まりしてるだけで厳密に言えば済んでないのか。

そんな事を考えてる内に目的地に辿り着いた。

それは如何にも金持ちが住みそうな処だった。

月うん千万も支払う超豪華な処だった。

何階建てだ?

え、マジでここで済んでんの?

 

「あんた何者?」

 

思わず訊いた。

訊いてしまった。

 

「私の名前か?そういえばまだ名乗ってなかったな」

 

本当に思わずだった。

訊くつもりはなかったが…。

…いや、いずれ尋ねる事だし時既に時間切れか。

 

「私の名前は篠ノ之箒…君の名は?」

 

いやー…運命って本当にあるわー。




夕霧「とりあえずザリガニは池に返そう」
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