IS インフィニット・ストラトス ~未来をパラドックス~   作:智明

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徐々に延びるペース。


四話 ~ユ・ケン・リィヴ・ヒア~

 篠ノ之箒の提案により彼女の家に住まう事が決まった夕霧。決まったと言ってもまだ母親の承認を得ていない為、実際は何も決まってない。そしてその承認を得る為に現在は彼女・・・箒の家に今向かう途中だった。

 

「ところで・・・君を住まわせる過程で一応助けてもらった内容を話す事なるがどこまで話せば良いのだ?」

 

 箒が言っているのは勿論ISの事だろう。

 

「その・・・私の母は嘘や隠し事が通用しないので内容を誤魔化すのは流石に無理だと思うが・・・」

「心配してくれてどうも、でも多分大丈夫だろ・・・元から全部話すつもりだし」

「い、いいのか?その・・・ISとかは、その・・・企業秘密みたいな事じゃないのか?」

「実際秘密事項何だけど相手が誤魔化しが効かないなら隠しても無駄だろ、それに仮にもISの生みの親の母親だぜ?」

「まぁ、確かに言いふらしたりはしないが・・・」

「だろ?」

「しかし問題はそれだけではない」

 

 箒はいきなり足を止めた。それに釣られて夕霧も歩行を止める。

 

「ゆうは私の事情を知ってるのか?」

「事情?」

「保護プログラムだ」

「あ」

 

 夕霧はここに来て篠ノ之箒に深く関わる重大な問題を思い出した。重要人物保護プログラム・・・それは読んで字の如くなのだがあえて説明させてもらおう。これは特定な重要人物・・・或いはその家族を国の名の下に全面的に保護する為の措置。聞くだけならとんでもなくVIP扱いされてるがそれは大きな間違いである。実際は監視と盗聴も盛り込まれて普通の神経だったら気が狂うレベルなのだ。ちなみに場合によっては危険な目、或いはメディアに場所を特定された時は引っ越す事もある。とはいえある程度の自由が与えられている為監禁よるはマシだろう。とそこまで考えた夕霧は今度は箒の心境を考える。別に頼んでもいないのに国のお節介のせいで子供時代をまるまる潰されるなんて箒が望んでいる筈がない。おそらく今回の拉致騒ぎでまた引っ越す事になるだろう。せっかく友人が出来ても出会いと別れを何度も繰り返したらいつかは箒の心が壊れる。そして夕霧はそれを何とかしたいと思う様になった。どのみち未来が変わるなら彼女の不幸な過去も変えてもいいじゃないか。仮にこれで新しい問題が発生したとしても夕霧自身が死ぬ気でフォローすればいいだけの話である。

 

「・・・なぁ、箒」

「何だ」

「やっはり嫌か?監視されながらの生活は」

「・・・当然だ、外では何もないが家でだと常にカメラで見られていて・・・本当に気持ち悪い」

「・・・そうか」

「ゆう?」

 

 箒から視線を外し、前を向いて少しだけ歩く。何かを決意したかのうな目で言葉を続く。

 

「・・・その厄介なプログラムは俺が何とかする、だから箒・・・お前は何も気にするな」

「え・・・あ、ああ・・・わかった」

 

 再び歩行を再開する二人。一瞬何のことかと考えるがおそらく自分の身は自分で何とかすると箒はその様に解釈し、納得した。隣に歩く夕霧が獲物を射抜く狩人の目をしている事にも気づかずに。

 

 家路を辿り、ようやく箒の住居に着いた。白を基準とした色合いの二階建てでぽつりと存在する小さな庭がなかなか素敵である。

 

「へぇ・・・いい所に住んでるなぁ」

「政府が勝手に用意した家だ、正直に言えば趣味じゃない」

 

 まぁ確かに箒はこういうオシャレな家よりも和風住宅がお似合い何だもんな・・・と夕霧が考えてる内に玄関ドアがガチャリと音を立て、開く。そして現れたのは髪をセミロングで切り揃えた穏和そうな美女。

 

「え゛」

 

 その顔を見た夕霧は一瞬目的の人である篠ノ之束かと思いきや違った。束は写真でしか見た事なかったがこの人物は彼女と比べて少しだけ老けている。つまりこの人が・・・

 

「箒、よかった・・・無事だったのね」

「・・・母さん」

「警察からの電話で君が誘拐されたと聞いてずっと心配してたけど・・・本当によかった・・・」

「あ・・・うん」

「ところで・・・隣にいるその子は?」

 

 変な格好の子と言わなかった辺りは篠ノ之母の優しさを感じた夕霧。

 

「あ、ああ・・・そうだった・・・この人は私の命の恩人の秋葉原夕霧・・・そしてゆう、紹介するがこの人が私の母親の篠ノ之普(しのののあまね)だ」

「ど、どうも・・・こんばんは」

「ふふ、こちらこそ・・・箒の母、普と申します・・・いつも箒と仲良くしていただいて本当にありがとう」

 

 頭を下げた普、夕霧はこれに対し慌てて静止した。

 

「あの、箒とは昨日初めて会ったばかりで、その・・・」

「あら、そうなの?」

「・・・うん、実は他人なんだ」

 

 身も蓋もない箒の一言、間違ってはいないんだが軽く傷ついた夕霧。

 

「えと・・・じゃあどういう関係なの?」

 

 この時、夕霧と箒はお互いの顔を見合わせた。どうしようと箒は目で訴えていたが代わりに夕霧は任せろと目配せをした。

 

「実は・・・箒を誘拐犯から救ったのは俺なんです」

 

 何の前フリもなくさらっと言ってのけた。ちなみにこの時、隣の箒が勢いでずっこけた。

 

「い、いくら何でも前置き無さすぎだ!せめて場を整えてから言うもんじゃないのか!?」

「ない」

「お、お前なぁ・・・」

「えっと・・・」

 

 夕霧と箒のやり取りに少しだけ戸惑う普。

 

「とりあえず話なら中に入ってからにする?」

「・・・おじゃまします」

 

 そう言って家の中に入る。場所はリビングへと移り、夕霧と箒はソファで座りながら普にこれまでの経緯を説明中。

 

「・・・それで箒を助け、今に至ります」

「なるほどね・・・」

 

 一頻り話を追え、普は用意したお茶を口にする。

 

「それで母さん、他にも話があるんだが・・・」

「うん、ちょっと待ってね箒・・・夕霧君、今更だけどその話・・・喋ってよかったの?」

「どう言う意味ですか?」

「この家の事・・・当然箒から聞いてるよね?」

 

 普が言ってるのは監視カメラや盗聴器のことである。しかし夕霧はまるで気にしてないかの様に語った。

 

「それについてなら心配はありません、既に対策済みです」

「あら、そうなの・・・うん・・・なら、いいかな」

「それで母さん・・・実は・・・お願いがあるのだが・・・」

「お願い?」

「う、うん・・・その、ゆうをここで住まわせようと約束をしてて・・・」

 

 今回夕霧がここ篠ノ之家を訪れたのはこの話をする為である。夕霧としては住めるものなら願ったり叶ったりなのだが・・・これに対し普はといえば・・・

 

「うん、いいわよ」

 

 迷うことなく承認した。

 

「あの・・・母さん?本当に理解してるんですか?」

「箒は失礼ですねぇ、勿論理解してますよ・・・つまり危機から救って頂いたお礼として居場所のない夕霧君の為にここに住まわせるってことでしょ?幸い部屋は沢山余ってるしね・・・うん、お母さん全然許すよ」

「・・・いくら何でも信じすぎです・・・疑わないのですか?」

「あら、人見知りな箒がここに人を連れてきた時点でそれだけで十分信用出来ると思うけど?」

「む」

 

 普がそう言えば箒は黙るしかできなかった。

 

「さて、そろそろ料理の準備をするから箒は部屋に戻って着替えてきて」

「あ、はい・・・」

 

 箒はそれだけ言って二階へと上がった。リビングで残ったのは夕霧と普だった。

 

「あの・・・ありがとうございます・・・その、受け入れてくれて・・・」

「ふふ、感謝すべきはむしろこっちの方ですよ・・・改めて、箒を助けていただき、誠に感謝します・・・短い間ですけどしばらくはよろしくね」

 

 台所へ向かい、夕飯の支度に入る普。一人取り残された夕霧は『短い間』と言う普の言葉を理解し、それ以上は何も言わなかった。その後は食事をすませ、久しぶりのベッドで夕霧は休む様にした。

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